有価証券報告書-第90期(平成26年3月1日-平成27年2月28日)

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2015/05/28 12:15
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業績等の概要

(1) 業績
当期は、政府の景気対策効果や円安進行に伴い大企業製造業の収益に改善が見られる等、国内経済は緩やかな回復基調となりました。一方、消費税増税や物価上昇を背景に生活必需品に対する購買意欲の冷え込みが続く等、国内の消費回復は鈍く、小売業を中心に事業展開する当社の経営環境は厳しい状況となりました。
このような環境の中、当社は、低価格で食品・日用品を提供する販促企画や「トップバリュ」約5,000品目における本体価格の値下げ等、価格優位を実現する施策に取り組むとともに、地域生産者との協働による地元産品の拡充により、地域密着を深耕する催事企画「じものの日」を全国2,000店舗で開始し、グループの市場競争力向上に努めました。加えて、厳しさが続く小売業態の収益性向上のため、㈱ダイエーの完全子会社化を契機に両社の規模を活かした合同セールや「お客さま感謝デー」の開催拡大のほか、年間最大の商戦となる年末年始には、全国のGMS(総合スーパー)及びSC(ショッピングセンター)内の専門店を合わせた約30,000店舗において、週替わりで新商品・サービスを提案する「サプライズ!10WEEKS」を実施する等、スケールメリットを発揮する販促企画を推し進め、集客を図りました。これらの取り組みの結果、当社及び連結子会社284社の連結営業収益は過去最高となる7兆785億77百万円(前期比110.7%)、連結営業利益は1,413億68百万円(同82.5%)、連結経常利益は1,525億9百万円(同86.2%)、当期純利益は420億69百万円(同92.3%)となりました。
また、イオングループ中期経営計画(2014~2016年度)の初年度である当期は、グループ共通戦略の「アジア」「都市」「シニア」「デジタル」の「4シフトの加速」及び「商品本位の改革」の推進、並びに、それら成長戦略を支える新たな基盤構築に向け、国内外で事業・組織再編を実施しました。
国内では、「シニアシフト」を牽引するドラッグ・ファーマシー事業において、平成26年10月、当社は、ウエルシアホールディングス㈱(以下、ウエルシアHLDSという。)及び㈱CFSコーポレーションと、日本一のドラッグストアチェーンの構築を目指す「経営統合に関する基本合意書」を締結しました。また、シナジー効果を最大限に創出する強固な連携の確立を目的に、ウエルシアHLDSに対して普通株式の公開買い付けを行い、平成26年11月、同社を新たに連結子会社としました。さらに、平成26年10月、当社は「都市シフト」の一層の深化に向け、共同持株会社となる「ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱の設立に関する経営統合契約」を丸紅㈱、及びSM(スーパーマーケット)企業3社(㈱マルエツ、㈱カスミ、マックスバリュ関東㈱)との間で締結しました。同SM企業3社が培ってきた経営ノウハウを融合し、成長市場と期待される首都圏でのエリア・ドミナンスを推し進め、同圏ナンバーワンとなるSM企業を目指します。
海外では、平成26年6月、イオンモールカンボジア(AEON MALL(CAMBODIA)CO.,LTD.)及びイオンカンボジア(AEON(CAMBODIA)Co.,Ltd.)が、カンボジアでは当社グループ初出店となる「イオンモールプノンペン」を開設する等、経済成長著しいアセアンでの事業展開を進めました。ベトナムにおいては、スピードある成長を実現するべく、南部最大の都市ホーチミン市を拠点にSM事業を展開するCITIMART社に続き、平成26年11月には首都ハノイ市最大のSM企業FIVIMART社と資本・業務提携の合意に至りました。
「商品本位の改革」については、イオンのブランド「トップバリュ」の認知度の向上を目的に、「トップバリュ」「トップバリュ セレクト」及び「トップバリュ ベストプライス」からなる「トップバリュ」3層構造、並びにオーガニック商品等を提供する「トップバリュ グリーンアイ」の4つの体系に集約し、それぞれの深化を図るとともに、お客さまの“いま”のニーズに対応する商品開発・提供に努めました。とりわけ、「トップバリュ グリーンアイ」オーガニックシリーズについては、需要が高まりつつあるオーガニック市場でのいち早いシェア獲得に向け、その品目数を国内大手小売業のPB(プライベートブランド)では最大となる120品目まで拡大し、全国のグループ約4,000店舗にて商品展開しました。これらの取り組みにより、当期のグループ全体の「トップバリュ」売上高は、7,799億円(対前期比105.2%)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較は変更後の区分により作成した情報に基づいて記載しております。
① GMS事業
GMS事業は、営業収益3兆3,555億84百万円(前期比109.9%)、営業損失16億46百万円(前期より366億85百万円の減益)となりました。
イオンリテール㈱は、高収益体質への転換を目指し、「トップバリュ」商品の拡充や、専門性の高い品揃えやサービスを提供する「売場の専門店化」、及び店舗競争力を高める「既存店舗の活性化」に引き続き取り組みました。これらGMS改革の推進に加え、「イオンカード」やイオンの電子マネー「WAON」を活用した全国一斉セールを開催する等、集客効果を高める販促活動にグループ一体となって取り組んだほか、免税制度改正に伴う各種インバウンド対応サービスの拡充や、日豪経済連携協定の発効を踏まえた関税引き下げ先取りセールを全国のGMS「イオン」約400店舗で先行して開催する等、社会・経済情勢の変化に伴い消費拡大が見込まれるマーケットへの対応を強化しました。しかしながら、消費税増税後の消費回復の遅れが長期化したことに加え、集中豪雨や台風等の天候要因も影響し、当期における既存店売上高は、対前期比97.2%(内訳は、衣料95.5%、食品97.5%、住居余暇97.6%)となりました。直営荒利益率については、天候要因による季節商材への影響や、円安進行に伴う原材料価格の高騰等により、前期実績を0.5ポイント下回りました。また、既存店販管費については堅実な経費コントロールに努めたものの、集客施策の強化に向けた販促活動を積極的に実施したこと等から、対前期比100.7%となりました。
② SM・DS・小型店事業
SM・DS(ディスカウントストア)・小型店事業は、営業収益2兆1,612億66百万円(前期比109.8%)、営業利益84億95百万円(同47.7%)となりました。
マックスバリュ北海道㈱は、誕生40周年を迎えるイオンのブランド「トップバリュ」や曜日市での販売強化、さらに、商圏特性やお客さまニーズに対応した品揃えや売場づくりが奏功し、営業利益、経常利益、及び当期純利益はいずれも過去最高となりました。
マックスバリュ東海㈱は、「WAON」会員拡大キャンペーン等を充実させ、消費税増税後に高まる節約志向への対応強化に努めたほか、お客さまの人口動態やライフスタイル変化に応じ、小容量の惣菜等をはじめとする簡易・簡便食品の品揃え拡充や、グループ共通企画「じものの日」での地域対応を促進し、収益を拡大しました。
マックスバリュ西日本㈱は、競争環境の変化や、エリア・店舗特性に応じた既存店舗の活性化を進めるとともに、共同仕入れの推進や水産加工センターの新たな操業と店舗への商品供給の開始等、商販一体となる取り組みに注力した結果、業績は好調に推移しました。
③ 総合金融事業
総合金融事業は、営業収益3,297億76百万円(前期比115.4%)、営業利益530億58百万円(同129.8%)となりました。
イオンフィナンシャルサービスグループでは、クレジット事業において、今後の消費活動を牽引する若年層の顧客層拡大を図るため、人気キャラクターのデザインを使用した「イオンカード」の発行を開始するとともに、グループのSC内を拠点に金融サービスをワンストップで提供する「暮らしのマネープラザ」において、タブレット端末を活用した入会手続きの簡便化などを図ったことで、カード会員数が増加しました。
銀行業では、「暮らしのマネープラザ」やATMの新設等により営業ネットワークを拡充したほか、住宅ローン契約者を対象とする限定割引特典「イオンセレクトクラブ」や預金の特別金利プランの告知強化を図る等、業容拡大に努めました。また、新たな取り組みとして、訪日・在日外国人のお客さまの利便性向上を目的に、ICカード取引の国際標準規格を日本で初めて取得し、イオン銀行ATMにおいて、海外で発行されたクレジットカードやキャッシュカードで日本円の引き出しが可能となるサービスを開始しました。
電子マネー事業では、㈱イオン銀行において、WAON、クレジットカード、銀行キャッシュカードが一体となった「イオンカードセレクト」をはじめとしたWAON一体型カードの発行を推進するとともに、イオンクレジットサービス㈱では、ウエルシアHLDSやタクシー業界において新たに「WAON」決済サービスを導入する等、加盟店のネットワーク拡充に努めた結果、当期末の「WAON」累計発行枚数は約4,815万枚、取扱高は約1兆9,261億円(対前期比122.1%)と順調に増加しました。
海外事業では、タイにおいて、同国で電子マネー事業を展開するBTSグループホールディングスとの事業提携により、電子マネー一体型カード「AEON Rabbit Member Card」の発行を開始しました。また、インドネシアでのカード会員募集や加盟店ネットワークの拡充、カンボジアにおけるクレジットカード事業の開始に向けた準備等、アセアンでの業容拡大を着実に進めました。
④ ディベロッパー事業
ディベロッパー事業は、営業収益2,496億54百万円(前期比113.6%)、営業利益432億47百万円(同99.7%)となりました。
イオンモール㈱は、国内では西日本最大級のSC「イオンモール岡山」を含む7箇所のSC開設、及び既存SC8箇所のリニューアルを実施しました。国内では、グループ合同となる全国一斉セールに加え、「イオンカード」や「WAON」を活用した販促企画の展開等、グループインフラを活用した施策を中心に集客の向上を図りました。中国では、江蘇省蘇州市において、平成26年4月、地域最大級の商業施設「イオンモール蘇州呉中」を初出店したほか、湖北省では、武漢市人民政府との協力協定に基づき、同省初出店となる「イオンモール武漢金銀潭」を平成26年12月にオープンしました。アセアンでは、収益基盤の拡大に向け、平成26年6月、同社が初めて事業を展開するカンボジアの首都プノンペンに「イオンモール プノンペン」を新設しました。ベトナムでは、イオンモール㈱の現地法人であるイオンモールビンズオン(AEON MALL BINH DUONG CO.,LTD.)が、同国の日系企業で初めてマスターリースライセンスを取得し、イオンベトナム(AEON VIETNAM CO.,LTD.)が開設した「イオンモール ビンズオンキャナリー」の管理業務を開始しました。
⑤ サービス・専門店事業
サービス・専門店事業は、営業収益7,049億21百万円(前期比102.0%)、営業利益245億97百万円(同105.3%)となりました。
イオンディライト㈱は、総合FMS(ファシリティマネジメントサービス)事業の拡大を目指し、イオングループの商業施設へのサービス提供とともに、都心の複合型ビルやホテル、医療施設等、グループ外の施設に対する管理業務の受託を積極的に推進しました。中でも、市場の拡大が見込まれる医療・介護分野では、医療施設向けの衛生清掃モデルを新たに構築する等、競争優位の確立とともに、これらの営業活動を強化しました。こうした取り組みが奏功し、同社は5期連続の増収及び11期連続の増益となりました。
㈱イオンファンタジーは、国内においてグループ内外の商業施設へ積極的な出店を進めたことに加え、中国、マレーシア、タイ、及びフィリピンにおいて直営店舗の出店を進め、収益基盤の拡大を図りました。さらに、遊戯機械の海外調達の拡大や、景品原価の適正化によるコスト削減に努めた結果、増収増益となりました。
㈱コックスは、基幹ブランド「ikka」を中心に、メンズ部門の強化に向け、テーラードジャケットを基軸としたビジネスカジュアルや上質なバッグ・革小物等の雑貨商品を拡充したほか、新製品や季節商品の適宜導入を図り、収益を向上しました。さらに、年間を通じて堅実な経費コントロールに努めた結果、業績は大幅に改善しました。
㈱ジーフットは、靴に関する知識・技能を習得したフィッティングアドバイザーを増員する等、幅広い顧客ニーズに対応する接客サービスの向上に取り組むとともに、マスメディアを通じた販促活動やグループが運営するSCへの積極的な出店、さらには、米国を代表するスニーカーブランド・ワークウェアブランドと靴に関するライセンス契約を締結し、国内で独占販売を開始しました。これらの取り組みが奏功し、同社の営業収益及び営業利益はいずれも過去最高となりました。
⑥ アセアン事業(連結対象期間は主として1月から12月)
アセアン事業は、営業収益2,092億17百万円(前期比115.2%)、営業利益61億73百万円(同93.5%)となりました。
イオンマレーシア(AEON CO.(M)BHD.)は、「イオンカード」会員へのキャッシュバックキャンペーンやダブルポイント付与等の販促企画の強化や、衣料品を中心に現地で企画・開発した「トップバリュ」商品の拡販により、収益を拡大しました。
イオンビッグマレーシア(AEON BIG(M)SDN.BHD.)は、イオンクレジットサービス(マレーシア)(AEON CREDIT SERVICE(M)BERHAD)とカード会員を対象とした販促企画を共同で展開し、集客の増加に努めました。さらに、イオンマレーシアとの共同仕入れや物流施設の共同利用を開始する等、経営効率の改善を進め、収益を向上しました。
また、イオンカンボジアが、カンボジア初出店となる総合スーパー「イオンプノンペン店」を平成26年6月にオープンしました。ベトナムにおいても、イオンベトナム(AEON VIETNAM CO.,LTD.)が、同国ホーチミン市に初出店となる総合スーパー「イオンタンフーセラドン店」を平成26年1月に開設したほか、同年11月には、2号店「イオンビンズオンキャナリー店」を開設する等、新規エリアへの事業展開を順調に進めました。
⑦ 中国事業(連結対象期間は1月から12月)
中国事業は、営業収益1,684億95百万円(前期比115.8%)、営業損失8億18百万円(前期より9億46百万円の改善)となりました。
中国では、イオン湖北(AEON(HUBEI)CO.,LTD.)が、湖北省武漢市に同省初出店となる総合スーパー「イオン武漢金銀潭店」を、青島イオン(青島永旺東泰商業有限公司)が、同国東部沿岸の経済・文化の中心都市である青島市に「イオン合肥路SC」を、それぞれ平成26年12月に開設しました。
イオンストアーズ香港(AEON STORES(HONG KONG)CO.,LTD.)は、新規出店を順調に進めたほか、「安全・安心」志向に応える「トップバリュ」商品の拡販やローコストオペレーション等に注力した結果、収益が順調に回復しました。
なお、上記の金額及びこれ以降に記載している売上高、仕入高等には消費税等は含まれておりません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ1,450億27百万円増加し、7,781億51百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は3,984億53百万円(前期比82.5%)となりました。前連結会計年度に比べ843億12百万円減少した主な要因は、売上債権の増減額が1,242億4百万円、その他の資産・負債の増減額が771億88百万円、仕入債務の増減額が722億99百万円それぞれ増加した一方で、銀行業における預金が3,107億28百万円、減価償却費等の非資金性費用等を除いた税金等調整前当期純利益が305億14百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は3,618億38百万円(前期比163.3%)となりました。前連結会計年度に比べ1,402億16百万円支出が増加した主な要因は、固定資産の売却による収入が1,147億30百万円減少し、固定資産の取得による支出が601億35百万円増加したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、増加した資金は955億27百万円(前期は678億6百万円の資金の減少)となりました。前連結会計年度に比べて1,633億34百万円増加した主な要因は、社債の発行による収入が1,387億13百万円、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増減額が689億5百万円それぞれ増加したこと等によるものです。