有価証券報告書-第69期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/24 17:06
【資料】
PDFをみる
【項目】
143項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、永遠に変わることのない商売の原点としての社是「誠実」、そしてブランドステートメントとして“Joy of Design”を掲げ、経営の基本方針としております。
当社グループは、不透明かつ急激な変化を伴う環境下で、改めて長期的なビジョンを明確にした上での改革の遂行と持続的な成長を目指すべく、Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]及び、そのファーストステップとして、3ヵ年の中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]を以下のとおり策定しております。
■Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]
[2030年に目指すビジョン]
サンゲツグループは“スペースクリエーション企業”へ
[長期ビジョン達成へのアプローチ]
●経営の基本
・デザイン経営
デザインによるブランド価値の向上と事業転換
●経営・事業の基盤
・多様性のある専門人材
現場力と多様性ある専門人材が活躍する組織
・事業関連データの連携と活用
DATAによる事業の効率化と転換
●主要機能
・サービス売りへの完全転換
サービスを付加価値の源泉とする事業
●事業エリア
・環太平洋地域
環太平洋地域各国での強固な事業とグローバルな展開
●目指す企業像
・内装企業からスペースクリエ―ション企業へ
デザイン・人材・DATA・サービスによるグローバルなスペースクリエーション企業
これらのアプローチによるビジョンの達成を通じ、私たちは、次の社会的価値の実現を目指します。
[サンゲツグループが実現を目指す社会的価値]
サンゲツグループは、
Inclusive(みんなで):平等で健康的なインクルーシブな社会の実現
Sustainable(いつまでも):地球環境を守るサステイナブルな社会の実現
Enjoyable(楽しさあふれる):より豊かでエンジョイアブルな社会の実現

社会の実現に貢献します。
■中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ] ※D.C.=Design & Creation
1.基幹事業の質的成長による収益の拡大
<インテリアセグメント>(1)デザイン力の発展的強化と戦略的調達の推進
(2)サービス機能の拡充と高度化
(3)代理店との協業深化と営業体制の強化
<エクステリアセグメント>(4)エクステリア事業の質的・地理的拡大
2.基幹事業のリソースに基づく次世代事業の収益化
<海外セグメント>海外各国における
(1)強固な経営基盤の構築
(2)最適モデルの追求と徹底した現地化
(3)ブランディングとプロダクトポートフォリオの強化
<スペースクリエーションセグメント>(4)専門能力拡充によるスペースクリエーション事業の展開
3.経営・事業基盤の強化
(1)業務執行の能力強化と効率化
(2)DATAの高度活用体制の整備
4.社会的価値の実現
(1)地球環境:地球環境への負荷低減
(2)人的資本:多様な人材が活躍する組織
(3)社会資本:サプライチェーンの安心・安全・魅力の向上
コミュニティ参画
(4)ガバナンス:コーポレートガバナンスの強化

当社は以上の施策のもと、インテリアを通じたデザインするよろこび“Joy of Design”を提供し、社会に貢献し続ける企業を目指してまいります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]及び、中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]において定量目標(KPI)を以下のとおり定めています。
■Sangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]定量目標
2030年3月期連結売上高2,250 億円
連結営業利益185 億円

■中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]定量目標
(1)経済的価値
2023年3月期目標
・連結売上高1,720 億円
・連結営業利益120 億円
・連結純利益85 億円

・ROE9.0%
・ROIC9.0%

・CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル) 65日
(2)社会的価値
2023年3月期目標
①地球環境
事業活動(Scope1&2)における環境負荷の低減
1)GHG排出量(Scope1&2):30.0% 削減(2018年度比)※2031年3月期目標
2)エネルギー使用量:4.0% 削減(2018年度比)
3)廃棄物総廃棄量:4.0% 削減(2018年度比)
4)リサイクル率:83.0% 以上

②人的資本
1)社員の健康と能力開発
・特定保健指導実施率、がん検診受診率、有所見率、メタボ率の改善
・非喫煙率:80.0% 以上
2)ダイバーシティ&インクルージョンの推進
・女性管理職比率:20.0% 以上
・障がい者雇用率: 4.0% 以上

③社会資本
コミュニティへの参画
・児童養護施設リフォームでのスペースクリエーション:年間30件
・社員の積極的な参加 マッチングギフト:7,000 S-mile

(3)資本政策
資本政策
・自己資本を900~950億円の範囲で維持する。
・3年間の総額で総還元性向を略100%とする。
・自己株式取得および配当に関しては、安定増配を念頭に、
新型コロナウイルス感染症の業績に与える影響を見極め都度決定する。
資本配分政策
・未定としていた資本配分に関して、3年間の業績見通しが明確になり、2021年5月に決定。
中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]期間中の資本配分政策
資金創出・調達資金配分
2020年3月末 保有現金同等物 ※368億円成長投資 ※200~260億円
++
3年間の営業キャッシュ・フロー280~300億円=株主還元170~190億円
++
3年間の借入金△50~100億円2023年3月末 期末現金250~300億円
※現預金と株式以外の有価証券※M&A、マイナー投資(アライアンス強化)、設備投資(物流・DXなど)

(3)経営戦略等、経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが主に事業を展開している建設業界(主にインテリア業界)は、商品が決定するまで、一般施主からプロユーザーまで多数の顧客(決定権者)が存在し、住宅から非住宅まで多様な市場で構成されています。例えばオフィスビルの建設が計画された場合、事業主とその業務を請負った設計事務所、ゼネコン、内装仕上事業者など、多層な決定権者が携わり、それぞれに対するきめ細かい営業活動が必要となります。また、インテリア市場は天井から壁面・床と、多種多様な内装材料を小ロットから取扱う必要のある非常に多種多様で複層的・複合的な市場です。このような業界構造は非効率であるゆえに、利益を創出するためには、デザイン、品質、在庫、配送、提案力などを通じ、それぞれの顧客との信頼関係を構築することで、シェアを獲得し規模を確保することが必要不可欠です。当社は1953年の株式会社山月堂商店設立当初から、トータルインテリアの考えに基づく商品バリエーションの拡充や、全国を網羅するジャストインタイムの物流体制構築を行い、これらの施策が奏功し、長期にわたって安定的な業績を継続してまいりました。
しかしながら、今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の継続による経済・生産活動の停滞やその他予測困難なリスクにより、厳しい経営環境が継続することが予想されます。当社事業に関連の深い建設市場においても、国内外での建築需要の低迷により市場の完全な回復には依然時間を要するものと思われます。一方、世界的な商品市況の高騰により塩ビ・可塑剤等の原料価格が上昇しており、内装材料価格への転嫁の動きも活発となっております。
このような状況の中、当社グループは、前述「⑴経営方針」に掲げるSangetsu Group長期ビジョン[ DESIGN 2030 ]及び、そのファーストステップである3ヵ年の中期経営計画(2020-2022)[ D.C.2022 ]を着実に実行することにより、商品販売だけでなく、配送力、コーディネーション力、きめ細やかな人的対応力といった既存のサービスをより強化し、内装材の販売から「スペースクリエーション企業」への進化を図ります。そのために、デジタルトランスフォーメーションの推進や人材活用を進め、社会的価値や環境的価値を含む、より広い分野での企業価値の創造に努めるとともに、定量目標の達成を目指してまいります。
現状、経営環境は極めて先行き不透明ではありますが、当社グループでは足元の状況に充分留意しつつ、ニューノーマルな世界に対応する施策を実行してまいります。
その他の対処すべき課題
1)2016年11月に買収したKoroseal Interior Products Holdings,Inc.においては、当初計画に比して収益が低迷しており、同社収益向上のため、経営体制の強化、商品力の向上、販売数量の増大、新規設備のスタートによるコスト競争力強化等の収益改善策を着実に進めてまいります。また、2017年12月に買収したGoodrich Global Holdings Pte., Ltd.においては、マーケットの変化への対応の遅れによる収益低迷への対策として、資本構造の改善と各国のマネジメント体制の構築を行い、更にベトナム進出など積極的な販売力拡大を進めてまいります。
2)特定の仕入先からの壁装材において品質問題が発生しており、お客様相談室を設置の上、当該仕入先と連携しつつ、当該商品の施工先住居、施設等に対する補修対策を継続的に実施してまいります。この補修に係る費用は仕入先によって全額負担されており、当社において損失は計上されておりません。
3)新型コロナウイルス感染症の拡大・長期化により、市場が大きく混乱し、売上の減少を招くとともに、先行きの見通しが困難となっております。この影響はさらに長引くことが予想されているとともに、感染症沈静化後の市場分野は大きく変容する可能性が高く、その様な変化に対し、着実に対処する必要があります。