有価証券報告書-第129期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 13:44
【資料】
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【項目】
155項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「安全の確保は社業の基盤である」との認識のもとに、よいサービスと商品を社会に適正な利潤を得て安定的に供給すると共に、すべてのコストについて不断の削減につとめ、効率的な経営を行うことを基本方針としております。
なお、その実行にあたっては社会的要請へ適応し、環境に配慮した行動をとることとしております。
(核となる事業)
企業集団の人的・物的資源を生かしながら、当社グループは引き続き次の3つの事業を核として推進します。
・全世界にわたる水域で原油、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、液化石油ガス、発電用石炭、肥料、木材チップなどの基礎原料の輸送を行う外航海運業
・国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス、液化石油ガス、石油化学ガスなどの基礎原料の輸送を行う内航・近海海運業
・東京都心を中心に、賃貸オフィスビルの所有、運営、管理及びメンテナンス並びにフォトスタジオの運営を行う不動産業
(2)中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが2017年4月に策定した前中期経営計画「Be Unique and Innovative. ‐創立125周年(2024年)に向けて‐」 (計画期間:2017年4月~2020年3月、以下「前計画」という) では、「バランス経営の推進と先進性への挑戦」をテーマとし、3つの重点強化策として、「更なる差別化の追求」、「安定収益の盤石化」及び「次世代ビジネスへの挑戦」に取組みました。「更なる差別化の追求」としては、オイルタンカーでの競争力強化や内航ガスビジネスでの優位性確保に努めました。「安定収益の盤石化」としては、不動産業でのターゲットエリア内への資産集約の一環として新橋田村町地区市街地再開発事業を推進すると共に、ケミカルタンカーの中東シェアの維持・拡大に努めました。また、「次世代ビジネスへの挑戦」としては、英国ロンドンのオフィスビルを取得し、メタノールを推進燃料とすることができる当社初の2元燃料主機関搭載船を建造しました。
前計画では海運業と不動産業を両輪とした経営の進化に注力して参りましたが、当社グループはこの度、2030年に向けたグループ企業の一層の成長を見据え、3ヵ年の中期経営計画 「Be Unique and Innovative. : The Next Stage‐2030年に向けて‐」(計画期間:2020年4月~2023年3月、以下「本計画」という) を策定しました。
本計画では、時代の要請に応え自由な発想で進化し続ける独立系グローバル企業としての地位確立を2030年に向けての目標に掲げます。本計画において当社グループは、前計画の方針を踏襲し、独自のビジネスモデルである“IINO MODEL”の形成、高品質なサービス“IINO QUALITY”の提供を更に追求し、自社の経済的価値を高めると同時に、サステナビリティへの積極的な取組みにより環境保全を含めた社会的ニーズに対応することで社会的価値をも創造し、当社グループの理解する共通価値の創造(CSV)を目指して参りたいと考えております。
本計画において、当社グループは、「共通価値の創造を目指して」をテーマとし、新たな3つの重点強化策として、「グローバル事業の更なる推進」、「安定収益基盤の更なる盤石化」及び「サステナビリティへの取組み」を重点的に実行します。重点強化策とするに当たって認識した課題、具体的な取組みについては以下の通りです。
①グローバル事業の更なる推進
増大する三国間輸送需要の取り込みに向けた海外展開への対応を重要課題として認識していることから、「グローバル事業の更なる推進」を重点強化策とします。具体的にはケミカルタンカーにおける既存の中東航路以外の航路進出に向けての取組み強化やガスキャリア・ドライバルクキャリアにおける海外顧客への営業展開の加速等を図り、更にはグローバル体制を支える組織力の強化を推進します。
②安定収益基盤の更なる盤石化
ボラタリティの大きい海運業の収益安定化及び顧客・社会のニーズが多様化する不動産業への対応を重要課題として認識し、「安定収益基盤の更なる盤石化」を重点強化策とします。具体的には不動産業において長期的視野での安定収益源となる都心基幹物件の獲得や海外・地方物件への進出に取組むと共に、オイルタンカーやLPGキャリアにおいて定期的な船体整備を実施します。
③サステナビリティへの取組み
地球環境・社会課題・新規ビジネスへの対応も重要課題として認識しており、「サステナビリティへの取組み」を重点強化策とします。具体的には社会的価値の創造に向けて、環境負荷低減に資する資産への投資や次世代燃料船への取組み強化、新規ビジネスへの開拓等を推進します。
更に、環境・社会を意識した経営を進めるべくESG・SDGsへの対応を強化し、デジタル基盤を整備し新たな価値を創造すべくデジタルトランスフォーメーションの推進も加速させます。
また、足元では新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、「感染症」という)の拡大に収束の目途が立っておらず、更に感染症が拡大する可能性も否定できないことから、今後の世界経済、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続く見込みであり、感染症が今後、世界経済に与える影響を厳しく受け止めております。
当社グループとしては感染症への対応として、海運業においては安全・安定的な海上輸送を止めず、社会インフラとしての役割を果たすこと、不動産業においては感染症対策を徹底し、安全なオフィス空間の提供を継続することを社会的使命と考えております。
安全・安心を支える当社グループの役職員及び本船乗組員の安全確保・感染防止に注力し、社会的使命を果たす為に、陸上職員においては在宅勤務体制をハード・ソフト両面で強化し、事業継続可能な体制を国内外の拠点で確立します。海上職員においては船内防疫の徹底として、外部からの訪船者の最小化、乗船者への検温実施等を実施する他、乗組員に対する支援としては精神的支援の積極的実施、配乗交代の円滑化への取組み等を実施します。
なお、本計画の詳細及び感染症に対する当社対応につきましては当社ホームページをご参照ください。
https://www.iino.co.jp/kaiun/index.html