有価証券報告書-第156期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/06/21 14:16
【資料】
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【項目】
171項目
(1)【コーポレート・ガバナンスの概要】
<コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方>企業がその社会的責任を果たし、株主等ステークホルダーの負託に応え、持続的に成長していくには、コーポレート・ガバナンスを確立していくことが必須です。
当社は、コーポレート・ガバナンス体制とリスク・マネジメント体制の整備強化に取り組み、グループ全体に企業倫理を徹底しつつ、有機的かつ効果的なガバナンスの仕組みを構築し、収益・財務体質の強化と相まってコーポレート・ブランド価値を高めるよう、継続的に努力しています。
<コーポレート・ガバナンスに関する施策の実施状況>(1)会社の経営上の意思決定、執行及び監督に係る経営管理組織その他のコーポレート・ガバナンス体制の状況(当項目末尾に記載の模式図ご参照)
当社は、取締役会及び監査役会がコーポレート・ガバナンス体制の構築・運営と監視をそれぞれ担うとともに、委員会その他の機関を通じて体制の充実に取り組んでいます。それぞれの機能については以下に記載のとおりです。
① 会社の機関の内容
会社の機関の
名称
目的・権限構成員の氏名
取締役会経営の基本方針、法令で定められた事項やその他の経営に関する重要事項を決定するとともに取締役の職務執行を監督する。・議長:代表取締役社長 明珍幸一
・構成員:
取締役 針谷雄彦、山鹿徳昌
社外取締役 山田啓二、内田龍平、小高功嗣、牧寛之、政井貴子
監査役 荒井邦彦、新井真
社外監査役 原澤敦美、久保伸介
監査役会監査方針・監査計画等を策定し、機能的・機動的監査の実施を目指している。監査役は、取締役会やその他の重要会議への出席や重要な決裁文書の閲覧等を通じて、独立の機関として取締役の職務の執行を監査している。監査役には監査役補助者として専従スタッフを配している。・議長:監査役 荒井邦彦
・構成員:
監査役 新井真
社外監査役 原澤敦美、久保伸介

その他のコーポレート・ガバナンスの体制に属する機関としては、本項⑤に記載した危機・リスク管理体制に係る委員会のほか、以下の主要な意思決定機関があります。
会社の機関の
名称
目的・権限構成員の氏名
指名諮問委員会独立社外取締役全員、取締役会長及び社長執行役員で構成されている。
取締役会からの諮問を受け、役員選任及び解任案についての妥当性、社長執行役員の後継者計画、その他取締役会から役員の選任及び解任に関して諮問を受けた事項について審議を行う。
・委員長:未定(2024年7月開催予定の委員会において、独立社外取締役である委員の互選で決定)
・構成員:
独立社外取締役 山田啓二、小高功嗣、牧寛之、政井貴子
社長執行役員 明珍幸一
報酬諮問委員会独立社外取締役全員、取締役会長及び社長執行役員で構成されている。
取締役会からの諮問を受け、役員報酬の制度設計、役員報酬の水準、その他役員報酬に関して取締役会から諮問を受けた事項について審議を行う。
・委員長:未定(7月開催の委員会において、独立社外取締役である委員の互選で決定)
・構成員:
独立社外取締役 山田啓二、小高功嗣、牧寛之、政井貴子
社長執行役員 明珍幸一
経営会議自由な討議を通して、社長執行役員又はその代行者の意思決定に資する体制を整備する。原則として毎週開催している。・議長:社長執行役員 明珍幸一
・構成員:
副社長執行役員 針谷雄彦
専務執行役員 綾清隆、小榑慎吾、五十嵐武宣、山鹿徳昌
常務執行役員 久保敬二、岩下方誠、田口雅俊、芥川裕
執行役員 佐藤文芳、伊東俊一
川崎近海汽船株式会社社長 久下豊
監査役 荒井邦彦、新井真
執行役員会業務執行組織の月次収支を含む業務執行及び決裁事項等の報告及び討議を行う場としている。原則として毎月1回開催している。・議長:社長執行役員 明珍幸一
・構成員:
副社長執行役員 針谷雄彦
専務執行役員 綾清隆、小榑慎吾、五十嵐武宣、山鹿徳昌
常務執行役員 久保敬二、岩下方誠、田口雅俊、金森聡、藤丸明寛、芥川裕
執行役員 中山久、佐藤文芳、内田洋、池田真吾、玉置伸哉、杉本治彦、松井健一郎、伊東俊一
監査役 荒井邦彦、新井真
社外監査役 原澤敦美、久保伸介

・当社は、監査役会設置会社の体制を採っています。当社がこの体制を採用している理由は、近年の法改正により監査役の権限と独立性はより強化されており、制度として企業統治に有効と判断していること、及び上記の会社機関も含めた体制により、法制度に則った十分な手続が実施されており、企業統治が適正に機能していると認識していることによります。
② 業務執行体制
ユニット統括制を導入し、より一層の効率化、そして強化を図った業務執行体制を構築しています。ユニット統括制の概要は以下のとおりです。
・執行の長たる社長執行役員のもと、複数の事業部門及び管理部門を統括する合計7名のユニット統括執行役員を任命しています。ユニット統括執行役員のもと、各部門を担当する担当執行役員を配しています。
・事業部門ユニットは、「ドライバルク事業ユニット」、「エネルギー資源輸送事業ユニット」、「製品輸送事業ユニット(自動車船)」、「製品輸送事業ユニット(物流・港湾・近海内航・関連事業)」、「コンテナ船事業ユニット」の5つです。
・管理部門の事業ユニットは、「CFOユニット(経営企画・調査・財務・会計・税務・サステナビリティ・環境経営推進・IR・広報)」、「総務・人事・法務・企業法務リスク・コンプライアンス統括ユニット」、「船舶ユニット」、「先進技術・造船技術・GHG削減戦略ユニット」、「デジタライゼーション戦略ユニット」の5つです。
③ 内部統制システムの整備の状況
・当社は、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、その他当社グループの業務の適正を確保するために必要なものとして法令等で定める体制の整備に取り組んでいます。具体的には、取締役会が内部統制システムを構築し、有効性を評価し、その機能を確保していく責務を負っています。更に、内部監査グループが、内部統制システムの監視・検証を通じて、その整備・維持・向上に係る取締役会の責務遂行を支援する役割を担っています。監査役は、取締役による内部統制の構築とその仕組みが有効に機能することの監視を行います。
・グループ会社における業務の適正を確保するため、当社グループ全体に適用する行動指針として「グループ企業行動憲章」を定め、これを基礎として当社グループ各社で諸規則を定めています。また「関係会社業務処理規程」を定め、グループ会社に対し一定の重要事項については、承認、協議又は報告を要するものとしています。
④ 取締役会の活動状況
・当事業年度においては、当社は取締役会を19回開催しています。個々の取締役の活動状況は以下のとおりです。
氏名開催回数出席回数
明珍 幸一1919
浅野 敦男1919
鳥山 幸夫1919
針谷 雄彦1919
山田 啓二1919
内田 龍平1919
志賀 こず江1919
小高 功嗣1414
牧 寛之1414
園部 恭也55
亀岡 剛55

(注)1. 取締役 園部恭也氏及び社外取締役 亀岡剛氏は2023年6月23日開催の第155期定時株主総会終結の時をもって任期満了により退任したため、開催回数及び出席回数は在任中のものです。
2. 社外取締役 小高功嗣氏及び牧寛之氏は、2023年6月23日開催の第155期定時株主総会において新たに取締役に選任されたため、開催回数及び出席回数は取締役就任以後のものです。
・2023年度の取締役会の具体的な討議内容としては、以下のとおりです。
長期経営ビジョン・中期経営計画
資本政策(事業投資計画、株主還元政策等)
事業戦略(「成長を牽引する役割を担う事業」、新規事業領域等)
機能戦略(人材・組織、デジタルトランスフォーメーション等)
コーポレート・ガバナンス(取締役会実効性評価、役員報酬、取締役会構成等)
グループガバナンス

・当社の取締役会は社外取締役5名を含む9名の取締役で構成され、法令で定められた事項や経営の基本方針、その他の経営に関する重要事項を決定するとともに、取締役の業務執行を監督しており、毎月1回以上開催しています。なお、取締役会の書面決議制度やオンライン開催も導入し、機動的な取締役会運営を図ることを可能としています。また、当社ではコーポレートガバナンス・コードに従い、独立社外取締役全員、取締役会長及び社長執行役員を構成員とする指名諮問委員会、報酬諮問委員会を設置しており、役員の選任・解任案及び役員の報酬額、制度設計案について審議し、取締役会に答申を行っています。当事業年度においては、指名諮問委員会9回及び報酬諮問委員会3回を開催いたしました。
・取締役会の機能の向上を目的として、各取締役が毎年自己評価を行い、取締役会はそれを参考に取締役会全体の実効性について分析・評価を行うこととしています。
⑤ 危機・リスク管理体制
経営上の諸々の危機・リスクを認識し、それに備え、リスクが顕在化した時にも企業の社会的責任を果たし得るよう、危機・リスク管理体制を構築しています。危機・リスクを4分類し、それぞれに対応する委員会を設け、更にこの4委員会を束ねて危機・リスク管理活動全体を掌握・推進する組織として、危機管理委員会を設置しています。
委員会名機能
危機管理委員会危機・リスク管理活動全体の統括
安全運航推進委員会当社運航船舶の安全対策、船舶事故(海洋汚染を含む)の予防及び発生時の対応
災害対策委員会大災害への平時の準備及び発生時の対応
コンプライアンス委員会コンプライアンス上の問題に対応
経営リスク委員会その他の経営上のリスクに対応

(2)会社のコーポレート・ガバナンスの充実に向けた取組みの最近1年間における実施状況
① 当社グループは、2022年5月に中期経営計画を策定し、不透明感が強い事業下においても、不測の事態を想定したリスク管理及び備えを強化し、短中期的には事業環境の変化に適切に対応しつつ、長期的には自社及び社会の低炭素・脱炭素化を見据えた経営を目指します。成長機会を共にできる顧客とのパートナーシップを発展させ、社会インフラの一翼を担うものとしてGHG削減、代替燃料への移行、新たな輸送需要への対応を進め、自営事業とコンテナ船事業の2本柱で市況耐性の高い企業として、環境対応への貢献と収益成長の両立を実現し持続成長と企業価値の向上に取り組んでいます。
② 経営の一層の透明性を確保し、取締役会及び監査役による経営監視機能を強化するため、2009年6月24日開催の定時株主総会において、2名の社外取締役を選任しました。社外取締役は、2016年6月24日開催の定時株主総会において3名とし、2019年6月21日開催の定時株主総会においては4名に増員しました。更に、2022年6月23日開催の定時株主総会においては取締役会における独立社外取締役の員数の割合を3分の1に高め、2023年6月23日開催の定時株主総会より取締役会における社外取締役の員数を半数以上とし、2024年6月21日開催の定時株主総会においては取締役会における独立社外取締役の員数を半数(独立社外取締役4名)とし、社外監査役2名の体制としています。これにより、経営の透明性の確保及び経営監視機能の維持・強化に努めています。
③ 2017年1月に制定した「川崎汽船グループ グローバルコンプライアンスポリシー(以下、「グローバルポリシー」という。)」は、グローバルなレベルでのグループコンプライアンス体制を強化するためのもので、当社及びグループ会社役職員に遵守を義務づけています。また、専任部署によるセミナー開催、ガイドブック配布、専門委員会の活動等を通じて、グローバルポリシーが当社及びグループ会社役職員の日常業務の行動指針となるよう取り組んでいます。
④ 国内外の競争法コンプライアンスに関して、役職員に対しては独占禁止法遵守規程の遵守を徹底させ、専任部署による継続的な教育・啓蒙活動の推進を通じて競争法に関するコンプライアンスの意識を徹底すべく、更なる強化に取り組んでいます。また、業務監査を実施し、コンプライアンスに向けた施策の実施状況を監視・監督しています。同業他社との接触についても、事前の届出及び承認、内容の記録作成・保存等を厳格に運用しています。
⑤ 贈収賄防止の実効性を高めるために、グローバルポリシー(反贈収賄法個別ポリシー含む)に基づき、当社は、腐敗のない海運業界を目指した取組みを行っているMaritime Anti-Corruption Network(MACN)のメンバーとして、反腐敗・贈収賄防止の取組みを強化しています。
⑥ 2019年11月にグローバルポリシー(経済制裁・反マネーロンダリング個別ポリシーの追加)を改正し、当社及びグループ会社役職員に当社グループのビジネスに対して適用される経済制裁規制並びに反マネーロンダリング及びテロ資金供与に関するルールの遵守を徹底しています。
⑦ 当社は、当社及び国内グループ会社の役職員からの内部通報を受け付ける「ホットライン窓口」に加えて、海外グループ会社の役職員からの内部通報を受け付ける「グローバルホットライン窓口」も設置し、国内外にわたる当社グループの事業でのコンプライアンス問題の未然防止とリスクの早期発見及び是正に取り組んでいます。また、通報に関する情報の秘密保持と通報者保護を徹底し、通報者が安心して利用できる体制を整えています。
⑧ 社長執行役員が委員長を務めるコンプライアンス委員会を通じて、当社及びグループ会社のコンプライアンスを担保するための方針及びコンプライアンス違反に対する対応措置を審議しています。また、コンプライアンスの最高責任者であるCCO(チーフコンプライアンスオフィサー)のもと、組織全体のコンプライアンス体制を強化しています。
⑨ 毎年11月をコンプライアンス月間と位置づけ、当社及びグループ会社役職員にコンプライアンスの重要性を再認識させるため、社長メッセージを配信するとともに、コンプライアンスeラーニング研修、外部講師を招いたコンプライアンスセミナーを開催しています。また、階層別人事研修の中でコンプライアンス研修を実施し、個別テーマ(インサイダー取引規制、ハラスメント防止等)セミナーも、適宜開催しています。このほかにも、特に注意喚起を要するコンプライアンス関連の重要事項を「コンプライアンス通信」として、適宜配信しています。
(3)取締役の定数
当社の取締役は15名以内とする旨を定款に定めています。
(4)取締役の選任の決議要件
当社は、取締役選任の決議について、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行う旨、また、その決議は累積投票によらない旨を定款に定めています。
(5)取締役(業務執行取締役等であるものを除く)及び監査役との責任限定契約
当社と取締役(業務執行取締役等であるものを除く)及び監査役は、会社法第427条第1項の規定に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する契約を締結することができる旨を定款に規定しています。これに基づき、非業務執行取締役である山田啓二氏、内田龍平氏、小高功嗣氏、牧寛之氏及び政井貴子氏並びに全監査役との間で責任限定契約を締結しています。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、善意でかつ重大な過失がないときは、金10百万円又は法令が定める額のいずれか高い方としています。
(6)役員等賠償責任保険契約の内容の概要
当社は、会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結しています。当該保険契約の被保険者の範囲は当社及び子会社の取締役、監査役及び執行役員であり、被保険者は保険料を負担していません。当該保険契約により被保険者がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を填補することとしています。ただし、被保険者の職務の執行の適正性が損なわれないようにするため、意図的に違法行為を行った場合等には填補の対象としないこととしています。
(7)株主総会の特別決議要件
当社は、会社法第309条第2項に定める株主総会の特別決議要件について、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上をもって行う旨を定款に定めています。これは、株主総会における特別決議の定足数を緩和することにより、株主総会の円滑な運営を図ることを目的とするものです。
(8)取締役会で決議することができる株主総会決議事項
① 自己の株式の取得
当社は、会社法第165条第2項の規定により、取締役会の決議をもって自己の株式を取得することができる旨を定款に定めています。これは、機動的な資本政策を遂行することを目的とするものです。
② 中間配当
当社は、会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当を実施することができる旨を定款に定めています。これは、株主への機動的な利益還元を行うことを目的とするものです。
[参照 コーポレート・ガバナンス体制についての模式図]
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