有価証券報告書-第41期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/29 15:51
【資料】
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【項目】
161項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「ビッグコンビニエンス&ディスカウントストア」を事業コンセプトとする時間消費型小売業「ドン・キホーテ」を中核企業として、「顧客最優先主義」を企業原理に掲げ、「企業価値の拡大」を経営の基本方針として事業活動を行っております。
この企業原理及び経営の基本方針のもと、お客さまに満足いただける商品の質や価格及びサービスの提供を実践し、あわせて当社グループ独自のユニークな営業施策を推進しながら、お客さまと感動を共有できる店舗運営を心がけ、豊かな生活文化の創造を実現していく所存です。
また、地域に根ざした店舗運営とこだわり抜いた商品の提供により、地域社会になくてはならない存在として衣・食・住・余暇にわたる総合小売業「アピタ」「ピアゴ」などを運営するユニー株式会社については、個店経営強化を推し進めた、次世代型GMS・SMの開発を行い、最もお客さまに支持される店舗を目指してまいります。
当社グループは、お客さまが小売業に求めている購買動機は、「より便利に(CV:コンビニエンス)」、「より安く(D:ディスカウント)」、「より楽しく(A:アミューズメント)」という3点に集約されていると考えております。当社グループは、この3点の頭文字を取って、事業コンセプトを「CV+D+A」と呼んでおります。
小売業において、お客さまの大きなニーズである「便利さ(CV:コンビニエンス)」と「安さ(D:ディスカウント)」を基本コンセプトとした店舗運営は、一定数のお客さま支持と売上高を確保することは可能と考えられますが、それだけでは、「1+1=2」の結果しか得ることができません。
当社グループは、お客さまにとって「ワクワク・ドキドキ」というプラスアルファの付加価値が創造され、購買意識を呼び覚ます「アミューズメント性」こそ重要であり、これは、「1+1=∞」という公式を導き出す魔法のエッセンスであると考えております。
当社グループは、この事業コンセプトを前面に繰り広げ、全従業員が「便利で安くて楽しい」店舗作りを実践し続けることにより、他の小売業との差別化を図り、より高い水準の顧客満足と社会貢献が実現できるものと確信しております。
(2)経営戦略等
当社グループは、商圏内のお客さまのニーズに合った「個店主義」に基づく店舗運営を心がけ、消費者志向の変化に迅速に対応することで、お客さま支持のさらなる向上を目指してまいります。また、複合商業施設からの要請に応じて比較的低コストでテナント出店を行う「ソリューション出店」の推進や顧客ニーズに応える新業態の開発及びプライベートブランド商品の企画開発などにより、持続可能な成長を実現して企業価値を創造・拡大するとともに、ユニークなディスカウントストア業態及び総合スーパー業態のラインアップで、小売業最強のビジネスモデルを確立していく所存であります。
海外事業につきましては、日本の農畜水産物の輸出拡大を目的に設立した、当社グループのパートナーシップ組織「Pan Pacific International Club」の参加企業の拡大や、北米及び東南アジアを中心に積極的に店舗開発を進めるとともに、お手頃な価格で日本の農畜水産物の魅力を提供し、地域の皆様に末永くご愛顧いただける店舗の創造に努めてまいります。
また、中長期経営戦略として、「Passion 2030:2030年に営業利益2,000億円、売上高3兆円」の達成を目標としております。
この目標を達成するために、国内事業においては、①店舗フォーマットの再構築 ②デジタル戦略 ③新MD(Merchandising:商品化計画)のチャレンジ ④グループシナジーの創出により、オンリーワンリテーラーとしての収益力向上を実現して「量」から「質」への転換を進めてまいります。海外事業においては、北米及び東南アジアの環太平洋地域において、出店拡大を行うとともに、魅力的なジャパンブランド・スペシャリティストア業態を構築してまいります。
また、当社グループの不変の企業原理である「顧客最優先主義」を基軸とした「業態創造企業」として、当社グループの差別化要因である、Convenience(便利さ)、Discount(価格の安さ)、Amusement(楽しさ)という3つの要素をさらに強化し、お客さまに支持していただける店舗作り実現のため、さまざまな営業施策を実行し、中長期的に持続可能な成長を実現していく所存であります。
(3)経営環境
当社グループを取り巻く小売業界におきましては、世界的に流行している新型コロナウイルスの影響により、インバウンド需要の回復が今後も見通せず、消費マインドが低下する状況下で、企業・店舗間格差が拡がり、店舗閉鎖や業界再編などがさらに加速し、引き続き厳しい状況が続いていくものと考えております。また、テレワークの普及や巣ごもり消費の拡大など、「社会環境」の変化に伴いお客さまの「生活スタイル」や「消費マインド」も変化しております。小売業界における今後の課題としては、少子高齢化の進行に伴う市場規模の縮小、単身世帯や働く女性の増加などに伴う消費者ニーズの多様化、人件費、物流費などのコスト上昇懸念があげられます。さらに、インターネット取引の普及に伴い、有店舗小売業のさらなる変革が求められるなど、ますます競争は激化するものと予想されます。
このような経営環境の中、当社グループは、引き続き環境(Environment)・社会(Social)の課題解決に努め、また経営の効率性と透明性を高めるためのガバナンス(Governance)の強化にも積極的に取り組むなど「守りの経営」を推進すると同時に、競合他社との差別化要因である現場主義・個店主義に立脚した強みを遺憾なく発揮しながら、積極的な営業戦略に基づく「攻めの経営」をバランス良く実施することが重要と考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
個人消費の低迷や企業間競争の激化という状況が続く中で、当社グループは、本来のビジネスそのもので社会との共生を追求しながら、中長期的に持続可能な成長を目指すため、投資効率の高い案件に経営資源を重点的に、かつ適正な配分を行っていきます。
① 環境・社会・企業統治(ESG)活動の充実
当社グループは、企業原理「顧客最優先主義」のもと、いつの時代においても、お客さまに喜ばれ、選ばれる店舗であり続けるためESGの取り組みを推進し、持続的な成長、中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。また、本業を通じたESGの取り組みは、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」にも重なると考えております。
環境面においては、世界的な課題である食料廃棄を削減するために、適切な発注や期限の迫った商品をタイミング良く値下げするなどの食品ロスの発生抑制に努めております。また、資源循環の促進として食品リサイクルループに取り組んでおります。各店舗で発生した食品ロスを、たい肥飼料として地域循環型農業で活用し、この食品リサイクルループの中で生産された野菜などを販売する食品再生利用を促進しております。CO₂排出量削減として、太陽光発電や風力発電を一部店舗において導入しており、再生可能エネルギーを活用し、事業活動で生じる環境負荷の低減に取り組んでおります。当社グループは、引き続き出店地域の環境に配慮した最適な施策を実施し持続可能な社会構築に貢献していく所存であります。
また、従業員が安心して働けるように労働環境の改善、教育機会及び福利厚生の充実に努め、一人ひとりが安心して声を上げられる職場環境作りを推進してまいります。
社会活動面では、小売業の特長を活かした教育支援として、全国の当社グループ店舗で、商売を通じて働くことの楽しさや責任感を体感してもらう体験学習を実施しております。コロナ禍の影響により、店舗への来店が難しい状況下では、リモートによる遠隔授業を実施するなど、安全に配慮した体験学習の新しい形を創造しています。また、旅行客の減少で過剰在庫になった観光地のお土産品や、対面接客が制限され販売活動ができない障がい者施設で作られた商品などは、当社のグループ店舗で取り扱うことで販路を提供するなど、地域経済の支援に寄与しています。
さらに、人々の多様な個性を尊重し、お客さまがお買い物をしやすい店舗、そして従業員が働きやすい職場環境をめざすため、多様性を認め合うダイバーシティを推進しており、2020年11月に「ダイバーシティ・マネジメント委員会」を新設しました。当委員会はPPIHグループ初の女性執行役員である二宮仁美が委員長としてリーダーシップをとり、女性が活躍できる企業、ダイバーシティを実行する企業として積極的に施策を立てています。女性管理職登用のための定量目標の設定や、女性従業員が持続的に自ら成長できる企画を立案・実行しているほか、性的マイノリティに対する従業員の理解浸透などに取り組むため、外部から講師を招き研修を行うなど、さらなる理解浸透を図りながら、店舗運営に役立ててまいります。
また、深夜まで営業しているということから、店舗自体が、もしものときの駆け込みスポットとして機能するなど、深夜営業だからこそできる地域貢献を今後とも追求してまいります。
企業統治面では、経営の透明性を高めるガバナンスの強化に努めて、高い倫理観に則った事業活動こそが、企業存続の前提条件であるとの理念に立ち、社内における早期対応体制を構築し、社外専門家の助言を仰ぎながら、企業統治体制とその運営の適法性を確保してまいります。
2021年1月には、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置しました。取締役の指名や報酬などに関する評価・決定プロセスにおける公平性、客観性、透明性を強化することは、ガバナンス体制の一層の充実につながるものと考えています。
なお、ESG分野における定量データ及び定性情報については、国際的なガイドラインを参考にしながら、積極的に開示していく所存であります。
② 新たなる業態創造への挑戦
a.商品構成の絶えざるリニューアル
消費者ニーズが多様化し、さらに個別化を強めている中で、当社グループはお客さまの期待に応じて、画一化・標準化されたルールにとらわれることなく、お客さま視点に立った商品構成の継続的な見直しと提案を機動的に行っていきます。
お客さまの声を基に企画推進するプライベートブランド「情熱価格」を2021年2月にリニューアルし、単に高品質な商品を販売することではなく、お客さまが求める商品を具現化し、ワクワク・ドキドキするような商品開発をおこない、お客さまに満足していただけるような商品づくりに取り組んでまいります。
b.立地に応じて柔軟な対応を可能とする多様な店舗出店パターン
商圏規模や立地特性に合わせた店舗フォーマットで、全国展開を推進していきます。すなわち、当社グループの主力業態として独自のビジネスモデルを展開する「ドン・キホーテ(標準売場面積1,000㎡~3,000㎡)」を中核に、都市部には標準売場面積1,000㎡未満の小型店舗「ピカソ」などの小商圏型店舗を展開し、さらなるネットワーク拡大に取り組んでいきます。
ファミリー向けの総合ディスカウントストア及びポストGMS業態として、「MEGAドン・キホーテ(同8,000㎡~10,000㎡)」及び「New MEGA ドン・キホーテ(同3,000㎡~5,000㎡)」のビジネスモデルを一層進化させて、顧客層拡大に向けた全方位型の店舗開発を進めていく所存であります。
また、幅広い年代層のお客さまに支持されているユニー株式会社は、既存店の活性化策と併せて、権限委譲に基づいた個店経営を行う「New GMS」への改装を実施すると共に、「MEGAドン・キホーテUNY」または「ドン・キホーテUNY」への業態転換はアピタ店舗へのテナントイン型の出店を積極的に進め、収益の最大化を図ってまいります。
海外においては、日本製もしくは日本市場向けの商品を手に取りやすい価格で提供するジャパンブランド・スペシャリティストアである「DON DON DONKI」を中心に、環太平洋エリアにおける様々な国及び地域で多店舗展開を推進してまいります。
c.店舗運営に資する後方支援システムの稼動と全国展開
基幹ITシステムや物流システムはもとより、お客さま一人ひとりの価値観やライフサイクルに合わせた最適なサービス・商品を提供することにより、顧客満足度を高めるためのCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムを推進していきます。
さらに、店舗運営に係る負荷軽減や顧客理解を深めることなどを目的としたデジタル戦略に取り組んでおります。
これらの経営戦略の推進は、当社グループの店舗ネットワーク拡大によるお客さまシェア増加につながるとともに、業務効率の改善やコストの削減、ひいては持続可能な収益成長への貢献が期待できるものと確信しております。
なお、新型コロナウイルスの影響については、将来的な広がり方や収束時期等について、正確に予想することは困難であり、今後も企業活動に様々な影響が出てくることが予想されます。当社グループでは、今後も新型コロナウイルス感染症の状況や経済への影響を注視し、柔軟に対応してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「自己資本の充実」及び「収益力強化に向けた資本の有効的かつ戦略的な活用」のバランスを採りながら、持続的成長及び企業価値の向上に資する「事業投資を優先」してまいりますが、特に重要視する経営指標は、売上高及び利益の持続的増加を継続していくことであり、中長期経営戦略として「Passion 2030:2030年に営業利益2,000億円、売上高3兆円」を目標としております。