有価証券報告書-第88期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、国民の共有財産である電波資源を基にした放送に携わる企業グループとして、公平・公正さを保ち、迅速・正確な情報を発信することを通して、全てのステークホルダーから「信頼」されるサービスの提供を心がけながら事業を継続・発展させてまいります。具体的には、当社グループの一番の強みであるコンテンツ制作力を最大限に活かし、テレビ放送事業や動画配信事業のほか、映画事業、イベント事業、物品販売事業や国内外へのコンテンツ販売等の「メディア・コンテンツ事業」を進めてまいります。また、本格的な少子高齢化社会の到来を視野に、国民の健康意識向上と、健康的な生活の実現を目的とする「生活・健康関連事業」を事業の柱の一つとして成長させ、コア事業であるメディア・コンテンツ事業との間にシナジー効果を創出してまいります。
当社グループは、メディア・コンテンツ業界のトップカンパニーとして「改革と挑戦」を続けつつ、これらの経営施策を通じて、「良質なコンテンツの創造」「新たな文化の創造」「豊かな社会の創造」さらに「夢ある未来の創造」の四つの創造を実現し、一層の企業価値向上に努めてまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つ絶対的優位性の維持が大きな課題となっています。また、法令改正に伴う人件費の上昇、オリンピックやFIFAワールドカップ等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、4K放送及び5Gといった新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保がますます難しくなってきていると認識しております。これらに加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の減退や急激な社会のデジタル化へのシフト、気候変動による集中豪雨や大型台風の発生をはじめとする甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。
当社グループとしましてはこれらの経営環境の変化やリスクを踏まえて、収益性を確保すべく適切に対処していくことが肝要であると認識しております。
(3) 経営戦略
こうした経営環境の中、当社グループは、時代の変化を正しくとらえて進化し、最強のコンテンツ制作集団として、放送や映画、動画配信等の映像コンテンツを創造・発信するだけでなく、リアルなイベント事業や通販事業、教育事業、㈱ティップネスが提供する健康プログラムなど「国民の生活を豊かにする」コンテンツ・サービスを幅広く提供することで、人々の「生活時間接触No.1」となる「総合コンテンツ企業」として進化することを目指してまいります。
また、当社グループは公共性・公平性を担う報道機関として常にサステナビリティを意識し、かねてより「24時間テレビ 愛は地球を救う」や「カラダWEEK」の展開など、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)達成のための活動に取り組んできました。2021年6月には「サステナビリティ推進事務局」を新設し、今後も、放送事業にとどまらず企業活動のあらゆる分野で「持続可能な未来」へ貢献してまいります。
(4) 中期経営目標
当社グループは、いかなる環境の変化に対しても「進化」する事で事業の成長を目指し、2021年度を最終年度とする「日本テレビグループ 中期経営計画2019-2021 日テレ eVOLUTION」を策定し、「テレビを超えろ」をスローガンとしました。しかしながら、このうち定量目標につきましては、現在のコロナ禍を受け、基本的な考え方は引き続き踏襲しつつも、達成が困難になったと判断し、2020年7月に取り下げております。一方で、2020年11月に、現在のコロナ禍を乗り切るとともに、コロナ禍収束後もトップカンパニーとして更なる高みを目指すべく「新しい成長戦略」を策定しました。
ここでは基幹事業である放送事業を発展させるとともに、2020年代半ばには非放送事業の収入比率50%超を達成し、グループ全体の収益力の抜本的な強化を目指すべく、以下の改革に取り組んでいくこととしております。
Ⅰ.デジタル領域事業の飛躍的拡大
Ⅱ.コンテンツへの戦略投資と収支構造の見直し
Ⅲ.グループ事業の強化
2021年5月には、「2021年度 経営方針」を公表し、この「新しい成長戦略」に基づき、2020年代に当社グループが飛躍的に発展するための足掛かりとなる重要な年と位置付け、各施策を推進してまいります。
(5) セグメント別戦略
① メディア・コンテンツ事業
地上波テレビ放送事業は、総務大臣の許認可を必要とし、電波法・放送法など様々な法規制をクリアする必要があるため、新規参入が難しい事業であり、直ちに競合社が増加する可能性は低いと考えております。また、当社グループは全国のネットワーク各局と協定を結び強固な協力関係を築き上げており、10年連続で年間個人視聴率三冠王を獲得しています。
しかしながら、動画配信サービスの進化、動画制作のパーソナル化が進む中、動画コンテンツをインターネット環境下で視聴するユーザーが増加し、地上波テレビの視聴者は漸減傾向にあります。これに伴って地上波テレビ広告市場も徐々に縮小する傾向にあります。
また、動画配信サービスの拡大に伴い、コンテンツへのニーズが高まったことで、IP(知的財産権)ホルダーや制作会社・タレント事務所、スポーツ権利団体等、取引先の交渉力が高まっており、権利の獲得費用及び制作費の高騰が進んでおります。これに加え、番組制作を中心とする業務は働き方改革や、同一労働同一賃金への対応などから人件費の高騰にも直面しております。
このような状況の中、当社グループは地上波放送にとどまらないコンテンツを制作するために、200億円の戦略的投資枠を策定し、運用を開始しました。これにより、デジタル領域での収入を含めた多様な収入を前提とした制作体制へシフトします。すでに一部を2021年度に「コンテンツ戦略費」として予算化すると共に企画募集を開始し、複数のプラットフォームに展開するコンテンツが検討されております。今後は、ライブコンテンツの強化をはじめとして、マルチプラットフォームに展開する戦略コンテンツの制作を加速してまいります。
また、コロナ禍の影響で制約を受けている番組制作では、情報・報道番組内の連絡ツールの電子化などで、より少ない人数での制作を実現し、また、オンライン上で完結する新たな制作システムの構築を進めることで、制作者の負担の大幅な軽減を図ると共に生産性を向上させていきます。地上波放送の制作費をコントロールしつつ、多様化する収入獲得源に合わせたコンテンツ生産量を飛躍的に増加させ、投資効果を最大化させてまいります。
地上波テレビ放送事業については当社グループの根幹を支える事業として、今後も報道機関としての責務を果たし、制作費の徹底的な抑制は継続しつつもクライアントや視聴者に評価される番組作りに邁進し、視聴率、放送収入ともに在京キー局トップを確保してまいります。さらに、データ・マーケティングの強化と放送と通信を組み合わせた広告展開で放送広告収入を拡大してまいります。
インターネット事業においては、動画配信サービス「Hulu」と広告付き無料動画配信を営む民放公式テレビポータル「TVer」を収益の柱に成長させることを当該事業における重要な目標としております。インターネットを通じた動画配信事業は、市場全体が右肩上がりに成長していることに加え、コロナ禍による在宅時間の増加を背景に更なる拡大が見込まれています。一方で、豊富な資金力を有する外資系企業が日本に進出しており、会員獲得に多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから厳しい競争環境に晒されております。
このような環境の中、当社グループでは保有するドラマやバラエティなどの豊富な放送コンテンツや、映画・イベントなどの事業コンテンツと動画配信事業を有機的に連動させること等により、オリジナルコンテンツを増やすことで競合他社との差別化を図り事業を拡大してまいります。「Hulu」においては定額制動画配信サービスのみならず、都度課金制の配信コンテンツも拡充し、多様な収益獲得体制を構築することで、新規会員の更なる獲得、既存会員の追加購入を推進し、売上の最大化を目指します。「TVer」につきましては、当連結会計年度中に実験的に行われたライブ配信を強化し、テレビの枠を超えてコンテンツを多くのユーザーに見ていただく機会を創出します。動画ソリューション事業を展開する㈱PLAYは、高い技術力で動画配信のニーズに応えて業績は好調に推移しており、今後もこの流れを強化してまいります。
これに加えて、生活者と直接繋がったサービス・ビジネス基盤の開発、5Gを活用した新サービスや若年層向けインターネットサービスの開発など、全てがネットでつながるIoT社会を踏まえたコンテンツ・サービスのネット対応を拡大してまいります。
アニメ・映画事業等に関しては、ビジネススキームの抜本的見直しと、IP(知的財産権)ビジネスの積極的推進を図ってまいります。アニメ事業では大型原作獲得へのチャレンジ、映画事業においてはドラマ連動やシリーズ作となる映画制作の強化による確実な収益の獲得を目指してまいります。このほか、保有するIPの有効活用を図っていくと同時に、海外市場においても国内外のパートナーと連携し、海外向けバラエティフォーマットやドラマリメイクの開発や販路の拡大を図ってまいります。
② 生活・健康関連事業
生活・健康関連事業領域における重要な目標は、㈱ティップネスが営むスポーツクラブ事業を当社グループにおける収益の柱の一つにまで成長させると同時に、超高齢化社会が進む日本において「健康意識の向上」に寄与することです。
総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの高まりに伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、市場には女性専用小規模サーキットジム、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店など多数の業態がひしめいております。また、アプリ等を利用した自主トレーニング等、スポーツクラブ以外でのトレーニング手段も多様化しております。これに加え、現在のコロナ禍においては、各自治体からの要請等による休館や時短営業の影響もあり、会員の減少が続くなど極めて深刻な影響が生じており、当連結会計年度において多額の損失を計上しております。
このような状況の中、㈱ティップネスは、店舗戦略の見直しを実施し、収益性の回復に努めてまいります。大幅な会員の減少が続く現在の状況下において、不採算店舗の閉鎖などを実施し、コストの削減に努めております。新たな出店に際しても、これまで以上に厳しく収支をシミュレーションしたうえで実施してまいります。一方で、成長が見込めるキッズスクールに関しては前連結会計年度中に当社グループの関連会社となった㈱ジェイエスエスとの連携を深めつつ強化を図り、収益向上を図ってまいります。
また、オンラインフィットネス「torcia(トルチャ)」を立上げ、デジタル化を推進し、新たな収益源とすべく確実に成長させております。ヘルスケア領域の購買や行動のデータを日本テレビグループの保有するデータと連携させていくことにより利便性の高いサービスを提供してまいります。
③ 不動産関連事業
汐留及び番町地区等において不動産賃貸事業を計画し、実施しております。また、千代田区麹町5丁目にオフィスビルを建設するなど、番町再開発事業を進めております。
クリーンエネルギー創生は、環境に配慮した発電事業として社会的に意義のあるものであると判断し、太陽光発電事業を進めております。現在、岩手県九戸発電所・胆沢発電所・大規模営農型の熊本県小国発電所を稼働させております。電力会社と固定価格買取保証の契約を締結するなどにより、長期安定的に収益を計上出来るように事業を進めてまいります。
④ 新規事業等
当社グループでは、2020年代半ばまでに非放送事業の収入比率を50%超へと引き上げるために、新規事業開発を積極的に推進しております。新型コロナウイルス感染症の流行は長期化し、社会や経済への影響も長引くことが懸念されています。当社グループは、この困難な状況の中でも、メディアとコンテンツのデジタル化を加速させ、コンサート等イベントのオンライン化やEコマース事業の強化、番組からオンラインイベントに誘導する新規事業の強化などでコロナ禍を乗り越える事業を推進してまいります。現在、当社グループのDNAである「人のやっていないことをやり、自ら歴史を作る」精神を受継ぎ、独自のコンテンツ等当社グループの資産を活用した人材育成事業の「日テレHR(人材育成・研修事業)」、eスポーツチーム「AXIZ」の運営を中心とする「eスポーツ事業」、バーチャルYouTuberに関した番組やイベント等を通じて収益化を目指す「VTuber事業」等を行っております。
また、投資枠を1,000億円とし、業種・国境を越えた「聖域なき起業・M&A・アライアンス」を推進してまいります。
(6) 経営基盤の整備等
各事業を円滑に進めるために、グループ全体で「意識・組織・常識の改革」を進めております。積極的なキャリア採用、成長のエンジンとなる「人財」の育成に取り組み、既存の組織や制度をゼロベースで見直し、いかなる環境の変化にも対応出来る「未来に繋がる組織・制度」に変革していきます。また、「前例踏襲撲滅」「AI(人工知能)等の新技術の導入」により、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた業務の軽量化・迅速化を図り、従来業務にかける人的・物的リソースの2割程度を成長分野に振り向けてまいります。
これと同時に、コロナ禍で打撃を受けたグループ企業の立て直しを強化します。すでに経営効率の見直しを行い、改革を軌道に乗せました。今後は、新たなグループ企業の評価制度を導入するなど、監督と対話を促進することでガバナンスの徹底を図ります。
また、当社グループは、公共性・公平性を担う報道機関としての社会的責任を果たしながら、「持続可能な未来」へ貢献していきたいと考えております。当連結会計年度よりスタートした、より良い未来を作るためのキャンペーン「Good For the Planet」WEEKの展開を強化し、全ての番組で持続可能で多様な社会の実現に向けた啓発を行ってまいります。今後は、サステナビリティ実現に向けて当社グループを挙げて取り組むため、温室効果ガスの削減問題など具体的な方針について策定していくと共に、2021年3月に当社ホームページ内に開設したサステナビリティサイトを通じて、当社グループのサステナビリティに関する取組みを発信してまいります。
(7) 目標とする経営指標
当社グループは、事業効率性という観点から「売上高営業利益率」を重要な経営指標にしております。戦略的投資や新規事業については、少数出資・組合出資等の成果が営業外損益に反映されるケースもあり、事業ポートフォリオの多様化の観点から「売上高経常利益率」も重要な経営指標にしております。当連結会計年度におきましては「売上高営業利益率」は8.8%、「売上高経常利益率」は11.0%となりました。また、株主の皆様に出資していただいた資本の運用効率や収益性を計る尺度である「自己資本利益率(ROE)」の向上にも引き続き努めてまいります。
(1) 経営方針
当社グループは、国民の共有財産である電波資源を基にした放送に携わる企業グループとして、公平・公正さを保ち、迅速・正確な情報を発信することを通して、全てのステークホルダーから「信頼」されるサービスの提供を心がけながら事業を継続・発展させてまいります。具体的には、当社グループの一番の強みであるコンテンツ制作力を最大限に活かし、テレビ放送事業や動画配信事業のほか、映画事業、イベント事業、物品販売事業や国内外へのコンテンツ販売等の「メディア・コンテンツ事業」を進めてまいります。また、本格的な少子高齢化社会の到来を視野に、国民の健康意識向上と、健康的な生活の実現を目的とする「生活・健康関連事業」を事業の柱の一つとして成長させ、コア事業であるメディア・コンテンツ事業との間にシナジー効果を創出してまいります。
当社グループは、メディア・コンテンツ業界のトップカンパニーとして「改革と挑戦」を続けつつ、これらの経営施策を通じて、「良質なコンテンツの創造」「新たな文化の創造」「豊かな社会の創造」さらに「夢ある未来の創造」の四つの創造を実現し、一層の企業価値向上に努めてまいります。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つ絶対的優位性の維持が大きな課題となっています。また、法令改正に伴う人件費の上昇、オリンピックやFIFAワールドカップ等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、4K放送及び5Gといった新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保がますます難しくなってきていると認識しております。これらに加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の減退や急激な社会のデジタル化へのシフト、気候変動による集中豪雨や大型台風の発生をはじめとする甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。
当社グループとしましてはこれらの経営環境の変化やリスクを踏まえて、収益性を確保すべく適切に対処していくことが肝要であると認識しております。
(3) 経営戦略
こうした経営環境の中、当社グループは、時代の変化を正しくとらえて進化し、最強のコンテンツ制作集団として、放送や映画、動画配信等の映像コンテンツを創造・発信するだけでなく、リアルなイベント事業や通販事業、教育事業、㈱ティップネスが提供する健康プログラムなど「国民の生活を豊かにする」コンテンツ・サービスを幅広く提供することで、人々の「生活時間接触No.1」となる「総合コンテンツ企業」として進化することを目指してまいります。
また、当社グループは公共性・公平性を担う報道機関として常にサステナビリティを意識し、かねてより「24時間テレビ 愛は地球を救う」や「カラダWEEK」の展開など、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)達成のための活動に取り組んできました。2021年6月には「サステナビリティ推進事務局」を新設し、今後も、放送事業にとどまらず企業活動のあらゆる分野で「持続可能な未来」へ貢献してまいります。
(4) 中期経営目標
当社グループは、いかなる環境の変化に対しても「進化」する事で事業の成長を目指し、2021年度を最終年度とする「日本テレビグループ 中期経営計画2019-2021 日テレ eVOLUTION」を策定し、「テレビを超えろ」をスローガンとしました。しかしながら、このうち定量目標につきましては、現在のコロナ禍を受け、基本的な考え方は引き続き踏襲しつつも、達成が困難になったと判断し、2020年7月に取り下げております。一方で、2020年11月に、現在のコロナ禍を乗り切るとともに、コロナ禍収束後もトップカンパニーとして更なる高みを目指すべく「新しい成長戦略」を策定しました。
ここでは基幹事業である放送事業を発展させるとともに、2020年代半ばには非放送事業の収入比率50%超を達成し、グループ全体の収益力の抜本的な強化を目指すべく、以下の改革に取り組んでいくこととしております。
Ⅰ.デジタル領域事業の飛躍的拡大
Ⅱ.コンテンツへの戦略投資と収支構造の見直し
Ⅲ.グループ事業の強化
2021年5月には、「2021年度 経営方針」を公表し、この「新しい成長戦略」に基づき、2020年代に当社グループが飛躍的に発展するための足掛かりとなる重要な年と位置付け、各施策を推進してまいります。
(5) セグメント別戦略
① メディア・コンテンツ事業
地上波テレビ放送事業は、総務大臣の許認可を必要とし、電波法・放送法など様々な法規制をクリアする必要があるため、新規参入が難しい事業であり、直ちに競合社が増加する可能性は低いと考えております。また、当社グループは全国のネットワーク各局と協定を結び強固な協力関係を築き上げており、10年連続で年間個人視聴率三冠王を獲得しています。
しかしながら、動画配信サービスの進化、動画制作のパーソナル化が進む中、動画コンテンツをインターネット環境下で視聴するユーザーが増加し、地上波テレビの視聴者は漸減傾向にあります。これに伴って地上波テレビ広告市場も徐々に縮小する傾向にあります。
また、動画配信サービスの拡大に伴い、コンテンツへのニーズが高まったことで、IP(知的財産権)ホルダーや制作会社・タレント事務所、スポーツ権利団体等、取引先の交渉力が高まっており、権利の獲得費用及び制作費の高騰が進んでおります。これに加え、番組制作を中心とする業務は働き方改革や、同一労働同一賃金への対応などから人件費の高騰にも直面しております。
このような状況の中、当社グループは地上波放送にとどまらないコンテンツを制作するために、200億円の戦略的投資枠を策定し、運用を開始しました。これにより、デジタル領域での収入を含めた多様な収入を前提とした制作体制へシフトします。すでに一部を2021年度に「コンテンツ戦略費」として予算化すると共に企画募集を開始し、複数のプラットフォームに展開するコンテンツが検討されております。今後は、ライブコンテンツの強化をはじめとして、マルチプラットフォームに展開する戦略コンテンツの制作を加速してまいります。
また、コロナ禍の影響で制約を受けている番組制作では、情報・報道番組内の連絡ツールの電子化などで、より少ない人数での制作を実現し、また、オンライン上で完結する新たな制作システムの構築を進めることで、制作者の負担の大幅な軽減を図ると共に生産性を向上させていきます。地上波放送の制作費をコントロールしつつ、多様化する収入獲得源に合わせたコンテンツ生産量を飛躍的に増加させ、投資効果を最大化させてまいります。
地上波テレビ放送事業については当社グループの根幹を支える事業として、今後も報道機関としての責務を果たし、制作費の徹底的な抑制は継続しつつもクライアントや視聴者に評価される番組作りに邁進し、視聴率、放送収入ともに在京キー局トップを確保してまいります。さらに、データ・マーケティングの強化と放送と通信を組み合わせた広告展開で放送広告収入を拡大してまいります。
インターネット事業においては、動画配信サービス「Hulu」と広告付き無料動画配信を営む民放公式テレビポータル「TVer」を収益の柱に成長させることを当該事業における重要な目標としております。インターネットを通じた動画配信事業は、市場全体が右肩上がりに成長していることに加え、コロナ禍による在宅時間の増加を背景に更なる拡大が見込まれています。一方で、豊富な資金力を有する外資系企業が日本に進出しており、会員獲得に多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから厳しい競争環境に晒されております。
このような環境の中、当社グループでは保有するドラマやバラエティなどの豊富な放送コンテンツや、映画・イベントなどの事業コンテンツと動画配信事業を有機的に連動させること等により、オリジナルコンテンツを増やすことで競合他社との差別化を図り事業を拡大してまいります。「Hulu」においては定額制動画配信サービスのみならず、都度課金制の配信コンテンツも拡充し、多様な収益獲得体制を構築することで、新規会員の更なる獲得、既存会員の追加購入を推進し、売上の最大化を目指します。「TVer」につきましては、当連結会計年度中に実験的に行われたライブ配信を強化し、テレビの枠を超えてコンテンツを多くのユーザーに見ていただく機会を創出します。動画ソリューション事業を展開する㈱PLAYは、高い技術力で動画配信のニーズに応えて業績は好調に推移しており、今後もこの流れを強化してまいります。
これに加えて、生活者と直接繋がったサービス・ビジネス基盤の開発、5Gを活用した新サービスや若年層向けインターネットサービスの開発など、全てがネットでつながるIoT社会を踏まえたコンテンツ・サービスのネット対応を拡大してまいります。
アニメ・映画事業等に関しては、ビジネススキームの抜本的見直しと、IP(知的財産権)ビジネスの積極的推進を図ってまいります。アニメ事業では大型原作獲得へのチャレンジ、映画事業においてはドラマ連動やシリーズ作となる映画制作の強化による確実な収益の獲得を目指してまいります。このほか、保有するIPの有効活用を図っていくと同時に、海外市場においても国内外のパートナーと連携し、海外向けバラエティフォーマットやドラマリメイクの開発や販路の拡大を図ってまいります。
② 生活・健康関連事業
生活・健康関連事業領域における重要な目標は、㈱ティップネスが営むスポーツクラブ事業を当社グループにおける収益の柱の一つにまで成長させると同時に、超高齢化社会が進む日本において「健康意識の向上」に寄与することです。
総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの高まりに伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、市場には女性専用小規模サーキットジム、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店など多数の業態がひしめいております。また、アプリ等を利用した自主トレーニング等、スポーツクラブ以外でのトレーニング手段も多様化しております。これに加え、現在のコロナ禍においては、各自治体からの要請等による休館や時短営業の影響もあり、会員の減少が続くなど極めて深刻な影響が生じており、当連結会計年度において多額の損失を計上しております。
このような状況の中、㈱ティップネスは、店舗戦略の見直しを実施し、収益性の回復に努めてまいります。大幅な会員の減少が続く現在の状況下において、不採算店舗の閉鎖などを実施し、コストの削減に努めております。新たな出店に際しても、これまで以上に厳しく収支をシミュレーションしたうえで実施してまいります。一方で、成長が見込めるキッズスクールに関しては前連結会計年度中に当社グループの関連会社となった㈱ジェイエスエスとの連携を深めつつ強化を図り、収益向上を図ってまいります。
また、オンラインフィットネス「torcia(トルチャ)」を立上げ、デジタル化を推進し、新たな収益源とすべく確実に成長させております。ヘルスケア領域の購買や行動のデータを日本テレビグループの保有するデータと連携させていくことにより利便性の高いサービスを提供してまいります。
③ 不動産関連事業
汐留及び番町地区等において不動産賃貸事業を計画し、実施しております。また、千代田区麹町5丁目にオフィスビルを建設するなど、番町再開発事業を進めております。
クリーンエネルギー創生は、環境に配慮した発電事業として社会的に意義のあるものであると判断し、太陽光発電事業を進めております。現在、岩手県九戸発電所・胆沢発電所・大規模営農型の熊本県小国発電所を稼働させております。電力会社と固定価格買取保証の契約を締結するなどにより、長期安定的に収益を計上出来るように事業を進めてまいります。
④ 新規事業等
当社グループでは、2020年代半ばまでに非放送事業の収入比率を50%超へと引き上げるために、新規事業開発を積極的に推進しております。新型コロナウイルス感染症の流行は長期化し、社会や経済への影響も長引くことが懸念されています。当社グループは、この困難な状況の中でも、メディアとコンテンツのデジタル化を加速させ、コンサート等イベントのオンライン化やEコマース事業の強化、番組からオンラインイベントに誘導する新規事業の強化などでコロナ禍を乗り越える事業を推進してまいります。現在、当社グループのDNAである「人のやっていないことをやり、自ら歴史を作る」精神を受継ぎ、独自のコンテンツ等当社グループの資産を活用した人材育成事業の「日テレHR(人材育成・研修事業)」、eスポーツチーム「AXIZ」の運営を中心とする「eスポーツ事業」、バーチャルYouTuberに関した番組やイベント等を通じて収益化を目指す「VTuber事業」等を行っております。
また、投資枠を1,000億円とし、業種・国境を越えた「聖域なき起業・M&A・アライアンス」を推進してまいります。
(6) 経営基盤の整備等
各事業を円滑に進めるために、グループ全体で「意識・組織・常識の改革」を進めております。積極的なキャリア採用、成長のエンジンとなる「人財」の育成に取り組み、既存の組織や制度をゼロベースで見直し、いかなる環境の変化にも対応出来る「未来に繋がる組織・制度」に変革していきます。また、「前例踏襲撲滅」「AI(人工知能)等の新技術の導入」により、DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じた業務の軽量化・迅速化を図り、従来業務にかける人的・物的リソースの2割程度を成長分野に振り向けてまいります。
これと同時に、コロナ禍で打撃を受けたグループ企業の立て直しを強化します。すでに経営効率の見直しを行い、改革を軌道に乗せました。今後は、新たなグループ企業の評価制度を導入するなど、監督と対話を促進することでガバナンスの徹底を図ります。
また、当社グループは、公共性・公平性を担う報道機関としての社会的責任を果たしながら、「持続可能な未来」へ貢献していきたいと考えております。当連結会計年度よりスタートした、より良い未来を作るためのキャンペーン「Good For the Planet」WEEKの展開を強化し、全ての番組で持続可能で多様な社会の実現に向けた啓発を行ってまいります。今後は、サステナビリティ実現に向けて当社グループを挙げて取り組むため、温室効果ガスの削減問題など具体的な方針について策定していくと共に、2021年3月に当社ホームページ内に開設したサステナビリティサイトを通じて、当社グループのサステナビリティに関する取組みを発信してまいります。
(7) 目標とする経営指標
当社グループは、事業効率性という観点から「売上高営業利益率」を重要な経営指標にしております。戦略的投資や新規事業については、少数出資・組合出資等の成果が営業外損益に反映されるケースもあり、事業ポートフォリオの多様化の観点から「売上高経常利益率」も重要な経営指標にしております。当連結会計年度におきましては「売上高営業利益率」は8.8%、「売上高経常利益率」は11.0%となりました。また、株主の皆様に出資していただいた資本の運用効率や収益性を計る尺度である「自己資本利益率(ROE)」の向上にも引き続き努めてまいります。