有価証券報告書-第13期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループでは、グループとしてどのような使命を持ち、どのような姿をめざすのかを明確にし、お客さま・社会の期待に一丸となって応えていくための共通の指針として、以下の経営ビジョンを制定しております。当社グループ役職員は、「信頼・信用」、「プロフェッショナリズムとチームワーク」、「成長と挑戦」の3つの価値観を共有し、「世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ」をめざしてまいります。
[経営ビジョン]
私たちの使命 |
いかなる時代にあっても決して揺らぐことなく、常に世界から信頼される存在であること。 時代の潮流をとらえ、真摯にお客さまと向き合い、その期待を超えるクオリティで応え続けること。 長期的な視点で、お客さまと末永い関係を築き、共に持続的な成長を実現すること。 そして、日本と世界の健全な発展を支える責任を胸に、社会の確かな礎となること。 それが、私たちの使命です。 |
中長期的にめざす姿 世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループ |
1. お客さまの期待を超えるクオリティを、グループ全員の力で 2. お客さま・社会を支え続ける、揺るぎない存在に 3. 世界に選ばれる、アジアを代表する金融グループへ |
共有すべき価値観 |
1. 「信頼・信用」 2. 「プロフェッショナリズムとチームワーク」 3. 「成長と挑戦」 |
当社グループでは、平成30年度からの3年間を計画期間とする中期経営計画を策定いたしました。
世界経済は、ここ数年順調な回復を続けてきましたが、今後、各国中央銀行による金融政策の正常化への動きに伴う市場変動やクレジットサイクルの転換、さらには地政学リスクに起因する不確実性の高まりに留意が必要な状況にあります。一方、わが国は少子高齢化や人口減少などの課題を抱え、低成長と超低金利状態が常態化しつつあります。また、デジタル化の流れは我々金融業界も含めた社会や産業のあり方を大きく変えようとしています。
これらの構造変化に柔軟かつ迅速に対応し成長軌道への道筋を付けるため、当社グループでは、昨年5月に改革の方向性を「MUFG再創造イニシアティブ」として公表し、それらを具体化した施策を含む中期経営計画を平成30年度よりスタートさせました。
(2) 経営環境
当連結会計年度の金融経済環境でありますが、世界経済は、米国の新政権の政策運営や欧州主要国の国政選挙、中東や北朝鮮情勢の緊張といった政策・地政学リスクにさらされながらも、景気の面では比較的安定した回復・拡大が続きました。米国では、雇用・所得環境の改善に企業の生産活動の持ち直しも加わり、自律的な景気の拡大が続きました。欧州も、英国のEU離脱を巡る不透明感を内在しつつも、良好な雇用・所得環境や低金利等を支えに景気は底堅さを維持しました。アジアにおいても、先進国の景気拡大に伴う輸出の回復や旺盛なインフラ需要等を支えに、ASEAN(東南アジア諸国連合)やNIEs(新興工業経済地域)はもとより、構造調整という重石を抱える中国でも景気は堅調な推移を示しました。こうした中、我が国経済も、東京都議会議員選挙や衆議院議員総選挙等を巡り政治が揺れ動く展開となりましたが、景気の面では、景気拡張期間が「いざなぎ景気」を超える戦後第2位に達する等、年度を通して緩やかな拡大が続きました。企業部門では、高水準の企業収益に在庫調整の一巡を受けた生産の持ち直しも加わり、設備投資の高い伸びが続きました。家計部門でも、企業の旺盛な採用意欲に支えられた良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費が底堅く推移しました。加えて、政府による大規模な経済対策の実施も年度前半にかけての景気を押し上げました。
金融情勢に目を転じますと、第3四半期までは、ドル円相場は横這い圏で推移し、世界経済の回復を支えに株価も上昇基調を辿りましたが、第4四半期には米国のインフレ懸念の台頭や通商政策を巡る不確実性の高まり等を背景に、円高、株安方向での調整が進みました。金利については、米国において平成29年6月と12月及び平成30年3月に利上げが行われ、ユーロ圏でも平成29年4月と平成30年1月に資産買入額の減額が実施された一方、我が国では「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が維持され、長期金利は低位での推移が続きました。
(3) 対処すべき課題
中期経営計画では、「シンプル・スピーディー・トランスペアレント*なグループ一体型の経営」の実現を通じて、全てのステークホルダーに最善の価値を提供することをめざします。
グループ経営のあり方を、従来の「グループ協働」「グループ起点」から、「グループ一体型の経営」へとさらに進化させます。具体的には、変化するお客さまのニーズに的確に対応するため、7月にグループの事業本部を新たな顧客セグメントに再編するとともに、機能別再編によりグループ各社の役割を明確化し、商品・サービスの機能強化とソリューション提供能力向上を図ります。
この3年間は、特にその前半において変革に必要な経営資源を集中的に投入してまいります。未来志向の変革を通じて新たなステージへの足場をしっかりと固め、中期経営計画最終年度の3年目には確かな成果への手応えを掴み、そして次期中期経営計画が完了する6年後に向けて皆さまのご期待に応える新たなMUFGの成長モデルの確立をめざします。
* Transparent/事業会社間・営業拠点と本部・役職等の壁を意識せずオープンに話ができ、グループの向かう方向やその理由を分かりやすく共有できる組織を表したキーワード
MUFGグループのめざす姿 ~「再創造」の先にめざす経営の姿~ |
シンプル・スピーディー・トランスペアレントなグループ一体型の経営を通じ、全てのステークホルダーに最善の価値を提供するとともに、課題解決型ビジネスの展開により、持続的な成長を実現し、より良い社会の実現に貢献する (1) お客さま・社会のニーズや課題と向き合い最適なソリューションを提供 (2) 事業・グループのあり方を再構築し、MUFGならではの持続可能な成長モデルを構築 (3) 社員一人ひとりにプロフェッショナルとしての成長を実感できる場を提供 (4) 上記の結果として、株主の期待に応え、信頼関係を強化 |
(グループ事業戦略)
中期経営計画では、内外における厳しい経営環境を打ち返し、持続的な成長へと回帰するための具体的な戦略として「11の構造改革の柱」を設定いたしました。いずれも、①将来に向けてのポテンシャルが大きく、②当社グループが持つ潜在力を十分に発揮することができ、③今後当社グループの基幹的なビジネスとなる、あるいはそれを支える戦略の柱です。
これらの戦略を当社グループの各事業会社、事業本部、コーポレートセンターが一体で推進し、営業純益で2,500億円程度の効果発現をめざします。
加えて、海外における個人・中堅中小企業領域では、新たに事業本部を設置し、米国と東南アジア地域の市場成長を着実に取り込んでまいります。前中期経営計画では、連結子会社であるタイのBank of Ayudhya Public Company Limitedの業容拡大に加え、フィリピンの大手商業銀行Security Bank Corporation及びインドネシアの大手商業銀行PT Bank Danamon Indonesia, Tbk.への戦略出資を実施し、東南アジアにおけるビジネスプラットフォーム構築に向けて、着実な成果をあげることができました。米国のMUFG Union Bank N.A.及びベトナムのVietinBankを含め、日本と米国、アジアのパートナーバンク間で各行の強み・知見を共有・横展開し、各行のバリューアップとシナジー効果の実現をめざします。
[11の構造改革の柱]
① デジタライゼーション戦略
デジタル技術の活用は構造改革全般を貫く柱であり、トップライン向上と効率化の両面で幅広く施策を立て推進していきます。ビッグデータ活用によるマーケティングとコンサルティング力のレベルアップのほか、法人向けオンライン・バンキングの刷新による店頭事務の効率化や住宅ローンのデジタルチャネル・シフト、ロボティクスやAIの積極活用を通じた生産性向上に取り組んでまいります。
② チャネル戦略・BPR
デジタル技術の徹底活用やBPR*1により、お客さまのUI/UX*2と生産性向上の両立をめざします。ネットチャネルでの取引操作性を向上させ、お客さまに一層活用して頂くとともに、銀行での機能特化型店舗(『MUFG NEXT』)の導入・店舗統合、銀信証*3の共同店舗化を進め、ネットとリアルを組み合わせたチャネル全体を進化させてまいります。
*1 Business Process Re-engineeringの略称。既存の業務内容や業務フロー等を全面的に見直す業務の抜本的改革のこと。
*2 User Interface(システムの操作性)とUser Experience(ユーザーのサービス体験)の略称。
*3 三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券ホールディングスの3社の略称。
③ ウェルスマネジメント戦略
法人・リテール一体、グループ一体のアプローチにより、少子高齢化の中で高まるお客さまの資産の運用・管理・承継ニーズをサポートし、ストックを重視した安定収益構造への転換をめざします。銀信証から結集したプロ人材が起点となり、様々なソリューションをワンストップで提供するビジネスモデルを構築します。
④ 法人営業におけるRM-POモデル高度化
機能別再編によって銀行と信託銀行の法人貸出等業務を統合し、RM*1は「MUFGのRM」としてお客さまの経営課題の把握に取り組み、PO*2は専門性にさらに磨きをかけることで、お客さまのニーズに最適なソリューションを提供してまいります。
*1 Relationship Managerの略称。取引先担当者のこと。
*2 Product Officeの略称。商品やサービスの企画・開発・提供を担う部署のこと。
⑤ 不動産バリューチェーン戦略
不動産バリューチェーン*にかかる様々なニーズに対し、グループ一体で継続的にソリューションを提供してまいります。営業拠点において不動産ニーズの把握に努め、これを「売買」や「運用」へと繋ぎ、MUFGとしての付加価値を高めます。運用ビジネスでは、不動産アセットマネジメント機能を強化してまいります。
* 「売買」から「開発」、「テナントリーシング」、「運用」等、不動産に係わる一連のビジネスの流れ。
⑥ 資産運用ビジネス
当社グループのお客さまに対し、グループ一体で資産運用サービスを提供してまいります。競争力ある運用商品の開発とラインアップの拡充、これを支える人材ポートフォリオの充実を図ります。また、グローバルに存在感のある運用機関をめざし、人材・プロダクト・ソリューション提供に磨きをかけることにより、アセットマネジメント事業を強化してまいります。
⑦ 機関投資家ビジネス
銀信証及び各事業本部が有する機関投資家のお客さまとのリレーションシップをグループベースに拡げながら、お客さまのプロフェッショナルかつ多様な運用・管理ニーズに応える幅広いサービスをグループ一体で提供してまいります。
⑧ グローバルCIBビジネスモデル変革
グローバルCIB*ビジネスの持続的な成長を実現するために、グローバルに事業を展開する非日系のお客さまのニーズに応えるとともに、貸出資産等を継続的に入れ替え、ポートフォリオ全体の採算性向上に取り組みます。銀行と証券一体での案件組成とディストリビューションに取り組み、量から質の経営への転換をめざします。
* Corporate and Investment Bankingの略称。預金や貸出等の通常の法人向け銀行業務(コーポレートバンキング)と企業の直接調達支援やM&A等の投資銀行業務(インベストメントバンキング)を一体的に捉え、高度な金融サービスを提供していくこと。
⑨ 海外運営高度化
「地域・事業会社」を軸とする運営から「顧客・事業」を軸とする運営にシフトし、グループ横断での事業軸運営を強化します。また、環境変化に柔軟に対応できる態勢の構築に向け、経費の抑制、海外拠点ネットワークの高度化、事務・システムの集中化・標準化を進めてまいります。
⑩ 人事戦略
事業戦略を支えるグループ横断の人員配置・人材交流を加速させるとともに、国内外人事を統括する人事部を設置し、グローバルベースでの一体的な人事運営をめざします。
⑪ コーポレートセンター運営高度化
コーポレートセンター機能は、「持株会社・銀行の一体運営」から信託銀行及び証券も加えた「持銀信証一体運営」へ移行し、グループ一体での経営資源の有効活用とローコストオペレーションの実現をめざします。
(組織改編)
7月1日をもって事業本部のセグメンテーションを見直し、銀信証がグループ一体運営を推進する体制を構築します。お客さまとの接点となる事業本部は、日系と非日系、個人・中堅中小企業と大企業にそれぞれの組織を設定し、受託財産と市場を加えた6事業本部制といたします。
当社グループは、引き続き国内に軸足をしっかりと置きつつ、海外の成長を取り込みながら、事業モデルの変革を着実に進め、お客さま・株主・社員をはじめとする全てのステークホルダーの皆さまの期待に応えてまいります。
(4) 目標とする経営指標
本中期経営計画では、中期経営計画の最終年度である2020年度の財務目標の水準とともに、中長期的にめざす財務目標の水準を以下の通り設定しております。