有価証券報告書-第34期(2022/04/01-2023/03/31)
(1)経営環境
当連結会計年度のわが国の経済は、社会経済活動の正常化が進む一方で、飼料・食料価格の高騰や欧米各国の金融引締め等により急激な物価上昇が続き、賃金の伸びが追い付かない状況が続きました。観光業界では、10月以降に入国者制限が撤廃され、新型コロナウィルス感染症に関する水際対策が緩和されるとともに、観光需要喚起策「全国旅行支援」の延長実施等もあり需要回復の動きが強まってくるなか、当社は事業継続計画に基づき、最小限の事業体制としたなかで事業を進めました。旅行事業においては、年間を通じて需要回復傾向にありましたが、個人・小グループからの受注回復が先行し、当社事業の核である団体企画旅行の回復までには至りませんでした。一方で、旅行業に限定せず「農業の価値を高める」「農業の魅力を伝える」ことに貢献する企業を目指し、7月には日本航空との業務提携により人流、商流・物流創出による一次産業の活性化、地域活性化に貢献するためのアライアンスを組み、令和5年度からの事業化に向けた実証実験を開始しました。また、9月には愛知県豊川市に農福連携事業の5つ目の拠点(農福ポート)を開設する等に取組みました。しかしながら、事業の大半を占める旅行事業での収入確保が進まず、親会社株主に帰属する当期純損失6億24百万円を計上しました。なお、2期連続で債務超過であった当社は、第三者割当による優先株式の発行により令和5年3月30日付にて第三者割当による種類株式の発行及び払込の完了により、債務超過を解消いたしました。
(2)経営方針
業績回復のため、JA活動支援事業に加え、既存事業の延長線上にある成長分野(一次産業や地域が抱える課題解決に貢献する農泊事業や地域共創事業の取組み)や確実に需要のある分野(首都圏需要・Web販売等による個人旅行)に取組み、旅行事業に限定しない自然災害や疫病等の外的要因の影響を最小限に止めることができる経営基盤の確立を目指すこととし、下記の取組みを行っております。
①事業展開
年金旅行や女性部仲間づくり旅行等、JA組合員の拡大とアクティブメンバーシップの確立に貢献するため、JAの各部門と連携し活動を支援する「JA活動支援事業」を事業の核として需要回復を目指し、「リテール事業」では、個人旅行の手配やSNSによる情報発信等に取組みます。一方で、JA食農教育と連動した農業体験ツアーや教育旅行等を通じて、地域の「食」と「農」の魅力発信や、地方自治体や多様な企業体と連携して地域の活性化に貢献する「地域共創事業」、外国人旅行者による農山漁村での消費拡大や越境EC等の新たな商流により、地域の活性化に貢献する「国際交流事業」、人手不足の産地と新たな働き手を繋ぎ農業振興に貢献する「労働力応援事業」や障がい者の社会参画や企業の障がい者雇用の課題解決に貢献する「農福連携事業」の取組み等、非旅行分野の事業に積極的に取組みます。
②機能の見直し
JAグループにおける存在価値の向上と経営基盤の再構築のため、中期事業計画に基づく体制を確立し、迅速的且つ専門的に事業展開を図るべく事業統括部および首都圏支店の一部機能を移管し、自ら営業展開を図る部署として、「地域共創事業部」を設置することとしました。また、主に全国支店・エリアの事業推進・後方支援に資するため、事業統括部の名称を「事業推進部」に変更するとともに、需要回復に向けた迅速な手配や全国的な商品造成を担う体制を整備することとしました。
(3)対処すべき課題
(2)に記載の経営方針を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
①会社方針等の社内浸透の徹底
当社は経営再生にむけた新たなスタートを切ることになります。従来の旅行事業の他に、一次産業・地域の活性化に貢献する事業にも本格的に取組みますが、これを実行するのは当社の財産である社員です。コロナ禍での3年間は経営危機のなか「凌ぐ3年間」でしたので、あらためて社員には会社方針の理解と実行が求められます。
当社の使命や役割を十分に認識できないと、事業計画の達成は困難になります。そのため、会社の方針、目標の理解浸透を図る場を設けるとともに、どのような貢献を行なっているかを定期的に把握する仕組みの構築を進めます。
②人材の確保
これまで、当社は債務超過解消に向けて出向施策の実施を行うとともに、退職者が増加したことにより最低限の人員配置で事業を進めてきました。当年度は本格的な事業回復にむけた人材の確保が急務となっています。このため旅行業と非旅行領域の専門分野で知識・経験を活かせる人財の採用を進めるとともに、モバイルワークの活用や時短の選択制等、社員のワークライフバランスを尊重した制度整備と管理職手当の見直し等、社員のモチベーション向上に繋げる環境整備を進めます。
③資金の確保
安定した経営基盤を維持するため、キャッシュフロー経営を重視し、事前入金を徹底するとともに、未収金の早期回収、後払い顧客管理等の周知徹底を行います。