有価証券報告書-第71期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/21 13:23
【資料】
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【項目】
167項目

対処すべき課題

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2020年5月に長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]とともに、2020年度から2022年度までの中期経営計画(2020-2022)[ D.C. 2022 ](以下、「前中期経営計画」という。)を発表し、この前中期経営計画において、1.基幹事業の質的成長による収益の拡大、2.基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化、3.経営・事業基盤の強化、4.社会的価値の実現、の4つを基本方針とし、これに基づく個別施策を着実に実行してまいりました。前中期経営計画期間は、新型コロナウイルス感染症の影響が経済・社会活動に大きく影響を及ぼした3ヵ年であり、市場は大きく落ち込みましたが、長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]及び前中期経営計画により、当社グループの事業基盤や収益力は大きく拡大・強化されたと捉えております。
一方、世界経済は新型コロナウイルス感染症の影響から脱したとはいえ、格差の拡大、地政学的不安定性の増大、地球温暖化への対応の緊急性の高まり、金融情勢の不安定化等の不確実性、不透明性がますます高まっております。
このような状況をふまえ、当社グループとして改めて長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]を見直すとともに、長期的な成長に向けた新中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]を策定いたしました。
■Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]
長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]では“サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ”を目標に掲げ、スペースクリエーション企業へ転換するためのアプローチを明示し、取り組むこととしておりますが、このベースとなる基本的な考え方、戦略に変更はありません。しかしながら、前中期経営計画期間中の施策面、収益面の進捗をふまえ、長期ビジョン達成へのアプローチの文言を一部変更し、スペースクリエーション企業像の明確化と、さらにその先の事業の考察を行うと同時に、2022年度決算において長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]の収益目標を達成したことから、新たな定量目標を設定いたしました。
1.2030年に目指すビジョン
“サンゲツグループはスペースクリエーション企業へ”
2.目指すスペースクリエーション企業像
人的資本とデジタル資本を基盤としたデザイン力とクリエイティビティによる4機能、すなわち
・それぞれの市場に最適なコンセプトに基づく魅力的な空間デザイン提案機能
・高度な企画・開発・調達力を持ち、広範囲な商品を提案するスペース材料提供機能
・品切れなく広域に即時配送を可能とする在庫・配送・物流機能
・さまざまな事業、人的関係、企業連携を通じての規模と総合性・機動性のある施工機能
を有機的にインテグレートしたソリューション力により、グローバルにスペースクリエーションに関する高い価値を提供する企業
3.長期ビジョン達成の基本戦略
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この基本戦略によるビジョンの達成を通じ、私たちは、次の社会的価値の実現を目指します。
[サンゲツグループが実現を目指す社会的価値]
サンゲツグループは、
Inclusive(みんなで):平等で健康的なインクルーシブな社会の実現
Sustainable(いつまでも):地球環境を守るサステイナブルな社会の実現
Enjoyable(楽しさあふれる):より豊かでエンジョイアブルな社会の実現

社会の実現に貢献します。
[定量目標]
2030年3月期連結売上高2,500億円
連結営業利益270億円

[スペースクリエーション企業、さらにその先へ]
2020年5月に長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]と前中期経営計画を発表し、その後推進する中で、スペースクリエーション企業へと転換することによる収益基盤の拡大と、収益の安定性を確認する一方、日本市場の量的限界を再認識し、さらなる大きな成長のためにはスペースクリエーション企業に留まらず、さらに事業を展開していく必要性も認識いたしました。スペースクリエーション企業として、人々によろこびとやすらぎをもたらす空間をデザインし、提案し、提供するためには、その空間での人々の過ごし方を考え、構想することが必要となります。すなわち、スペースクリエーションとはどのような空間を提供するのか、空間をどのように人々に使っていただくかを考えることであり、これは空間のオペレーションがいかに行われるかを考察することに繋がっていると認識しております。
その意味において、スペースクリエーション事業の先には空間のオペレーション事業の可能性があると考えており、今後スペースオペレーション事業への展開の可能性の検討を進めてまいります。
■中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ] ※BX=Business Transformation
前中期経営計画期間中にさまざまな施策を進めた結果として、2022年度には収益の大幅な伸長を達成いたしましたが、前中期経営計画の施策の進展以上の収益の拡大となったとも理解をしております。その意味において、中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]の3年間は前中期経営計画を引き継いで収益基盤を堅固なものとし、次の飛躍に備える期間と位置付けております。長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]にて明確化した、目指すべきスペースクリエーション企業像の確実な実現に向けての諸施策を実行するとともに、スペースクリエーション事業のプラットフォームにおいて、従来の主要商品・主要市場での拡張のみならず、商品面での拡充、海外市場の強化・拡大・収益化、エクステリア事業の拡大・高度化を実行いたします。この中期経営計画(2023-2025)[ BX
2025 ]の基本方針、施策、資本政策、定量目標を以下のとおりといたします。
1.基本方針
中期経営計画(2023-2025)
[ BX 2025 ]
-次の飛躍に備える3年間-
スペースクリエーションの価値を高めるソリューション力を強化・拡充し、強固な収益力と成長力を持つスペースクリエーション企業へと転換、主要商品・市場の事業拡張に加え、商品の拡充、エクステリア事業・海外事業の拡大を実行する。
また、さらなる長期的成長を可能ならしめる事業を展開するべく、スペースオペレーション事業の可能性を検討する。
2.施策
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3.資本政策
1)株主還元方針
・2026年3月末の自己資本を950~1,050億円とする
・株主還元は配当を主体とし、1株当たり年間配当金は130円を下限に、安定的な増配を目指す
・市場の状況により自己株式の取得も検討する
2)資金配分計画
中期経営計画期間中資金創出資金配分
期初保有現金同等物270億円成長投資200~250億円
営業CF470~510億円株主還元250~350億円
借入金増減▲80~60億円期末現金同等物200~250億円

4.定量目標(2026年3月期目標)
1)経済価値
① 連結売上高1,950億円
② 連結営業利益205億円
③ 連結当期純利益145億円
④ ROE14.0%
⑤ ROIC14.0%
⑥ CCC65日

2)社会価値
①地球環境
GHG排出量連結2021年度比 28%削減
GHG排出量単体2018年度比 60%削減
使用エネルギー量単体2018年度比 6%削減
リサイクル率(有効利用率)単体90%以上

②人的資本
非喫煙率単体85%以上
やりがい指数(社員意識調査における“仕事のやりがい肯定率”)単体77%以上
女性管理職比率単体25%以上(2026年4月時点)
障がい者雇用率単体4%以上(2026年3月末時点)
キャリア採用者数単体3年間合計 60~80名
人的資本投資額単体3年間合計 7億円
男性育休取得率単体2週間以上 100%

③社会資本
児童養護施設改修活動連結50件/年間
マッチングギフト連結18,000 S-mile
外部団体への寄付を含めた
社会貢献活動費
連結年間経常利益の0.3%~0.5%を目途とし、寄付は特定の団体に継続的に実施する

なお、前中期経営計画(2020-2022)[ D.C. 2022 ]のレビュー及び新中期経営計画(2023-2025)[ BX
2025 ]の詳細につきましては、当社Webサイトにて、説明動画及び資料を公開しております。
https://www.sangetsu.co.jp/company/ir/library/briefing_report.html
(2)経営戦略等、経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
経営環境における今後の見通しにつきましては、地政学的リスクの高まりによるサプライチェーンの混乱や、これを一因とするエネルギー資源・原材料価格の高騰が継続することが予想される一方、金融面での不透明性、不確実性が拡大しており、これに先進国での政治的混乱が加わることにより、実体経済にも大きな影響を与えることを懸念しております。当社事業に関連の深い国内建設市場では、住宅市場においては、コロナ禍からの回復傾向に一服感が見られ、横ばいが続くものと予想されます。非住宅市場においては、経済活動の再開によるホテル・宿泊施設等の回復や、首都圏におけるオフィスリニューアル市場の高まりといった期待要因がある一方、原材料価格や物流費等の高騰が継続しており、コスト・調達面における厳しい状況が予想されます。
このような状況の中、当社グループは、前述「(1)経営方針、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に掲げるSangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]及び3ヵ年の中期経営計画(2023-2025)[ BX 2025 ]を着実に実行することにより、商品販売だけでなく配送力・提案力・施工力といった機能をインテグレートしたソリューション力を強化し、内装材の販売から「スペースクリエーション企業」への進化を図ります。そのために、人的資本の拡大・高度化・活躍支援や、デジタル資本の蓄積・分析・活用を進め、社会的価値の創造に努めるとともに、定量目標の達成を目指してまいります。
(その他の対処すべき課題)
1)Koroseal Interior Products Holdings,Inc.においては、2016年11月の買収後、新鋭壁紙製造設備の導入、壁面保護材料事業からの一部撤退、当社商品の販売拡大等の施策を実行したものの、依然営業赤字から脱せずにおります。事業が自社製造壁紙及び他社壁紙の販売という低付加価値モデルに留まっていることが最大の課題であり、差別化し得る商品・ブランド、短納期供給力、提案力、施工力等の機能強化等の施策実行に引き続き取り組んでまいります。
2)中国・香港及び東南アジアでの事業は、過去欧米品を中心にホテル関連の建設市場向けの販売をメインとしておりましたが、アジア市場における欧米品の競争力低下及び新型コロナウイルス感染症の影響によるホテル関連工事の低迷等に大きな影響を受けており、アジア市場で安定的な収益を確保しつつ事業成長を達成するために、グループ会社であるクレアネイト社によるアジア市場向けの競争力のある商品の開発、住宅市場向けの取引拡大のための在庫・販売政策の推進等の課題に取り組んでまいります。
3)日本市場においても、原材料価格・仕入商品価格の値上げ、物流委託費・包装材料・人件費等を含むその他経費の上昇が継続しており、これらコスト上昇に対して収益性を維持しながら販売数量維持・拡大に向けた施策を実行してまいります。
4)日本市場において、特定の仕入先からの壁装材の品質問題が発生しており、お客様相談室を設置の上、当該仕入先と連携しつつ、当該商品の施工先住居、施設等に対する補修対策を継続的に実施してまいります。この補修に係る費用は仕入先によって全額負担されており、当社において損失は計上されておりません。