有価証券報告書-第86期(平成25年3月1日-平成26年2月28日)

【提出】
2014/05/28 9:17
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121項目

対処すべき課題

(1)当社グループの取組方針
節約志向の高まりや競合店増加による低価格競争の激化など小売業を取り巻く環境は厳しい状況が続いております。今後も既存事業だけで売上を伸ばすことは当分期待することはできず、また、少子高齢化による人口構造変化により中長期的にも消費マーケットは縮小するものと思われます。
このような環境のなか、対等の精神で経営統合する当社とエイチ・ツー・オー リテイリング㈱は、両社グループが持つ百貨店からGMS(ゼネラル・マーチャンダイジング・ストア)、スーパーマーケット、スーパーセンターにわたる店舗網、物流といった小売インフラストラクチャーの再編成を行うとともに、惣菜工場、プロセスセンターの製造小売等の両社独自のインフラを活用して、関西ならではの味・おいしさを追求してまいります。また、両社あわせて約700万人のカード会員を軸に、更なる利便性の向上と宅配機能の強化等による生活者サービスの充実を図ることはもとより、エイチ・ツー・オー リテイリング㈱、阪急阪神ホールディングス㈱及び東宝㈱からなる阪急阪神東宝グループとの連携を通じた豊かな文化生活の創出等、お客様にご満足いただける品質と幅広い価格帯の商品やサービスを、様々な生活シーンで提供していくことを検討してまいります。
平成26年度は、お客様の普段の生活に必要な商品、サービスが日々大きく変化するなか、当社グループはお客様に近づくことを常に意識し、「普段の生活の満足を提供し続ける店」を目指して取り組んでおります。中期3ヵ年経営計画「CAP-I(キャップアイ)」で構築した惣菜工場や食品プロセスセンターなどの新しい仕組みや制度を基に、よりお客様に近づき地域のお客様の潜在ニーズをとらえて、確かな品質と鮮度のある商品、サービスを引き続き提供してまいります。
≪店舗政策≫
平成26年度は、5店舗の新規出店を計画しております。京都市内に先述のデイリーカナート堀川丸太町店に続き新たに2店舗を出店し、白梅町店、高野店などの既存店舗とともにエリアシェアを高め、京都市内でのイズミヤブランドの更なる浸透を図ってまいります。また、デイリーカナート尼崎店と同じ立地条件の駅テナント店舗の出店などを計画しております。食品プロセスセンターのフル稼動を背景に、運営効率および投資効率を改善した店づくりを通じて、地域のお客様に満足していただける品揃えを実現してまいります。
既存店舗については、中期3ヵ年経営計画「CAP-I(キャップアイ)」で構築したロジスティックスなどの仕組みを基に、新しい店舗運営体制の構築を目指します。パートタイマー採用基準の見直しや店舗毎の基準人員の設定を行うとともに、運営オペレーションの効率改善を進め、より販売に専念できる環境作りに努めてまいります。
≪商品政策≫
価値観の多様化や世帯構成の変化でお客様の普段の生活が大きく変化している環境下、地域密着政策の下、お客様のニーズに基づいた品揃えを追求し、値頃商品の拡販に今後も取り組んでまいります。FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)などから得られるお客様のニーズを的確にとらえて品揃えに反映させていくことで、商圏内の客層・客数の更なる拡大を目指してまいります。
食料品においては、ロジスティックス改革で構築した仕組みを活用して鮮度ある商品を提供するとともに、惣菜新工場を活用して惣菜の品揃えを拡充し、お客様の時短、簡便化のニーズにもお応えしてまいります。また、食料品だけではなく衣料品、住居関連品においても、鮮度のある商品をお客様に提供してまいります。衣料品は、各店のお客様の年層に合わせた店別商品構成を徹底するとともに、シーズン毎の訴求商品をタイムリーに変化させ続けることでお客様に鮮度ある商品を提供してまいります。住居関連品は、鮮度ある新商品、話題商品をいち早く展開するとともに、地域のお客様にとっての必需品を提供してまいります。また、ネット販売市場への取り組みも引き続き強化してまいります。
プライベートブランド商品については、商品政策の中での位置付けを明確にして商品計画、売場計画、販促計画との連動を図り、売上構成比を向上させるとともに更なる値入率の改善に努めてまいります。3社で共同開発したプライベートブランド商品「Style ONE 」や既存のプライベートブランド「good-i」を含めた開発商品全体の年間売上高は327億円、売上構成比12.1%を計画しております。
≪人材育成≫
営業力強化の中心となる売場チーフの育成及び更なる戦力化を図ることで、競争力のある強い企業を目指してまいります。売場チーフに求められる販売計画、商品知識、計数などの営業力強化の領域に加え、労務管理やコンプライアンスなどのマネジメント領域について継続的に教育を進めてまいります。
また、今後、小商圏に対応した「食」を中心とした店づくりに対応していくために、非食品部門から食品部門へのフレキシブルな人事配置を積極的に行ってまいります。そのため業種間異動者への教育は必要不可欠であり、早期戦力化を図るための継続した教育を進めてまいります。
パートタイマーについては、採用後の定着化および早期戦力化と一定以上のレベルでの技能を習得するために、採用後の業務の習得進捗を上司と本人が相互確認できるツールを導入してまいります。習得すべき業務を明確にして、売場チーフが中心となって計画的に教育していくことによって、店舗営業力の強化を図ってまいります。
≪成長戦略≫
着実に業容を拡大し新しい価値を提供するために、今後は、小商圏を対象とした食品、HBC等の生活必需品のワンストップショッピングができる店舗や、スーパーマーケットを中心とした新規出店を行い、関西におけるネットワーク、ブランド力を活かした地域密着取組を推進してまいります。また、ワンストップショッピングができる1フロアで2,000坪までのコンパクトなスーパーセンターモデルの店舗開発を進めて地域のニーズに応えていきます。
成長著しいネットスーパーについては、個店毎の売上高拡大とともに収益改善にも引き続き取り組んでまいります。ネットショッピングのアイウィルについても商品力の強化に加え、販促活動の強化をはかり、ネット事業全体の収益拡大を図ってまいります。
高齢化や単身者世帯の増加など市場環境の変化に対応するために、地域に密着した様々な生活者向けのサービスをグループ各社で提供してまいります。㈱カンソーでは、大きく広がる生活者サービス市場を更に拡充し、駐車・駐輪事業やコインランドリー事業、グループホームのデベロッパー事業に引き続き取り組んでまいります。 イズミヤカード㈱ではカード事業におけるエイチ・ツー・オー リテイリング㈱との取り組みを進め、事業シナジー効果を高めてまいります。
今後は店舗における物販だけにとどまらずに、市場の変化に対応した生活者サービスの事業領域を拡大していくとともに、グループ各社が連携してネットスーパーや夕食宅配弁当、ハウスクリーニングなどの地域に密着した様々なサービスを総合的に提供していくことで、グループ全体の収益力の向上と関西におけるブランド力を活かした地域密着取組をさらに推進してまいります。
(2)会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社は、長年培った営業知識と経験を基に、経営資源を結集して、長期的な株主共同の利益の向上を目指すとともに、従業員、消費者、取引先、地域社会等との協働・協力関係をも重視し、法令や社会規範を遵守した上で、長期的展望に立った企業価値の向上に資する経営を目標としております。
具体的には、創業以来「お客様第一主義」を基本方針として掲げ、お客様のニーズにあった商品やサービスの提供を基本とした経営により、顧客満足を追求し、お客様との信頼関係を築いてまいりました。
このような小売業に求められるお客様との信頼関係および経営の効率性などの向上を継続的に追求することにより、当社の企業価値の維持・向上が実現され、当社の事業を構成する全てのステークホルダーに利益をもたらすと考えております。
上記基本方針からして、会社の支配権の移転を伴う株式の買付提案があった場合に、その目的等から見て企業価値・株主共同の利益に明白な損害をもたらすもの、株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、取締役会や株主の皆様が買付の条件等について検討し、あるいは取締役が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資さないと思われるものにつきましては、買付行為を抑止するための枠組みが必要と判断しております。
②基本方針の実現に資する特別な取り組み
当社およびそのグループ各社は、大正10年の創業以来「お客様より満足して頂けることを唯一の使命と心得て、常に品質に、値段に、お客様の身になって研究努力をいたさねばならない」という信条の下、「地域のお客様が、健康で楽しく、心豊かな生活を送れるように、安全で安心な商品とサービスの提供を通して“ええもん安い”の商道を追求し、社会に貢献します」との経営理念を掲げ、関西を中心基盤として店舗網を拡充するなかで、小売業とその関連事業を通して、各地域のお客様のより豊かな生活に貢献できるよう、またご支持を頂けるよう努力を重ねてまいりました。
すなわち、当社グループ各社の企業価値の根幹は、地域のお客様に貢献し、地域のお客様に愛されることにあると心得て、継続的に企業価値向上に向けた取り組みを実現することが永遠の使命であると認識しております。
平成24年度からは、中期経営計画として新たに3ヵ年計画「CAP-I」をスタートさせ、確実な成長路線への転換を図るため、ロジスティックス改革、組織・人事制度改革、グループ体制の再構築を基にした利益体質づくりを進めてまいります。
中期経営計画の推進に当たっては、より一層のコーポレート・ガバナンスの強化を図るため、リスクマネジメント委員会と会社情報の適時開示と適正性をより一層確保するためのディスクロージャー委員会の活動を推進しております。
③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
当社は、平成18年4月11日開催の取締役会決議により、株主の皆様のご承認を条件として当社株式の大規模買付行為に対する対応策(買収防衛策)を導入し、同年5月24日開催の第78期定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただきました。
現行の当社株式の大規模買付行為に対する対応策(以下、「現行プラン」といいます。)は、初回導入後3年毎の定時株主総会(平成21年5月20日開催の第81期、平成24年5月23日開催の第84期各定時株主総会)において株主の皆様に継続導入をご承認いただいております。現行プランの概要は以下のとおりです。
(ア)対象となる買付および買付者等に対する情報提供の要求
当社は、まず当社株式の保有割合が20%以上となる当社株式の買付者等に対し、買付内容の検討に必要な情報の提供を求めます。
(イ)買付内容の検討・買付者等との交渉・当社取締役会による代替案の検討
当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される企業価値向上検討委員会は、必要情報を受領後、予め定められた期間内(買付対価を現金のみとする場合は60日以内、その他は90日以内)で、買付者等の買付内容の検討、当社取締役会による代替案の検討等を行い、また必要に応じて当社代表取締役を通じて買付者等と交渉を行います。
(ウ)企業価値向上検討委員会の勧告
検討の結果、企業価値向上検討委員会は、当社取締役会に対し以下のいずれかの勧告を行います。
①対抗措置の発動を勧告する場合
買付者等が現行プランに定める手続きに従うことなく買付を行う場合、または現行プランに定める手続きに従った場合でも、当社定款に定める濫用的買収の類型に該当する場合
②株主総会の招集を勧告する場合
買付者等による買付等が当社定款に定める濫用的買収に該当しない場合であっても、当社の企業価値・株主共同の利益を損なう重大なおそれがある場合
③対抗措置の不発動を勧告する場合
買付者等による買付が上記①、②に定める要件のいずれにも該当しない場合
(エ)取締役会の決議
当社取締役会は、企業価値向上検討委員会の勧告を最大限尊重して、対抗措置を発動するか否かに関する会社法上の機関としての最終決定を行います。
(オ)対抗措置の発動
対抗措置を発動する場合、当社が当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権を、1株につき1個の割合でその時点の全ての株主の皆様に対して、会社法第277条に基づき無償で割当てます。但し、当該買付者等には新株予約権の権利行使は認められず、また当社株式との引換えもできないとの条項が付されております。
仮に、現行プランに従って、新株予約権の無償割当が実施された場合には、当該買付者等以外の株主の皆様による新株予約権の権利行使または当社による当該買付者等以外の株主の皆様からの新株予約権取得と当社普通株式交付の結果、当該買付者等の有する当社株式の議決権割合を、最大50%まで希釈化させる可能性があります。
④上記取り組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
当社取締役会は、現行プランに関して、以下に掲げる理由をもってその合理性を認めております。
(ア)上記(1)の基本方針に沿うものであること
現行プランは、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に沿うものです。
(イ)株主共同の利益の確保・向上の目的をもって導入されていること
現行プランは、当社株式に対する買付等がなされた際に、当該買付等に応じるべきか否かを株主の皆様が判断されるに当たり、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される企業価値向上検討委員会が情報収集や買付内容の検討に必要な時間を確保したり、株主の皆様のために当社代表取締役等を通じて買付者等と交渉を行うこと等を可能にすることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させるという目的をもって導入されているものです。
(ウ)株主意思を重視するものであること
現行プランは、定款の定めに従って、株主総会の承認を得た後3年以内の最終の事業年度に関する株主総会において、その存続について承認を得なければならないこととし、さらに、毎年の定時株主総会における取締役選任議案を通じて、株主の皆様のご意思を確認する手続を経ることとしております。また、必要に応じて株主総会を開催する場合には、対抗措置の発動の是非についても株主の皆様のご意思が反映されるものとなっております。
(エ)当社役員の地位の維持を目的とするものではないこと
当社株式に対し、買付等がなされた場合には、企業価値向上検討委員会が、当該買付が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するか否か等の判断を行い、当社取締役会に対抗措置を発動するか否かを勧告します。当社取締役会は当該勧告を最大限尊重し、対抗措置を発動するか否かについて会社法上の機関としての最終決定を行うこととしております。
このように、企業価値向上検討委員会によって、当社取締役会が恣意的に対抗措置の発動を行うことのないよう、厳しく監視する仕組みが確保されております。