訂正有価証券報告書-第91期(平成27年3月1日-平成28年2月29日)

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2016/06/03 11:28
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業績等の概要

(1) 業績
当期は、中国経済の減速に伴うアジア経済情勢への影響が懸念される中、好調な企業収益や雇用環境の改善を背景に、国内景気は総じて緩やかな回復基調となりました。他方、個人消費については、原材料の高騰等による一部商品の値上がりや所得水準の伸び悩み等が足かせとなり、消費支出や消費者マインドに足踏みが見られる状況となりました。
このような環境の中、当社は増加するインバウンド消費への対応強化に向け、外国語コミュニケーションツールや多言語通訳システム等を設置した免税取扱い店舗を全国のイオン630店舗に拡大したほか、消費者起点となる新たな需要を創造すべく、専門性の高い商品やサービスを提供する新業態「イオンスタイル」や、SM(スーパーマーケット)事業における都市部居住者向けの新業態「都市型SM」等、多様化するライフスタイル・価値観に合わせた業態開発へ注力し、その展開を加速しました。同時に、お客さまの声を軸に新たな基準で企画・開発に取り組むイオンのブランド「トップバリュ」商品の展開をグループ小売各社で広げ、さらに地域密着経営を深耕する方針のもと、地域が起点となる商品・サービスの拡充を図ることで、小売業態を中心とした集客及び収益性の向上に努めました。海外においては、小売の市場規模が拡大を続ける中国や、東南アジア諸国連合経済共同体(AEC)の発足により、一段の経済成長が見込まれる同地域での市場開拓を進め、グループの持続的成長に寄与する事業基盤の強化に努めました。これらの取り組みの結果、当社及び連結子会社295社の連結営業収益は過去最高となる8兆1,767億32百万円(前期比115.5%)となり、連結営業利益は1,769億77百万円(同125.2%)、連結経常利益は1,796億74百万円(同117.8%)と、いずれも昨年を上回る業績となりました。当期純利益につきましては、法人税等及び少数株主利益の増加が主な要因となり、60億8百万円(同14.3%)となりました。
また、当社は絶えず革新し続ける企業集団としてグループ各事業・企業がそれぞれの業界・地域でナンバーワンへと成長し、競争力ある事業・企業が有機的に結合することにより高いシナジーを創出する企業集団へと進化するべく、グループ共通戦略並びに構造改革を引き続き推進しました。
<グループ共通戦略の推進>イオン㈱及びイオンモール㈱は平成27年5月、インドネシアの首都ジャカルタの南西部に位置するBSD地区に、当社グループの同国1号店となる地域最大級SC(ショッピングセンター)「イオンモール BSD CITY」を開設しました。その他のアセアン地域においても、平成27年10月、ベトナムの首都ハノイにおける同国3号店「イオンモール Long Bien」を開設したほか、イオンタイランド(AEON(Thailand)CO.,LTD.)が同月、タイのチョンブリ県に初の自社開発コミュニティモールとなる「イオンシラチャ SC」を開設する等、新規市場の開拓や消費の潜在需要を掘り起こす新たな取り組み等に努め、事業基盤を強化しました。
イオンリテール㈱は平成27年3月、東京・埼玉・千葉県下に小型DS(ディスカウントストア)を展開する「アコレ」、及びSCを中心に事業展開する雑貨専門店「R.O.U」をそれぞれ分社化しました。お客さまのライフスタイルの変化やニーズへの迅速な対応を強化する機動的な組織体制のもと、都市部におけるドミナント形成の早期確立を図りました。
ウエルシアホールディングス㈱及び㈱CFSコーポレーションは平成27年9月、㈱CFSコーポレーションを完全子会社とする経営統合を実施しました。超高齢化が進む中、両社が有する調剤事業の強みを活かし、高い将来性が見込まれる調剤分野のシェア獲得に向け、調剤併設店舗の増設を全国各地で進めました。
<グループ構造改革>当社は、多様化する消費者ニーズへの迅速な対応、及び従来以上に地域密着に徹した商品調達や品質向上の実現を目指し、平成27年6月、イオン商品調達㈱の機能をイオンリテール㈱に移管しました。
イオンモール㈱は平成27年11月、㈱ダイエーの子会社で商業施設の開発・管理運営を行う㈱OPAとイオンリテール㈱が有するビブレ・フォーラス事業部との統合により誕生した新生㈱OPAを平成28年3月1日付で完全子会社化することを決定しました。同社は「都市シフト」の一翼を担う企業として既存施設の活性化やビジネスモデルの革新等を図り、魅力ある都市型商業施設づくりを進めます。
㈱光洋及びイオンマーケット㈱は平成27年12月、京阪神地区における地域密着経営を一層推進するべく、同地区で運営する両社の店舗を統合し、平成28年3月1日付で㈱光洋に承継しました。これにより、イオンマーケット㈱は首都圏での事業運営に特化し、高付加価値商品と生鮮・デリカを強化した都市型店舗フォーマットへの革新を図ります。
セグメントの業績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の区分により作成した情報に基づいて記載しております。
① GMS事業
GMS事業は、営業収益2兆8,382億39百万円(前期比105.9%)、営業利益93億90百万円(同80.9%)となりました。
同事業では、イオンリテール㈱、イオン北海道㈱、及びイオン九州㈱が平成27年9月、㈱ダイエーが有するGMS事業の一部38店舗の運営を承継し、国内各地域で「ベストローカル」の実現を目指す新たな体制へ移行しました。
イオンリテール㈱は、革新性ある商品の開発、商品価値を訴求する販促企画の展開、及び新業態「イオンスタイル」を中心とした既存店舗の活性化に取り組み、中でも「イオンスタイル」の早期展開を推し進めることで、店舗の競争力及び収益性を高めました。加えて、地域密着経営のさらなる深耕に向け、商品部を中心とした各カンパニーへの人材配置や権限委譲を強めたほか、品揃えや商品開発、セールスイベント等においても地域を主眼に充実させ、他社との差別化を図るサービスや売場づくりに努めました。11月度の記録的な暖冬影響を受け、同社の当期既存店売上高は対前期比99.7%(内訳は、衣料98.1%、食品100.3%、住居余暇99.3%)となりましたが、直営荒利益率については、売場人員の拡充等の現場力を強化した体制での店舗運営等が奏功し、前期実績を0.3ポイント上回りました。また、既存店販管費については、集客施策の強化に向けた販促活動を積極的に実施したものの、堅実な経費コントロールに努めた結果、対前期比99.4%となりました。
イオン北海道㈱は、地域経済の活性化に寄与する新規出店や既存店舗の活性化、並びに規模の成長が著しいインバウンドやインターネット市場での事業展開を強化しました。また、㈱ダイエーから承継した店舗において、両社の強みを融合した売場づくりを行うとともに、函館市等の未出店地域への事業展開を図り、北海道地域におけるシェアを拡大しました。
イオン九州㈱は、収益力の向上を目指し、九州各県との協働による特産品フェアの開催、同地域の多様な食文化を反映した品揃えの拡充等、地産地消・地産域消への取り組みを推進しました。さらに、地域素材の活用と地元に根付いた九州独自の商品開発を進めるため、同じく九州地域で事業展開するマックスバリュ九州㈱及び㈱レッドキャベツとの間で「九州商品開発部」を新たに発足しました。
② SM・DS事業
SM・DS(ディスカウントストア)事業は、営業収益3兆532億98百万円(前期比120.9%)、営業利益211億57百万円(前期より267億32百万円の増益)となりました。
同事業では、マックスバリュ北海道㈱及びマックスバリュ九州㈱が平成27年9月、㈱ダイエーが有するSM事業の一部21店舗の運営を承継し、国内各地域で「ベストローカル」を推進する新たな体制となりました。
㈱ダイエーは平成27年9月、GMS事業及びSM事業59店舗の運営をグループ各社に承継し、食品への特化と展開地域の首都圏・京阪神地域への集中を図りました。この新体制のもと、都市部居住者向け食品スーパー「都市型SM」や都市型戦略業態「フードスタイルストア」等の新業態の開発並びに展開を進め、早期の業績回復を図りました。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱は平成27年3月、㈱マルエツ、㈱カスミ及びマックスバリュ関東㈱の共同持株会社として新たに事業運営を開始しました。3社による共同調達の拡大や共同販促の定期開催、経営効率の改善を図る後方機能の集約等に取り組み、基本方針とする「統合シナジーの創造」の具現化と業績の向上を図りました。また、各社において地域・商圏特性に合わせた品揃えの拡充や店舗の改装・リニューアル等、事業競争力を高める取り組みを推進し、業績を大幅に伸ばしました。
マックスバリュ北海道㈱は平成27年10月、十勝エリアを地盤とする㈱いちまるのSM事業を承継し、北海道エリアでの展開地域を拡大しました。同社は、既存店舗の営業力強化を方針とし、大型改装を含めた8店舗の改装に取り組むとともに、地域密着をさらに深耕する店舗運営の実現に向け、新たに「苫小牧エリア商品部」を設置しました。これらの構造改革に加え、デリカ部門を中心とした品揃えの拡充や曜日市での販売強化、「WAON」会員の拡大キャンペーン等を継続的に推進した結果、客数・客単価は前期を大きく上回り、売上高が前期比113.5%と順調に推移しました。
③ 小型店事業
小型店事業は、営業収益3,769億13百万円(前期比121.5%)、営業利益12億65百万円(同70.6%)となりました。
ミニストップ㈱は、こだわりの原材料を使用したプレミアムシリーズ等の好調によりコールドスイーツ商品が過去最高の販売数を記録したほか、コンビニエンスストア商品では、リニューアルしたチルド弁当を中心に米飯類の販売数を伸ばし、国内の既存店日販昨対は100.6%と堅調に推移しました。
海外では、韓国をはじめ、既事業展開国におけるドミナント出店を進め、当連結会計年度末の海外店舗数を2,840店舗まで拡大しました。
また、韓国ミニストップ(MINISTOP KOREA CO.,LTD.)が、決算日変更に伴い当連結会計年度における会計期間が14ヶ月となったこと、及びたばこ増税の影響により、営業収益を伸ばしました。
④ ドラッグ・ファーマシー事業
ドラッグ・ファーマシー事業は、営業収益5,923億64百万円(前期比231.7%)、営業利益185億89百万円(同264.7%)となりました。
ウエルシアホールディングス㈱は、業種・業態の垣根を越え競争が激しさを増すドラッグ業界において、事業基盤の強化及びスケールメリットの創出を一層進めるべく、関西地区を基盤に事業展開するタキヤ㈱及びシミズ薬品㈱を平成27年3月1日付で完全子会社化しました。また、当社の連結子会社である㈱CFSコーポレーションを平成27年9月1日付で完全子会社化し、商品政策や物流拠点、POSシステム、販促施策等の統合準備を進めました。事業面では、需要が高まる調剤薬局の併設店の増加やカウンセリング営業の強化に加え、「24時間営業店舗」、買物中の高齢者や育児中の方々に憩いの空間を提供するカフェスペース「ウエルカフェ」を新たに導入する等、お客さまニーズや利便性への対応強化に努め、業績を順調に拡大しました。
⑤ 総合金融事業
総合金融事業は、営業収益3,572億52百万円(前期比108.3%)、営業利益550億27百万円(同103.7%)となりました。
イオンフィナンシャルサービス㈱は、カード会員のさらなる獲得に向け、店舗におけるタブレット端末を活用した入会手続きの簡便化や審査プロセスの見直しを行い、カード発行期間の短縮化に努めました。また、公共料金や保険料、また携帯料金の支払い等、クレジットカードの強みを活かせる生活インフラの分野を中心にカード決済の利用促進を図りました。
銀行業においては、各支店において、さらに便利で分かりやすいサービスを提供するべく、タブレット端末やデジタルサイネージ等を活用したペーパレス化の推進、またインターネットバンキングが利用可能となるスペースの拡充を進め、オペレーション効率を向上させました。
電子マネー事業では「WAON」加盟店の拡充に加え、ご利用金額の0.1%相当額を自治体等へ寄付する「ご当地WAON」や、サッカーを通じて地域振興を促進する「サッカー大好きWAON」の発行等、地域に根ざした活動を継続的に実施し、当期末における電子マネー「WAON」の累計発行枚数を約5,608万枚、取扱高を2兆592億円(前年同期比106.9%)と大幅に伸長させました。
海外事業では、香港、タイ、及びマレーシアの海外主要3社を中心に提携企業との共同販促を進め、カード会員数の拡大及び利用促進を図ると同時に、債権管理における重複部門の統合等を実施し、業務効率の改善と体制強化に努めました。
⑥ ディベロッパー事業
ディベロッパー事業は、営業収益2,721億24百万円(前期比111.2%)、営業利益450億68百万円(同106.5%)となりました。
イオンモール㈱は、国内では、中部国際空港に近接したインバウンド対応強化型SC「イオンモール常滑」を含む5箇所のSC開設及び既存SC12箇所のリニューアルを実施しました。
同社は、社会行事に対応した販促企画の展開や地域密着となるイベント開催等を国内の各既存SCで推し進めたほか、商圏変化に対応した新規テナントの導入や既存テナントのリニューアルを実施し、集客力の向上を図りました。
海外では、中国・アセアン地域で業績が好調に推移する既存SCの集客をさらに高める施策に取り組むとともに、中国で6SC、アセアン地域で2つのSCを新たに開設しました。特に、中国においては、都市開発が進む副都心エリア「武漢経済技術開発区」や、蘇州市経済を牽引する地域「蘇州市高新技術開発区」等、経済成長やモールビジネスの市場拡大が期待される地域での事業展開を進め、ドミナントの形成を図りました。
⑦ サービス・専門店事業
サービス・専門店事業は、営業収益7,412億65百万円(前期比105.2%)、営業利益263億20百万円(同107.0%)となりました。
イオンディライト㈱は、総合FMS(ファシリティ・マネジメント・サービス)の拡大に向け、病院・介護施設を中心に管理受託数を大幅に増加させたほか、同分野での競争優位性をさらに高めるべく、清掃ロボットの実用化、並びにセンサーや無線通信等の通信技術を活用した設備管理サービスへの取り組みに着手しました。海外においては、中国における中核子会社を中心とした組織再編を実施し、マレーシアでは、清掃事業の強化を目的に地場の有力企業と業務提携を行いました。同社は6期連続の増収及び12期連続の増益と、いずれも過去最高の業績となりました。
㈱イオンファンタジーは平成27年6月、㈱ダイエーの子会社である㈱ファンフィールドと統合し、店舗数及び売上高が業界ナンバーワンの規模となるアミューズメント施設運営企業となりました。当期は、仕入物流体制の改善、社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用等により、既存店における遊戯機械の売上高が好調に推移したほか、店舗の積極的な活性化が奏功し、国内事業の売上高は昨年比121.1%と大幅に伸長しました。また、海外事業における順調な業績推移も下支えとなり、同社は2期連続となる増収増益を達成しました。
㈱ジーフットは、新たなマーケット創造に向け、新業態開発プロジェクトの発足、及びブランド企画部設置等の組織再編を行い、平成27年11月10日、東京証券取引所市場第一部への新規上場とともに名古屋証券取引所における市場第一部への市場替えを実施しました。新業態の確立に向け、ジェンダー別・機能別売場の構築等、消費者視点を軸に店舗の改装を進めました。加えて、収益性を一層高めるため、PB(プライベートブランド)商品や各メーカーとの独自商品の開発促進、商品本位となるプロモーションへの注力による正価販売比率の向上等に取り組み、増収増益となりました。
⑧ 国際事業(連結対象期間は主として1月から12月)
国際事業は、営業収益4,264億82百万円(前期比112.9%)、営業損失24億49百万円(前期より78億4百万円の減益)となりました。
アセアン地域では、インドネシアの首都ジャカルタ南西部に当社グループ初の同国GMS「イオンBSD CITY店」をはじめ3店舗を開設したほか、ベトナムにおいては平成27年1月、現地でSM企業を運営するFIVIMART社及びCITIMART社との資本・業務提携に合意し、同地域での事業展開を加速しました。
中国では、新たな事業展開エリアとして杭州に1号店を出店する等5店舗を開設し、事業基盤を強化するとともに、収益性の改善に向け、日本で開発した商品の販売や業務の効率化を推し進めました。
なお、上記の金額及びこれ以降に記載している売上高、仕入高等には消費税等は含まれておりません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の期末残高は、前連結会計年度末に比べ776億39百万円減少し、7,005億11百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は431億56百万円(前期比10.8%)となりました。前連結会計年度に比べ3,552億97百万円減少した主な要因は、売上債権の増減額が822億30百万円減少し資金が増加した一方で、銀行業における貸出金の増減額が600億9百万円増加し、前連結会計年度末日が銀行休業日の影響等で仕入債務の増減額が1,727億59百万円、預り金等のその他の資産・負債の増減額が1,728億25百万円それぞれ減少し資金が減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は4,466億12百万円(前期比123.4%)となりました。前連結会計年度に比べ847億74百万円支出が増加した主な要因は、固定資産の取得による支出が828億51百万円増加したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、増加した資金は3,133億44百万円(前期比328.0%)となりました。前連結会計年度に比べて2,178億16百万円増加した主な要因は、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増減額が1,402億61百万円、長期借入れによる収入が1,480億3百万円それぞれ増加し資金が増加した一方で、長期借入金の返済による支出が603億72百万円増加し資金が減少したこと等によるものです。