有価証券報告書-第39期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/29 11:34
【資料】
PDFをみる
【項目】
135項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度においては、米国経済の回復が顕著になる一方で、中国経済の減速や欧州におけるデフレ懸念等、世界経済は先行き不透明な状況が続きました。特に、アジアでは、米国における金利上昇の可能性から、為替市場、金融市場、株式市場には時として大きな変動が生じました。また、わが国経済においても、デフレからの脱却に向けての政府・日銀による金融・経済政策等を背景に、円安・株高が進行し、一部には企業収益や景況感、消費者マインドの回復に明るい兆しが見られましたが、一方では、円安の影響、消費税増税後の消費者マインドの冷え込みが長期化していることに伴う一部企業における業績懸念など、先行きについては楽観できない状況となっております。
このような環境のなか、当社グループでは、今後の世界経済やわが国経済の変化を先取りして、事業の転換を図っていくことが不可欠であるとの認識の下に、特に、大きな経済成長が今後とも期待できるアジア地域において、事業を拡大するとともに、そのネットワーク化によるシナジー効果が最大限に発揮できるよう事業展開を行っていくことが今後の主要な課題であると考えております。
以上のような事業戦略をベースとして、当連結会計年度は、将来における収益創造のための基盤の整備に注力していくこととし、新たな成長機会をとらえて、更なる成長を遂げるべく、併せて、経営資源の有効活用や経営の効率化を推し進めることを狙いとして、日本国内外において、積極的にM&Aや組織再編等に取組んでまいりました。
① 東南アジアでの事業展開について
インドネシアにおいて、平成26年11月にインドネシア預金保険機構が99.996%所有する同国の商業銀行PT Bank Mutiara Tbk.(現 PT Bank JTrust Indonesia Tbk.、インドネシア共和国、以下、「ムティアラ銀行」という。)の株式を99.0%取得し連結子会社といたしました。今後、経済規模の拡大とともに急速に成長しつつある中小企業及び給与所得者層を中心に、これら顧客に対して各種ローン(住宅ローン等含む)、カードサービス、外為業務等を含む総合的な金融サービスを提供してまいります。
また、タイにおいて、JTRUST ASIA PTE. LTD.(以下、「JTA」という。)を通じて、上場会社であるGroup Lease PCL(タイ王国)の転換社債引受契約を締結いたしました。今後は、ムティアラ銀行からのファイナンスの提供や、持続的成長が見込まれるインドネシア国内における販売金融事業の共同展開、当社グループが東南アジア地区で事業展開を図る際の業務提携等を通じてお互いの事業シナジーを追求してまいります。
② 韓国での事業展開について
韓国スタンダードチャータード金融持株株式会社(本社:韓国・ソウル特別市)から、平成27年1月に、株式会社韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行(本社:韓国・京畿道城南市)の、また平成27年3月に、韓国スタンダードチャータードキャピタル株式会社(本社:韓国・ソウル特別市)の全株式を取得し連結子会社とし、商号をそれぞれ「JT貯蓄銀行株式会社(以下、「JT貯蓄銀行」という。)」「JTキャピタル株式会社(以下、「JTキャピタル」という。)」に変更いたしました。これにより、JT貯蓄銀行と親愛貯蓄銀行株式会社(以下、「親愛貯蓄銀行」という。)と併せた貯蓄銀行の営業エリアが、韓国全土の約70%のシェアを獲得するにまで拡大することで、韓国全土に対しての営業強化やサービス提供が可能となり、与信・受信額の増加、広告宣伝効果の拡大、及び知名度の向上等が見込まれるとともに、韓国全土からの有能な人材の獲得が可能となるものと考えております。
また、平成26年8月にハイキャピタル貸付株式会社(以下、「ハイキャピタル」という。)、TA資産管理貸付有限会社(旧 ケージェイアイ貸付金融有限会社、以下、「TA資産管理貸付」という。)、及びネオラインクレジット貸付株式会社(以下、「ネオラインクレジット」という。)(以下、総称して「系列金融会社」という。)の貸付事業を、親愛貯蓄銀行に譲渡し、事業譲渡後は、貸付業務は親愛貯蓄銀行に集約し、系列金融会社は、不良債権の買取り及び回収に特化するという体制といたしました。
これらにより、同国における総合金融サービスを展開する上でのインフラが整ったことから、今後は各事業体を有機的に展開させることにより、最大限のシナジー効果が得られるような事業展開を図ってまいります。
また、アドアーズ株式会社(以下、「アドアーズ」という。)において、平成26年9月に、JBアミューズメント株式会社(現 株式会社マジェスター、大韓民国、韓国KOSDAQ上場)が実施する第三者割当増資を引受け、同社と協力関係を構築することに合意いたしました。今後、カジノ事業に関するノウハウの提供等を通じて協力関係を推し進め、双方の強みを最大限に活かしたシナジーを創出し、当社グループのアミューズメント事業における付加価値の向上、業容拡大に努めてまいります。
当社グループでは、今後、アジア地域における当社グループ・協力会社及びその拠点をネットワーク化し、金融、不動産、アミューズメント分野におけるそれぞれの企業の強みを結集して、より付加価値の高いサービスをアジア規模で展開することにより、アジア経済の一層の発展に貢献してまいります。
③ 国内での事業展開について
平成27年1月に、KCカード株式会社(以下、「KCカード」という。)の「KCカード」ブランドを譲渡したことにより、同社の商号を「Jトラストカード株式会社(以下、「Jトラストカード」という。)」に変更し、株式会社NUCS(以下、「NUCS」という。)の一部事業を承継するなど、当社グループのクレジットカード事業を新たな体制で再構築する組織再編を行いました。今後も新たな「Jトラストカード」ブランドを中心に顧客基盤の拡大と強化を図り、同事業の拡充を進めてまいります。
また、アドアーズにおいて、平成26年11月に、株式会社日本介護福祉グループ(以下、「日本介護福祉グループ」という。)の全株式を取得し、当社グループとして新たに介護事業を開始いたしました。今後は、日本介護福祉グループがこれまで培ってきた介護・福祉のノウハウやご利用者・ご家族・地域とのリレーションを活用し、行政ニーズにも即した介護施設への転換や多様なニーズに応える新たな介護サービスの開始など、積極的な事業展開を行ってまいります。
当連結会計年度における営業収益は、「KCカード」ブランドの譲渡やカードキャッシングを主とする割賦立替金残高の減少により割賦立替手数料が減少したことや、消費税増税等の影響を受けてアミューズメント事業売上高が減少した一方で、韓国において、親愛貯蓄銀行が系列金融会社から貸付事業を譲受けたことにより銀行業における営業収益が増加したことや、前連結会計年度において貸借対照表のみの連結となったTA資産管理貸付及びハイキャピタルにおける貸付金利息が第1四半期連結会計期間において寄与したこと、さらに当連結会計年度に新規連結された日本介護福祉グループの介護事業収益をはじめとする事業収益が増加した結果、63,281百万円(前年同期比2.2%増)となりました。
営業損益につきましては、一時的な要因として、TA資産管理貸付やハイキャピタルの子会社化や、親愛貯蓄銀行においてJTキャピタルの債権譲受けにより残高が大幅に増加したうえ、不良債権処理を進めたことに伴い貸倒引当金繰入額がそれぞれ増加したこと、また親愛貯蓄銀行において、第1四半期連結会計期間において、当社グループ内の資金の効率化や今後の韓国事業におけるグループ内再編等も視野に入れ不良債権を売却したことに伴い債権売却損を計上したこと等により営業費用が増加したことなど、韓国における総合金融サービスを展開する上でのインフラの整備に伴う先行費用が大きく影響し、5,217百万円の営業損失(前年同期は13,745百万円の営業利益)となりました。
経常損益につきましては、為替差益等の計上により増加したものの2,385百万円の経常損失(前年同期は13,351百万円の経常利益)となりました。
当期純損益につきましては、株式会社日本保証(以下、「日本保証」という。)において、希望退職者募集に伴う事業構造改善費用を計上した一方で、JT貯蓄銀行やJTキャピタル等の株式取得に係る負ののれん発生益を特別利益に計上したこと等により、10,143百万円(前年同期比9.0%減)の当期純利益となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
① 金融事業
(信用保証業務)
信用保証業務につきましては、日本保証、株式会社クレディア及びKCカードにおいて取り扱っております。中長期的な戦略として信用保証業務の拡充を掲げ、平成27年4月末現在、地域金融機関5行と保証業務提携を行っております。また、平成26年4月から賃貸住宅ローンに対する保証業務をスタートさせ、平成27年2月には大手ハウスメーカー、フラット35代理店等と提携し、フラット35との協調融資型の賃貸住宅ローン保証業務の取り扱いを開始するなど、新たな保証スキームによる保証残高の積み上げも図っております。平成27年1月に実施した「KCカード」ブランドの譲渡対象に信用保証事業も含まれていたため、保証業務提携先である地域金融機関が6行減少し、債務保証残高も大幅な減少となりましたが、今後も信用保証事業を推進していく戦略に変更はなく、当社グループの金融ビジネスにおける与信ノウハウと提携先金融機関のブランド力を融合し、お客様の幅広い資金ニーズにお応えしながら、安定的な収益を確保するとともに、保証業務提携先の拡大を通じて信用保証業務の拡充を図ってまいります。これらの結果、当連結会計年度末における債務保証残高は、無担保貸付に対する保証では13,890百万円(前年同期比33.9%減)、有担保貸付に対する保証では22,821百万円(前年同期比15.1%増)となり、債務保証残高の合計では36,712百万円(前年同期比10.1%減)となりました。
(債権買取業務)
国内の債権買取業務につきましては、日本保証、パルティール債権回収株式会社、合同会社パルティール、合同会社パルティール・ワン及び合同会社パルティール・ケーシーにおいて取り扱っております。新たな債権について積極的に買取りを行っており、当連結会計年度末における買取債権残高は3,906百万円(前年同期比54.5%増)となりました。なお、合同会社パルティール・ケーシーは売却により連結子会社から除外しております。
(クレジット・信販業務)
クレジット・信販業務につきましては、主にJトラストカード(KCカード含む)及びNUCSにおいて取り扱っております。クレジット会員数や顧客単価の増加を目的として、クレジットカードの決済機能を使った様々なサービスや商品を提供し、ショッピングクレジット、キャッシング及びローン等のサービス提供による収益確保に努めておりますが、融資残高は主に「KCカード」ブランドを譲渡したことやカードキャッシングにおける回収が進んだことにより大幅に減少しております。
これらの結果、当連結会計年度末における割賦立替金残高は1,395百万円(前年同期比96.5%減)、長期営業債権は27百万円(前年同期比97.4%減)、長期営業債権を含めた割賦立替金残高の合計は1,422百万円(前年同期比96.5%減)となりました。
(事業者向貸付業務)
国内の事業者向貸付業務につきましては、主に日本保証において取り扱っております。商業手形につきましては、一時減少傾向にあったものの取引金融機関における商業手形枠の増枠を背景として積極的に取り組んだことにより残高維持で推移しておりますが、営業貸付金につきましては、債権担保融資が増加した一方で、不動産担保融資における大口貸付先の完済等、回収が順調に進んだことにより減少しております。
これらの結果、当連結会計年度末における融資残高は、商業手形では2,355百万円(前年同期比0.6%減)、営業貸付金では1,904百万円(前年同期比13.5%減)、長期営業債権では101百万円(前年同期比86.7%増)となり、長期営業債権を含めた融資残高の合計では4,362百万円(前年同期比5.7%減)となりました。
(消費者向業務)
国内の消費者向業務につきましては、日本保証、株式会社クレディアにおいて取り扱っておりますが、当社グループは信用保証事業に注力することとし、基本的には新規業務は取扱っておりません。
当連結会計年度末における融資残高は、日本保証において更生会社株式会社武富士(現 更生会社TFK株式会社)から承継した消費者金融事業からの回収を中心に回収が順調に進んだことにより減少し、営業貸付金では5,222百万円(前年同期比22.4%減)、長期営業債権では762百万円(前年同期比38.6%減)、長期営業債権を含めた融資残高の合計では5,985百万円(前年同期比25.0%減)となりました。
以上の結果、金融事業における営業収益は18,790百万円(前年同期比25.7%減)、セグメント利益はクレジット・信販業務においてKCカードの利息返還損失引当金繰入額が増加したこと等により、販売費及び一般管理費が増加し、1,852百万円(前年同期比83.8%減)となりました。
② 不動産事業
不動産事業につきましては、一戸建分譲を中心とするキーノート株式会社(以下、「キーノート」という。)において、市況が冷え込む中でも販売戸数を堅調に伸ばしたほか、消費税増税前の駆け込み需要の集中によって一部の物件の完工引渡しが年度を跨いだこと等により好調に推移いたしました。また、不動産アセット事業につきましても、アドアーズにおいて、都心エリアにおける保有不動産の売却益が大きく収益に貢献したほか、その他の保有不動産における安定した賃料収入が下支えするなど順調に推移いたしました。
以上の結果、不動産事業における営業収益は5,822百万円(前年同期比17.0%増)、セグメント利益は402百万円(前年同期比18.9%減)となりました。
③ アミューズメント事業
アミューズメント事業につきましては、株式会社ブレイクにおいてアミューズメント機器用景品の製造・販売を、アドアーズにおいてアミューズメント施設運営等を行っております。アミューズメント施設運営におきましては、メダルゲームに軸足を置いた各種イベントや販売促進活動を行ったほか、前連結会計年度より注力してきた販促・ブランディング活動において、情報発信力の高い店舗とキャラクターコンテンツとのコラボレーション企画を数多く実施したほか、新たにカフェ業態として、各種キャラクターコンテンツとのコラボレーションカフェ「Anime Plaza(アニメプラザ)池袋店」を開設するなど新規顧客層の獲得に努めた結果、顧客単価及び集客数の下支えには奏功したものの、消費税増税による個人消費減退の影響を補うには至らず、売上・利益ともに軟調に推移いたしました。また、アミューズメント機器用景品の製造・販売におきましては、期初において好調であったオリジナル景品及び雑貨系景品の製造並びに販売が若干伸び悩んだものの、その他の人気キャラクター景品の販売が好調であったことから、売上は好調に推移いたしましたが、利益率の高いオリジナル景品等の仕入れが追い付かず、利益面では軟調に推移いたしました。
以上の結果、アミューズメント事業における営業収益は15,087百万円(前年同期比9.1%減)、セグメント利益は483百万円(前年同期比49.2%減)となりました。
④ 海外事業
東南アジアにつきましては、シンガポールにおいて、JTAが投資事業及び投資先の経営支援を、インドネシアにおいて、ムティアラ銀行が銀行業務を行っております。JTAにつきましては、平成27年3月にタイ証券取引所一部上場会社であるGroup Lease PCLの転換社債引受契約を締結するなど、成長著しい東南アジア地域で事業を拡大するとともに、そのネットワーク化によるシナジー効果が最大限に発揮できるような事業展開を企図しております。なお、ムティアラ銀行は、当連結会計年度では、貸借対照表のみを連結しております。
また、韓国につきましては、親愛貯蓄銀行及びJT貯蓄銀行が貯蓄銀行業務を、TA資産管理貸付、ネオラインクレジット及びハイキャピタルが主に不良債権の買取及び回収業務を、JTキャピタルが割賦業務及びリース業務に従事しております。なお、JTキャピタルは、当連結会計年度では、貸借対照表のみを連結しております。
銀行業における貸出金につきましては、韓国において平成26年8月に親愛貯蓄銀行が系列金融会社から貸付事業を譲受けたことや、平成27年1月にJT貯蓄銀行を取得したこと、インドネシアにおいて平成26年11月にムティアラ銀行を取得したことにより大幅に増加しております。また、営業貸付金につきましても、親愛貯蓄銀行への貸付事業の譲渡により減少した一方、平成27年3月にJTキャピタルを取得したことにより増加しております。
これらの結果、当連結会計年度末における融資残高は、銀行業における貸出金では224,401百万円(前年同期比380.5%増)となり、営業貸付金では58,188百万円(前年同期比44.4%増)、長期営業債権では1,513百万円(前年同期比6.4%減)、長期営業債権を含めた営業貸付金残高の合計では59,701百万円(前年同期比42.4%増)となりました。また、NPL債権の買取等により買取債権残高は4,741百万円(前年同期は零)となりました。
以上の結果、海外事業における営業収益は、19,857百万円(前年同期比50.3%増)となりました。セグメント損失は、親愛貯蓄銀行における債権売却損の計上や貸倒引当金繰入額の増加等による一時的な要因による影響によって、5,811百万円の損失(前年同期は3,046百万円のセグメント利益)となりました。
海外事業、特に韓国事業は、当連結会計年度は将来における収益創造のための基盤の整備に注力したため、費用先行による赤字の状態が続いておりましたが、ようやく総合金融サービスを展開する上でのインフラが整ったことから、今後は着実に黒字化に向けて進展していくものと考えております。
⑤ その他の事業
その他の事業につきましては、主にJトラストシステム株式会社が当社グループのシステム開発、コンピュータの運用及び管理業務を、キーノートが設計・施工事業を、アイ電子株式会社がパチンコ・パチスロの周辺機器に関するコンピュータシステムの開発・製造・販売業務を、日本介護福祉グループが介護事業を行っております。なお、投資事業、経営コンサルティング事業及びグループ経営管理を行っておりましたJTインベストメント株式会社は清算結了により、印刷事業を行っておりました株式会社エーエーディは売却により連結子会社から除外しております。
以上の結果、その他の事業における営業収益は4,561百万円(前年同期比48.4%増)、セグメント損失は69百万円(前年同期は70百万円のセグメント利益)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、税金等調整前当期純利益の計上や、銀行業における預金が増加したこと、主に債権譲渡を要因として営業貸付金や割賦立替金が減少し資金が増加した一方で、銀行業における貸出金が増加したことや、連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得、長期借入金の返済等により資金が減少した結果、前連結会計年度末に比べ13,288百万円減少し、当連結会計年度末は118,060百万円(前年同期比10.1%減)となりました。
なお、キャッシュ・フローの詳細は、「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。