有価証券報告書-第117期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

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2021/06/25 15:19
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事業等のリスク

投資判断をされる前に以下に述べるリスクについて十分にご検討ください。以下に述べるリスクのいずれかが実際に生じた場合、野村のビジネスや財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。その場合、野村の株式の市場価格が下落し、投資家の皆さまが投資額の全部または一部を失う可能性があります。また、以下に述べられたリスク以外にも、現時点では確認できていない追加的なリスクや現在は重要でないと考えられているリスクも野村に影響を与え、皆さまの投資に影響を与える可能性があります。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
目次
経営環境に関するリスク
1.野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢および金融市場の動向により重大な影響を受ける可能性があります
(1)新型コロナウイルスの流行が、野村のビジネス、顧客および従業員に悪影響を及ぼしており、今後も継続する可能性があります
(2)自然災害、テロ、武力紛争、新型コロナウイルス以外の感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
(3)野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります
(4)英国による欧州連合離脱は、野村のビジネスに各種の影響を与える可能性があります
(5)LIBORから代替金利指標への移行等が、野村のビジネスに不利に影響する可能性があります
(6)市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります
2.金融業界は激しい競争に晒されています
(1)他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています
(2)金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています
(3)野村の海外ビジネスは想定以上に厳しい環境に立たされており、今後、ビジネス・モデルの再構築が成功しない可能性があります
3.市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスクも野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります
4.気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の要素が当社の事業に影響を及ぼす可能性があります
事業に関するリスク
5.野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を生じる可能性があります
(1)トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります
(2)証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります
(3)ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります
(4)野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります
(5)市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります
(6)野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります
(7)野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります
(8)野村の電子取引業務からの収入が減少する可能性があります
6.野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります
(1)大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります
(2)野村の信用リスクに関する情報の正確性や信用リスクの軽減のために受け入れている担保が十分であるという保証はありません
(3)野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります
7.当社は持株会社であり、当社の子会社からの支払に依存しています
8.投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります
9.野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります
財務に関するリスク
10.連結財務諸表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります
11.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります
(1)野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります
(2)野村が資産を売却できなくなる可能性があります
(3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります
12.連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります
非財務リスク
13.役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
14.利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
15.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーション・リスクに影響される可能性があります
(1)野村はさまざまな法的責任を負う可能性があります
(2)野村に適用のあるさまざまな規制により業務が制限され、また行政処分等や損失を受ける可能性があります
(3)金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
(4)経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります
16.野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
17.野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります

経営環境に関するリスク
1.野村のビジネスは日本経済および世界経済の情勢および金融市場の動向により重大な影響を受ける可能性があります
野村のビジネスや収益は、日本経済および世界経済の情勢ならびに金融市場の動向により影響を受ける可能性があります。また、各国の経済情勢や金融市場の動向は、経済的要因だけではなく、戦争、テロ行為、経済・政治制裁、世界的流行病、地政学的リスクの見通しまたは実際に発生した地政学的イベント、あるいは自然災害などによっても影響を受ける可能性があります。仮に、このような事象が生じた場合、金融市場や経済の低迷が長期化し、野村のビジネスに影響が及ぶとともに、大きな損失が発生する可能性があります。あるいは金融市場に限らず、例えば日本が直面する人口高齢化や人口減少の長期的傾向等の社会情勢は、野村の事業分野、特にリテールビジネスの分野において、需要を継続的に圧迫する可能性があります。なお、野村のビジネス・業務運営に影響を与える金融市場や経済情勢に関するリスクには以下のものが含まれます。
(1)新型コロナウイルスの流行が、野村のビジネス、顧客および従業員に悪影響を及ぼしており、今後も継続する可能性があります
2020年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的流行とそれにともなう各国政府による感染拡大防止策により、株価の急落・金利の乱高下・ボラティリティの高まり・クレジット・スプレッドの急拡大等の混乱などのリスクが顕在化しました。日本、欧米や他の地域を含め、都市封鎖の拡大や外出禁止令等の類似の政府要請が世界的に相次ぐ事態を招き、現在も一部の地域でこれらの措置が継続しています。これらの都市封鎖の拡大等に対応するため、野村では、緊急対応措置を実施し、従業員が在宅勤務できるための環境を整備しています。しかしながら、これらの施策が十分に機能せず、遠隔での勤務による、監督上の課題やサイバー攻撃を含む追加的なリスクが増大する可能性もあります。また、このような事態の継続は、一部の地域に限定されたとしても社会・経済機能に影響し、当社のビジネスや収益の結果に影響しており、今後も影響が継続する可能性があります。ワクチン接種が進展することで感染拡大は徐々に収束する可能性はありますが、その後も、世界的な混乱および経済活動の縮小が継続した場合、野村のビジネス、経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。野村は、今後も社内の危機管理とともに経営環境における関連リスク動向を監視・管理していきます。
(2)自然災害、テロ、武力紛争、感染症等により野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを策定しておりますが、想定を上回る規模の災害、テロ行為または武力紛争、広範囲の感染症等により、野村の施設やシステムが被災し、業務の継続が困難になる可能性があります。また、新型コロナウイルス以外の未知の感染症等により役職員による業務遂行に支障が生じる可能性があります。
(3)野村がビジネスを行う国・地域における政府・金融当局による政策の変更が、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります
野村は、国内外の拠点網を通じて、グローバルにビジネスを展開しています。したがって、野村がビジネスを行う国・地域において、政府・金融当局が財政および金融その他の政策を変更した場合、野村のビジネス、財政状態または経営成績に影響を与える可能性があります。また、日本を含む多くの主要各国の中央銀行による金融政策が変更され、それにともなう金利や利回りの変動等が進んだ場合、顧客向け運用商品の提供やトレーディング活動または投資活動等に影響を及ぼす可能性があります。例えば、日本の低金利環境が継続することによるフィクスト・インカム収入の低下などが挙げられます。
(4)英国による欧州連合離脱は、野村のビジネスに各種の影響を与える可能性があります
2020年1月31日、英国は英国および欧州連合間(以下「EU」)の離脱協定に基づき、EUを離脱(以下「Brexit」)し、2020年12月31日には、EU法および諸規定が英国に適用される移行期間(以下「移行期間」)が終了しました。英国およびEUは、移行期間の終了前に両国関係を規定する貿易協力協定を締結しましたが、この協定は金融業界を包括的に取り扱うものではないため、Brexitが野村の事業に及ぼしうる長期的影響については依然として不確実性が継続しています。野村は従来、英国ロンドンに設立した証券会社であるノムラ・インターナショナルPLC(以下「NIP」)を主な地域本部としてビジネスを展開していましたが、移行期間の終了にともない、ドイツ連邦共和国に設立した許認可証券会社であるノムラ・ファイナンシャル・プロダクツ・ヨーロッパGmbH(以下「NFPE」)を中心に顧客サービス等を提供する体制へと転換しています。野村は、移管にともなうリスクを最小限に留めるべく、また市場全体の不確実性の影響を軽減すべく、各種対応を進めていますが、移管の遅延や移管にともなうより広範な金融システムへのリスクが野村のビジネス、経営成績および財政状態に影響が生じる可能性は残存しています。
(5)LIBORから代替金利指標への移行等が、野村のビジネスに不利に影響する可能性があります
野村は、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)などの銀行間取引金利(IBORs)を変動金利として参照する金利スワップをはじめとしたデリバティブ取引や、債券等の引受・販売を行っています。LIBORを不正に操作する事件が2012年に発生した後、2021年3月5日にFinancial Conduct Authorityが公表した声明によって、すべての通貨・テナーのLIBORについて公表停止時期が確定しました。日本をはじめとした各国当局からも、LIBORを参照する金融取引について、代替金利指標への移行や、LIBORの恒久的な公表停止に備えた対応を求める意向が示されてきており、LIBORを参照する契約のうち公表停止以降も継続するものは代替金利指標を参照するよう置き換えるか、フォールバック・レートを契約当事者間で公表停止前に予め合意しておくか、いずれかが求められます。野村は、LIBORを参照する取引を円滑に移行させるため、全社でのLIBOR移行プログラムを開始しました。しかしながら、代替金利指標の詳細な仕様については各国で議論が続けられている状態であることに加え、移行にともなって適用される金利指標の計算方法の変更や、締結される契約や適用される会計処理の変更等により、システムの改修やオペレーションの変更、顧客への情報開示等への対応にかかる追加的な費用やリスクの発生、IBORsを変動金利として参照するデリバティブ取引や債券等の価格や価格変動性、市場流動性に影響を与える可能性があり、その結果、野村のビジネス、財政状態および経営成績に重大な影響を与える可能性または取引の相手方や取引関係者との紛争や訴訟等が発生する可能性があります。また、代替金利指標を参照する取引が市場に普及・定着していないため、今後の動向には不確実性があり、野村のビジネスに起こりうる混乱を回避できない可能性があります。
(6)市場低迷の長期化や市場参加者の減少が流動性を低下させ、大きな損失が生じる可能性があります
市場低迷が長期化すると、野村の業務に関連する市場において取引量が減少し、流動性が低下します。また、規制強化を背景とする金融機関の市場関連業務の縮小も市場の流動性に影響を与えます。この結果、市場において、野村は、自己の保有する資産を売却またはヘッジすることが困難になるほか、当該資産の市場価格が形成されず、自己の保有する資産の時価を認識できない可能性があります。特に店頭デリバティブ等においてはポジションのすべてを適切に解消し、またはヘッジすることができない場合に大きな損失を被る可能性があります。さらに、市場の流動性が低下し、自己の保有するポジションの市場価格が形成されない場合、予期しない損失を生じることがあります。
野村は、これらの市場リスクおよび資金流動性リスク等を日々計測し、事前に設定したリミットを超過する場合は即座の対応をとる等のリスク管理体制を整備しています。
2.金融業界は激しい競争に晒されています
野村のビジネスは激しい競争に晒されており、この状況は今後も続くことが予想されます。野村は、取引執行能力や商品・サービス、イノベーション、評判(レピュテーション)、価格など多くの要因において競争しており、特に、仲介業務、引受業務などで激しい価格競争に直面しています。
(1)他の金融機関や非金融企業の金融サービス等との競争が激化しています
1990年代後半から、日本の金融業界では規制緩和が進みました。2004年には銀行およびその他の金融機関がブローカレッジ業務に参入可能となり、2009年には商業銀行と証券会社間のファイアーウォール規制が緩和され、競合他社は関係のある商業銀行とより密接に協業することができるようになりました。競争力を増した日本の大手商業銀行の系列証券会社や外資系証券会社は、セールス・トレーディング、投資銀行業務、リテールビジネスの分野において、野村のシェアに影響を及ぼしています。上記に加え、近年はオンライン証券会社の台頭の他、デジタライゼーションやデジタル・トランスフォーメーション(DX)と呼ばれる潮流によりフィンテック企業の台頭や非金融企業の金融サービス参入など、従来の業界領域を超え、競争が一層激化の様相を呈しています。野村はこうした競争環境の変化に対応するべく、既に多角的な取組みを始動させています。しかしながら、激化する競争環境において、このような取組みが野村のシェアの維持拡大に効果を発揮できない場合、ビジネス獲得の競争力が低下し、野村のビジネスおよび経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(2)金融グループの統合・再編、各種業務提携や連携の進展により競争が激化しています
金融業界において、金融機関同士の統合・再編が進んでいます。特に、大手の商業銀行、その他幅広い業容を持つ大手金融グループは、その傘下における証券業の設置および獲得ならびに他金融機関との連携に取り組んでいます。これら大手金融グループが、総合的な金融サービスをワンストップで顧客に提供すべく、グループ内での事業連携を引き続き強化しています。具体的には、ローン、預金、保険、証券ブローカレッジ業務、資産運用業務、投資銀行業務など、グループ内での幅広い種類の商品・サービスの提供を進めており、この結果として金融グループの競争力が野村に対し相対的に高まる可能性があります。また、金融グループは、市場シェアを獲得するために、商業銀行業務その他金融サービスの収入により投資銀行業務や証券ブローカレッジ業務を補う可能性があります。また、グループの垣根を越えた商業銀行と証券業との提携や、昨今では新興企業を含む事業会社との提携等、業態・業界を超えた連携へと広がる傾向も見られ、これらの大手金融グループの事業拡大や提携等による収益力の向上などにより、野村の市場シェアが低下する可能性があります。
(3)野村の海外ビジネスは厳しい環境に立たされており、ビジネス・モデルの更なる見直しが必要となる可能性があります
海外には多くのビジネスの機会およびそれにともなう競争が存在します。野村は、これらのビジネス機会を有効に活用するため、米国、欧州、アジアなどの重要な海外市場において競合金融機関と競争しています。このような競争に向けて、野村は海外ビジネスの強化のため、2008年にリーマン・ブラザーズの欧州、中東の一部の事業およびアジアの事業を承継し、またそれらの地域および米国において業務の再構築と拡大を行うために多大な経営資源を投資してきました。
一方で、欧州金融機関による市場関連業務からの撤退や各国中央銀行による金融緩和政策等を背景に、市場構造が大きく変化しており、市場全体の流動性も低下しています。野村は、このような厳しい環境に対応するべく取り組んでいますが、2019年3月期においては81,372百万円ののれん減損を計上することとなりました。
2019年4月以降、野村のホールセール部門は、オペレーティングモデルのシンプル化、ビジネスポートフォリオの見直し、および顧客ビジネスと成長地域への注力を行うべく、ビジネスプラットフォームの再構築をしており、その見直しにより、不採算ビジネスの縮小・撤退を行うとともに、各地域で強みのあるビジネスに注力する体制を構築しています。野村は、国際的な事業展開を展開していくにあたり、オーガニックだけでなく、2020年のグリーンテック社の買収などインオーガニックにも、事業を成長させてきました。今後も、競争環境を俯瞰しながらビジネスポートフォリオ全体の見直しは継続し、各種リスクを考慮のうえで戦略を実行していく所存ですが、スピードも意識する必要がある中で想定以上の費用がかさんだり、財務、経営その他の資源を想定以上に投じたりすることとなった場合などには、野村のビジネスおよび経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。また、戦略の土台となる想定が正しくなかった場合、得られる利益が想定以上に落ち込むなど、結果として野村のビジネスおよび経営成績に影響を与える可能性があります。さらに、戦略の実行にともなう人員数や報酬の削減により、野村のビジネスの成功に必要な従業員の獲得および維持に悪影響が及ぶ可能性があります。また、経営体制の合理化が適切に行われなかった場合、野村がグローバルに展開するビジネスを適切に管理監督するための機能に影響を及ぼす可能性があります。
3.市場リスクや資金流動性リスクだけではなく、イベント・リスクも野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせる可能性があります
イベント・リスクとは、事前に予測が困難な出来事(例えば、自然災害、人災、流行病、テロ行為、武力紛争、政情不安、その他野村のビジネスや取引相手等に影響を与える出来事)によりマーケットに急激な変動がもたらされた場合に発生する潜在的な損失をいいます。これらには、2011年3月の東日本大震災、2017年の北朝鮮による核実験実施等にともなう朝鮮半島情勢の緊張の高まり、2018年以降の米中通商摩擦、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大のような突然かつ想定外の貿易環境や安全保障政策の急変などの社会的に重大な事象のほか、より個別具体的に野村のトレーディング資産や投資資産に損失を生じさせるおそれのある、次のような出来事が含まれます。
・主要格付機関による、野村のトレーディング資産や投資資産に関する信用格付の突然かつ大幅な格下げ
・野村のトレーディング戦略を陳腐化させ、競争力を低下させ、または実行不能にするような、トレーディング、税務、会計、金融規制、法律その他関連規則の突然の変更
・野村が関与する取引が予測不能な事由により遂行されないために野村が受取るべき対価を受取れないこと、または野村がトレーディングもしくは投資資産として保有する有価証券の発行会社の倒産や詐欺的行為もしくはこれらに対する行政処分等
4.気候変動やそれに関わる各国の政策変更などを含む、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の要素が野村の事業に影響を及ぼす可能性があります
企業経営における環境、社会、ガバナンス(以下「 ESG 」)の側面に注目が高まる中、野村はこれらの分野における取組みを継続的に発展させ、株主、顧客、および社会全体を含むステークホルダーの観点からも、積極的にその態勢を整えることが必要となっています。ESGへの配慮が充分でない事業活動は、野村の持続可能なビジネス・モデルの構築を妨げるばかりでなく、中長期的には、気候変動などESG関連のリスクに対する脆弱性を高める可能性があります。
野村は、気候変動が主要なグローバル課題の一つであると認識しています。気候変動がもたらす直接的な影響と、それにともなうビジネス環境の変化により野村は損失を被る可能性があります。気候変動リスクとは、異常気象によって引き起こされる災害や海面上昇などにより、人的被害や財産的損害が生じるリスク(物理的リスク)と、気候変動リスクに対処するための移行に向けた各国政府の政策変更や急速な技術革新等により、変化に対応できずに取り残されるリスク(移行リスク)に大別され、それらの変化に対応できないビジネスや資産が毀損されるリスクを含みます。
事業に関するリスク
5.野村のビジネスは業務遂行にあたってさまざまな要因により損失を生じる可能性があります
(1)トレーディングや投資活動から大きな損失を被る可能性があります
野村は自己売買および顧客取引のために、債券市場や株式市場等でトレーディング・ポジションと投資ポジションを保有しております。野村のポジションはさまざまな種類の資産によって構成されており、その中には株式、金利、通貨、クレジットなどのデリバティブ取引、さらに貸付債権、リバース・レポも含まれます。これらの資産が取引される市場の変動は、当該資産のポジションの価値に影響を与える場合があり、それぞれ下落はロング・ポジションに、上昇はショート・ポジションに影響を及ぼす可能性があります。そのため、野村はさまざまなヘッジ手法を用いてポジションリスクの軽減に努めていますが、それでも資産の価格変動により、また、金融市場や経済情勢が急激に変化するような場合には、金融システム全体に過度のストレスがかかり、市場が野村の予測していない動きをすることにより、野村は損失を被る可能性があります。
野村のビジネスは市場のボラティリティ水準の変化の影響を既に受けているか、または、将来、受ける可能性があります。野村のトレーディングビジネスの一部であるトレーディングや裁定取引の機会は市場のボラティリティの変化により作り出されます。したがって、ボラティリティが低下した場合、取引機会が減少し、これらのビジネスの結果に影響を与える可能性があります。一方、ボラティリティが上昇した場合は、トレーディング量やスプレッドを増加させることがありますが、これによりバリュー・アット・リスク(以下「VaR」)で計測されるリスク量が上昇し、野村はマーケットメイキングや自己勘定投資にともなって高いリスクに晒され、またはVaRの増加を避けるためにこれらのビジネスのポジションまたは取引量を減らすことがあります。
例えば、2021年3月には、米国顧客とのプライム・ブローカレッジ取引において顧客にマージンコールを要請するも入金がなく債務不履行を通知して契約解消を行い、当該顧客との取引のヘッジとして保有していたポジションの処理を実施しました。詳細は3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]エグゼクティブ・サマリー「米国PB顧客取引に関する損失」をご参照ください。市場への影響と当社の損失の最小化を図りながらポジション処理を進めましたが、2021年3月期に2,042億円のトレーディング損失を計上したほか、当該取引先が担保として差し入れていた有価証券の貸付金に対する価値が減少したことにともない現在予想信用損失にかかる貸倒引当金繰入額416億円を計上することとなりました。2022年3月31日に終了する連結会計年度の第1四半期連結会計期間において、当該ポジションの解消が完了したことにより、2021年6月30日に終了する四半期連結会計期間において約650億円の追加損失を計上する見込みです。当社は、米国PB顧客取引に関する損失への対応として、リスク管理活動の改善を含めて取り組んでおりますが、当社のビジネス・モデルには必然的に重要なトレーディング活動が含まれており、その結果、将来的に再び重要な損失を計上する可能性があります。
さらに野村は、資本市場における取引を円滑に進めるために、引受業務やトレーディング業務にともない比較的大きなポジションを保有することがあります。また、野村が投資商品の開発を目的としてパイロット・ファンドを設定してポジションを保有し、投資商品の設定・維持を目的としてシード・マネーに出資を行うことがあります。野村は市場価格の変動によりこれらのポジションから大きな損失を被る可能性があります。
加えて、野村が担保を提供する取引においては、担保資産の価値の大幅な下落や、野村の格付の低下をはじめとした信用力の低下が発生した場合は、追加担保を必要とするなど取引コストの上昇および収益性の低下を招く可能性があります。一方、担保の提供を受ける取引においては、資産価値の下落が顧客取引の減少につながり、それにともなう収益性の低下を招く可能性があります。米国PB顧客取引に関する損失の後、複数の格付機関が我々の格付に対する見通しを下方修正しましたが、前向きに解決しなければ、我々の格付は引き下げられる可能性があります。「財務に関するリスク - 11.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります - (3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります」をご参照ください。
(2)証券やその他の資産に大口かつ集中的なポジションを保有することによって、野村は大きな損失を被る可能性があります
野村は、マーケット・メイク、ブロックトレード、引受業務、証券化商品の組成、プライム・ブローカレッジ取引、第三者割当による新株予約権付社債等の買い取り業務、または、顧客ニーズに対応した各種ソリューション・ビジネス等においては、特定の資産を大口かつ集中的に保有することがあり、多額の資金をこれらのビジネスに投じています。その結果、しばしば特定の発行者または特定の業界、国もしくは地域の発行者が発行する証券または資産に大口のポジションを保有することがあります。これらの有価証券の価格の変動は、必要に応じてそれらを処理・換金できる価格に重大な影響を与える可能性があり、その結果、米国PB顧客取引に関する損失に関連して発生したような、重大なトレーディング損失を計上することがあります。3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]エグゼクティブ・サマリー「米国PB顧客取引に関する損失」もご参照ください。なお、一般に、商業銀行、ブローカー・ディーラー、清算機関、取引所および投資会社といった金融サービス業に携わる発行者に対するエクスポージャーが大きくなる傾向があります。また、顧客や取引先とのビジネスにより、特定の国や地域の発行者が発行する証券を保有する場合があります。加えて、住宅および商業用不動産ローン担保証券などの資産担保証券についても、市場価格が変動すると、野村は損失を被る可能性があります。
(3)ヘッジ戦略により損失を回避できない場合があります
野村はさまざまな方法や戦略を用い、当社が自己または顧客のために締結する金融商品から生じるリスクに対するエクスポージャーをヘッジしています。ヘッジ戦略が効果的に機能しない場合、野村は損失を被る可能性があります。野村のヘッジ戦略の多くは過去の取引パターンや相関性に根拠を置いています。例えば、ある資産を保有する場合は、それまでその資産の価値の変化を相殺する方向に価格が動いていた資産を保有することでヘッジを行っています。しかし野村は、さまざまな市場環境においてあらゆる種類のリスクに晒されており、過去の金融危機の際に見られたように、過去の取引パターンや相関性が維持されず、これらのヘッジ戦略が必ずしも十分に効果を発揮しない可能性があります。さらに、すべてのヘッジ戦略がすべての種類のリスクに対して有効であるわけではなく、リスクが適切に管理されていない場合には、特定の戦略がリスクを増加させる可能性があります。例えば、米国PB顧客取引に関する損失に至る取引の多くは、顧客に特定の株式に対する 「トータル・リターン・スワップ」と呼ばれるデリバティブ取引のエクスポージャーを増大させていました。詳細は3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]エグゼクティブ・サマリー「米国PB顧客取引に関する損失」をご参照ください。当社は、顧客へのトータル・リターンスワップをヘッジするために、原資産を保有していました。しかしながら、この特定のヘッジ戦略は、顧客によるデフォルトのリスクや、変動の激しい市場環境において当該ポジションを処理する必要が出る場面のリスクをヘッジすることを意図したものではありませんでした。このようなリスクが顕在化した際、原資産を保有するというヘッジ戦略において市場の変動に晒され、損失を計上するに至りました。
(4)野村のリスク管理方針や手続きがリスクの管理において十分に効果を発揮しない場合があります
リスクの特定、モニターおよび管理を行うための野村の方針や手続きが十分な効果を発揮しない場合があります。例えば、野村のリスク管理方法の一部は過去の金融市場におけるデータの動きに基づいて設計、構築されていますが、将来の金融市場における個々のデータの振る舞いは、過去に観察されたものと同じであるとは限りません。その結果、将来のリスク・エクスポージャーが想定を超えて、大きな損失を被る可能性があります。また、野村が使用しているリスク管理方法は、市場、顧客等に関する公表情報または野村が入手可能な情報の評価をよりどころとしています。これらの情報が正確、完全、最新なものではなく、あるいは正しく評価されていない場合には、野村は、リスクを適切に評価できず、大きな損失を被る可能性があります。加えて、市場の変動などにより野村の評価モデルが市場と整合しなくなり、適正な評価やリスク管理が行えなくなる可能性があります。さらに、当社の組織構造やガバナンスの枠組みにおける潜在的な弱点があった場合には、各自の役割や責任について誤解を招く可能性もあります。また、規程や手続き自体の精度にかかわらず、その趣旨が有効に機能するためには適切に実行に移され、遵守されなければなりません。
例えば、米国PB顧客取引に関する損失においては、顧客のカウンターパーティ・リスクや、顧客とのプライム・ブローカレッジ取引の原資産である有価証券に関する市場リスクのエクスポージャーにより巨額の損失が生じました。当社は、リスク管理の方針・手続きおよびその実施状況を総合的に見直し、改訂し、強化するための諸施策を検討し、実施しております。1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](米国顧客との取引に起因した多額損失に関する課題)をご参照ください。それら対策は進行中ですが、完了したとしても、将来の同様のリスク管理上の弱点を防止したり、同じ事業内または他の事業において将来の損失を防止するための規程や手続きが有効ではなくなるようなその他の弱点を特定して修正したりするためには十分ではない可能性があります。
(5)市場リスクによって、その他のリスクが増加する可能性があります
前述の野村のビジネスに影響を与えうる可能性に加え、市場リスクがその他のリスクを増幅させる可能性があります。例えば、金融工学や金融イノベーションを用いて開発された金融商品に内在する諸リスクは市場リスクによって増幅されることがあります。
また、野村が市場リスクによりトレーディングで大きな損失を被った場合、野村の流動性ニーズが急激に高まる可能性があり、一方で、野村の信用リスクが市場で警戒され、資金の調達が困難になる可能性があります。
さらに、市場環境が悪化している場合に、野村の顧客や取引相手が大きな損失を被り、その財政状態が悪化した場合には、先だっての米国PB顧客取引に関する損失顧客や取引相手に対する信用リスクが増加する可能性があります。
(6)野村の仲介手数料やアセット・マネジメント業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢が低迷すると、野村が顧客のために仲介する証券取引の取扱高が減少するため、仲介業務にかかる収入が減少する可能性があります。また、アセット・マネジメント業務については、多くの場合、野村は顧客のポートフォリオを管理することで手数料を得ており、その手数料額はポートフォリオの価値に基づいています。したがって、市場の低迷によって、顧客のポートフォリオの価値が下がり、解約等の増加や新規投資の減少が生じることによって、野村がアセット・マネジメント業務から得ている収入も減少する可能性があります。また、顧客の資産運用の趣向が変化し、預金などの安定運用や、相対的に低手数料率であるパッシブファンドなどへシフトすることで、これらの収入は減少する可能性があります。
(7)野村の投資銀行業務からの収入が減少する可能性があります
金融市場や経済情勢の変動によって、野村の行う引受業務や財務アドバイザリー業務などの投資銀行業務における案件の数や規模が変化する可能性があります。これらの業務の手数料をはじめとして、投資銀行業務からの収入は、野村が取り扱う案件の数や規模により直接影響を受けるため、野村の投資銀行業務および当該業務における顧客等に好ましくない形で経済または市場が変動した場合には、これらの収入が減少する可能性があります。
例えば新型コロナウイルスの世界的流行による2020年2月以降の市場低迷を受けて、2019年3月期と比べて2020年3月期の投資銀行業務の収益は落ち込みました。2021年3月期は2020年3月期に比べれば回復しているものの、M&A案件やその他の投資銀行業務の減少により収益が低迷する可能性もあります。
(8)野村の電子取引業務からの収入が減少する可能性があります
電子取引システムは、野村のビジネスにとって、少ないリソースで効率的に迅速な取引を執行するために必要不可欠なシステムです。これらのシステムを利用することにより、取引所またはその他の電子取引市場を介して効率的な執行プラットフォームおよびオンライン・コンテンツやツールを顧客に提供することが可能となります。電子取引における競争は激化しており、競合他社における大幅な手数料の引き下げや無手数料取引の導入は、野村の電子取引収益だけでなく収益全体を圧迫する可能性があります。取引手数料やスプレッド等を含むこれらの電子取引業務からの収入は、野村が取り扱う案件の数や規模により直接影響を受けるため、金融市場や経済情勢が変動した結果、顧客の取引頻度の低下または取引額の低下が生じた場合にはこれらの収入が減少することが予想されます。電子取引の利便性により取引量は今後増加する可能性がありますが、取引手数料の低下を補填するほど十分でない場合は、野村の収入が減少する可能性があります。野村は今後も効率的な取引プラットフォームの提供に関する技術開発投資を続けていく予定ですが、電子取引の手数料の値下げ圧力が高まった場合には、当該投資から生み出される収益を最大限に確保できない可能性があります。
6.野村に債務を負担する第三者がその債務を履行しない結果、損失を被る可能性があります
野村の取引先は、ローンやローン・コミットメントに加え、その他偶発債務、デリバティブなどの取引や契約により、野村に対して債務あるいは担保差入れ等の一定の義務を負うことがあります。これら取引先が法的整理手続きの申請、信用力の低下、流動性の欠如、人為的な事務手続き上の過誤、政治的・経済的事象による制約など、さまざまな理由で債務不履行に陥った場合、野村は大きな損失を被る可能性があります。米国PB顧客取引に関する損失では、米国のプライム・ブローカレッジ取引の顧客が、トレーディング業務に関して追加証拠金を差し入れる義務と、当社が保有する担保に対して貸し付けた金額を返済する義務を不履行にしました。詳細は3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]エグゼクティブ・サマリー「米国PB顧客取引に関する損失」をご参照ください。貸倒引当金の準備と維持は行っていますが、当該引当金は、入手可能な限りの情報に基づく経営者の判断および仮定に基づいています。しかしながら、これらの判断および仮定は、不正確であることが判明する可能性があります。
信用リスクは、次のような場合からも生じます。
・第三者が発行する証券の保有
・証券、先物、通貨またはデリバティブの取引において、クレジット・デフォルト・スワップの取引相手である金融機関やヘッジファンドなど野村の取引相手に債務不履行が生じた場合や、決済機関、取引所、清算機関その他金融インフラストラクチャーのシステム障害により所定の期日に決済ができない場合
第三者の信用リスクに関連した問題には次のものが含まれます。
(1)大手金融機関の破綻が金融市場全般に影響を与え、野村に影響を及ぼす可能性があります
多くの金融機関の経営健全性は、与信、トレーディング、清算・決済など、金融機関間の取引を通じて密接に連関しています。その結果、ある特定の金融機関に関する信用懸念や債務不履行が、他の金融機関の重大な流動性問題や損失、債務不履行を引き起こし、決済・清算機関、銀行、証券会社、取引所といった、野村が日々取引を行っている金融仲介機関にも影響を及ぼす可能性があります。また将来発生しうる債務不履行や債務不履行懸念の高まり、その他類似の事象が、金融市場や野村に影響を及ぼす可能性があります。国内外を問わず、主要な金融機関が流動性の問題や支払能力の危機に直面した場合、野村の資金調達にも影響を及ぼす可能性があります。
(2)野村の信用リスクに関する情報の正確性や信用リスクの軽減のために受け入れている担保が十分であるという保証はありません
野村は信用に懸念のある顧客や取引相手、特定の国や地域に対するクレジットエクスポージャーを定期的に見直しています。しかし、債務不履行が発生するリスクは、粉飾決算や詐欺行為のように発見が難しい事象や状況から生じる場合があります。また、野村が取引相手のリスクに関し、すべての情報を手に入れることができない、あるいは情報を正確に管理・評価できない可能性があります。例えば、米国PB顧客取引に関する損失の原因となった債務不履行に陥った顧客に関する信用リスク評価では、顧客の取引活動の全容が十分に反映されていませんでした。さらに、野村が担保提供を条件として与信をしている場合に、米国PB顧客取引に関する損失の場合において当該顧客に対して行った融資のように、当該担保の市場価格が急激に下落して担保価値が減少した場合、担保不足に陥る可能性があります。
(3)野村の顧客や取引相手が政治的・経済的理由から野村に対する債務を履行できない可能性があります
カントリー・リスクや地域特有のリスク、政治的リスクは、市場リスクのみならず、信用リスクに影響を与える可能性があります。現地市場における混乱や通貨危機のように、ある国または地域における政治的・経済的問題はその国や地域の顧客・取引相手の信用力や外貨調達力に影響を与え、結果として野村に対する債務の履行に影響を与える可能性があります。
7.野村は持株会社であり、野村の子会社からの支払に依存しています
野村は持株会社であり、配当金の支払や負債の支払の資金について、野村の子会社から受領する配当金、分配金およびその他の支払に依存しています。会社法などの法規制により、子会社への資金移動または子会社からの資金移動が制限される可能性があります。特に、ブローカー・ディーラー業務を行う子会社を含め、多くの子会社は、親会社である持株会社への資金の移動を停止または減少させる、あるいは一定の状況においてそのような資金の移動を禁止するような、自己資本規制を含む法規制の適用を受けています。例えば、野村の主要なブローカー・ディーラー子会社である野村證券、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルInc、ノムラ・インターナショナルPLCおよびノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDは、自己資本規制の適用を受けており、自己資本規制の変更や要求水準によっては、野村への資金移動が制限される可能性があります。野村は、関連する法規制に基づき野村グループ間における資金移動について日々確認し管理しておりますが、これらの法規制は野村の債務履行に必要となる資金調達の方法を制限する可能性があります。
8.投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券について野村が期待する収益を実現できない可能性があります
野村は、プライベートエクイティ投資を含む、多額の投資持分証券・トレーディング目的以外の負債証券を保有しています。米国会計原則では、市場環境によって投資持分証券・負債証券にかかる多額の未実現損益が計上されることがあり、このことが野村の損益に大きな影響を与えます。例えば、2020年3月期においては、新型コロナウイルスの感染拡大による市場の混乱により、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損失164億円および投資持分証券の評価損166億円を認識しました。市場の環境によっては、野村はこれらの投資持分証券・負債証券を売却したい場合にも、期待どおり迅速には、また望ましい水準では売却できない可能性があります。
9.野村が提供したキャッシュ・リザーブ・ファンドや債券に損失が生じることで顧客資産が流出する可能性があります
マネー・マネジメント・ファンド(MMF)やマネー・リザーブ・ファンド(MRF)といったキャッシュ・リザーブ・ファンドは低リスク商品と位置づけられています。しかし急激な金利上昇にともなうポートフォリオに組み込まれた債券価格の下落による損失の発生、ファンドのポートフォリオに組み込まれた債券のデフォルト、マイナス金利の適用によるファンドへの手数料チャージにより、元本割れを起こす場合があります。また、野村は運用による安定的な利回りが見込めないと判断した場合、これらのキャッシュ・リザーブ・ファンドに対し繰上償還や入金制限を行う可能性があります。例えば、野村の子会社である野村アセットマネジメント株式会社は、2016年8月末にMMFの運用を終了し同年9月に資金を償還いたしました。
また、野村が提供した債券が債務不履行に陥り、利息や元本の支払が遅延する場合があります。
上記事象の結果、野村は顧客の信頼を失う可能性があり、ひいては野村が保管する顧客からの預かり資産の流出もしくは預かり資産増加の妨げとなる可能性があります。
財務に関するリスク
10.連結財務諸表に計上されているのれんおよび有形・無形資産にかかる減損が認識される可能性があります
野村は、事業の拡大等のため、企業の株式などを取得し、または企業グループの一部の事業を承継しており、野村が適切と判断した場合にはこれらを継続して行う見込みです。このような取得や承継は、米国会計原則に基づき、野村の連結財務諸表において、企業結合として認識され、取得価額は資産と負債に配分され、差額はのれんとしています。例えば、野村は2020年4月1日にGreentech Capital, LLC(以下「グリーンテック」)の全持分を取得し12,480百万円を連結貸借対照表に計上しております。また、その他にも有形・無形資産を所有しております。
これらの企業結合などにより認識されたのれんおよび有形・無形資産に対して減損損失やその後の取引にともなう損益が認識される可能性があり、野村の経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。例えば、野村は2019年3月期において、ホールセール部門での過去の海外での買収に関連して、81,372百万円ののれんの減損を認識しております。
11.資金流動性リスクの顕在化によって野村の資金調達能力が損なわれ、野村の財政状態が悪化する可能性があります
資金流動性、すなわち必要な資金の確保は、野村のビジネスにとって極めて重要です。野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。即時に利用できるキャッシュ・ポジションを確保しておくことに加え、野村は、レポ取引や有価証券貸借取引、長期借入金の利用や長期社債の発行、コマーシャル・ペーパーのような短期資金調達先の分散、流動性の高いポートフォリオの構築などの方法によって十分な資金流動性の確保に努めています。しかし、野村は一定の環境の下で資金流動性の低下に晒されるリスクを負っています。その内容は以下のとおりです。
(1)野村が無担保あるいは有担保での資金調達ができなくなる場合があります
野村は、借り換えも含めた日常の資金調達において、短期金融市場や債券発行市場での債券発行、銀行からの借入といった無担保資金調達を継続的に行っています。また、トレーディング業務のための資金調達活動として、レポ取引や有価証券貸借取引といった有担保資金調達を行っています。これらの資金調達ができない場合、あるいは通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされる場合、野村の資金流動性は大きく損なわれる可能性があります。例えば、野村の短期または中長期の財政状態に対する評価を理由に、資金の出し手が資金提供を拒絶する可能性があるのは、次のような場合です。
・多額のトレーディング損失
・市場の低迷にともなう野村の営業活動水準の低下
・規制当局による行政処分
・信用格付けの低下
上記に加え、資金の出し手側の貸付余力の低下、金融市場やクレジット市場における混乱、投資銀行業や証券ブローカレッジ業、その他広く金融サービス業全般に対する否定的な見通し、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方など、野村に固有でない要因によって、野村の資金調達が困難になることもあります。
(2)野村が資産を売却できなくなる可能性があります
野村が資金を調達できない、もしくは資金流動性残高が大幅に減少するなどの場合、野村は期限が到来する債務を履行するために資産を売却するなどの手段を講じなければなりません。市場環境が不安定で不透明な場合には、市場全体の流動性が低下している可能性があります。このような場合、野村は資産を売却することができなくなる可能性や資産を低い価格で売却しなければならなくなる可能性があり、結果的に野村の経営成績や財政状態に影響を与える場合があります。また、他の市場参加者が同種の資産を同時期に市場で売却しようとしている場合には、野村の資産売却に影響を及ぼすことがあります。
(3)信用格付の低下により、野村の資金調達能力が損なわれる可能性があります
野村の資金調達は、信用格付に大きく左右されます。格付機関は野村の格付けの引下げや取消しを行い、または格下げの可能性ありとして「クレジット・ウォッチ」に掲載することがあります。例えば、2021年3月の米国PB顧客取引に関する損失の後、フィッチ・レーティングス社は当社の信用格付をネガティブ・ウォッチに設定し、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社は当社の信用格付の見通しをネガティブに変更しましたが、いずれも将来的に当社の信用格付を格下げする可能性があります。詳細は3 [経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]エグゼクティブ・サマリー「米国PB顧客取引に関する損失」をご参照ください。将来格下げがあった場合、野村の資金調達コストが上昇する可能性や、資金調達自体が制約される可能性があります。その結果、野村の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
さらに、日本の国家財政の健全性に対する市場の否定的な見方といった、野村に固有でない要因によっても、野村の資金調達が困難になることもあります。
12.連結財務諸表に計上されている関連会社およびその他の持分法投資先の株価が一定期間以上大幅に下落した場合には減損が認識される可能性があります
野村は上場している関連会社およびその他の持分法投資先の株式に投資しており、この投資は持分法で連結財務諸表に計上されています。野村が保有する関連会社の株式の市場価格が一定期間を超えて下落した場合において、価格の下落が一時的ではないと野村が判断したときには、野村は対応する会計年度に減損を認識しなければなりません。このことは、野村の経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。例えば、野村は2021年3月期に野村不動産ホールディングスに対する投資にかかる減損損失47,661百万円を計上しました。
非財務リスク
13.役職員または第三者による不正行為や詐欺により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村の役職員が、上限額を超えた取引、限度を超えたリスクの負担、権限外の取引や損失の生じた取引の隠蔽等の不正行為を行うことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります。また、不正行為には、インサイダー取引、情報伝達行為や取引推奨行為等の役職員または第三者による野村やその顧客の非公開情報の不適切な使用・漏洩その他の犯罪も含まれ、その結果、野村が行政処分を受け、もしくは法的責任を負う可能性、または野村のレピュテーションや財政状態に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。
例えば、2019年3月5日、東京証券取引所(以下「東証」)が設置した「市場構造の在り方等に関する懇談会」の委員を務める、株式会社野村総合研究所の研究員(以下「NRI研究員」)から、野村證券のリサーチ部門に所属するチーフストラテジスト(以下「ストラテジスト」)に対し、東証で議論されている市場区分の見直しについて、上位市場の指定基準および退出基準が時価総額250億円以上とされる可能性が高くなっている旨の情報が伝達され、さらに、当該情報は、同日および翌日に、ストラテジストから、野村證券およびノムラ・インターナショナル(ホンコン)LIMITEDの日本株営業担当の社員等に伝達されました。また、当該情報を受領した一部の社員は、顧客である一部の機関投資家に対して当該情報を提供しました。当該情報提供は、法令違反ではありませんでしたが、野村および野村證券やその役職員に対する市場参加者からの信頼を損なう行為で不適切な情報伝達であったといえます。外部有識者による特別調査を経て、2019年5月24日、野村は、上記の不適切な情報伝達が発生したことを踏まえ、再発防止策ならびに野村および野村證券の関係役員の役員報酬の一部返上を公表しました。さらに、2019年5月28日、野村および野村證券は、上記の不適切な情報伝達事案が発生したことにより、金融庁から、責任の所在の明確化、詳細な改善計画策定およびその提出、再発防止策の実施状況の定期的報告ならびにその実効性を定期的に検証して検証結果の報告を求めること等を内容とする業務改善命令を受け、2019年8月28日には、株式会社東京証券取引所より過怠金1,000万円の処分を受けました。
また、野村は、第三者が行う詐欺的行為に直接または間接に巻き込まれる可能性があります。野村は、投資、融資、保証、その他あらゆる種類のコミットメントを含め、幅広いビジネス分野で多くの第三者と日々取引を行っているため、こうした第三者による詐欺や不正行為を防止し、発見することが困難な場合があり、こうした行為に巻き込まれることにより、野村の将来のレピュテーションや財政状態に影響が及び、野村が被る損失が多額になり、また野村に対する信頼が損なわれる等の悪影響を受けるおそれがあります。
野村は、「野村グループ行動規範2021」を2021年3月19日に策定するとともに、コンプライアンス研修等の実施、内部通報制度での対応の充実等を通じて、その浸透と遵守を徹底することをはじめとする役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を防止または発見するための対策を講じていますが、これらの実装済の対策または今後追加する対策により役職員や第三者による不正行為や詐欺的行為を常に防止または発見できるとは限らず、また、不正行為や詐欺的行為の防止・発見のために取っている予防措置がすべての場合に効果を発揮するとは限りません。そのような不正行為や詐欺的行為の結果として野村に対する行政上の処分または司法上の決定・判決等が行われれば、野村は一定期間、ビジネスの機会を喪失する可能性があり、また、顧客、特に公的機関が野村との取引を行わない決定をした場合は、たとえ処分等が解除された後であっても、ビジネスの機会を喪失し、将来の収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
14.利益相反を特定し適切に対処することができないことにより、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は、多様な商品およびサービスを個人、企業、他の金融機関および政府機関を含む幅広い顧客に対して提供するグローバルな金融機関です。それにともない、野村の日々の業務において利益相反が発生するおそれがあります。利益相反は、特定の顧客へのサービスの提供が野村の利益と競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより発生します。また、適切な非公開情報の遮断措置または共有がされていない場合、特定の顧客との取引とグループ各社の取引または他の顧客との取引が競合・対立する、または競合・対立するとみなされることにより利益相反が発生するおそれがあります。野村は利益相反を特定し対処するための野村グループ利益相反管理方針に基づく利益相反管理体制を整備していますが、利益相反を特定、開示し、適切に対処することができなかった場合、またはできていないとみなされた場合には、野村のレピュテーションが悪化し、現在または将来の顧客を失い、収益や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、利益相反の発生により行政処分、または訴訟の提起を受ける可能性があります。
15.野村のビジネスは、重大なリーガル・リスク、レギュラトリー・リスクおよびレピュテーション・リスクに影響される可能性があります
野村が重大な法的責任を負うことまたは野村に対する行政処分がなされることにより、重大な財務上の影響を受け、または野村のレピュテーションが低下し、その結果、ビジネスの見通し、財務状況や経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、野村や野村が業務を行う市場に適用される規制に重大な変更がなされた場合、これが野村のビジネスに悪影響を与える可能性があります。野村に対する主な訴訟その他の法的手続きについては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 21 コミットメント、偶発事象および債務保証」をご参照ください。
野村は、ビジネスにおいてさまざまなリーガル・リスクに晒されています。これらのリスクには、金融商品取引法およびその他の法令における有価証券の引受けおよび勧誘に関する責任、有価証券その他金融商品の売買から生じる責任、複雑な取引条件に関する紛争、野村との取引にかかる契約の有効性をめぐる紛争、業務提携先との間の紛争ならびにその他の業務に関する法的賠償請求等が含まれます。野村は、重大な法的責任が発生した場合、専門家や第三者機関等にも助言を求め、適切な方針を策定の上、これらへの対応を行っておりますが、紛争等の動向によっては、野村のレピュテーションや財政状態に影響が及び、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)市場低迷を原因とした法的責任の可能性が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
市場の低迷の長期化または市場に重大な影響を与えるイベントの発生により、野村に対する賠償請求等が増加することが予想され、また、重大な訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟費用は高額にのぼる可能性もあり、訴訟を提起されることにより野村のレピュテーションが悪化する可能性もあります。さらに、適法な取引であったとしても、その取引手法によっては社会的非難の対象となってしまう場合もあります。これらのリスクの査定や数量化は困難であり、リスクの存在およびその規模が認識されない状況が相当期間続く可能性もあります。
(2)規制による業務制限や、業務処分等による損失が発生し、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
金融業界は広範な規制を受けています。野村は、国内において政府機関や自主規制機関の規制を受けるとともに、海外においては業務を行っているそれぞれの国の規制を受けています。また、野村のビジネスの拡大とともに、適用される政府機関や自主規制機関の規制も増加する可能性や、法改正によって、これらの規制が強化される可能性があります。さらに、金融規制の体系の複雑化が進み、ある一国の規制が、当該国以外の活動に域外適用される可能性も増加しています。これらの規制は、広く金融システムの安定や金融市場・金融機関の健全性の確保、野村の顧客および野村と取引を行う第三者の保護等を目的としており、自己資本規制、顧客保護規制、市場行動規範などを通じて野村の活動を制限し、野村の収益に影響を与えることがあります。この他、従来の金融関連法制に加え、広く国際的な政治経済環境や政府当局の規制・法執行方針等によっても、野村のビジネスに適用・影響する法令諸規制の範囲が拡大する可能性があります。とりわけ、金融業界に対する各国の政府機関や自主規制機関による調査手続きや執行については、近年件数が増加し、また、それらによる影響はより重大なものになっており、野村もそのような調査手続きや執行の対象となるリスクに晒されています。例えば、米国司法省は、2009年以前に野村の米国子会社の一部が取り扱った住宅ローン担保証券について調査を実施しました。2018年10月15日、これらの当社米国子会社は、調査に関して米国司法省と和解し、480百万ドルを支払うことに同意しました。この点、野村は、法令諸規制を遵守するため、随時モニタリングや社内管理体制の構築といった対策を講じてはおりますが、法令諸規制に抵触することを完全には防ぐことができない可能性があり、仮に法令違反等が発生した場合には、罰金、一部の業務の停止、社内管理体制の改善等にかかる命令、もしくは営業認可の取消しなどの処分を受ける可能性があります。野村が行政上の処分または司法上の決定・判決等を受けた場合、野村のレピュテーションが悪化し、ビジネス機会の喪失や人材確保が困難になるといった悪影響を受ける可能性があります。また、それらの処分により、顧客(とりわけ公的機関)が野村との金融取引を行わない決定をした場合は、たとえ命令等の処分が解除された後であっても、一定期間、野村がビジネスの機会を喪失する可能性があります。さらに、野村が国際的な制裁の対象地域で事業活動を行う場合には、当該事業活動が制裁規制に違反していなくても、一部の市場関係者が野村への投資や野村との取引を控える可能性があります。
(3)金融システム・金融セクターに対する規制強化の進行が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります
野村のビジネスに適用される規制が導入・改正・撤廃される場合、野村は、直接またはその結果生じる市場環境の変化を通じて悪影響を受けることがあります。規制の導入・改正・撤廃により、野村の全部または一部の事業を継続することの経済合理性がなくなる可能性、もしくは規制の対応に膨大な費用が生じる可能性があります。
加えて、野村に適用される会計基準や自己資本比率・流動性比率・レバレッジ比率等に関する規制の変更が、野村のビジネス、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そうした新たな規制の導入または既存の規制の改正には、バーゼル銀行監督委員会(以下「バーゼル委員会」)によるいわゆるバーゼルⅢと呼ばれる規制パッケージが含まれ、2017年12月には、バーゼルⅢの最終規則文書が公表されました。また、2012年10月、バーゼル委員会は、国内のシステム上重要な銀行(以下「D-SIBs」)に関する評価手法およびより高い損失吸収力の要件に関する一連の原則を策定し、公表しました。2015年12月、金融庁は野村をD-SIBsに指定し、2016年3月以降の追加的な資本賦課水準を3年間の経過措置はありますが0.5%といたしました。さらに、金融安定理事会(以下「FSB」)は、2015年11月にグローバルにシステム上重要な銀行(以下「G-SIBs」)に対して破綻時の総損失吸収力(以下「TLAC」)を一定水準以上保有することを求める最終文書を公表しました。これを受けて、金融庁は、2018年4月に、本邦G-SIBsに加え、本邦D-SIBsのうち、国際的な破綻処理対応の必要性が高く、かつ破綻の際に我が国の金融システムに与える影響が特に大きいと認められる金融機関についても本邦TLAC規制の適用対象とする方針とし、2019年3月に当該方針に基づきTLAC規制にかかる告示等を公表しました。野村は、現時点ではG-SIBsに選定されてはおりませんが、これにより、2021年3月末より本邦TLAC規制の適用対象に加えられることになりました。これらの規制により、野村の資金調達コストが上昇する、あるいは野村のビジネス、資金調達活動や野村の株主の利益に影響を及ぼすような資産売却、資本増強もしくは野村のビジネスの制限を行わなければならない可能性があります。
(4)経営状況、法的規制の変更などにより、繰延税金資産の計上額の見直しが行われ、野村の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります
野村は、一定の条件の下で、将来における税金負担額の軽減効果を有すると見込まれる額を繰延税金資産として連結貸借対照表に計上しております。今後、経営状況の悪化、法人税率の引下げ等の税制改正、会計原則の変更などその回収可能性に変動が生じる場合には、野村の連結貸借対照表に計上する繰延税金資産を減額する可能性があります。その結果、野村の経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。繰延税金資産の内訳につきましては「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 16 法人所得税等」をご参照ください。
16.野村の保有する個人情報の漏洩により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村は業務に関連して顧客から取得する個人情報を保管、管理しています。近年、企業が保有する個人情報および記録への不正アクセスや漏洩にかかる事件や不正利用の事件が多数発生していると報じられています。
野村は個人情報の保護に関する法令諸規則に基づき、個人情報の保護に留意し、適用されるポリシーや手続きを定め、セキュリティ対策を講じておりますが、仮に個人情報の重大な不正漏洩または不正利用が生じた場合には、野村のビジネスにさまざまな点で悪影響が及ぶ可能性があります。例えば、野村は、これらの法令諸規則を万が一違反した場合、規制当局から行政処分や罰則を受ける可能性があるほか、個人情報の漏洩(業務委託先による漏洩を含む)または不正利用により顧客に損失が生じた場合には、顧客から苦情や損害賠償請求を受ける可能性があります。また、自主的に、もしくは行政上の命令その他の規制上の措置の対応として行うセキュリティ・システムの変更により、追加的な費用が発生する可能性があります。また、顧客からお預かりした個人情報の利用が制限されることにより、既存事業や新規事業に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、不正漏洩または不正利用の結果、野村に対するレピュテーションが悪化することによって、新規顧客が減少したり既存顧客を喪失したりするとともに、野村のブランド・イメージやレピュテーションの悪化の防止・抑制のために行う広報活動のために追加的な費用が発生する可能性があります。
17.野村の情報システムが適切に稼働しないこと、外部からのサイバー攻撃による情報漏洩または十分なサイバーセキュリティを維持するために必要な費用負担により、野村のビジネスに悪影響が及ぶ可能性があります
野村のビジネスは、個人および機密情報を野村のシステムにおいて安全に処理、保存、送受信できる環境に依拠しています。野村は、過去において、野村のシステム上にある情報にアクセスしこれを入手することを企図した、または野村のサービスにシステム障害その他の損害をもたらすことを企図した不正アクセス、コンピューターウイルスもしくは破壊工作ソフトその他のサイバー攻撃の標的になってきましたが、今後も再び標的になる可能性があります。例えば、2018年6月に、海外子会社において、当該子会社のデスクトップ・ネットワークにマルウェア(不正・有害な動作を行う目的で作成されたソフトウエア)による不正なアクセスがあったことが判明しました。それを受けて、野村は、直ちに内部調査を開始し、是正措置を講じるとともに、当該事案の発生を関係当局に対して報告し、また、顧客その他の個人に対してその情報が影響を受ける可能性があることを伝えております。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、従業員の多くがネットワーク技術を利用してリモートワークを行っています。これにより、サイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となる可能性が高まる恐れがあります。これらの脅威は、人為的なミスまたは技術的不具合から発生する場合もありますが、従業員などの内部関係者または海外の非国家主体および過激派組織などの第三者の悪意もしくは不正行為により発生する場合もあります。また、野村のシステムが相互接続している外部事業者、証券取引所、決済機関またはその他の金融機関のいずれかがサイバー攻撃その他の情報セキュリティ侵害の対象となった場合、野村にもその悪影響が及ぶ可能性があります。当該事象により、野村のシステム障害、信用の失墜、顧客の不満、法的責任、法の行政処分または追加費用が生じる可能性があり、上記事象のいずれかまたはその全部の発生により、野村の財政状態および事業運営が悪影響を受ける可能性があります。
野村は、システムのモニタリングおよびアップデートを行うため多大な経営資源を継続的に投入し、かつシステム保護のため情報セキュリティ対策を講じていますが、実施しているそれらの管理手段や手続きが、将来のセキュリティ侵害から野村を十分に保護できる保証はありません。サイバー上の脅威は日々進化しているため、将来的には、現在の管理手段や手続きが不十分となる可能性があり、また、システム修正または強化のため、更なる経営資源を投入しなければならなくなる可能性があります。