有価証券報告書-第161期(2025/04/01-2026/03/31)
ヤマトグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものです。
(1)経営方針
ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便性の向上に役立つ商品・サービスを開発してきました。
今後も、社会の一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献していきます。また、テクノロジーを起点に次世代の営業・幹線輸送・ラストマイルオペレーションを構築し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指していきます。
(2)経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めました。この実現に向け、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を推進しつつ、取組みの進捗状況や事業環境の変化等を踏まえたアップデートをおこなっています。
当連結会計年度における経済環境は、物価上昇の見通しが強まる中での実質賃金減少の継続などにより、個人消費の停滞感が根強く残りました。また、深刻化する人手不足や、年度末にかけての中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として厳しい事業環境が続いており、先行きは見通しづらい状況にあります。
このような状況の中、中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき、宅急便ネットワークの強靭化による基盤領域の利益成長、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用した事業間のシナジーによる法人向けビジネスの拡大、多様化する顧客や社会のニーズに応える新たなビジネスモデルの事業化およびグループ経営基盤の強化など、「経済価値」を生み出すとともに、持続可能な社会に向けた「環境価値」「社会価値」を創造する取組みを推進しています。
基盤領域では、宅急便ビジネスを安定的に利益確保できる事業構造に転換させるため、大口法人のお客様に対するプライシングの適正化や2025年10月に実施した「宅急便」届出運賃の改定により、コスト上昇分の適切な転嫁を進めています。セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービス提供に専念できる環境整備に注力するとともに、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発を進め、専用資材の事前購入により全国一律料金で荷物が送れる「こねこ便420」の全国での拡販や、宅急便のサービスラインアップの拡充として2025年11月には、午前中にお預かりした荷物を当日中にお届けする「宅急便当日配送サービス」の提供開始と、同一都道府県内運賃を新設しました。
法人ビジネス領域では、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用し、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションや国際フォワーディングなどの付加価値を組み合わせ、お客様のビジネス拡大を支援することで、ヤマトグループの利益成長を目指しています。2025年10月には、ヤマトグループの輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点を、福島県郡山市に開設しました。同様の拠点を需要地に展開し、お客様や地域に新たな価値を提供していきます。また、グローバル事業では、インドで生産拡大を目指す製造業のグローバルサプライチェーン構築を支援するため、2026年1月にヤマトグループとして海外最大のロジスティクスセンターを開設しました。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進しています。
また、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス排出量の削減や、持続可能で効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、サプライチェーンの持続可能性を高めるソリューションとしてお客様に提供することで、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。
[目指す姿]

「SX2030 ~1st Stage~」主要施策
①基盤領域:宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大
付加価値に応じたプライシング適正化、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備する「営業所改革」、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置と荷物の発送・受取に留まらない新たなサービス拠点の展開などを迅速に進めていきます。輸送領域においては、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組んでいきます。
②成長領域:法人ビジネス領域の拡大
既存の輸送ネットワークや国内外の倉庫に加え、輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点、貨物航空輸送、通関や不動産関連のノウハウなどのグループ経営資源を活かした付加価値の高いソリューションを法人のお客様に提供することで、利益成長を加速させていきます。
③新規領域:新たなビジネスモデルの事業化
既存の経営資源を活用しつつ、多様なパートナーとともに、環境・社会課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて経済価値を生み出し、社会と物流業界全体の持続性を高めるとともに、新たな収益基盤として成長を加速させていきます。
④グループ経営基盤の強化
持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組みます。また、あらゆる事業領域においてAI技術を駆使したビジネスモデルの再構築を推進し、グループ全体のビジネス構造を変革していきます。
⑤資本効率をより重視した経営の浸透
資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築
していきます。
当該中期経営計画の最終年度となる2027年3月期においては、計画策定時に連結営業収益2兆~2兆4,000億円、連結営業利益1,200~1,600億円(連結営業利益率6%以上)、ROE12%以上、ROIC8%以上を目標と設定しましたが、事業環境の変化や取組みの進捗状況等を踏まえ、2027年3月期の連結業績見通しを連結営業収益1兆9,200億円、連結営業利益420億円(連結営業利益率2.2%)、ROE4.2%、ROIC3.7%へ見直しました。
当計画では「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、引き続き「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」に注力します。当連結会計年度において着実に進捗しているプライシングの適正化や法人向けビジネスの拡大、オペレーティングコストの適正化、間接コストの削減といった利益成長ドライバーの強化を図るとともに、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます。
[成長イメージ]

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヤマトグループを取り巻く事業環境は、不安定な国際情勢や金融市場の変動などにより、依然として先行き不透明な状況が続いています。また、物価上昇の影響や中長期的な輸送力不足の深刻化など、外部環境の変化に伴うコスト上昇が継続すると見込まれます。さらに、中長期的には、EC化のさらなる進展や地政学リスクの増大、少子高齢化・過疎化の進展、労働力不足や気候変動の深刻化などを想定しています。このような中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めています。そして、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオを変革する3年間」と位置づけ、以下①~⑤の取組みを推進していきます。
① 宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大
宅配便市場は、ECの成長とともに拡大傾向にあるものの、基盤領域である個人および小口法人の市場は、人口減少や個人消費の低迷に伴う影響を受けています。また、EC化の進展と人口動態の変化に伴い、ラストマイル領域における集荷と配達の業務量や輸送領域における都市部・地方部間の荷物の流動量が変化しており、宅急便ネットワークの収益性は低下傾向にあります。
これらの状況を踏まえ、基盤領域である宅急便ビジネスを安定的に利益を確保できる事業構造に転換させるため、収益構成の変革に取り組み、付加価値に応じたプライシングの適正化を計画的に進めていきます。また、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備するとともに、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置、お客様のニーズを捉えた商品・サービスや、宅急便の発送・受け取りにとどまらないサービス開発を進めています。
輸送領域においては、社会的インフラとしての宅急便ネットワークをより効率的かつ持続的な形に強靭化し、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組みます。
② 法人向けビジネスの拡大
世界の政治・経済とサプライチェーンのブロック化や環境問題などのリスク要因が増大し、企業が対応を求められる中、ヤマトグループは変化を機会と捉え、サプライチェーン全体に拡がるお客様の経営課題の解決を目指すソリューションビジネスを成長領域と位置付けています。
法人のお客様の物流全般や経営課題の解決に取り組むコントラクト・ロジスティクス事業では、企業間物流における在庫・配送拠点やEC事業者様の総合物流センターの運営など、提供価値を拡大していきます。また、事業成長の基盤として、全国の物流拠点への仕分け・輸配送機能とロジスティクス機能が一体となった統合型ビジネスソリューション拠点の活用および展開を進めます。全国を網羅する強靭な輸配送ネットワークと一体化したこれらの拠点を活用し、お客様のサプライチェーン全体の最適化と事業戦略に貢献することで、法人向けビジネスのさらなる拡大を推進します。
グローバル事業においては、国際輸送と海外コントラクト・ロジスティクスも組み合わせることで、お客様のサプライチェーン全体に対する価値提供を進めています。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進していきます。
③ 新たなビジネスモデルの事業化
持続可能な未来の実現に向けて、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や、効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。
具体的には、EVの導入・運用を支援する「EVライフサイクルサービス」の拡販や、ヤマトエナジーマネジメント株式会社を中心とした再生可能エネルギーの供給などのエネルギー事業を推進します。あわせて、多様なステークホルダーが参画する共同輸配送のオープンプラットフォームの展開、自動車運送事業者向けの健康管理支援サービス等を通じ、物流業界全体の持続可能性向上と課題解決に貢献します。
④ グループ経営基盤の強化
持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組んでいきます。
人事戦略については、引き続きセールスドライバーをはじめとした社員の待遇のさらなる向上や、働く環境の整備に向けた投資を推進しています。また、お客様に向き合う第一線の組織と人材をこれまで以上に強化するため、間接部門の業務効率化と組織のスリム化を図りながら、宅急便の営業所や法人営業支店などへの人材配置を進めるとともに、リーダー人材の育成に注力しています。そして、社員の働きがい向上のため、営業職や企画職などを対象に、パフォーマンスに応じて報酬を決定する制度改正を進めます。
デジタル戦略については、「AI・データドリブン経営」を本格化させ、データ活用による最適な経営資源の配置やバックオフィス業務の効率化を通じ、オペレーション全体の生産性向上を図るとともに、新たな顧客体験価値を創出することで、収益力の強化を図ります。あわせて、各組織でAI活用推進の中心となる人材育成を進めます。
サステナブル経営の強化については、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた2つのビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」に基づき、特定した重要課題(マテリアリティ)に対して引き続き取組みを強化していきます。
環境の領域については、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2021年3月期比)」の実現に向け、引き続き「EVの導入」「太陽光発電設備の導入」「再生可能エネルギー由来電力の使用率向上」などの施策を推進するとともに、サプライチェーンにおけるGHGの実質排出量(Scope3)の把握や削減目標の設定などに取り組んでいきます。
社会の領域については、引き続き、人命の尊重を最優先とし、社員やパートナーの安全・健康に対する取組みを強化するとともに、多様な社員が活躍できる職場環境に向けた整備を進めています。そして、社会の諸課題に向き合い、ビジネスパートナーとの定期的な協議の実施や、課題の早期発見と解消のための体制・プロセス・仕組みの整備など、適切な関係に基づくサステナブル・サプライチェーンの構築を推進していきます。
コーポレート・ガバナンスの強化については、引き続き、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持・強化などに取り組むとともに、経営管理の高度化を推進し、株主・投資家との建設的な対話や情報開示の充実を通じて、持続的な企業価値向上に努めていきます。
⑤ 資本効率をより重視した経営の浸透
上記の①~④を推進することに加え、資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。
本中期経営計画期間においては、オペレーションの効率化に資する拠点戦略やAI・DX推進などへの成長投資を実施するとともに、お客様に対する環境負荷の少ない物流サービスの提供とオペレーションのエネルギー効率向上の両立を通じた低炭素社会の実現に向けて、EVや太陽光発電設備等への環境投資も実施します。なお、成長領域であるコントラクト・ロジスティクス事業およびグローバル事業では、自律的な成長施策に加え、M&Aや戦略的業務提携も活用していきます。
上記計画を財務面から支えるため、バランスシート・マネジメントの強化に取り組み、固定資産の流動化等を適宜検討するとともに、キャッシュの創出状況、保有現預金や自己資本比率等の状況、グループ資金の有効活用など、財務の健全性と効率性を意識しながら、必要に応じて金融機関からの借入および社債の発行を通じた資金調達を実施していきます。財務の健全性の観点から自己資本比率は45%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.3~0.5倍程度を目安とします。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向40%以上を目標とし、自己株式の取得については、成長投資の進捗状況、キャッシュ・フローの動向、株価等の観点を踏まえ、柔軟に検討していきます。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものです。
(1)経営方針
ヤマトグループは、社会的インフラとしての宅急便ネットワークの高度化、より便利で快適な生活関連サービスの創造、革新的な物流システムの開発を通じて、豊かな社会の実現に貢献することを経営理念に掲げ、生活利便性の向上に役立つ商品・サービスを開発してきました。
今後も、社会の一員として社会の課題に正面から向き合い、お客様、社会のニーズに応える「新たな物流のエコシステム」を創出することで、豊かな社会の創造に持続的に貢献していきます。また、テクノロジーを起点に次世代の営業・幹線輸送・ラストマイルオペレーションを構築し、収益力の強化に努めることで、安定した経営を目指していきます。
(2)経営環境、経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めました。この実現に向け、2027年3月期を最終年度とする中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を推進しつつ、取組みの進捗状況や事業環境の変化等を踏まえたアップデートをおこなっています。
当連結会計年度における経済環境は、物価上昇の見通しが強まる中での実質賃金減少の継続などにより、個人消費の停滞感が根強く残りました。また、深刻化する人手不足や、年度末にかけての中東情勢の緊迫化を背景としたエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として厳しい事業環境が続いており、先行きは見通しづらい状況にあります。
このような状況の中、中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」に基づき、宅急便ネットワークの強靭化による基盤領域の利益成長、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用した事業間のシナジーによる法人向けビジネスの拡大、多様化する顧客や社会のニーズに応える新たなビジネスモデルの事業化およびグループ経営基盤の強化など、「経済価値」を生み出すとともに、持続可能な社会に向けた「環境価値」「社会価値」を創造する取組みを推進しています。
基盤領域では、宅急便ビジネスを安定的に利益確保できる事業構造に転換させるため、大口法人のお客様に対するプライシングの適正化や2025年10月に実施した「宅急便」届出運賃の改定により、コスト上昇分の適切な転嫁を進めています。セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービス提供に専念できる環境整備に注力するとともに、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発を進め、専用資材の事前購入により全国一律料金で荷物が送れる「こねこ便420」の全国での拡販や、宅急便のサービスラインアップの拡充として2025年11月には、午前中にお預かりした荷物を当日中にお届けする「宅急便当日配送サービス」の提供開始と、同一都道府県内運賃を新設しました。
法人ビジネス領域では、エクスプレス事業の顧客基盤や営業網を活用し、輸配送ネットワークに倉庫オペレーションや国際フォワーディングなどの付加価値を組み合わせ、お客様のビジネス拡大を支援することで、ヤマトグループの利益成長を目指しています。2025年10月には、ヤマトグループの輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点を、福島県郡山市に開設しました。同様の拠点を需要地に展開し、お客様や地域に新たな価値を提供していきます。また、グローバル事業では、インドで生産拡大を目指す製造業のグローバルサプライチェーン構築を支援するため、2026年1月にヤマトグループとして海外最大のロジスティクスセンターを開設しました。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進しています。
また、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス排出量の削減や、持続可能で効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、サプライチェーンの持続可能性を高めるソリューションとしてお客様に提供することで、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。
[目指す姿]

「SX2030 ~1st Stage~」主要施策
①基盤領域:宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大
付加価値に応じたプライシング適正化、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備する「営業所改革」、お客様のニーズを捉えた商品・サービスの開発、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置と荷物の発送・受取に留まらない新たなサービス拠点の展開などを迅速に進めていきます。輸送領域においては、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組んでいきます。
②成長領域:法人ビジネス領域の拡大
既存の輸送ネットワークや国内外の倉庫に加え、輸送ターミナルと高付加価値機能を持つロジスティクスセンターを融合した統合型ビジネスソリューション拠点、貨物航空輸送、通関や不動産関連のノウハウなどのグループ経営資源を活かした付加価値の高いソリューションを法人のお客様に提供することで、利益成長を加速させていきます。
③新規領域:新たなビジネスモデルの事業化
既存の経営資源を活用しつつ、多様なパートナーとともに、環境・社会課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて経済価値を生み出し、社会と物流業界全体の持続性を高めるとともに、新たな収益基盤として成長を加速させていきます。
④グループ経営基盤の強化
持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組みます。また、あらゆる事業領域においてAI技術を駆使したビジネスモデルの再構築を推進し、グループ全体のビジネス構造を変革していきます。
⑤資本効率をより重視した経営の浸透
資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築
していきます。
当該中期経営計画の最終年度となる2027年3月期においては、計画策定時に連結営業収益2兆~2兆4,000億円、連結営業利益1,200~1,600億円(連結営業利益率6%以上)、ROE12%以上、ROIC8%以上を目標と設定しましたが、事業環境の変化や取組みの進捗状況等を踏まえ、2027年3月期の連結業績見通しを連結営業収益1兆9,200億円、連結営業利益420億円(連結営業利益率2.2%)、ROE4.2%、ROIC3.7%へ見直しました。
当計画では「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を目指し、引き続き「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」に注力します。当連結会計年度において着実に進捗しているプライシングの適正化や法人向けビジネスの拡大、オペレーティングコストの適正化、間接コストの削減といった利益成長ドライバーの強化を図るとともに、バランスシート・マネジメントの強化とキャピタル・アロケーションの最適化を通じて持続的な企業価値向上に取り組んでいきます。
[成長イメージ]

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
ヤマトグループを取り巻く事業環境は、不安定な国際情勢や金融市場の変動などにより、依然として先行き不透明な状況が続いています。また、物価上昇の影響や中長期的な輸送力不足の深刻化など、外部環境の変化に伴うコスト上昇が継続すると見込まれます。さらに、中長期的には、EC化のさらなる進展や地政学リスクの増大、少子高齢化・過疎化の進展、労働力不足や気候変動の深刻化などを想定しています。このような中、ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値の向上を実現するため、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定めています。そして、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」を「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオを変革する3年間」と位置づけ、以下①~⑤の取組みを推進していきます。
① 宅急便ネットワークの強靭化と提供価値の拡大
宅配便市場は、ECの成長とともに拡大傾向にあるものの、基盤領域である個人および小口法人の市場は、人口減少や個人消費の低迷に伴う影響を受けています。また、EC化の進展と人口動態の変化に伴い、ラストマイル領域における集荷と配達の業務量や輸送領域における都市部・地方部間の荷物の流動量が変化しており、宅急便ネットワークの収益性は低下傾向にあります。
これらの状況を踏まえ、基盤領域である宅急便ビジネスを安定的に利益を確保できる事業構造に転換させるため、収益構成の変革に取り組み、付加価値に応じたプライシングの適正化を計画的に進めていきます。また、セールスドライバーがお客様に向き合い、より良いサービスの提供に専念できる環境を整備するとともに、地域の市場性に基づく集配拠点の再配置、お客様のニーズを捉えた商品・サービスや、宅急便の発送・受け取りにとどまらないサービス開発を進めています。
輸送領域においては、社会的インフラとしての宅急便ネットワークをより効率的かつ持続的な形に強靭化し、顧客ニーズに対応しつつ、輸送・積載効率を高め、固定費の抑制および業務量に応じた変動費のコントロールを実現するため、荷物の流動量の変化に即したターミナル間およびターミナル・集配拠点間の運び方見直し、仕分け作業を担う働き手の適正配置などに取り組みます。
② 法人向けビジネスの拡大
世界の政治・経済とサプライチェーンのブロック化や環境問題などのリスク要因が増大し、企業が対応を求められる中、ヤマトグループは変化を機会と捉え、サプライチェーン全体に拡がるお客様の経営課題の解決を目指すソリューションビジネスを成長領域と位置付けています。
法人のお客様の物流全般や経営課題の解決に取り組むコントラクト・ロジスティクス事業では、企業間物流における在庫・配送拠点やEC事業者様の総合物流センターの運営など、提供価値を拡大していきます。また、事業成長の基盤として、全国の物流拠点への仕分け・輸配送機能とロジスティクス機能が一体となった統合型ビジネスソリューション拠点の活用および展開を進めます。全国を網羅する強靭な輸配送ネットワークと一体化したこれらの拠点を活用し、お客様のサプライチェーン全体の最適化と事業戦略に貢献することで、法人向けビジネスのさらなる拡大を推進します。
グローバル事業においては、国際輸送と海外コントラクト・ロジスティクスも組み合わせることで、お客様のサプライチェーン全体に対する価値提供を進めています。北米、中国、そして東南アジアを中心に営業力を強化し、国際フォワーディングの効率向上、越境EC事業者様への提案強化、内需拡大に伴う物流需要の取込みなどを、M&Aや戦略的業務提携も検討しながら推進していきます。
③ 新たなビジネスモデルの事業化
持続可能な未来の実現に向けて、中長期的な輸送力不足の深刻化や気候変動への対応など、環境・社会課題に向き合い、ビジネスパートナーとともに課題解決に積極的に取り組むことで、温室効果ガス(GHG)排出量の削減や、効率的な物流システムの構築、社員の健康管理などの知見とノウハウを蓄積してきました。それらを「グリーン・モビリティ」のビジネスモデルとして磨き上げ、ヤマトグループの新たな成長につなげていきます。
具体的には、EVの導入・運用を支援する「EVライフサイクルサービス」の拡販や、ヤマトエナジーマネジメント株式会社を中心とした再生可能エネルギーの供給などのエネルギー事業を推進します。あわせて、多様なステークホルダーが参画する共同輸配送のオープンプラットフォームの展開、自動車運送事業者向けの健康管理支援サービス等を通じ、物流業界全体の持続可能性向上と課題解決に貢献します。
④ グループ経営基盤の強化
持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、引き続き、人事戦略、デジタル戦略、環境・社会戦略を推進し、サステナブル経営およびコーポレート・ガバナンスの強化などに取り組んでいきます。
人事戦略については、引き続きセールスドライバーをはじめとした社員の待遇のさらなる向上や、働く環境の整備に向けた投資を推進しています。また、お客様に向き合う第一線の組織と人材をこれまで以上に強化するため、間接部門の業務効率化と組織のスリム化を図りながら、宅急便の営業所や法人営業支店などへの人材配置を進めるとともに、リーダー人材の育成に注力しています。そして、社員の働きがい向上のため、営業職や企画職などを対象に、パフォーマンスに応じて報酬を決定する制度改正を進めます。
デジタル戦略については、「AI・データドリブン経営」を本格化させ、データ活用による最適な経営資源の配置やバックオフィス業務の効率化を通じ、オペレーション全体の生産性向上を図るとともに、新たな顧客体験価値を創出することで、収益力の強化を図ります。あわせて、各組織でAI活用推進の中心となる人材育成を進めます。
サステナブル経営の強化については、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けた2つのビジョン「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない”社会の実現への貢献」に基づき、特定した重要課題(マテリアリティ)に対して引き続き取組みを強化していきます。
環境の領域については、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2021年3月期比)」の実現に向け、引き続き「EVの導入」「太陽光発電設備の導入」「再生可能エネルギー由来電力の使用率向上」などの施策を推進するとともに、サプライチェーンにおけるGHGの実質排出量(Scope3)の把握や削減目標の設定などに取り組んでいきます。
社会の領域については、引き続き、人命の尊重を最優先とし、社員やパートナーの安全・健康に対する取組みを強化するとともに、多様な社員が活躍できる職場環境に向けた整備を進めています。そして、社会の諸課題に向き合い、ビジネスパートナーとの定期的な協議の実施や、課題の早期発見と解消のための体制・プロセス・仕組みの整備など、適切な関係に基づくサステナブル・サプライチェーンの構築を推進していきます。
コーポレート・ガバナンスの強化については、引き続き、経営の監督と執行の分離、経営の透明性の維持・強化などに取り組むとともに、経営管理の高度化を推進し、株主・投資家との建設的な対話や情報開示の充実を通じて、持続的な企業価値向上に努めていきます。
⑤ 資本効率をより重視した経営の浸透
上記の①~④を推進することに加え、資本効率をより重視した経営の浸透を図り、資本コストを上回る資本収益性の実現に取り組むため、営業利益率およびROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を経営指標として設定しています。事業の収益性向上および利益成長の加速に加えて、バランスシート・マネジメントの強化とキャッシュ・フローの最適化に取り組むことで、資本効率の改善を図り、EPS(1株当たり当期純利益)および株主価値向上の基盤を構築していきます。
本中期経営計画期間においては、オペレーションの効率化に資する拠点戦略やAI・DX推進などへの成長投資を実施するとともに、お客様に対する環境負荷の少ない物流サービスの提供とオペレーションのエネルギー効率向上の両立を通じた低炭素社会の実現に向けて、EVや太陽光発電設備等への環境投資も実施します。なお、成長領域であるコントラクト・ロジスティクス事業およびグローバル事業では、自律的な成長施策に加え、M&Aや戦略的業務提携も活用していきます。
上記計画を財務面から支えるため、バランスシート・マネジメントの強化に取り組み、固定資産の流動化等を適宜検討するとともに、キャッシュの創出状況、保有現預金や自己資本比率等の状況、グループ資金の有効活用など、財務の健全性と効率性を意識しながら、必要に応じて金融機関からの借入および社債の発行を通じた資金調達を実施していきます。財務の健全性の観点から自己資本比率は45%程度、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.3~0.5倍程度を目安とします。株主還元については、親会社株主に帰属する当期純利益を基準とする配当性向40%以上を目標とし、自己株式の取得については、成長投資の進捗状況、キャッシュ・フローの動向、株価等の観点を踏まえ、柔軟に検討していきます。