有価証券報告書-第93期(2025/04/01-2026/03/31)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1)経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、コンテンツ・メディア事業においては、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つメディアとしてのパワーの維持が大きな課題となっています。また、オリンピック等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、生成AIをはじめとする新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保が難しくなってきていると認識しています。加えて、インターネットを通じた動画配信事業は、社会のデジタルシフトを受け、成長が続くものの、豊富な資金力を有するグローバル配信プラットフォームや、国内競合他社との会員獲得競争は依然として厳しく、多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから、厳しい競争環境に晒されています。 ウェルネス事業においては、総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの移行に伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店等に加え、アプリ等を利用した自主トレーニングなど多様化が進んでおります。また、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しているなど、厳しい状況が継続しています。
また、人権尊重のために企業が果たすべき社会的責任として、人権方針の策定、人権デューデリジェンスなどを進めてきました。しかし、メディア業界全体についてハラスメントなど重大な人権課題を指摘されており、今後はより一層、実効的な人権救済システムの整備、取引先を含めた意識の啓発、ガバナンス全体の体制強化などが求められております。
これらに加えて、急激な社会のデジタル化へのシフト、不安定な世界情勢、甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。当社グループはこのような経営環境の変化に適切に対処し、進化していくことが重要な課題であると認識しております。
当社グループは2025年5月、経営理念を改定し、経営ビジョンを新しく定めるとともに、2025年度から2027年度を計画期間とする中期経営計画を策定し、当連結会計年度はその1年目に該当します。中期経営計画2025-2027は、10年後にありたい姿としての経営ビジョン「コンテンツの力で、“世界”を変える。」実現に向け、強靱な地上波テレビネットワークを基盤とし、「日テレ、開国! Gear up, go global」をスローガンに、コンテンツ製作領域に注力することでグローバルコンテンツ企業への変革を推進する取り組みと目標を示すものです。
(2) 経営理念及び経営ビジョン
(3) 長期目標
当社グループは、今後3つの中期経営計画を経て、2033年度に連結売上高7,000億円(うち海外売上高1,000億円)、連結営業利益700億円を目指します。
地上波広告ビジネスとコンテンツビジネスの両輪で売上を創出し、2033年度にはコンテンツビジネスをグループの中核事業にしていきます。
(4) 中期経営計画2025-2027
中期経営計画2025-2027 重点目標
グローバルコンテンツ企業への変革
IP(知的財産)創出にこだわったコンテンツビジネスの展開
企画開発におけるAIの活用、テクノロジーの積極的導入
生活者に貢献するウェルネス事業の拡大
1,000億円の投資枠設定による成長支援の加速
報道の信頼性向上と社会課題解決への貢献
「売上高5,400億円」、「営業利益580億円」へ
①中期経営計画2025-2027定量目標
最終年度(2027年度)に、連結売上高は過去最高の5,400億円、連結営業利益は580億円を目指します。
②中期経営計画2025-2027の取り組み A グローバルコンテンツ企業への変革
放送や国内市場を主なターゲットとしてきた企画・制作体制を、海外市場を強く意識した体制に再構築し、海外市場での売上拡大を実現していきます。
コンテンツのグローバル化
ドラマの世界配信や国際共同製作のほか、海外でのバラエティフォーマット販売を拡充します。また、細田守監督の最新作「果てしなきスカーレット」の全米公開など、コンテンツのグローバル展開を進めていきます。2027年度の海外売上高300億円を実現します。
コンテンツのグローバル展開体制を構築
海外向け制作スタジオ「GYOKURO STUDIO」を新設するとともに、米国ロサンゼルスに新たなビジネス拠点を開設します。また、海外の有力スタジオとのパートナーシップ契約の締結を進めていきます。
「見たい」コンテンツを多様なチャネルで展開
TVer、Huluでのリーチ拡大を軸に、グローバル配信プラットフォームとの連携を通じてコンテンツの世界展開を進めます。地上波放送でも、リアルタイムで視聴されるコンテンツの開発を強化していきます。
スタジオジブリ作品の海外展開
スタジオジブリ作品は、劇場公開や配信を通じて、海外でも多くの方にご覧いただいています。関連商品や出版物の展開や、展示や舞台なども継続的に開催予定です。
(当連結会計年度の取り組み)
ドラマ「ホットスポット」は、全世界に配信されたこともあり各国で高く評価され、権威ある海外アワード「ContentAsia Awards 2025」の2部門で受賞しました。また、海外市場を目指して企画開発されたバラエティー「ANTS~ぜんぶ運べば一攫千金~」は、ヨーロッパで最も権威ある国際テレビ賞の1つ「ローズ・ドール賞」など2つの海外アワードで最優秀賞を受賞し、イギリスの大手配給会社フリーマントル社と共に世界各国へのフォーマットセールスが進行中です。以上のようなコンテンツに加え、日本テレビが自社開発した、直感的オンデバイスAIソリューション「viztrick AiDi」が、アメリカ3大ネットワークの一つであるNBC Sportsにおいて採用され、2026年から開始される複数のライブイベント中継で使用される予定です。今後も引き続き、ドラマ・バラエティーの海外展開や自社技術の海外輸出を進めていきます。
また、スタジオジブリについては、イギリス・ロンドンウェストエンドで無期限ロングラン上映中の舞台「となりのトトロ」が引き続き好調だったほか、「もののけ姫」4Kデジタルリマスター版を世界各地で上映したことに加え、フランス・パリでの高畑勲展の開催等世界各地で展覧会が開催されました。今後も引き続き海外展開を続けていきます。
B IP(知的財産)創出にこだわったコンテンツビジネスの展開
オリジナルコンテンツの開発や他社とのアライアンスを強化し、ドラマ、映画、音楽、キャラクタービジネスでIPを生み出す基盤を作り、多面的な収益を獲得します。
多様なオリジナルIP創出とIP協業の推進
アーティスト、キャラクター、アニメなどを中心に、パートナー企業との連携や協業を進めてオリジナルIPの創出を実現します。国内のみならずグローバル市場でのIPビジネス拡大を進めます。
組織強化とコンテンツプロダクション連携による製作体制の増強
社内組織の強化に加え、KANAMEL社をはじめとした多くのコンテンツプロダクションとの連携を強め、IP創出を実現する確固たる製作体制を築きます。
(当連結会計年度の取り組み)
アーティストIP事業では、パートナー企業との共創によるアーティストの発掘・育成を加速させました。㈱スターダストプロモーション、㈱ソニー・ミュージックレーベルズと共同展開する「龍宮城」は、結成から着実に支持を広げ、本年度はTOYOTAアリーナ2Daysを完売させるなど、国内屈指のグループへと成長を遂げています。また、本年の高校サッカー応援歌「未来へ」で反響を呼んだ4人組ロックバンド「T.N.T」は、初の全国ツアーや冠番組の放送を通じ、将来を担う新たなIPとしての足がかりを築きました。㈱LDH JAPANとの共同プロジェクトでは、ガールズバトル・オーディションから誕生した「CIRRA」が、正式デビューを果たしたほか、ダンス競技に特化した「LDH SCREAM」が、ダンスバトル・オーディションを経て始動し、「D.LEAGUE」を舞台に新たなエンターテインメントの形を追求しています。今後も番組、イベントと連動した多角的なIP展開を推進し、収益の柱として育成していきます。
また、キャラクターIP事業では、自社キャラクターIP「らぶいーず」が各種商品化に加え全国4都市でのキャラクターカフェ展開やミラノ・コルティナオリンピックの公式SNSサポーターに就任するなど、多角的な活動を通じて成長しています。新規キャラクターIPの開発も鋭意進めており、成長領域として今後もさらなる拡大を目指します。
C 企画開発におけるAIの活用、テクノロジーの積極的導入
AIの活用によるコンテンツ開発・制作モデルを確立し、よりクリエイティブな環境の下、ヒットコンテンツの量産につなげます。また、テクノロジーによるテレビ広告ビジネスの変革を主導します。
コンテンツ企画制作へのAIエージェントの実装
AIによる支援を通じ、限られたリソースを最適化することでクリエイティブ力を強化する「コンテンツテクノロジー戦略」を推進し、コンテンツ制作数の拡大や質向上につなげます。
アドテクを活用した地上波広告ビジネスの変革
2025年4月にスタートした運用型地上波広告「スグリー」を拡大していきます。2027年度には取引先数を2倍とすることを目指します。
(当連結会計年度の取り組み)
コンテンツテクノロジー戦略を推進するべく、AIを活用した業務プロセスの抜本的な変革を進めています。当連結会計年度には、全番組を対象とした視聴率分析や、番組の企画リサーチなどを支援する複数のAIエージェントを開発・導入しました。これまで属人的な経験や勘に委ねられてきた判断を可視化・構造化し、コンテンツ評価から打ち手の検討に至るまでのサイクルを加速させるとともに、意思決定の質の向上を図っています。また、2026年1月には、実写と生成AI映像を融合させたドラマ「TOKYO 巫女忍者」を制作・放送しました。当該作品は、KANAMELグループの㈱AOI Pro.が制作を、㈱TREE Digital StudioがVFX(視覚効果)を担当しました。AI技術を活用した新たな表現に挑戦し、これまでにないコンテンツ製作体制を追求しています。
2025年4月に開始したテレビにデジタルの利便性を取り入れたプログラマティック広告サービス「スグリー」は、既に広告主130社にご利用いただき、高い評価を得ています。読売中京FSホールディングス㈱(FYCSHD)や㈱TBSテレビの参画基本合意も成され、TVer広告とテレビ広告の統合セールスも開始するなど、業界を進化させるアドプラットフォームとして成長を続けています。
D 生活者に貢献するウェルネス事業の拡大
成長ポテンシャルが高いウェルネス市場の中で、まずは当社グループのウェルネス事業の中核であるティップネスを中心とした“運動”分野から、人々の生活を豊かにする活動を推進します。併せて、日本テレビグループの基盤である信頼性をもとに、エビデンスに基づいた最先端のウェルネス情報を発信していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
㈱ティップネスでは、キッズ事業が堅調に推移したことに加え、成人会員数についても既存店舗においてコロナ禍以降で最多を記録し、増収増益を達成しました。また、24時間ジム「FASTGYM24」では基幹システムの更新を行い、入会手続きのWEB化などDXを推進し新規入会者の増加を達成しました。さらに、2025年4月には居心地の良さを追求した新業態のサードプレイスジム「MiiBA(ミィーバ)」 を埼玉県草加市に開業し、新たな顧客層の獲得と事業領域の拡大に取り組んでいます。
フィットネス領域においては、2025年9月に日本テレビ初の直営の次世代型ジム「WELL HACK GYM」を「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」内に開業し、[「鍛える」から「整える」へ]という新たなコンセプトのフィットネスとして更なるフィットネス人口の拡大を目指しています。
2025年4月には、エビデンスに基づく最先端のウェルネス情報を継続的に発信する情報シンクタンク「コンディショニング イノベーション Lab」のサイトをオープンし、本編動画50本以上を配信しました。8月にはショート動画、テキスト記事も配信を開始し、ショート動画100本以上、テキスト記事50本以上を配信しています。
2025年11月にはウォーキングイベント「Sunrise to Sunset Walk」の第2回大会を開催しました。参加者は前年比140%超となる1,980名となり、ウォーキング人口拡大に向けたウェルネスイベントとして成長を続けています。
E 1,000億円の投資枠設定による成長支援の加速
戦略的な投資と予算の投下により、各事業の成長支援を加速することに加え、新規事業開発や不動産事業の推進により、収益基盤の強化を目指します。
戦略的投資と戦略費投下による成長投資の加速
合計で1,000億円の成長投資枠を設定します。コンテンツ・グローバル領域、ウェルネス領域、新規事業領域に戦略的投資を行うほか、社内事業の育成や業務を変革するための戦略的な費用投下を進めます。
人材と資金の積極投入による新規事業開発の推進
収益基盤の多様化に向け、事業のフェーズに応じて、戦略的予算の投下や分社化、M&Aなどの施策を迅速に実施していきます。売上高50億円以上の事業を継続的に創出、育成していきます。
既存アセットの有効活用とコンテンツビジネスを支える不動産事業の推進
保有する資産の有効活用を通じ、コンテンツビジネスを持続可能なものにする不動産事業を推進します。また、スポーツ・エンタメの興行会場をはじめとした多様なアセット投資を行っていきます。
(当連結会計年度の取り組み)
戦略的投資については、コンテンツ・グローバル領域において、世界市場に向けたコンテンツ製作力を強化するべく、KANAMEL㈱の全株式の取得に関する株式譲渡契約を締結した他(2026年4月に同社を完全子会社化)、新規事業領域において、宇宙ビジネスへの挑戦を加速するべくFrontier Innovations㈱が運営するFrontier Innovations 1号投資事業有限責任組合への出資を行いました。また、インパクト投資第3号案件として、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開する㈱Nature Innovation Groupへの出資を実行しました。以上に加え、社内の新規事業育成及びAI活用に対し、戦略的予算である「戦略費」を投下しました。今後も引き続き戦略的投資と戦略費の投下による持続的な価値創出を目指してまいります。
新規事業開発については、企業における人材育成ニーズの高まりを受け、同分野を強化するため、新会社㈱日テレHR総合研究所を設立し、2025年度は福利厚生プラットフォームの提供を開始したほか、アスリートが競技と仕事を両立できるサービスを立ち上げ、事業拡大を推進しております。
不動産事業については、千代田区の旧本社跡地を有効活用するため、二番町再開発の基本計画を本格的に推進しております。また、多様なアセット投資として、旧奈良監獄保存活用事業への出資を皮切りに、新領域へ挑戦するほか、ベニュービジネスの本格検討を開始しました。今後は日本テレビのグループリソースを活用した取り組みもさらに推進してまいります。
F 報道の信頼性向上と社会課題解決への貢献
報道機関として信頼性を追求し、ネットワークの強靱化を図るとともに、サステナビリティ活動を通じて社会課題の解決に貢献していきます。
報道機関としての信頼性追求
国民から信頼される正確・迅速かつ公平・公正なニュースを提供し、日本テレビのニュースブランドを世界に確立します。また、調査報道の強化で日本の社会課題解決のきっかけを生み出していきます。
日本テレビネットワークの強靭化
新たに設立された読売中京FSホールディングス㈱(FYCSHD)及び、ネットワーク各社とさらに緊密な連携を進め、地域社会の発展や活性化に貢献していきます。
サステナブルな社会に向けた取り組み
「サステナビリティポリシー」で定めた6つの重要課題へ積極的に取り組みます。企業や自治体のメディアパートナーとして、社会課題解決に向けた共創事業を推進し、社会的価値の創出と拡大に努めます。
すべての人の人権が尊重される社会に向けた取り組み
人権がより尊重されるビジネス実現のための人権デューデリジェンスを推進していきます。また、多様性をテーマにした番組キャンペーンや啓発イベント等を積極的に発信していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
日本テレビ報道局では、国政選挙に際したファクトチェックシリーズ「それって、本当?」など、時代の要請に応える報道を牽引しました。また、ウクライナ市民への継続的な取材活動が2025年度ボーン・上田記念国際記者賞の特別賞を受賞したほか、マスメディア初となるインパクト測定・マネジメントを導入しました。引き続き、報道の価値を構造的に把握し、組織全体への浸透を図っていきます。
ネットワーク強靭化については、読売中京FSホールディングス㈱とともにネットワークの連携を深めると共に、「NNSガバナンス対応事務局」を発足し、ネットワーク各局のコーポレート・ガバナンス強化を図りました。
サステナビリティ関連では、GHG排出量算定のScope1・2・3をグループ6社へ拡大しました。また、日本列島ブルーカーボンプロジェクト「アマモ場再生活動」の取り組みをグループ8社に拡大しました。これまでのESG分野におけるIR活動等が評価され、ESG投資の代表的な指数である「FTSE4Good Index Series」、「FTSE Blossom Japan Index」、「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されました。3つの指数に1度に選定されたのは今回が初となります。
人権関連では、2024年度の社内アンケートに続き、2025年8月に取引先172社に対する人権に関するアンケートと事後ヒアリングを実施したことに加え、2026年2月にはグループ各社に対しても同様のアンケートを実施しました。
G 資本政策・株主還元方針
2025年度から2027年度の間に生み出したキャッシュフローで成長投資を賄い、収益基盤の拡大を目指します。政策保有株を縮減し、継続的で安定的な株主還元を基本方針としつつ、総還元性向35%以上を新たな目標とします。果敢な投資を通じて成長戦略を推進し、企業価値の向上に邁進していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
政策保有株については、第3四半期と第4四半期に上場有価証券1銘柄を売却しました。また、自己株式については2025年11月7日~12月17日にかけて2,601,900株を取得し、取得した全ての自己株式を消却しています。
(1)経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、コンテンツ・メディア事業においては、地上波テレビ放送で長年培ってきたコンテンツ制作力と媒体力をコアコンピタンスとし、事業を拡大し成長させてまいりました。しかし、インターネットメディアの普及等に伴うコンテンツ視聴環境の変化や、それに伴う広告手法の進化によって、インターネット広告へのシフト、動画配信市場の拡大等が進み、テレビが持つメディアとしてのパワーの維持が大きな課題となっています。また、オリンピック等の大型スポーツイベントを中心に放送権料が高騰しているほか、生成AIをはじめとする新技術対応のためのコストも必要となり、収益の確保が難しくなってきていると認識しています。加えて、インターネットを通じた動画配信事業は、社会のデジタルシフトを受け、成長が続くものの、豊富な資金力を有するグローバル配信プラットフォームや、国内競合他社との会員獲得競争は依然として厳しく、多額の投資が必要なビジネスモデルとなっていることから、厳しい競争環境に晒されています。 ウェルネス事業においては、総合型スポーツクラブから特化型スポーツクラブへの利用者ニーズの移行に伴い、小規模事業者の新規参入が容易な状況となっており、24時間営業のトレーニングジム、ホットヨガ、ストレッチ専門店等に加え、アプリ等を利用した自主トレーニングなど多様化が進んでおります。また、コロナ禍において減少した会員数の回復に時間を要しているなど、厳しい状況が継続しています。
また、人権尊重のために企業が果たすべき社会的責任として、人権方針の策定、人権デューデリジェンスなどを進めてきました。しかし、メディア業界全体についてハラスメントなど重大な人権課題を指摘されており、今後はより一層、実効的な人権救済システムの整備、取引先を含めた意識の啓発、ガバナンス全体の体制強化などが求められております。
これらに加えて、急激な社会のデジタル化へのシフト、不安定な世界情勢、甚大な被害を伴う自然災害といった外的要因による大きな経営環境の変化が生じております。当社グループはこのような経営環境の変化に適切に対処し、進化していくことが重要な課題であると認識しております。
当社グループは2025年5月、経営理念を改定し、経営ビジョンを新しく定めるとともに、2025年度から2027年度を計画期間とする中期経営計画を策定し、当連結会計年度はその1年目に該当します。中期経営計画2025-2027は、10年後にありたい姿としての経営ビジョン「コンテンツの力で、“世界”を変える。」実現に向け、強靱な地上波テレビネットワークを基盤とし、「日テレ、開国! Gear up, go global」をスローガンに、コンテンツ製作領域に注力することでグローバルコンテンツ企業への変革を推進する取り組みと目標を示すものです。
(2) 経営理念及び経営ビジョン
| 経営理念 正確で速やかな報道、良質なコンテンツの提供と、多彩な文化の創造により、人々の生活を豊かなものにする。 |
| 経営ビジョン コンテンツの力で、“世界”を変える。 Change the‘World’ Through the Power of Content 日本テレビグループが「感動×信頼のNo.1企業」として実現したいのは、私たち1人1人が紡ぎ出す様々なサービス、プロダクトを含めた「コンテンツ」を通じて、豊かな未来を創り出すこと。 よりよい未来が拡がる“世界”に向けて、私たちはこれからも「コンテンツ」を生み出し、作り、そして届けていきます。 |
(3) 長期目標
当社グループは、今後3つの中期経営計画を経て、2033年度に連結売上高7,000億円(うち海外売上高1,000億円)、連結営業利益700億円を目指します。
地上波広告ビジネスとコンテンツビジネスの両輪で売上を創出し、2033年度にはコンテンツビジネスをグループの中核事業にしていきます。
(4) 中期経営計画2025-2027
| 中期経営計画2025-2027のスローガン 日テレ、開国! Gear up, go global 日本発グローバルコンテンツメーカーへ |
中期経営計画2025-2027 重点目標
グローバルコンテンツ企業への変革
IP(知的財産)創出にこだわったコンテンツビジネスの展開
企画開発におけるAIの活用、テクノロジーの積極的導入
生活者に貢献するウェルネス事業の拡大
1,000億円の投資枠設定による成長支援の加速
報道の信頼性向上と社会課題解決への貢献
「売上高5,400億円」、「営業利益580億円」へ
①中期経営計画2025-2027定量目標
最終年度(2027年度)に、連結売上高は過去最高の5,400億円、連結営業利益は580億円を目指します。
| (単位:億円) | ||||
| 2025年度 実績 | 2027年度 目標 | |||
| 連結売上高 | 4,844 | 5,400 | ||
| コンテンツ・メディア事業 | 4,526 | 4,960 | ||
| コンテンツビジネス | 1,402 | 1,870 | ||
| 広告事業 | 2,595 | 2,500 | ||
| 物販事業 | 340 | 360 | ||
| イベント・テーマパーク事業 | 187 | 230 | ||
| ウェルネス事業 | 272 | 400 | ||
| 不動産関連事業 | 45 | 40 | ||
| 連結営業利益 | 693 | 580 | ||
②中期経営計画2025-2027の取り組み A グローバルコンテンツ企業への変革
放送や国内市場を主なターゲットとしてきた企画・制作体制を、海外市場を強く意識した体制に再構築し、海外市場での売上拡大を実現していきます。
コンテンツのグローバル化
ドラマの世界配信や国際共同製作のほか、海外でのバラエティフォーマット販売を拡充します。また、細田守監督の最新作「果てしなきスカーレット」の全米公開など、コンテンツのグローバル展開を進めていきます。2027年度の海外売上高300億円を実現します。
コンテンツのグローバル展開体制を構築
海外向け制作スタジオ「GYOKURO STUDIO」を新設するとともに、米国ロサンゼルスに新たなビジネス拠点を開設します。また、海外の有力スタジオとのパートナーシップ契約の締結を進めていきます。
「見たい」コンテンツを多様なチャネルで展開
TVer、Huluでのリーチ拡大を軸に、グローバル配信プラットフォームとの連携を通じてコンテンツの世界展開を進めます。地上波放送でも、リアルタイムで視聴されるコンテンツの開発を強化していきます。
スタジオジブリ作品の海外展開
スタジオジブリ作品は、劇場公開や配信を通じて、海外でも多くの方にご覧いただいています。関連商品や出版物の展開や、展示や舞台なども継続的に開催予定です。
(当連結会計年度の取り組み)
ドラマ「ホットスポット」は、全世界に配信されたこともあり各国で高く評価され、権威ある海外アワード「ContentAsia Awards 2025」の2部門で受賞しました。また、海外市場を目指して企画開発されたバラエティー「ANTS~ぜんぶ運べば一攫千金~」は、ヨーロッパで最も権威ある国際テレビ賞の1つ「ローズ・ドール賞」など2つの海外アワードで最優秀賞を受賞し、イギリスの大手配給会社フリーマントル社と共に世界各国へのフォーマットセールスが進行中です。以上のようなコンテンツに加え、日本テレビが自社開発した、直感的オンデバイスAIソリューション「viztrick AiDi」が、アメリカ3大ネットワークの一つであるNBC Sportsにおいて採用され、2026年から開始される複数のライブイベント中継で使用される予定です。今後も引き続き、ドラマ・バラエティーの海外展開や自社技術の海外輸出を進めていきます。
また、スタジオジブリについては、イギリス・ロンドンウェストエンドで無期限ロングラン上映中の舞台「となりのトトロ」が引き続き好調だったほか、「もののけ姫」4Kデジタルリマスター版を世界各地で上映したことに加え、フランス・パリでの高畑勲展の開催等世界各地で展覧会が開催されました。今後も引き続き海外展開を続けていきます。
B IP(知的財産)創出にこだわったコンテンツビジネスの展開
オリジナルコンテンツの開発や他社とのアライアンスを強化し、ドラマ、映画、音楽、キャラクタービジネスでIPを生み出す基盤を作り、多面的な収益を獲得します。
多様なオリジナルIP創出とIP協業の推進
アーティスト、キャラクター、アニメなどを中心に、パートナー企業との連携や協業を進めてオリジナルIPの創出を実現します。国内のみならずグローバル市場でのIPビジネス拡大を進めます。
組織強化とコンテンツプロダクション連携による製作体制の増強
社内組織の強化に加え、KANAMEL社をはじめとした多くのコンテンツプロダクションとの連携を強め、IP創出を実現する確固たる製作体制を築きます。
(当連結会計年度の取り組み)
アーティストIP事業では、パートナー企業との共創によるアーティストの発掘・育成を加速させました。㈱スターダストプロモーション、㈱ソニー・ミュージックレーベルズと共同展開する「龍宮城」は、結成から着実に支持を広げ、本年度はTOYOTAアリーナ2Daysを完売させるなど、国内屈指のグループへと成長を遂げています。また、本年の高校サッカー応援歌「未来へ」で反響を呼んだ4人組ロックバンド「T.N.T」は、初の全国ツアーや冠番組の放送を通じ、将来を担う新たなIPとしての足がかりを築きました。㈱LDH JAPANとの共同プロジェクトでは、ガールズバトル・オーディションから誕生した「CIRRA」が、正式デビューを果たしたほか、ダンス競技に特化した「LDH SCREAM」が、ダンスバトル・オーディションを経て始動し、「D.LEAGUE」を舞台に新たなエンターテインメントの形を追求しています。今後も番組、イベントと連動した多角的なIP展開を推進し、収益の柱として育成していきます。
また、キャラクターIP事業では、自社キャラクターIP「らぶいーず」が各種商品化に加え全国4都市でのキャラクターカフェ展開やミラノ・コルティナオリンピックの公式SNSサポーターに就任するなど、多角的な活動を通じて成長しています。新規キャラクターIPの開発も鋭意進めており、成長領域として今後もさらなる拡大を目指します。
C 企画開発におけるAIの活用、テクノロジーの積極的導入
AIの活用によるコンテンツ開発・制作モデルを確立し、よりクリエイティブな環境の下、ヒットコンテンツの量産につなげます。また、テクノロジーによるテレビ広告ビジネスの変革を主導します。
コンテンツ企画制作へのAIエージェントの実装
AIによる支援を通じ、限られたリソースを最適化することでクリエイティブ力を強化する「コンテンツテクノロジー戦略」を推進し、コンテンツ制作数の拡大や質向上につなげます。
アドテクを活用した地上波広告ビジネスの変革
2025年4月にスタートした運用型地上波広告「スグリー」を拡大していきます。2027年度には取引先数を2倍とすることを目指します。
(当連結会計年度の取り組み)
コンテンツテクノロジー戦略を推進するべく、AIを活用した業務プロセスの抜本的な変革を進めています。当連結会計年度には、全番組を対象とした視聴率分析や、番組の企画リサーチなどを支援する複数のAIエージェントを開発・導入しました。これまで属人的な経験や勘に委ねられてきた判断を可視化・構造化し、コンテンツ評価から打ち手の検討に至るまでのサイクルを加速させるとともに、意思決定の質の向上を図っています。また、2026年1月には、実写と生成AI映像を融合させたドラマ「TOKYO 巫女忍者」を制作・放送しました。当該作品は、KANAMELグループの㈱AOI Pro.が制作を、㈱TREE Digital StudioがVFX(視覚効果)を担当しました。AI技術を活用した新たな表現に挑戦し、これまでにないコンテンツ製作体制を追求しています。
2025年4月に開始したテレビにデジタルの利便性を取り入れたプログラマティック広告サービス「スグリー」は、既に広告主130社にご利用いただき、高い評価を得ています。読売中京FSホールディングス㈱(FYCSHD)や㈱TBSテレビの参画基本合意も成され、TVer広告とテレビ広告の統合セールスも開始するなど、業界を進化させるアドプラットフォームとして成長を続けています。
D 生活者に貢献するウェルネス事業の拡大
成長ポテンシャルが高いウェルネス市場の中で、まずは当社グループのウェルネス事業の中核であるティップネスを中心とした“運動”分野から、人々の生活を豊かにする活動を推進します。併せて、日本テレビグループの基盤である信頼性をもとに、エビデンスに基づいた最先端のウェルネス情報を発信していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
㈱ティップネスでは、キッズ事業が堅調に推移したことに加え、成人会員数についても既存店舗においてコロナ禍以降で最多を記録し、増収増益を達成しました。また、24時間ジム「FASTGYM24」では基幹システムの更新を行い、入会手続きのWEB化などDXを推進し新規入会者の増加を達成しました。さらに、2025年4月には居心地の良さを追求した新業態のサードプレイスジム「MiiBA(ミィーバ)」 を埼玉県草加市に開業し、新たな顧客層の獲得と事業領域の拡大に取り組んでいます。
フィットネス領域においては、2025年9月に日本テレビ初の直営の次世代型ジム「WELL HACK GYM」を「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」内に開業し、[「鍛える」から「整える」へ]という新たなコンセプトのフィットネスとして更なるフィットネス人口の拡大を目指しています。
2025年4月には、エビデンスに基づく最先端のウェルネス情報を継続的に発信する情報シンクタンク「コンディショニング イノベーション Lab」のサイトをオープンし、本編動画50本以上を配信しました。8月にはショート動画、テキスト記事も配信を開始し、ショート動画100本以上、テキスト記事50本以上を配信しています。
2025年11月にはウォーキングイベント「Sunrise to Sunset Walk」の第2回大会を開催しました。参加者は前年比140%超となる1,980名となり、ウォーキング人口拡大に向けたウェルネスイベントとして成長を続けています。
E 1,000億円の投資枠設定による成長支援の加速
戦略的な投資と予算の投下により、各事業の成長支援を加速することに加え、新規事業開発や不動産事業の推進により、収益基盤の強化を目指します。
戦略的投資と戦略費投下による成長投資の加速
合計で1,000億円の成長投資枠を設定します。コンテンツ・グローバル領域、ウェルネス領域、新規事業領域に戦略的投資を行うほか、社内事業の育成や業務を変革するための戦略的な費用投下を進めます。
人材と資金の積極投入による新規事業開発の推進
収益基盤の多様化に向け、事業のフェーズに応じて、戦略的予算の投下や分社化、M&Aなどの施策を迅速に実施していきます。売上高50億円以上の事業を継続的に創出、育成していきます。
既存アセットの有効活用とコンテンツビジネスを支える不動産事業の推進
保有する資産の有効活用を通じ、コンテンツビジネスを持続可能なものにする不動産事業を推進します。また、スポーツ・エンタメの興行会場をはじめとした多様なアセット投資を行っていきます。
(当連結会計年度の取り組み)
戦略的投資については、コンテンツ・グローバル領域において、世界市場に向けたコンテンツ製作力を強化するべく、KANAMEL㈱の全株式の取得に関する株式譲渡契約を締結した他(2026年4月に同社を完全子会社化)、新規事業領域において、宇宙ビジネスへの挑戦を加速するべくFrontier Innovations㈱が運営するFrontier Innovations 1号投資事業有限責任組合への出資を行いました。また、インパクト投資第3号案件として、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開する㈱Nature Innovation Groupへの出資を実行しました。以上に加え、社内の新規事業育成及びAI活用に対し、戦略的予算である「戦略費」を投下しました。今後も引き続き戦略的投資と戦略費の投下による持続的な価値創出を目指してまいります。
新規事業開発については、企業における人材育成ニーズの高まりを受け、同分野を強化するため、新会社㈱日テレHR総合研究所を設立し、2025年度は福利厚生プラットフォームの提供を開始したほか、アスリートが競技と仕事を両立できるサービスを立ち上げ、事業拡大を推進しております。
不動産事業については、千代田区の旧本社跡地を有効活用するため、二番町再開発の基本計画を本格的に推進しております。また、多様なアセット投資として、旧奈良監獄保存活用事業への出資を皮切りに、新領域へ挑戦するほか、ベニュービジネスの本格検討を開始しました。今後は日本テレビのグループリソースを活用した取り組みもさらに推進してまいります。
F 報道の信頼性向上と社会課題解決への貢献
報道機関として信頼性を追求し、ネットワークの強靱化を図るとともに、サステナビリティ活動を通じて社会課題の解決に貢献していきます。
報道機関としての信頼性追求
国民から信頼される正確・迅速かつ公平・公正なニュースを提供し、日本テレビのニュースブランドを世界に確立します。また、調査報道の強化で日本の社会課題解決のきっかけを生み出していきます。
日本テレビネットワークの強靭化
新たに設立された読売中京FSホールディングス㈱(FYCSHD)及び、ネットワーク各社とさらに緊密な連携を進め、地域社会の発展や活性化に貢献していきます。
サステナブルな社会に向けた取り組み
「サステナビリティポリシー」で定めた6つの重要課題へ積極的に取り組みます。企業や自治体のメディアパートナーとして、社会課題解決に向けた共創事業を推進し、社会的価値の創出と拡大に努めます。
すべての人の人権が尊重される社会に向けた取り組み
人権がより尊重されるビジネス実現のための人権デューデリジェンスを推進していきます。また、多様性をテーマにした番組キャンペーンや啓発イベント等を積極的に発信していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
日本テレビ報道局では、国政選挙に際したファクトチェックシリーズ「それって、本当?」など、時代の要請に応える報道を牽引しました。また、ウクライナ市民への継続的な取材活動が2025年度ボーン・上田記念国際記者賞の特別賞を受賞したほか、マスメディア初となるインパクト測定・マネジメントを導入しました。引き続き、報道の価値を構造的に把握し、組織全体への浸透を図っていきます。
ネットワーク強靭化については、読売中京FSホールディングス㈱とともにネットワークの連携を深めると共に、「NNSガバナンス対応事務局」を発足し、ネットワーク各局のコーポレート・ガバナンス強化を図りました。
サステナビリティ関連では、GHG排出量算定のScope1・2・3をグループ6社へ拡大しました。また、日本列島ブルーカーボンプロジェクト「アマモ場再生活動」の取り組みをグループ8社に拡大しました。これまでのESG分野におけるIR活動等が評価され、ESG投資の代表的な指数である「FTSE4Good Index Series」、「FTSE Blossom Japan Index」、「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されました。3つの指数に1度に選定されたのは今回が初となります。
人権関連では、2024年度の社内アンケートに続き、2025年8月に取引先172社に対する人権に関するアンケートと事後ヒアリングを実施したことに加え、2026年2月にはグループ各社に対しても同様のアンケートを実施しました。
G 資本政策・株主還元方針
2025年度から2027年度の間に生み出したキャッシュフローで成長投資を賄い、収益基盤の拡大を目指します。政策保有株を縮減し、継続的で安定的な株主還元を基本方針としつつ、総還元性向35%以上を新たな目標とします。果敢な投資を通じて成長戦略を推進し、企業価値の向上に邁進していきます。
(当連結会計年度の取り組み)
政策保有株については、第3四半期と第4四半期に上場有価証券1銘柄を売却しました。また、自己株式については2025年11月7日~12月17日にかけて2,601,900株を取得し、取得した全ての自己株式を消却しています。