有価証券報告書-第60期(2023/04/01-2024/03/31)
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
①自然保護と環境保全
当社の経営基盤である立山黒部一帯は、自然公園法による中部山岳国立公園の特別保護地区及び特別地域に含まれており、そのため、立山黒部アルペンルートの建設にあたっては、自然景観を損なわないよう、また自然に与える影響を最小限に抑えるよう細心の配慮のもと進められました。当社では、昭和46年の全線開業後においても、一貫して自然保護と環境保全を最優先課題に掲げ、立山の大自然を永久に守り伝えるため努力を続けております。
②安全保護と保守管理
立山黒部アルペンルートは、多くの観光客・登山客を迎えております。運輸機関が安全・快適であることは、観光地にとっての絶対必要要件であり、立山黒部の大景観を心ゆくまで満喫していただくために、保守管理体制を徹底・強化し、安全確保の維持に努めております。
③地域振興と国際観光
立山黒部地帯は、特異な風土(気候、気象、地形、景観等)が影響し、大自然、歴史と文化、電源開発、砂防事業等多くの魅力や資源にあふれており、富山県を代表する国際的山岳観光地として、確固たる地位を築いております。
海外からのお客様も近年増加し、近隣の東アジアをはじめ東南アジアや欧米といった様々な国からお越しいただくようになりました。今後も、グローバルな営業を展開し国際観光振興に貢献してまいります。
(2)経営環境
令和5年度は、ウクライナでの紛争やパレスチナでも軍事衝突が勃発し、国際情勢の不安定さに拍車がかかるとともに、円安の進行とも相まって物価の高騰が続きました。当社の事業においても、燃料価格の高騰による影響を受けております。
このような事業環境を踏まえ、経営全般にわたる業務の効率化や要員体制の見直し等を行い、スリムな経営体質の構築を進めてまいります。そして、コロナ禍により大きく毀損した自己資本の回復に努め、事業の継続が可能な財務基盤の再生を目指してまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①経営基盤の安定と持続可能な事業運営
令和5年度は、コロナ禍からの回復を命題とした中期経営計画に基づき種々の事業構造改革を行いました。大きなものとしては、当社グループとして運輸事業に経営資源を集中するため、連結子会社である立山貫光ターミナル株式会社が所有するホテル立山関連の不動産等を株式会社星野リゾートグループへ売却いたしました。今後は運輸事業を軸として、飲食物品販売事業を付帯事業として、ともに運営してまいります。
また、運輸インフラについては、将来的な事業の継続のため、令和7年度より「立山トンネルトロリーバス」に代わり「立山トンネル電気バス」を導入することとしております。その他のインフラについても、かねてより行ってきた各施設の総点検の内容や結果を踏まえ、リニューアル計画の具体化に向けての検討を推進してまいります。
②人材の確保・育成
アルペンルート事業を長期的に支える人的基盤の強化を進めてまいります。年間を通じて、特に人材不足が懸念される運転手や技術・IT関連人材を中心に経験者採用を進めるとともに、雇用条件、処遇の改善、新たな人事評価制度の導入、若手社員へのサポート体制の強化、社内コミュニケーションの活性化により、社員間の信頼関係の強化、労働環境の改善を図ってまいります。
また、引き続き、DX推進により情報共有の効率化を進め、意思決定の迅速化や職場間での相互サポート体制を強化するとともに、事業の再編成や人件費の増加に対応し、効率的な要員の配置や、勤務体制の見直しに取り組んでまいります。
③安全・安心の確保
全線開通から50年を経て、世界に類のない山岳観光地で運輸事業を営む当社において安全・安心の確保は守るべき当然の責務であります。全職場において、継続的に安全・安心の管理と教育を徹底し、法令遵守とヒューマンエラー防止に取り組んでまいります。
乗り物施設の安全対策や弥陀ヶ原火山災害発生のリスクに対しては、行政及び関係機関と連携しながら、施設調査や対策の検討、災害対応体制の構築、避難確保計画の策定等を進めてまいります。また、令和7年度に導入する電気バスの運行における安全対策や運行指令管理体制についても、整備を進めてまいります。
今後とも、安全・安心の確保に対する取り組みを継続して行い、安全・安心な立山黒部アルペンルートの構築に役職員一丸となって邁進いたします。
④自然環境の保全
令和6年度も、関係機関のご協力ご配慮を得て、4月15日に立山黒部アルペンルート全線で営業を再開いたしました。営業再開にあたっては、早春の立山一帯における自然環境保全に対する理解の周知徹底に万全を期してまいりました。引き続き、環境にやさしい施設の維持管理、ごみ処理対策の徹底、美化清掃活動の推進等、立山の大自然を守り伝えるための取組みを続けてまいります。
立山トンネルトロリーバスに代わる電気バスの導入は、SDGsの主旨である環境負荷低減にも沿うものであり、今後も、カーボンニュートラルの実現に向けて、その知見を事業全般に活かしてまいります。
今後とも自然公園法の目的に沿い、自然にふれあうことで、その素晴らしさを知っていただけるよう、観光と環境保全の調和を図り、関係機関と連携して立山黒部の大自然を広く紹介してまいります。
(4)営業戦略
今年は、「立山トンネルトロリーバス」の「ラストイヤー」に関するイベント等を企画するとともに、北陸新幹線の敦賀延伸等の追い風となる話題も多く、これらとも連携しながらさらなる旅客誘致に努めてまいります。
国内旅客においては、旅行需要の回復傾向は緩やかになっており、今後は、旅行意欲を刺激する新たな楽しみ方の提案やサービスの情報発信等がより重要であり、マーケティングを一層強化いたします。
毎年来訪者数が最も多い「立山黒部 雪の大谷フェスティバル」期間後も、メインビジュアルである「みくりが池」を中心に、初夏の新緑や高山植物を楽しむ散策、涼やかな夏山での避暑、どこよりも早い秋の紅葉・新雪等、季節ごとの魅力にあふれた観光資源を磨き上げ、富山県・近隣県・関係市町村・関係機関等のご協力をいただきながら、観光コンテンツの拡充を図り、当社の強みである旅行会社や運輸機関との幅広いネットワークやメディアを活用し、シーズンを通じてより多くのお客様にお越しいただけるよう努めてまいります。
個人旅客向けのWEBきっぷについては、主力商品の「予約WEBきっぷ」が好調に推移しており、昨年夏に新たに開始した早期予約型のWEBきっぷ「早割10」の販売により、利用率が向上し、待ち時間の解消や旅の安心感につながり、ご好評をいただいております。今後も、お客様に快適に楽しんでいただけるよう趣向を凝らし、さらに販売を強化してまいります。
海外旅客においては、東アジアの台湾、韓国、香港からの誘致を継続し、認知度が高まっている東南アジア各国へ旅行嗜好に合った季節ごとの魅力を積極的に発信し、各国航空会社や旅行会社と連携し、誘致活動を強化いたします。近年増加する訪日個人旅客へ向けた情報発信も積極的に行ってまいります。
その他の取組みとして、Wi-Fi環境の整備強化をさらに進め、ストレスのない電子決済サービスの充実やイベント等の情報配信により、消費喚起や乗車利用区間の拡大等を図ってまいります。また、立山貫光ターミナル株式会社と協同で、旅の楽しみのひとつである食事に関する戦略を見直し、ルート内での飲食の役割を明確にし、季節ごと、旅客種別ごとのメニューの開発、収益性の向上に向けた取組みを進めてまいります。
次世代に向けて、幾多の先人の方々が築き上げてきた「立山黒部」ブランドを持続可能な観光地へとさらに進化させるため、選ばれる観光地であり続けるべく、高品質な観光コンテンツの造成、持続可能な企業であるための事業収益力の確保、安全・安心な運行体制の構築、そして大自然立山の自然環境保全に、役職員一同全力を傾注してまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は営業利益であります。
当連結会計年度は、全線開通当初から多くのお客様で賑わい、収益が大幅に改善した結果、5期ぶりの黒字を計上することができました。今後も、継続的な黒字の計上に一層努めてまいります。