有価証券報告書-第38期(2024/04/01-2025/03/31)

【提出】
2025/06/16 16:48
【資料】
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【項目】
195項目
イ.戦略
〇気候変動関連
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示すシナリオに照らした気候変動の影響や社会経済シナリオに基づき、気候変動に関連する事業へのリスクと機会を分析しました。
我が国におけるカーボンプライシング導入による費用負担の増加、また台風・洪水の発生頻度増加による被害の増加といったリスクを認識しております。一方、鉄道の環境優位性が評価され、MaaS普及等による利便性向上も通じてご利用増加の機会を得ることも分かりました。
具体的な分析内容は「JR西日本グループ統合レポート」69~72ページに記載のとおりであります。(分析は社会が気候変動に積極的な緩和策を実施し気温上昇が抑制されるケースを1.5℃シナリオ(RCP1.9)(注)及び2℃シナリオ(RCP2.6)として、一方、緩和策が不十分で気温上昇が抑制されないケースを4℃シナリオ(RCP8.5)として行いました。なお、定性的な分析内容は社会が気候変動に積極的な対応を実施する1.5℃シナリオ(RCP1.9)・2℃シナリオ(RCP2.6)に基づいております。)
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/env/pdf/report_tcfdtnfd.pdf)
当社グループは、環境長期目標「JR西日本グループ ゼロカーボン2050」を策定し、その目標として、グループ全体のCO2排出量(スコープ1及びスコープ2排出量(連結))を2050年に「実質ゼロ」、その達成に向けた中間目標として、2025年度に35%削減、2030年度に50%削減(いずれも2013年度比)することを掲げております。また、サプライチェーン上の排出量となるスコープ3排出量についても、より正確な把握と削減の取り組みを推進していきます。
目標達成に向け、「長期ビジョン」及び「中期経営計画2025」における地球環境保護の取り組みとして、省エネルギー型鉄道車両の導入等による省エネルギーのさらなる推進、再生可能エネルギー由来電力の導入や次世代バイオディーゼル燃料の実装等再生可能エネルギーの活用の推進に取り組みます。併せて、MaaS等を通じた鉄道・公共交通の利便性向上や都市圏・都市間輸送における鉄道の環境優位性の訴求強化を通じて旅客輸送のモーダルシフトを推進するなど、地域・社会と連携し、社会全体の脱炭素化に取り組んでいきます。
(参照URL:https://www.westjr.co.jp/company/action/env/warming/)
(注)RCP(Representative Concentration Pathways)…代表濃度経路シナリオ
〇自然関連
当社グループの収益の約6割を占めるモビリティ業、その中でも大部分を占める鉄道事業に関して、自然関連課題評価のための統合的なアプローチとしてTNFDが提唱するLEAP(Locate:発見、Evaluate:診断、Assess:評価、Prepare:準備)アプローチに沿って、分析、評価を行いました。具体的には、検討スコープ及び分析対象とする自然関連テーマを明確化するため、自然リスク評価ツールENCORE(注1)を使用して鉄道事業における自然への依存・影響の概況を確認しました。抽出された項目のうち、TCFDにおいて気候 変動起因による分析対象となっていない項目を中心に、自然資本との接点の 高い操業内容を確認しました。
鉄道事業においては、大別すると列車運行と設備メンテナンスにより操業が行われており、これらの中から絞り込みを行った結果、事業拠点の規模が特に大きいため自然資本に対する依存・影響が大きく、水の使用量も最も多い総合車両所を検討スコープとして定め、分析を行っております。
総合車両所の操業における自然資本への依存は、部品の洗浄、給水等に関して水資源への一定の依存を認識したものの、水リスク評価ツールAqueduct(注2)を用いて拠点周辺の水ストレスを評価したところ、全ての総合車両所において水ストレスや水の枯渇リスクの高い地域には立地していないことが分かりました。同じく操業による自然資本への影響においては、不適切な取り扱いに起因した排水や廃棄物などによる水質・土壌汚染の発生による規制への抵触や賠償責任のリスクを認識したものの、ISO14001に準拠した当社独自の環境マネジメントシステムにより環境汚染リスクの未然防止や発生した場合の被害を最小限にとどめる取り組みを行い、環境負荷の低減の活動を実施しております。
また、自然に配慮した事業推進を通じて、地域との協働の進展、環境負荷低減に資するグループ内企業の製品・サービスの販売の拡大といった機会を得ることも分かりました。具体的な分析内容は「JR西日本グループ統合レポート」73~74ページに記載のとおりであります。
当社グループは、自然資本に関連する目標として、事業活動における水使用の効率性を示す、連結売上高当たりの水使用量の原単位を2025年度に6.5㎥/百万円以下とすることを掲げております。この目標は、教育を通じた社員一人ひとりの節水の取り組みや、各事業部門での節水型機器への取り替えなど、水使用の低減の取り組みを進めることで2023年度に達成しておりますが、引き続き、生物多様性をはじめとする自然資本全般の保護に資する取り組みを推進していきます。
今後、当社グループは、認識したリスクと機会に対して適切な対処を講じることで、社会インフラを担う企業グループとして長期持続的な企業価値向上を図りつつ、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(注)1 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities Risks and Exposure)…自然への依存や影響、環境変化がビジネスにどのようなリスクを生むかを可視化するTNFD紹介ツール
2 Aqueduct…世界資源研究所(WRI)が提供する、水ストレスや水枯渇リスクといった水に関するリスクを評価できるTNFD紹介ツール