有価証券報告書-第104期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/26 15:30
【資料】
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【項目】
198項目
ロ.戦略(シナリオ分析)
(イ)分析対象事業
京急グループすべての事業
(交通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業、流通事業、その他の事業)
(ロ)シナリオの設定
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等が公表しているシナリオを参照のうえ、移行リスクと物理的リスクがもたらす影響の全体的な幅を捉えるため、設定シナリオを脱炭素社会が実現するシナリオ(世界的な平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5℃程度に抑える)と地球温暖化が進展するシナリオ(平均気温の上昇が4℃以上となる)に分け、リスク・機会の特定と影響度評価、またリスクへの対処および機会を捉えた取り組みや今後の方向性を定めました。
設定シナリオ脱炭素社会実現シナリオ
1.5℃(注)
地球温暖化進展シナリオ
4℃
世界観
(主なイメージ)
脱炭素社会実現
・脱炭素への取り組みが加速
・再生可能エネルギー調達コストの増加
・環境意識の高まり
地球温暖化進展
・環境政策の積極的な推進はない
・自然災害の激甚化・頻発化による被害や復旧コストの増加
・平均気温上昇によるエネルギー調達コストや対策コストの増加
主な参照シナリオ・IPCC RCP 2.6
・IEA:WEO2022
NZE(ネットゼロ排出シナリオ)
・IPCC RCP 8.5

(注)脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等と想定
(ハ)気候変動によるリスク・機会の特定ならびに時間軸および影響度の評価
分類主な項目該当事業(注1)時間軸
(注2)
影響度
移行リスク




政府や自治体等による規制強化(省エネ法、炭素税等)に伴うコストの増加中~
長期
技術開発コストの増加、省エネ設備等への投資不十分によるコストの発生長期
市場エネルギー・資材の調達コストの増加短~
長期
物理的リスク急性自然災害の激甚化・頻発化に伴う施設や設備への被害増加と復旧コストの増加短~
長期
自然災害の激甚化・頻発化に伴う交通機関の運休増加や施設の営業停止とそれらによる売上の減少短~
長期
慢性真夏日・猛暑日の増加による空調コストの増加中~
長期
機会空調効率化等に伴うエネルギー使用量の削減によるコストの削減短~
中期
再生可能エネルギーへのシフトに伴う将来の化石エネルギー価格増大に対する影響の低減中~
長期
災害に強い事業運営による復旧コストの削減および顧客の信頼確保中~
長期
環境優位性の維持・向上による公共交通機関利用者の増加----中~
長期
環境性能の高い物件の競争力上昇と売上増加----中~
長期
環境配慮型事業へのシフトによるESG投資の呼び込み短~
長期
トランジション・ファイナンスを活用した資金調達による環境負荷低減の推進短~
長期

(注)1.交:交通事業、不:不動産事業、レ:レジャー・サービス事業、流:流通事業、他:その他の事業
2.時間軸:短期0~1年(中期経営計画の最終年である2026年度までを想定)、中期1~5年(2030年度までを想定)、長期5~25年(2050年度までを想定)
(ニ)財務的な影響の定量評価(事業別)
特定した気候変動にともなうリスク・機会において、公表されているデータ等を基に、一部の項目においてシナリオごとの2030年および2050年時点の影響額を試算ならびに影響度の定量評価を行いました。
(注)事業への財務影響度:大(10億円以上)、中(1億円~9億円)、小(1億円未満)と評価
(影響額の主な試算結果)
a.対象:すべての事業
移行リスク(政策・法規制)
項目主な影響影響額(百万円)事業への
財務
影響度
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ4℃シナリオ
(注1)
2030年2050年2030年2050年
政府や自治体等による規制強化(省エネ法、炭素税等)に伴うコストの増加炭素税の負担コストが発生1,9710
(注2)
--・設備の省エネ化推進
・再生可能エネルギーの導入

(注)1.4℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進はなく、炭素税は導入されないと想定
2.ネットゼロ達成のため炭素税の課税はないと想定
b.対象:鉄道事業
(a)移行リスク(技術)
項目主な影響影響額(百万円)事業への
財務
影響度
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ4℃シナリオ
(注1)
2030年2050年2030年2050年
開発コストの増加、省エネ設備等への投資不十分によるコストの発生省エネ設備等への投資を行わない場合、温室効果ガスの排出が削減されず、炭素税の負担コストが発生20.6
(注2)
-
(注3)
--設備の省エネ化推進

(注)1.4℃シナリオでは、環境政策の積極的な推進はなく、炭素税は導入されないと想定
2.2024年度から開始した鉄道全線再エネ化にともなう削減効果は加味し、その他において適切な
投資等を行わず、Scope1排出量が削減されなかった場合を想定
3.2031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
(b)移行リスク(市場)
項目主な影響影響額(百万円)(注)事業への
財務
影響度
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ4℃シナリオ
2030年2050年2030年2050年
エネルギー・資材の調達コストの増加再生可能エネルギーの導入による調達コストの増加21.321.264.163.8・設備の省エネ化推進
・経済運転の推進

(注)長期における使用電力量は中期よりも低減することが推測されるため、各シナリオにおける2050年
時点のエネルギー調達コストは2030年時点を上回らないと想定
(c)物理的リスク(急性)
当社沿線に並行・横断する河川のうち、浸水による影響が特に大きいと考えられる以下の河川周辺における、鉄道資産等への影響額を試算しました。
(対象河川) ①多摩川・鶴見川 ②帷子川・宮川 ③平作川
項目主な影響影響額(百万円)(注1)事業への
財務
影響度
(注3)
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ
(注2)
4℃シナリオ
2030年2050年2030年2050年
自然災害の激甚化・頻発化に伴う施設や設備への被害増加と復旧コストの増加自然災害の発生頻度の増加に伴い、資産の損壊・復旧コストも増加①:-
②:-
③:-
①:+119.9
②: +38.0
③: +47.4
①:-
②:-
③:-
①:+239.9
②: +76.0
③: +94.8
・地下駅を中心とした浸水防止対策の実施
・損害保険への加入
自然災害の激甚化・頻発化に伴う交通機関の運休増加や施設の営業停止とそれらによる売上の減少自然災害の発生頻度の増加に伴い、運休による売上の減少も増加①:-
②:-
③:-
①:+1.6
②:+0.3
③:+0.2
①:-
②:-
③:-
①:+3.2
②:+0.7
③:+0.5
気象システムの運用による適切な列車の運転規制

(注)1.現在の100年に一度規模の影響額に対する、各年時点のリスク増加分
(2030年時点における洪水発生頻度は、現在と概ね同等であると想定)
2.脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等と想定
3.リスク増加分を含む全体の影響額と比較し評価
(d)物理的リスク(慢性)
項目主な影響影響額(百万円)(注1)事業への
財務
影響度
(注3)
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ
(注2)
4℃シナリオ
2030年2050年2030年2050年
真夏日・猛暑日の増加による空調コストの増加空調の稼働期間増加に伴い、エネルギー調達コストも増加+70
(注4)
+18+66空調設備の省エネ化推進

(注)1.電力調達価格および夏日・真夏日・猛暑日の日数を基準に試算した、2020年時点の推計コスト
に対する増加分
2.脱炭素社会実現シナリオにおける物理的リスクの影響は、2℃シナリオにおける影響と同等
と想定
3.増加分を含む全体のコストと比較し評価
4.2030年および2050年における真夏日ならびに猛暑日は増加する見込み
ただし、電力調達価格は低減することが推測されるため、1.5℃シナリオにおける2050年時点
のエネルギー調達コストは2020年時点の推計コストを上回らない想定
(e)機会
項目主な影響影響額(百万円)事業への
財務
影響度
主な対処や
取り組み
1.5℃シナリオ4℃シナリオ
(注1)
2030年2050年2030年2050年
空調効率化等に伴うやエネルギー使用量の削減によるコストの削減省エネ設備等の導入によりエネルギー調達コストを削減450-
(注2)
--設備の省エネ化推進
再生可能エネルギーへのシフトに伴う将来の化石エネルギー価格増大に対する影響の低減再生可能エネルギーの導入により炭素税の負担コストを回避1,9133,417--再生可能エネルギーの導入

(注)1.4℃シナリオでは、現状以上の省エネ推進の取り組みはなく、炭素税も導入されないと想定
2.2031年以降の具体的な省エネ設備等の更新・投資は今後検討
(ホ)シナリオ分析による考察と今後の方向性
シナリオ分析の結果、脱炭素社会が実現する世界では、当社グループすべての事業において、炭素税が導入された場合の課税コストやエネルギー調達コストの増加が想定されます。また、地球温暖化が進展する世界では、自然災害の激甚化・頻発化に伴い、浸水害による資産への被害および鉄道事業においては運休による収入の減少、さらには平均気温の上昇による空調コストの増加等が見込まれることが財務的な評価により明らかとなりました。
一方で、脱炭素社会が実現する世界においては、「省エネ」「再エネ」による脱炭素の取り組みによってエネルギー調達コストや炭素税の課税コストが低減できることが分かりました。また、自然災害や気温上昇の影響はあるものの、地球温暖化が進展する世界と比べ、資産等への被害、収入の減少や空調に対するエネルギー調達コストの増加が限定的であることも分かりました。その他、環境優位性の維持・向上による公共交通機関利用者の増加、環境性能の高い不動産物件による競争力上昇と売上増加等の機会を得ることも予想されます。
これらを踏まえ当社グループでは、脱炭素社会が実現する世界に向けて「省エネ」「創エネ」「再エネ」に資する取り組みを加速するとともに、引き続きリスク・機会に対する財務影響評価を行います。特に影響の大きいリスクと認識した事項を中心に対処方針を検討し、リスクの最小化とレジリエンスの向上に努めることで「社会の持続的発展への貢献」と「京急グループの持続的発展」のよりよい循環による豊かな沿線の実現を目指してまいります。

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