有価証券報告書-第81期(2024/04/01-2025/03/31)
(2)戦略
(サステナビリティ共通関連)
サステナビリティ中期計画を策定し(2023年5月公表)、以下の戦略を展開しています。
なお、マテリアリティ及びKPIについては、半期に一度見直し・更新を図る体制としています。
(詳細)https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/sustainability/medium_term_plan/
a)サステナビリティ基本方針の策定
お客さま、株主/投資家、従業員、地域社会、パートナー、地球環境など、当社が関係するステークホルダーについて、経済社会の発展に貢献しながら持続可能な事業活動を推進するための方針を策定しています。
b)マテリアリティの特定
中期経営計画との整合性を図りつつ、8つのマテリアリティを特定しています。特定にあたっては、
①中長期的な視点で当社事業に影響を及ぼす可能性のある社会課題や事業環境について、業界団体(ACI)や
国際的なガイドライン(GRI、SASB等)の重要項目や事業戦略を踏まえリストアップした候補を、
②社会にとっての重要性(公共性)と自社事業にとっての重要性(企業性)の2軸での評価を実施、
③社外有識者とのダイアローグによる外部からの期待及び要請を反映しています。
c)取り組み及びKPIの策定
「指標及び目標」記載欄参照
(気候変動関連)
異常気象の頻発化など気候変動が当社グループに及ぼす影響は大きい一方、当社グループは、ターミナル運営における電力消費など多くの温室効果ガスを排出し環境に負荷を与えています。社会の持続可能性と両立する環境にやさしい空港を目指して事業を継続していく上で、気候変動への対策は重要な課題であると認識しており、マテリアリティとして「気候変動への対策」を掲げています。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき情報を開示しています。(2025年6月更新)
(詳細)TCFD提言に基づく情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tcfd.pdf)
当社グループの事業に気候変動が与える影響を評価するため、下記の2つのシナリオ(「1.5℃シナリオ」及び「4.0℃シナリオ」)を用いて分析を実施しました。シナリオの設定にあたっては、IEA(International Energy Agency, 国際エネルギー機関)やIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)が公表するシナリオを参照しています。
表1 シナリオ分析の概要
当社グループの「施設管理運営業」及び「物販・飲食事業」(「物品販売業」及び「飲食業」をまとめた区分)
を分析対象とし、上記の2つのシナリオを踏まえたリスクと機会の抽出、影響度評価、リスクへの対応策定義を
実施しました。気候関連リスク・機会を評価する際の、時間軸、影響度については下表のとおりです。
表2 気候関連リスク・機会の評価における時間軸・影響度
※影響度については、各リスク・機会が損益・資産に与えるインパクトを勘案し評価を行いました。
表3 気候変動に関わるリスク・機会及び影響度
※カーボンプライシングについては、2030年時点での予測排出量(5.7万t-CO2)をベースに以下の仮定を用いて試算
■排出量:57,000t-CO2(2030年時点排出量)
■炭素価格:21,000円(IEA WEO2023 1.5℃シナリオ(NZE)2030年時点140USD/t-CO2×1ドル150円で計算)
■影響度:57,000×21,000=約12億円
表4 対応策 ※一部抜粋
(自然資本関連)
年間8,700万人が利用する空港ターミナルを運営する上では、建材やプラスチック、水など多くの資源を利用・調達している一方で、建設廃材・食品残渣・回収ごみなどの廃棄物を排出しているため、「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現に向け、自然資本関連の取り組みを重要な経営課題に位置づけています。現在、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言へ賛同するとともに評価・分析を進めており、TNFD提言に基づく情報を下記のとおり開示しています。当社グループの事業と自然環境との関係性(依存・影響)を整理するにあたっては、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのLEAPアプローチを用いて分析を実施しました。
(詳細)TNFD提言に基づく情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tnfd.pdf)
図1 当社事業の全体像
当社事業活動の直接操業及び上流・下流工程について自然との接点、関係性を評価するため、現段階で入手可能な情報をもとにヒートマップを作成し、自然環境との関係性を整理しました。なお、評価にあたっては当社の事業内容とともに、SBTNの業種別の主な環境影響や自然関連リスク評価ツールであるENCOREフローを参考にしました。
表1 当社事業と主な環境との接点と影響(ヒートマップ)
※濃い色の部分は環境との関連性(依存・影響)がより強いことを示しています。
≪施設管理運営業≫
2024年度は、羽田空港を使用する航空機の発着回数は約48万回あり、羽田空港の旅客ターミナルビルを利用した旅客数は約8,700万人となっています。当社(直接操業)に関し、施設内の快適な空間を維持するため、電力等のエネルギーを消費し、CO2を排出しており、下流にあたる航空機・旅客の移動に関して、エネルギー使用に伴う 温室効果ガスの排出量及び温室効果ガス以外の大気汚染の影響があります。
当社の管理運営するターミナルビル(直接操業)及び下流にあたる旅客の移動において、約8,700万人の利用者による廃棄物の排出及びその処理を実施しており、処理量は羽田空港エリア全体の廃棄物の約4割に及ぶことから、一定の影響があります。
日本国内の自然環境(大気、水質・水量、生態系の状態)は世界全体からみて比較的良好な環境にありますが、空港施設の特性上、夜間の照明による光害や騒音について、羽田空港周辺で一定の影響があります。
羽田空港における3つのターミナルビル内では、水消費量は年間約900,000㎥を超え、羽田空港エリア全体で使用する水の約5割を占めることから、水の使用につき一定の依存及び影響があります。
≪物品販売業・飲食業(機内食製造業含む)≫
当社の取り扱う物品及び食材・加工品等は多品種にわたり、これらの原材料の生産、製造・加工における水使用・土地利用・大気汚染等、一定の依存及び影響があります。
物品販売業・飲食業における使い捨て容器や梱包材等が一定量あります。
当社は、世界的に評価される空港であることを目指しており、長期ビジョン「To Be a World Best Airport」とともに、2030年に向けて「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現に向けたターミナルビル運営を目指しています。
当社事業活動の直接操業及び上流・下流工程における自然との関係性(依存及び影響)について、表1のとおり現段階で入手可能な情報をもとにヒートマップを作成し、重要な領域を確認・評価しました。このような評価を踏まえ、当社グループ事業に影響を及ぼす自然関連リスク・機会の抽出を実施しました。
また、リスク・機会の抽出にあたっては、「脱炭素社会への移行と併せてネイチャーポジティブ社会への移行に関するリスクが主に顕在化するシナリオ」と「気候変動・自然劣化による物理リスクが主に顕在化するシナリオ」を検討し、各々TCFD分析における1.5℃シナリオと4.0℃シナリオと対応するものとして想定しています。
表2 自然関連リスク・機会の分析における時間軸と影響度
表3 自然関連のリスク及び影響度
表4 自然関連の機会及び影響度
表5 自然関連のリスク・機会に対する対応策
上記の自然関連リスク・機会及び対応策の抽出を踏まえ、自然資本分野に関する戦略の3つの方向性を以下のとおり確認しました。今後、リスク・機会の分析を深化させるとともに、同戦略を重要な経営課題として、実現に向けた対応策を、多くのステークホルダーと連携しながら、策定・実施していきます。
(人的資本・多様性関連)
≪人的資本に関する基本的な考え方≫
当社グループが事業基盤とする東京国際空港(羽田空港)は、人・産業・文化が行き交う日本の空の玄関口であり、訪日外国人6,000万人に向けたターミナル機能強化など、今後更なる発展・進化が求められています。このような背景のもと、中期経営戦略として“収益基盤の強化”とともに人財・DX・財務など“経営基盤の強化”を掲げています。人財に関しては「人財のプロ集団化・組織力の最大化」を目指しており、サステナビリティ中期計画において「人財育成」及び「DEI(Diversity,Equity,Inclusion)の推進」をマテリアリティ(重要課題)に選定し、取り組みを推進しています。
当社グループでは、空港運営全般に係る高度な専門性と知見を備え、常に変化し続ける航空業界においてフロンティアスピリットを発揮し新たな挑戦を続ける人財を、最重要資本(人的資本・知的資本)と位置付けており、空港のリーディングカンパニーを目指す長期ビジョン「To Be a World Best Airport」を、このような人財の力で実現していくものと考えています。
≪人財戦略の基本的な考え方≫
持続的成長を図る中期経営戦略において目指す“収益基盤の強化”では、
1.成長ドライブである将来の航空需要を確実に取り込む「空港事業の成長」
2.コロナ禍を踏まえた変革・イノベーションの推進による「再成長土台の確立」
3.空港利用客以外にも新たな領域への事業展開を図る「収益基盤の拡大」
を3本柱としています。
「空港事業の成長」「再成長土台の確立」のためには、当社が既に十分有する空港運営のプロ人財が、これまで以上に幅広い専門知識や技術を習得していくことが求められます。「収益基盤の拡大」のためには、これまでの当社に不足している、新たな領域に挑戦する自主性や主体性を有する人財を獲得・育成していく必要があります。いずれの戦略にも、新しい発想や、異業種を含めた事業パートナーなどとの共創が求められるため、多様な人財が能力を発揮できる組織であることが重要と考えています。
また、少子化による人手不足が社会全体で進む中、高い人的生産性を発揮する必要があり、すべての世代の戦力化やDX戦略との連携が不可欠と考えています。
これらを踏まえ、以下5点の目指すべき人的資本(人財・組織)の構築に向け、人財戦略(人財採用・育成、社内環境整備)を進めていきます。
①空港運営特有の知識・経験を有するプロ人財
②自主性や主体性を持ち、目的意識を明確化し、行動できる人財
③異なる背景を持つ多様な人財が能力を発揮できる組織
④どの世代においても学び続け、成長し続ける組織
⑤DX戦略を推進する人財・組織
当社は人財戦略に必要な人的投資を継続的に実施し、人的投資(インプット)を、人的資本強化(アウトプット)を通じて経営成果としての高い収益や利益(アウトカム)へと繋げる、「人的資本経営」を推進していきます。
(1)人財の採用・育成、生産性向上
基本的な考え方に基づき、新卒採用においては建築・理工系などの専門性や海外人財にも着目するとともに、異なる経験・能力を有する人財の中途採用も適宜実施し、多様性を持つ中核人財の強化を図っています。人財育成方針として「自ら考え挑戦する人財の育成」を掲げ、この方針に則り、研修体系においては、MBA取得含め手上げ制のプログラムなど自律的な学びをサポートする制度を導入し、従来の全員一律の研修から、DX人財育成など専門性向上や選抜型の教育研修に重点をシフトさせています。また、社員の意識・行動改革として、現在の業務における新たな改善や変革を考えワークエンゲージメントを高める「プラスワンプロモーション」をグループ全体で展開するとともに、新たな発想の習得の機会として、社外出向の機会の増加を図っています。定年延長など処遇の見直しを行ってきたシニア層に対しては、自律的なキャリア形成の一助となるよう、シニアキャリアセミナー受講後1年間利用可能な全額会社負担によるオンライン学習プログラムを開始しています。
新たな領域への事業展開のため、異業種連携の研究開発拠点運営(terminal.0)や、ノウハウ事業、産産・産学連携プロジェクトなどへの人員配置も適切に行っています。
これらの人員確保を含め、コロナ禍で減少した人員について、採用による増員および適切な待遇改善による定着を図りますが、能力やエンゲージメントの向上、DX等を通じた効率化による生産性向上により、効率的な人員体制での経営戦略実現を図ることとしています。

≪デジタル人財の確保・育成について≫
当社のDX推進を支える人財については、新卒採用や既存社内人財の育成による内製化を基本としつつ、即戦力としての中途採用によって補完することとしています。育成については、人財育成計画を策定し、必要となるスキルや知識を定義しています。全社員に対してはITパスポートなどの基礎知識の取得やオンライン型の学習を実施し、ITリテラシーの向上を図っています。
(2)社内職場環境の整備
当社事業は、日本各地、世界各国との様々な人の往来に支えられていることから、世界各国から訪れるお客様に安心して快適にご利用いただけるよう、従業員一人ひとりが多様な文化や価値観を受容し、お互いを尊重し合える包摂性の高い組織風土の醸成が必要であり、また、グループ全体のグローバル化・事業拡大を図っていく上でも、多様性を認め高め合う環境が必要不可欠であるため、社内環境整備方針として「多様な人財が互いを高めあう企業風土」の構築を掲げています。
この方針に則り、女性管理職比率の高水準維持や、外国人・障がい者雇用などDEIの推進、若手社員による働き方改革推進活動など、多様な人財が活躍できる、働きやすく、働きがいを感じられる職場環境整備を進めています。
また、横断的なコミュニケーションの誘発や、Well-Beingの要素を導入したオフィス改革を2024年度に実行し、高い生産性と新たな挑戦の持続的な実現を目指しています。
(3)人財戦略の進捗状況
人財戦略実現に必要な人的投資を行っていくにあたり、2024年度から日本空港ビルデングにおいて従業員エンゲージメントサーベイを開始し、人財に関する課題解決を通じて人的投資(インプット)を人的生産性向上(アウトプット)に繋げていくPDCA管理を始めています。また、高いエンゲージメントによる人的生産性の向上が、売上や利益の向上といった経営成果(アウトカム)に繋がっていく“好循環の構築”を目指しており、それぞれの相関を継続的に確認していくこととしています。
2024年度に実施したサーベイにおけるエンゲージメント指数(*)は82.5点(100点満点)と高い結果となりました。従業員サーベイは、継続して実施するとともに、今後順次グループ各社に拡大していく予定です。
(*)経営戦略の実現に向け、社員がやりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができ、個人と組織の成長の方向性が連動している状態を「エンゲージメント」、「やりがい」と「理念・ビジョンへの共感」に関する設問の平均値を「エンゲージメント指数」と定義しています。

1.人的投資に係る主な指標(経営成果→人的投資)
人財の確保に関する投資①②③、社員の能力開発に関する投資④⑤、新たな挑戦の機会の創出に関する投資⑥⑦については以下のとおりです。数値はいずれも単体です。
2023年度に拡大した人的投資を2024年度はさらに拡大しました。
(*)2024年度実績には、2024年度から本格導入されたデジタル研修の実績を含む
2.人的投資と人的生産性の相関を計る主な指標(人的投資→人的生産性)
能力・効率性に関する指標①②③④⑤、新たな挑戦に関する指標⑥⑦について、従業員エンゲージメント サーベイなどの結果は以下のとおりです。数値はいずれも単体です。
社員の成長や生産性向上を実感するスコアは高く、これまで実施した、能力開発や挑戦機会の提供といった 人的投資が、社員の能力伸長や生産性向上、挑戦の風土につながっているか、相関を継続的に検証します。
なお、挑戦を奨励する研修や挑戦の機会の確保に取り組んできましたが、「新しい仕事やプロジェクトに 積極的にチャレンジしてみたい」と感じる社員スコアと比較して、実際にその機会に「参加した」とする社員スコアが低いことから、今後、さらに挑戦の機会を増やしていくこととします。
3.人的生産性と経営成果の相関を計る主な指標(人的生産性→経営成果)
社員数は2021年以降、単体・連結いずれも増加していますが、社員一人あたりが生み出す収益・利益はいずれもコロナ禍前を上回る成果となっています。
社員の高いエンゲージメントや生産性が経営成果につながっているか、相関を継続的に検証します。
(単位:百万円)
※1 臨時雇用者・派遣社員については、年度末1か月間の労働時間を基に計算した人数です。
※2 「収益認識に関する会計基準」等を2021年度の期首から適用していますが、経年比較のために旧基準で 計算した営業収益とそれに係る指標を記載しています。
(サステナビリティ共通関連)
サステナビリティ中期計画を策定し(2023年5月公表)、以下の戦略を展開しています。
なお、マテリアリティ及びKPIについては、半期に一度見直し・更新を図る体制としています。
(詳細)https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/sustainability/medium_term_plan/
a)サステナビリティ基本方針の策定
お客さま、株主/投資家、従業員、地域社会、パートナー、地球環境など、当社が関係するステークホルダーについて、経済社会の発展に貢献しながら持続可能な事業活動を推進するための方針を策定しています。
b)マテリアリティの特定
中期経営計画との整合性を図りつつ、8つのマテリアリティを特定しています。特定にあたっては、
①中長期的な視点で当社事業に影響を及ぼす可能性のある社会課題や事業環境について、業界団体(ACI)や
国際的なガイドライン(GRI、SASB等)の重要項目や事業戦略を踏まえリストアップした候補を、
②社会にとっての重要性(公共性)と自社事業にとっての重要性(企業性)の2軸での評価を実施、
③社外有識者とのダイアローグによる外部からの期待及び要請を反映しています。
c)取り組み及びKPIの策定
「指標及び目標」記載欄参照
(気候変動関連)
異常気象の頻発化など気候変動が当社グループに及ぼす影響は大きい一方、当社グループは、ターミナル運営における電力消費など多くの温室効果ガスを排出し環境に負荷を与えています。社会の持続可能性と両立する環境にやさしい空港を目指して事業を継続していく上で、気候変動への対策は重要な課題であると認識しており、マテリアリティとして「気候変動への対策」を掲げています。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき情報を開示しています。(2025年6月更新)
(詳細)TCFD提言に基づく情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tcfd.pdf)
当社グループの事業に気候変動が与える影響を評価するため、下記の2つのシナリオ(「1.5℃シナリオ」及び「4.0℃シナリオ」)を用いて分析を実施しました。シナリオの設定にあたっては、IEA(International Energy Agency, 国際エネルギー機関)やIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change, 気候変動に関する政府間パネル)が公表するシナリオを参照しています。
表1 シナリオ分析の概要
| 名称 | 1.5℃シナリオ | 4.0℃シナリオ |
| シナリオの概要 | 抜本的な施策が機能することにより脱炭素社会が実現、産業革命時期比で気温上昇が約1.5℃未満に留まる ・脱炭素社会移行に関するリスクが主に顕在化 | 現状を上回る施策を取らないことにより地球 温暖化が進展、産業革命時期比で気温が 約4.0℃上昇 ・気候変動による物理リスクが主に顕在化 |
| 世界観 | カーボンプライシングや航空事業者のSAF使用比率規制等により、空港・航空業界はカーボンオフセットや再エネ・省エネ投資等の対応が必須となる。 ・代替移動手段へのシフトも想定されるが、SAFの普及につれ、空港ではサプライチェーンを含めたGHG排出削減が着実に進む。 | 低炭素化社会への移行のための政策や規制導入は限定的。 ・気候変動の進行に伴い、気候パターンの変化や海面上昇、異常気象の激甚化・頻発化等により空港運営への悪影響が生じる。サプライチェーンリスク管理やBCPの見直しの重要性が高まる。 |
当社グループの「施設管理運営業」及び「物販・飲食事業」(「物品販売業」及び「飲食業」をまとめた区分)
を分析対象とし、上記の2つのシナリオを踏まえたリスクと機会の抽出、影響度評価、リスクへの対応策定義を
実施しました。気候関連リスク・機会を評価する際の、時間軸、影響度については下表のとおりです。
表2 気候関連リスク・機会の評価における時間軸・影響度
| 時間軸 | 短期 | ~2025年度(中期経営計画期間) |
| 中期 | ~2030年度(人にも環境にもやさしい先進的空港2030までの期間) | |
| 長期 | ~2050年度(ネットゼロ達成時期まで) | |
| 影響度 | 小 | 1億円未満/年 |
| 中 | 1億円以上~10億円未満/年 | |
| 大 | 10億円以上/年 |
※影響度については、各リスク・機会が損益・資産に与えるインパクトを勘案し評価を行いました。
表3 気候変動に関わるリスク・機会及び影響度
| リスク・機会の種類 | 概要 | セグメント | 時間軸 | 主に 関連する シナリオ | 影響度 | ||
| 施設 | 物販 飲食 | ||||||
| 移 行 リ ス ク | GHG排出量 削減施策 (政策と法律/技術) | カーボンプライシング※導入に伴う、ターミナル運営コストや原材料仕入・物流コストの増加 | ✓ | ✓ | 短期~中期 | 1.5℃ | 大 |
| 気候変動関連法規制によるコストの増加(環境関連規制に伴う建設コストの増加等) | ✓ | 短期~長期 | 1.5℃ | 大 | |||
| 気候変動関連法規制によるコストの増加(プラスチック等の資源循環や自然資本に配慮した調達等) | ✓ | 短期~中期 | 1.5℃ | 中 | |||
| 再生可能エネルギー及び新エネルギーの導入等による気候変動対策投資コストの増加 | ✓ | ✓ | 短期~中期 | 1.5℃/4.0℃ | 大 | ||
| その他 (市場/評判) | 航空需要にネガティブに影響する政策措置による、空港利用者数の伸びの鈍化 | ✓ | ✓ | 短期~長期 | 1.5℃ | 中 | |
| 環境対応の遅れによる、テナント・パートナー・顧客・取引先・従業員からの評判低下 | ✓ | ✓ | 短期~中期 | 1.5℃/4.0℃ | 中 | ||
| 物 理 リ ス ク | 慢性 | 海面上昇による、空港アクセス交通への影響 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 4.0℃ | 小 |
| 気候パターンの変化に伴う、感染症発生等による影響 | ✓ | ✓ | 長期 | 4.0℃ | 大 | ||
| 急性 | 異常気象の激甚化・頻発化による利用者数への影響 | ✓ | ✓ | 短期~中期 | 4.0℃ | 中 | |
| 異常気象の激甚化・頻発化によるサプライチェーン分断 | ✓ | 短期~中期 | 4.0℃ | 中 | |||
| 異常気象の激甚化・頻発化による設備損壊、浸水被害等 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 4.0℃ | 大 | ||
| 機 会 | GHG排出量削減施策(エネルギー源) | 高効率なエネルギー利用や新技術等の普及によるコスト低減 | ✓ | 長期 | 1.5℃ | 中 | |
| 脱炭素への貢献と新しい収益源の確保 | ✓ | 中期~長期 | 1.5℃/4.0℃ | 中 | |||
| その他 (資源効率性/製品・サービス/市場) | 脱炭素取り組みを通じたブランド価値向上 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 1.5℃ | 大 | |
| 低炭素を実現する企業への政策支援の活用 | ✓ | 中期~長期 | 1.5℃ | 中 | |||
| 当社を中心とした循環型システムの構築 | ✓ | 短期~中期 | 1.5℃/4.0℃ | 中 | |||
| 物理リスク | ステークホルダーや地域との連携によるレジリエンス強化 | ✓ | 中期 | 1.5℃/4.0℃ | 中 | ||
※カーボンプライシングについては、2030年時点での予測排出量(5.7万t-CO2)をベースに以下の仮定を用いて試算
■排出量:57,000t-CO2(2030年時点排出量)
■炭素価格:21,000円(IEA WEO2023 1.5℃シナリオ(NZE)2030年時点140USD/t-CO2×1ドル150円で計算)
■影響度:57,000×21,000=約12億円
表4 対応策 ※一部抜粋
| リスク・機会の種類 | 概要 | |
| 移行リスク 関連 | GHG排出量 削減施策 | 照明のLED化、空調機器更新、AI空調の導入を含めた省エネ施策 |
| メガソーラー等の再生可能エネルギー導入、調達電源構成の見直し及び熱源使用効率化の推進 | ||
| 施設のZEB化、建物の木造木質化、放射冷却素材「ラディクール」の使用等による環境配慮性能向上 | ||
| 新エネルギーの利活用に向けた調査及び検討 | ||
| その他 | 資源の有効活用(羽田空港の資材設備を地方空港や運営参画空港へ提供等)及び廃棄物抑制の事業化(廃油の回収とバイオ燃料への活用等) | |
| 物理リスク関連 | 東京国際空港A2-BCPへの対応強化、BCP体制構築と定期訓練の実施 | |
| 感染症対策の徹底、ロボットやデジタル技術を活用した非接触販売の実施 | ||
| サプライチェーンの冗長化等、調達生産物流の全体最適化 | ||
(自然資本関連)
年間8,700万人が利用する空港ターミナルを運営する上では、建材やプラスチック、水など多くの資源を利用・調達している一方で、建設廃材・食品残渣・回収ごみなどの廃棄物を排出しているため、「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現に向け、自然資本関連の取り組みを重要な経営課題に位置づけています。現在、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言へ賛同するとともに評価・分析を進めており、TNFD提言に基づく情報を下記のとおり開示しています。当社グループの事業と自然環境との関係性(依存・影響)を整理するにあたっては、自然関連のリスクと機会を科学的根拠に基づき体系的に評価するためのLEAPアプローチを用いて分析を実施しました。
(詳細)TNFD提言に基づく情報開示(https://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/tnfd.pdf)
図1 当社事業の全体像
当社事業活動の直接操業及び上流・下流工程について自然との接点、関係性を評価するため、現段階で入手可能な情報をもとにヒートマップを作成し、自然環境との関係性を整理しました。なお、評価にあたっては当社の事業内容とともに、SBTNの業種別の主な環境影響や自然関連リスク評価ツールであるENCOREフローを参考にしました。表1 当社事業と主な環境との接点と影響(ヒートマップ)
※濃い色の部分は環境との関連性(依存・影響)がより強いことを示しています。≪施設管理運営業≫
2024年度は、羽田空港を使用する航空機の発着回数は約48万回あり、羽田空港の旅客ターミナルビルを利用した旅客数は約8,700万人となっています。当社(直接操業)に関し、施設内の快適な空間を維持するため、電力等のエネルギーを消費し、CO2を排出しており、下流にあたる航空機・旅客の移動に関して、エネルギー使用に伴う 温室効果ガスの排出量及び温室効果ガス以外の大気汚染の影響があります。
当社の管理運営するターミナルビル(直接操業)及び下流にあたる旅客の移動において、約8,700万人の利用者による廃棄物の排出及びその処理を実施しており、処理量は羽田空港エリア全体の廃棄物の約4割に及ぶことから、一定の影響があります。
日本国内の自然環境(大気、水質・水量、生態系の状態)は世界全体からみて比較的良好な環境にありますが、空港施設の特性上、夜間の照明による光害や騒音について、羽田空港周辺で一定の影響があります。
羽田空港における3つのターミナルビル内では、水消費量は年間約900,000㎥を超え、羽田空港エリア全体で使用する水の約5割を占めることから、水の使用につき一定の依存及び影響があります。
≪物品販売業・飲食業(機内食製造業含む)≫
当社の取り扱う物品及び食材・加工品等は多品種にわたり、これらの原材料の生産、製造・加工における水使用・土地利用・大気汚染等、一定の依存及び影響があります。
物品販売業・飲食業における使い捨て容器や梱包材等が一定量あります。
当社は、世界的に評価される空港であることを目指しており、長期ビジョン「To Be a World Best Airport」とともに、2030年に向けて「人にも環境にもやさしい先進的空港」の実現に向けたターミナルビル運営を目指しています。
当社事業活動の直接操業及び上流・下流工程における自然との関係性(依存及び影響)について、表1のとおり現段階で入手可能な情報をもとにヒートマップを作成し、重要な領域を確認・評価しました。このような評価を踏まえ、当社グループ事業に影響を及ぼす自然関連リスク・機会の抽出を実施しました。
また、リスク・機会の抽出にあたっては、「脱炭素社会への移行と併せてネイチャーポジティブ社会への移行に関するリスクが主に顕在化するシナリオ」と「気候変動・自然劣化による物理リスクが主に顕在化するシナリオ」を検討し、各々TCFD分析における1.5℃シナリオと4.0℃シナリオと対応するものとして想定しています。
表2 自然関連リスク・機会の分析における時間軸と影響度
| 時間軸 | 短期 | ~2025年度(中期経営計画期間) |
| 中期 | ~2030年度(人にも環境にもやさしい先進的空港2030までの期間) | |
| 長期 | ~2050年度(ネットゼロ達成までの期間) | |
| 影響度 | 小 | 1億円未満 |
| 中 | 1億円以上~10億円未満 | |
| 大 | 10億円以上 |
表3 自然関連のリスク及び影響度
| リスクの種類 | 概要 | セグメント | 時間軸 | 影 響 度 | ||
| 施設 | 物販 飲食 | |||||
| 移 行 リ ス ク | 政策・ 法規制・ 技術 | 建物に対する環境配慮の取り組み・認定取得等を要求する規制・政策強化による対応コストの増加 | ✓ | 中期~長期 | 大 | |
| 製品原材料に対する規制・政策強化による対応コストの増加 (認証原材料の使用、特定原材料の使用禁止等) | ✓ | 中期 | 中 | |||
| リサイクル率向上義務化・廃棄物処理等の資源循環に関する規制・政策強化による対応コストの増加 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 大気・水・土壌汚染に関する新たな規制対象物質や基準厳格化への対応コスト(追加投資含む)の増加 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 市場 | 顧客(航空会社やテナント)のサステナビリティ意識の高まりによる市場嗜好の変化や要請による対応コストの増加 | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 旅客(物販・飲食の顧客)のサステナビリティ意識の高まりによる持続可能な生態系・自然資本に配慮した認証食材への需要シフト | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 評判 | テナントマネジメントにおいてサステナビリティへの配慮が不十分であることによる、国際的なレピュテーション低下 | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 持続可能な原材料の調達や再生可能材の使用についての対応不足によるレピュテーション低下、顧客喪失 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 空港利用者の増加に伴い空港周辺の自然環境破壊の課題が生じた際の対応コスト及び自治体・周辺住民からのレピュテーション低下(廃棄物による汚染、渋滞発生等) | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 物 理 リ ス ク | 慢性 急性 | 空港利用者(航空機利用者)増加に関連した外来種等の飛来、感染症等パンデミックの発生 | ✓ | 長期 | 大 | |
| 異常気象の発生による周辺の浸水等に伴う、周辺交通機関の運行困難に伴う旅客対応業務の増加(ターミナルビルでの滞在時間の増加等) | ✓ | 中期 | 中 | |||
| 異常気象の発生や自然環境・生態系の劣化・崩壊に伴う、食品原材料の品質低下及び調達困難、サプライチェーンの寸断 | ✓ | 長期 | 中 | |||
| 猛暑等による、設備寿命の短期化(設備更新費用の増加) | ✓ | 長期 | 中 | |||
表4 自然関連の機会及び影響度
| 機会の種類 | 概要 | セグメント | 時間軸 | 影 響 度 | ||
| 施設 | 物販 飲食 | |||||
| ビ関 ジわ ネる ス機 パ会 フ ォ ❘ マ ン ス に | 市場・ 製品と サービス・ 評判 | 顧客(航空会社やテナント)のサステナビリティ意識の高まりによる市場嗜好の変化に対応した「エコエアポート」としての施設運営による、羽田空港のプレゼンス向上 | ✓ | 中期~長期 | 大 | |
| 旅客(物販・飲食の顧客)のサステナビリティ意識の高まりに対する持続可能な自然環境・生態系サービスに配慮した原材料及び包装材を使用した商品開発 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 日本の豊かな自然観光資源への国際的な注目度の高まり、日本の玄関口として自然観光資源の魅力を引き出す事業運営を通じた需要創出による、旅客の増加 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 空港全体での資源循環経済の実現による、羽田空港の中核企業としてのプレゼンス向上 | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 旅客のサステナビリティ意識向上に資する働きかけや、周辺地域の自然環境保護活動への参画による、自治体行政との関係性の向上 | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 資源効率 | 水資源の効率的な利用 | ✓ | ✓ | 中期 | 小 | |
| 資源循環の実現に向け、簡易包装や再生材の活用による廃棄物削減や、廃棄物の再資源化 | ✓ | ✓ | 中期~長期 | 中 | ||
| 資金の 流れと 資金調達 | 建替え時における各種施策等、エコエアポートとしての打ち出しによる資金調達 | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 持マ 続ン 可ス 能に 性関 パわ フる ォ機 ❘会 | 天然資源の持続可能な利用 | 持続可能な森林から供給された木材を活用した施設建設 | ✓ | 中期 | 大 | |
| 社内で使用する資材・設備の環境配慮型への切り替え | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | ||
| 生態系の 保護、復元、再生 | 都市部に隣接する空港として、旅客に対してバス・鉄道等の地上交通機関の使用を推奨することによる、地域の生態系の保全 | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | |
| エコエアポートでの施設滞在における体験を通じた、施設利用者の自然・環境に対する意識の啓発による行動変容による、間接的な自然へのポジティブインパクト | ✓ | ✓ | 中期 | 中 | ||
表5 自然関連のリスク・機会に対する対応策
| リスク・機会の種類 | 概要 | セグメント | ||
| 施設 | 物販 飲食 | |||
| リ ス ク | 移行リスク (政策・法規制・ 技術・市場・ 評判) | 建物のZEB化に向けた取り組み | ✓ | |
| 使用原材料について、航空会社・国ごとの規制への対応 | ✓ | |||
| 認証取得済の原材料や国産原材料の積極的な活用 | ✓ | |||
| 自然環境への負荷が少ない包装材・容器の導入 | ✓ | |||
| 廃棄物の再資源化とテナントに対する呼びかけ | ✓ | ✓ | ||
| 食品廃棄物の減量化(生ごみ処理機の活用) | ✓ | |||
| 観光地の分散への協力・PR | ✓ | |||
| ステークホルダーとの対話機会の創出 | ✓ | ✓ | ||
| 物理リスク (急性・慢性) | A2-BCP(空港業務継続計画)への準拠、BCPの整備・訓練の実施 | ✓ | ||
| 非接触サービスの提供(ロボット、無人店舗) | ✓ | ✓ | ||
| 調達先の分散化・代替物流の検討 | ✓ | |||
| ICPの導入による設備投資判断 | ✓ | |||
| 機 会 | 市場・ 製品とサービス・ 評判 | 自然へのポジティブインパクトを重視した建物への転換 | ✓ | |
| サステナビリティ関連テーマに積極的に取り組む店舗・ブランドへの積極的な「場」の提供 | ✓ | |||
| テナントマネジメントの充実(表彰制度の導入の検討) | ✓ | |||
| エシカル商品の拡充、地域の生態系を活かした商材の販売とプロモーション | ✓ | |||
| 交通事業者(エアライン・鉄道等)も含めた、サステナブルな空旅の実施 | ✓ | |||
| 地域創生、地域観光PRの実施 | ✓ | |||
| 空港全体での3R推進に向けた取り組みの推進 | ✓ | |||
| 資源効率 | 中水の利用、節水弁の導入、水再利用 | ✓ | ✓ | |
| 高効率な廃棄物処理方法の検討 | ✓ | |||
| 資金の流れと資金 調達 | サステナブルファイナンスの活用等 | ✓ | ||
| 天然資源の持続 可能な利用 | 認証取得・認証木材調達に関する取り組みの強化 | ✓ | ||
| 社内において、環境に配慮した資材・設備への切り替え、資源効率利用に関する教育実施 | ✓ | ✓ | ||
| 生態系の 保護、復元、再生 | 公共交通機関の利用推進(アナウンス・HP・SNS等) | ✓ | ||
| 生態系の豊かさを感じられるエコツーリズムの実施等 | ✓ | ✓ | ||
上記の自然関連リスク・機会及び対応策の抽出を踏まえ、自然資本分野に関する戦略の3つの方向性を以下のとおり確認しました。今後、リスク・機会の分析を深化させるとともに、同戦略を重要な経営課題として、実現に向けた対応策を、多くのステークホルダーと連携しながら、策定・実施していきます。
| 自然関連リスク・機会に対する戦略 | |
| エコエアポートの実現 | 国の掲げる方針や脱炭素計画に基づき、関係するステークホルダーと連携して、空港運営に伴う地球環境・地域環境への影響を低減させる取り組みを推進します。 |
| サーキュラーエコノミーの 確立 | 空港内で発生する廃棄物のリサイクル・リユース等を推進して、最終処分量を低減し、空港全体のサーキュラーエコノミーの進展を図ります。 |
| サステナブル調達の推進 | 物品販売業・飲食業における原材料・製造加工段階の環境や人権への配慮を推進し、 サプライチェーン全体における自然環境への負荷の低減を図ります。 |
(人的資本・多様性関連)
≪人的資本に関する基本的な考え方≫
当社グループが事業基盤とする東京国際空港(羽田空港)は、人・産業・文化が行き交う日本の空の玄関口であり、訪日外国人6,000万人に向けたターミナル機能強化など、今後更なる発展・進化が求められています。このような背景のもと、中期経営戦略として“収益基盤の強化”とともに人財・DX・財務など“経営基盤の強化”を掲げています。人財に関しては「人財のプロ集団化・組織力の最大化」を目指しており、サステナビリティ中期計画において「人財育成」及び「DEI(Diversity,Equity,Inclusion)の推進」をマテリアリティ(重要課題)に選定し、取り組みを推進しています。
当社グループでは、空港運営全般に係る高度な専門性と知見を備え、常に変化し続ける航空業界においてフロンティアスピリットを発揮し新たな挑戦を続ける人財を、最重要資本(人的資本・知的資本)と位置付けており、空港のリーディングカンパニーを目指す長期ビジョン「To Be a World Best Airport」を、このような人財の力で実現していくものと考えています。
≪人財戦略の基本的な考え方≫
持続的成長を図る中期経営戦略において目指す“収益基盤の強化”では、
1.成長ドライブである将来の航空需要を確実に取り込む「空港事業の成長」
2.コロナ禍を踏まえた変革・イノベーションの推進による「再成長土台の確立」
3.空港利用客以外にも新たな領域への事業展開を図る「収益基盤の拡大」
を3本柱としています。
「空港事業の成長」「再成長土台の確立」のためには、当社が既に十分有する空港運営のプロ人財が、これまで以上に幅広い専門知識や技術を習得していくことが求められます。「収益基盤の拡大」のためには、これまでの当社に不足している、新たな領域に挑戦する自主性や主体性を有する人財を獲得・育成していく必要があります。いずれの戦略にも、新しい発想や、異業種を含めた事業パートナーなどとの共創が求められるため、多様な人財が能力を発揮できる組織であることが重要と考えています。
また、少子化による人手不足が社会全体で進む中、高い人的生産性を発揮する必要があり、すべての世代の戦力化やDX戦略との連携が不可欠と考えています。
これらを踏まえ、以下5点の目指すべき人的資本(人財・組織)の構築に向け、人財戦略(人財採用・育成、社内環境整備)を進めていきます。
①空港運営特有の知識・経験を有するプロ人財
②自主性や主体性を持ち、目的意識を明確化し、行動できる人財
③異なる背景を持つ多様な人財が能力を発揮できる組織
④どの世代においても学び続け、成長し続ける組織
⑤DX戦略を推進する人財・組織
当社は人財戦略に必要な人的投資を継続的に実施し、人的投資(インプット)を、人的資本強化(アウトプット)を通じて経営成果としての高い収益や利益(アウトカム)へと繋げる、「人的資本経営」を推進していきます。
(1)人財の採用・育成、生産性向上
基本的な考え方に基づき、新卒採用においては建築・理工系などの専門性や海外人財にも着目するとともに、異なる経験・能力を有する人財の中途採用も適宜実施し、多様性を持つ中核人財の強化を図っています。人財育成方針として「自ら考え挑戦する人財の育成」を掲げ、この方針に則り、研修体系においては、MBA取得含め手上げ制のプログラムなど自律的な学びをサポートする制度を導入し、従来の全員一律の研修から、DX人財育成など専門性向上や選抜型の教育研修に重点をシフトさせています。また、社員の意識・行動改革として、現在の業務における新たな改善や変革を考えワークエンゲージメントを高める「プラスワンプロモーション」をグループ全体で展開するとともに、新たな発想の習得の機会として、社外出向の機会の増加を図っています。定年延長など処遇の見直しを行ってきたシニア層に対しては、自律的なキャリア形成の一助となるよう、シニアキャリアセミナー受講後1年間利用可能な全額会社負担によるオンライン学習プログラムを開始しています。
新たな領域への事業展開のため、異業種連携の研究開発拠点運営(terminal.0)や、ノウハウ事業、産産・産学連携プロジェクトなどへの人員配置も適切に行っています。
これらの人員確保を含め、コロナ禍で減少した人員について、採用による増員および適切な待遇改善による定着を図りますが、能力やエンゲージメントの向上、DX等を通じた効率化による生産性向上により、効率的な人員体制での経営戦略実現を図ることとしています。

≪デジタル人財の確保・育成について≫
当社のDX推進を支える人財については、新卒採用や既存社内人財の育成による内製化を基本としつつ、即戦力としての中途採用によって補完することとしています。育成については、人財育成計画を策定し、必要となるスキルや知識を定義しています。全社員に対してはITパスポートなどの基礎知識の取得やオンライン型の学習を実施し、ITリテラシーの向上を図っています。
![]() | 必要となる知識・スキル | 人財育成方針 | ||
| デジタル技術で 課題解決する力 | 業務にデジタルを 実装する力 | 専門知識 | 当社事業に紐づく業務知識やITスキルに加え、最新のデジタル技術を含む多岐にわたる専門知識を活かし、DX戦略に基づく各種施策を推進することができる人財を育成する。 | |
| デジタル活用を 推進する力 | 事業・業務を デザインする力 | プロジェクトを マネジメント する力 | 自部署における課題を精査し、DX専門人財とともに業務改革や競争力のあるデジタルビジネスを企画・推進できる人財を育成する。 | |
| デジタル技術を 活用する力 | データを読み解き 判断する力 | 基礎知識 | IT基礎スキル向上に加え、自ら主体的に課題解決や改革に取り組むDXマインド、各種データを読み解き利活用できるデータリテラシーを習得する。 | |
(2)社内職場環境の整備
当社事業は、日本各地、世界各国との様々な人の往来に支えられていることから、世界各国から訪れるお客様に安心して快適にご利用いただけるよう、従業員一人ひとりが多様な文化や価値観を受容し、お互いを尊重し合える包摂性の高い組織風土の醸成が必要であり、また、グループ全体のグローバル化・事業拡大を図っていく上でも、多様性を認め高め合う環境が必要不可欠であるため、社内環境整備方針として「多様な人財が互いを高めあう企業風土」の構築を掲げています。
この方針に則り、女性管理職比率の高水準維持や、外国人・障がい者雇用などDEIの推進、若手社員による働き方改革推進活動など、多様な人財が活躍できる、働きやすく、働きがいを感じられる職場環境整備を進めています。
また、横断的なコミュニケーションの誘発や、Well-Beingの要素を導入したオフィス改革を2024年度に実行し、高い生産性と新たな挑戦の持続的な実現を目指しています。
(3)人財戦略の進捗状況
人財戦略実現に必要な人的投資を行っていくにあたり、2024年度から日本空港ビルデングにおいて従業員エンゲージメントサーベイを開始し、人財に関する課題解決を通じて人的投資(インプット)を人的生産性向上(アウトプット)に繋げていくPDCA管理を始めています。また、高いエンゲージメントによる人的生産性の向上が、売上や利益の向上といった経営成果(アウトカム)に繋がっていく“好循環の構築”を目指しており、それぞれの相関を継続的に確認していくこととしています。
2024年度に実施したサーベイにおけるエンゲージメント指数(*)は82.5点(100点満点)と高い結果となりました。従業員サーベイは、継続して実施するとともに、今後順次グループ各社に拡大していく予定です。
(*)経営戦略の実現に向け、社員がやりがいや働きがいを感じ、主体的に業務に取り組むことができ、個人と組織の成長の方向性が連動している状態を「エンゲージメント」、「やりがい」と「理念・ビジョンへの共感」に関する設問の平均値を「エンゲージメント指数」と定義しています。

1.人的投資に係る主な指標(経営成果→人的投資)
人財の確保に関する投資①②③、社員の能力開発に関する投資④⑤、新たな挑戦の機会の創出に関する投資⑥⑦については以下のとおりです。数値はいずれも単体です。
2023年度に拡大した人的投資を2024年度はさらに拡大しました。
| 2023年度 | 2024年度 | |
| ①新卒採用数 | 21名 | 21名 |
| ②中途採用数 | 6名 | 9名 |
| ③平均給与 | 7,987千円 | 8,662千円 |
| ④一人当たり研修費用(*) | 53千円 | 92千円 |
| ⑤シニア学習プログラム参加者数 | 9名 | 11名 |
| ⑥外部出向・共創プロジェクト派遣数 | 25名 | 31名 |
| ⑦手上げ研修・教育参加者数 | 234名 | 147名 |
(*)2024年度実績には、2024年度から本格導入されたデジタル研修の実績を含む
2.人的投資と人的生産性の相関を計る主な指標(人的投資→人的生産性)
能力・効率性に関する指標①②③④⑤、新たな挑戦に関する指標⑥⑦について、従業員エンゲージメント サーベイなどの結果は以下のとおりです。数値はいずれも単体です。
社員の成長や生産性向上を実感するスコアは高く、これまで実施した、能力開発や挑戦機会の提供といった 人的投資が、社員の能力伸長や生産性向上、挑戦の風土につながっているか、相関を継続的に検証します。
なお、挑戦を奨励する研修や挑戦の機会の確保に取り組んできましたが、「新しい仕事やプロジェクトに 積極的にチャレンジしてみたい」と感じる社員スコアと比較して、実際にその機会に「参加した」とする社員スコアが低いことから、今後、さらに挑戦の機会を増やしていくこととします。
| 2023年度 | 2024年度 | |
| ①エンゲージメント指数 | - | 82.5 |
| ②自身の成長実感スコア | - | 74.3 |
| ③手当支給対象となる専門資格取得者数 | 153名 | 155名 |
| ④組織の生産性向上実感スコア | - | 62.0 |
| ⑤平均年間総実労働時間 | 1,801時間 | 1,833時間 |
| ⑥新たな挑戦に関する指数(挑戦してみたいと思う社員) | - | 74.1 |
| ⑦新たな挑戦に関する指数(実際に挑戦したとする社員) | - | 56.0 |
3.人的生産性と経営成果の相関を計る主な指標(人的生産性→経営成果)
社員数は2021年以降、単体・連結いずれも増加していますが、社員一人あたりが生み出す収益・利益はいずれもコロナ禍前を上回る成果となっています。
社員の高いエンゲージメントや生産性が経営成果につながっているか、相関を継続的に検証します。
(単位:百万円)
| 年度 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 |
| 社員数(単体) | 290 | 264 | 251 | 272 | 293 | 314 |
| 人員数(連結+臨時+派遣)※1 | 5,379 | 4,031 | 3,299 | 3,595 | 4,565 | 4,768 |
| 営業収益(連結・旧基準)※2 | 249,756 | 52,572 | 67,380 | 139,037 | 276,995 | 342,815 |
| 営業利益(連結) | 9,892 | △59,020 | △41,255 | △10,579 | 29,527 | 38,557 |
| 単体一人当たり営業収益 | 861 | 199 | 268 | 511 | 945 | 1,092 |
| 単体一人当たり営業利益 | 34 | △224 | △164 | △39 | 101 | 123 |
| 連結一人当たり営業収益 | 46 | 13 | 20 | 39 | 61 | 72 |
| 連結一人当たり営業利益 | 2 | △15 | △13 | △3 | 6 | 8 |
※1 臨時雇用者・派遣社員については、年度末1か月間の労働時間を基に計算した人数です。
※2 「収益認識に関する会計基準」等を2021年度の期首から適用していますが、経年比較のために旧基準で 計算した営業収益とそれに係る指標を記載しています。
