訂正有価証券報告書-第35期(2023/04/01-2024/03/31)

【提出】
2024/07/04 15:28
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【項目】
115項目

対処すべき課題


(1)経営環境
当連結会計年度のわが国の経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に移行したこと、日経平均株価の34年ぶりの最高値更新等により景気回復への大きな期待が膨らむ一方で、資源価格の高騰や円安進行等による物価上昇により消費者マインドが低迷し、個人消費の伸び悩みの状況が続きました。
観光業界においては、コロナ禍での行動制限の解除や全国旅行支援の延長等により、日本から海外に出かける出国者数は低水準に止まったものの、国内旅行、訪日旅行については、ほぼコロナ禍前の水準にまで回復してきました。一方で、国内における急激な需要回復に対し、一部の観光地でのオーバーツーリズムの問題や観光業界の各分野での人手不足が深刻となっています。
このような状況のなか、当社は中期事業計画(5ケ年計画)をスタートし、お客さまをはじめとした全てのステークホルダーに選ばれる企業となることを目標に、既存の旅行事業を中軸としつつ、「地域の活性化と課題解決」に貢献する事業(地域共創事業・農福連携事業)に積極的に取組みました。旅行事業については、個人・小グループを中心とした手配旅行を中心に需要回復が進み、団体企画旅行については下期より徐々に回復傾向を見せ始めました。
地域共創事業については、JA全国連と連携した労働力応援、地域貢献活動等の事業連携を進めるとともに、中央省庁、自治体の公募案件にも積極的に取組みました。また、当社と日本航空とのアライアンス事業の一環として、「JAたじま」と連携し、4月1日付で兵庫県但馬地域の活性化を目的とした地域事業拠点「JJエリアセンター但馬」を設立し、農泊推進など人流の創出、地域産品の価値向上と活性化(6次産業化)等への取組みを開始しました。
事業開始から3年目になる農福連携事業は、事業呼称を「アグリンピア®」とし、国内農業の発展と共生社会の実現を目指し取組みを進めました。
一方で、経営基盤の強化に向け、適宜、費用支出の見直しを行うとともに、未収金の早期回収の徹底をはかり、期首時点での残高を超える資金を確保いたしました。
これらの取組みの結果、経常利益5億52百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5億78百万円を計上し、平成29年度以来となる単年度黒字となりました。
(2)経営方針
業績回復のため、JA活動支援事業に加え、既存事業の延長線上にある成長分野(一次産業や地域が抱える課題解決に貢献する農泊事業や地域共創事業の取組み)や確実に需要のある分野(首都圏需要・Web販売等による個人旅行)に取組み、旅行事業に限定しない自然災害や疫病等の外的要因の影響を最小限に止めることができる経営基盤の確立を目指すこととし、下記の取組みを行っております。
①事業方針
令和6年度事業は「事業成長期」と位置づけ、更なる回復が見込まれる「JA活動支援事業」を主体に一定量の事業規模を担保しつつ、地域共創、リテール、国際交流、労働力応援、農福連携各事業の「事業基盤の確
立」と「生産性の向上」に努めます。また、手配・仕入センターの設置による手配業務の集約化や営業担当者
の増員を図るとともに、顧客データ分析に基づく計画化促進と「選択と集中」による営業効率の最大化(案件
獲得率の最大化)を進めます。
②人事戦略
多様化する働き方に対応し、自ら考え行動することで、自分自身で成長する人材を育てるための研修の実施や有能な人材採用に向けての「汎用的能力活用型インターンシップ」や「企業座談会」の実施、人事制度の見直しにより多様化する働き方での生産性向上や業務効率改善等の取組みを進めます。
(3)対処すべき課題
(2)に記載の経営方針を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
①営業力の強化
限られた社員数での積極的な営業活動や地域共創事業等への計画的な取組みを進めるには若手社員や中途採用者の経験不足の早期解消と営業機会を増加する必要があります。そのため、支店や本社の地域共創事業部門
への営業担当者の増員や手配・仕入担当部署を全国7ケ所(うち1ケ所は仕入のみ)の設置による支店営業担
当者の営業機会の増加、支店内勤社員による営業サポート業務の向上に取組みます。
②社員の離職率の低減
①の会社の将来や方針を明確に示し、社員のやりがいやモチベーション向上を図るとともに、多様化する働
き方に見合った人事制度改定に取組み、離職率の低減を目指します。
③資金の確保
早期の資金回収の徹底を図ったことにより令和5年度は期末において期首残高以上の資金が確保できまし
た。事業回復により取扱高が増加してくると精算・送金の遅れが発生するリスクがあります。安定した経営基
盤を維持するため、キャッシュ・フロー経営をあらためて重視し、事前入金を徹底するとともに、未収金の早
期回収、後払い顧客管理等の周知徹底を行います。
④会社方針等の社内浸透の徹底
コロナ禍を経て事業環境が大きく変化し、中期事業計画において「一次産業や地域が抱える課題解決に貢
献」する取組みを通じて業績を回復することとし、この計画達成のため「農業の価値を高める」「農業の魅力
を伝える」取組みを促進することとしました。一方で、コロナ禍での社員の離職や転籍、急激な事業回復に対
する新規・中途採用により、当社の経営方針および経営方針に基づく各種戦略とその背景をあらためて説明
し、社内認識の共有化と理解浸透を図る必要があると考えます。そのため、社員一人ひとりの業務遂行が戦
略・経営方針に繋がるような仕組みの構築を進めます。