有価証券報告書-第23期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/28 10:08
【資料】
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【項目】
164項目
(3)戦略
①マテリアリティ(重要課題)
エディオングループにおけるサステナビリティの考え方に基づいて中長期的に企業価値を向上していくために、事業活動に影響を与える社会環境の変化や、事業活動を通じて果たすべき社会的役割を整理し、重要かつ優先的に取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しております。なお、経年とともに当企業グループに影響を及ぼす可能性のある外部環境が変化していることから、課題の再整理が必要と考え、今後見直していく予定です。
重要課題施策
お客様の便利で豊かな生活の実現・「安心の価格」で「魅力ある商品」を提供
・ライフスタイルの変化への迅速な対応
・「優れたサービス」の提供
・「安心」の提供
環境と調和した脱炭素社会の実現・環境に配慮した商品販売、物流・サービスの展開
・環境配慮型店舗の展開
・循環型社会形成への貢献
・自然環境保全活動
働きがいのある組織と多様な人材育成の実現・健康経営の推進
・労働安全(衛生)の推進と徹底
・ワークライフバランスの推進
・障がい者雇用の促進
・働きやすい職場づくり
・人材育成とキャリア開発
積極的な地域社会への貢献・スポーツ振興
・次世代教育に対する支援
・災害への支援活動
・地域社会への貢献
お取引先様、株主様との良好な関係の実現・ガバナンスの強化
・持続可能な物流の実現
・ステークホルダーコミュニケーションの充実
・お取引先様との公平・公正な取引
サステナビリティを支える事業基盤の確立・持続的な事業活動
・サステナビリティ経営の推進

②環境と調和した脱炭素社会の実現とTCFDへの対応
当社では、サステナビリティ課題の中でも「環境と調和した脱炭素社会の実現」を重要な経営課題の一つと認識しております。2021年7月に賛同したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言を踏まえ、シナリオ分析に着手し、以下の枠組みで取り組みを進めております。
1)ガバナンス
当社では、気候変動に伴うリスクや機会は事業戦略や財務計画に大きな影響を及ぼすものと認識し、サステナビリティ経営をグループ全社で横断的に推進するため、2022年6月にサステナビリティ推進委員会を設置いたしました。
サステナビリティ推進委員会では、気候変動を主要テーマの一つとし、TCFD提言に則した情報開示項目の整理とCO2排出量の見える化、対応方法及びサステナビリティ対応方針の策定等を行うとともに、目標や施策の進捗情報を議論し、取締役会に報告を行っております。
また、取締役会においてはその監督機関として、サステナビリティ推進委員会で審議したサステナビリティに関する課題と目標、対応について適宜報告を受け、必要に応じて審議のうえ決議いたします。
2)戦略
ⅰ)シナリオ分析
当社は、台風・豪雨の激甚化等の気候災害の拡大及び脱炭素化等の気候変動緩和に向けた全世界的な取り組みが経営とビジネス全体に重大な影響を与える重要課題であると認識しております。気候変動が当企業グループに与えるリスク及び機会とそのインパクトの把握及び2030年時点の世界を想定した当企業グループの戦略のレジリエンスと追加施策の必要性を検討するため、シナリオ分析を実施いたしました。
その結果、消費者のライフスタイルの変化への追随、気候変動への緩和や適応への対応、炭素税や省エネルギーに関する法規制の強化への対応が焦点となる課題であることが判明いたしました。
シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照のうえ、パリ協定の目標である「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること」を想定した「1.5℃/2℃シナリオ」、及び現在のペースで温室効果ガスが排出されることを想定した「4℃シナリオ」の2つの世界を想定しております。
気候変動関連の規制の強化や市場の変化・消費者の嗜好等の移行リスクが顕在化する「1.5℃/2℃シナリオ」にはIEA NZE 2050を、自然災害等の物理リスクが顕在化する「4℃シナリオ」にはIPCCによるSSP5-8.5とRCP8.5を選定いたしました。なお、1.5℃と2℃のシナリオにおいては、リスク及び機会の傾向は同じですが、1.5℃の方が2℃よりも気候変動への対応スピード及び活動レベルを強化していく必要性があると認識しております。
シナリオ分析の対象範囲は、2030年の世界を想定して、特に気候変動の影響を受ける可能性のある家電、リフォーム、物流事業に関連するグループ会社8社のサプライチェーン全体といたしました。
また、気候変動の影響は長い時間をかけて顕在化していく可能性があることを踏まえ、短期、中期、長期の時間軸を定義しております。
この2つのシナリオを踏まえ、TCFD提言に沿って、気候関連リスク及び機会を抽出いたしました。そのうえで、気候変動がもたらす移行リスク(政策・法規制、技術、市場、評判)や物理リスク(急性、慢性)、また、機会(製品及びサービス)を特定いたしました。
ⅱ)シナリオ分析結果
シナリオ分析の結果、1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオいずれのケースにおいても、消費者のライフスタイルの変化への追随に失敗すること、気候変動への緩和や適応への対応の遅れによる評判の低下が当企業グループにとって重大なリスクであることがわかりました。一方で継続的なシナリオ分析を通して他社に先んじて1.5℃/2℃及び4℃の世界のいずれにも迅速に対応できる事業戦略を構築することにより、リスクを機会に転じさせることもできると考えております。
例えば、1.5℃/2℃シナリオにおいては、炭素税や省エネルギー化に関連する規制強化が想定されているため、当企業グループにとってはコスト増加に繋がります。2030年時点において、最も財務に影響を与えるリスクは炭素税の導入によるコスト増加であり、その影響金額は約17億円と予測しております。
しかしながら、脱炭素に向けて省エネや建築物ZEB化の規制が進行し、温室効果ガス排出量の規制が強化され、それらに伴う社会意識の変化への対応を進めていくなか、エネルギー効率が高く温室効果ガス排出量の低い製品への需要が拡大することは、家電やリフォーム事業を展開する当企業グループにとっては機会でもあると考えております。
また、4℃シナリオにおいては、自然災害が激甚化した結果、被災による被害が発生するとともに、サプライチェーンの分断によって納品が遅延することに伴う販売機会の損失が見込まれます。しかしながら、平均気温が上昇するなかで自社の温度や湿度を一定に保つために空調機器のエネルギー消費量が増加し、空調コストの増加が見込まれるなか、エネルギー効率の高い空調機器への需要が拡大することは当企業グループにとっては機会でもあると考えております。
このシナリオ分析を通じて気候関連リスクの影響を認識し対応策を検討することにより、当企業グループの事業上のリスクの低減と価値創出の機会を実現し、持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保することを目指してまいります。
〈気候変動によるリスク及び機会〉
分類リスク及び機会の内容と当企業グループへの影響(一例)
リスク移行リスク
(主に1.5/2℃シナリオ)
・炭素税導入によるコスト増
・各法令の規制強化による対応コスト増加
・市場ニーズの変化対応遅れ・失敗による売上減少
・対応不十分による評判低下
物理リスク
(主に4℃シナリオ)
急性・台風や洪水などの異常気象の増加による営業休止・配達不能による売上減少
慢性・降水パターンの変化や平均気温の上昇による設備の入れ替え、電力コストの増加
機会製品及びサービス・エアコンなど気候変動への対応商品・サービスに対する需要増加

詳細な気候変動によるリスク及び機会の分析内容は、当社ウェブサイトで公開しております。
https://www.edion.co.jp/csr/tcfd