有価証券報告書-第36期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/24 15:01
【資料】
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【項目】
150項目

対処すべき課題

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営理念
当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念のもと、創業以来一貫して情報革命を通じた人類と社会への貢献を推進してきました。情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業に取り組み、「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指し、企業価値の最大化に取り組んでいます。
(2) 重要課題(マテリアリティ)
上記の経営理念に基づき、社会インフラを提供する当社グループは、本業を通じて、さまざまな社会課題の解決に貢献すべく、「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中」の実現を通じて、持続可能な社会の維持に貢献し、中長期的な企業価値向上を達成すべく、当社グループが優先的に取り組むべき課題として、下記6つの重要課題(マテリアリティ)を特定しています。
a. デジタルトランスフォーメーション(注)による社会・産業の構築
5GやAIなどの最先端テクノロジーを活用し、新しい産業を創出するとともに、世の中のさまざまなビジネスを変革していくためのソリューションを提供します。
(注)デジタルトランスフォーメーションとは、企業が、データとデジタル技術を活用して、組織、プロセス、業務等を変革していくことです。
b. 人・情報をつなぎ新しい感動を創出
スマートデバイスの普及を促進し、これを通じて新しい体験の提供を行い、お客さまの豊かなライフスタイルを実現します。同時に、人・情報をつなぐ魅力的なプラットフォームをパートナー企業に提供し、お客さまと企業の双方に価値を生み出します。
c. オープンイノベーションによる新規ビジネスの創出
グローバルのトップランナー企業とのつながりを生かし、最先端のテクノロジーや革新的なビジネスモデルを日本に展開します。同時に、新たなビジネスの拡大や普及を支えていく高度な人材の育成と組織の構築を推進します。
d. テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献
持続可能な地球環境を次の世代につなぐため、最先端テクノロジーを活用し、気候変動への対応と、循環型社会の推進および自然エネルギー普及に貢献します。
e. 質の高い社会ネットワークの構築
通信ネットワークはライフラインであるとの考えに基づき、どんな時でも安定的につながるネットワークの維持に全力を尽くすとともに、お客さまの大切なデータを保護します。
f. レジリエント(強靭)な経営基盤の発展
コーポレート・ガバナンスの高度化を図り、ステークホルダーの皆さまとの継続的な対話を通じて、社会に信用される誠実な企業統治を行います。また、最先端テクノロジーを活用して、多様な人材が活躍できる先進的な職場環境を整備するとともに、社員とその家族の健康維持・増進に取り組む健康経営を推進し、イノベーションの創発と従業員の幸福度向上を図ります。
当社グループは今後も、「情報革命で人々を幸せに」の経営理念に基づき、事業活動と企業活動の両面で社会課題の解決に継続的に取り組むことで、国連の定める「SDGs(持続可能な開発目標)」の達成に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(3) 経営方針
a. 経営環境
世の中を取り巻く環境は、かつてない変革期を迎えています。世界および日本の景況感は、インフレ懸念の拡大や緊迫した国際情勢も加わり、非常に不透明かつ不安定な状況が継続しています。一方で、2020年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、人々にテレワークやオンラインショッピング、非接触型決済などの利用を動機づけ、生活やビジネスのあらゆる場面がデジタル化されるきっかけとなりました。同年3月に商用サービスが開始された第5世代移動通信システム5Gをはじめ、AI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーンなどの最先端テクノロジーが、これらのデジタル化のニーズをさらに後押ししています。今後も社会のデジタル化は一層進展し、産業そのものの構造が変わるデジタルトランスフォーメーションが一段と加速していくとみられています。
b. 事業戦略
当社グループの掲げる成長戦略「Beyond Carrier」は、コアビジネスである通信事業の持続的な成長を図りながら、通信キャリアの枠を超え、情報・テクノロジー領域のさまざまな分野で積極的に事業を展開することで、企業価値の最大化を目指すものです。通信事業では、多様化するニーズに合わせた複数ブランド展開により、スマートフォンやブロードバンドの契約数の拡大を図るとともに、5Gサービスの普及に取り組みます。通信以外の領域では、連結子会社であるヤフー㈱やLINE㈱を中心に、eコマースやインターネットメディア、SNS・コミュニケーションなどのサービスを拡大します。また、急成長を遂げるキャッシュレス決済サービス「PayPay」を筆頭に、AI・IoT・FinTechなどの最先端テクノロジーを用いた新規ビジネスやソリューションビジネスの成長を加速させます。
(a) 通信事業のさらなる成長
当社グループのビジネスの基盤となる通信事業では、新たな通信インフラである5Gの展開やスマートフォン・ブロードバンドの契約数拡大、法人向けソリューションビジネスの拡大を図ることで、さらなる成長を目指します。
ⅰ.スマートフォン契約数の拡大
当社グループは特長の異なる3つのモバイルブランドを展開することで、大容量ユーザーから節約志向まで、幅広いユーザーのニーズに応えています。今後は「Yahoo!」の各種サービスや国内最大のメッセージサービス「LINE」、キャッシュレス決済サービス「PayPay」といった、当社グループが提供するさまざまなサービスとの連携を強化するとともに、5Gを活用したVR・クラウドゲーミングなどのコンテンツを積極的に展開することで、他社にはない新たな魅力を提供し、契約数の着実な拡大を図ります。
ⅱ.ブロードバンド契約数の拡大
当社グループは「SoftBank 光」を中心とする家庭向け高速インターネットサービスについても、販売の拡大に注力します。
ⅲ.法人向けソリューションビジネスの拡大
当社グループは、急速に拡大する企業のデジタル化ニーズに最適なICTソリューションの販売に注力します。社員のリスキルや積極的な採用活動を通じてデジタル人材を確保し、企業の抱える課題を解決する高付加価値なソリューションの提案を行います。さらにIoTやAI、クラウド、ロボットなどの最先端テクノロジーの知見を駆使し、社会に新しい価値を生み出します。
ⅳ.5Gの展開
当社グループは、5Gの商用サービスを2020年3月に開始し、2022年3月に目標としていた人口カバー率90%を達成しました。今後も5Gのさらなる高度化とエリア拡大に努めます。一方、設備投資については、全国に20万カ所以上ある既存の基地局サイトを最大限に活用し、4G周波数帯の5Gへの転用や他社との協業、通信設備の効率化などのさまざまな工夫を行うことで、コスト効率化を図ります。
(b) ヤフー・LINE事業の成長
2021年3月、当社の子会社であるZホールディングス㈱とLINE㈱の経営統合により、国内最大規模のインターネットサービス企業・新生Zホールディングスが誕生しました。この新生Zホールディングスを中核会社とする当社のヤフー・LINE事業では、検索やニュース、オンラインショッピング、金融、コミュニケーションサービスなど、200を超える多様なサービスを提供しています。
ⅰ.コマース領域の成長
オンラインショッピングなどを扱うコマース領域では、ユーザーのニーズが多様化する中、規模や形態の異なるさまざまなストアが集まる「Yahoo!ショッピング」や人気の家電量販店やファッションブランドショップなど厳選されたストアが参加する「PayPayモール」、国内最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」など、特長の異なる複数のコマースサービスを展開することで幅広いユーザーの取り込みを図っています。今後は、オンラインとオフラインの融合や配送品質の向上、コミュニケーションを軸とした新たなショッピング体験の追求を通じて、eコマース取扱高の持続的な成長を目指します。
ⅱ.メディア・戦略領域の拡大
インターネット広告などを扱うメディア領域では、広告の表示デザインの改善や配信精度の向上などにより広告単価を高めることで、既存広告の売上の最大化を図るとともに、新たなマーケットの開拓にも取り組みます。また戦略領域では、金融サービスなどを創出・拡大し、新たな収益の柱を構築します。
(c) 新規事業の創出・拡大
当社グループは、FinTech、モビリティ、ヘルスケアなどの領域で、最先端のテクノロジーを活用した革新的な新規事業の創出・拡大に取り組んでいます。ソフトバンクグループの一員である当社は、親会社などの投資先である世界的ユニコーン企業との協働により、初期投資を抑えながら、最先端のテクノロジーやビジネスモデルを導入することが可能です。また、通信、オンラインショッピング、決済、SNSといった異なる複数の分野において数千万人規模のユーザー基盤を有していることは、新規事業の拡大における大きな強みです。特に、当社とZホールディングス㈱が2018年に立ち上げたキャッシュレス決済サービス「PayPay」は、既に国内コード決済市場で圧倒的なシェアを獲得しており、今後は当社グループの金融ビジネスの核としてさらなる成長を目指しています。
(d) コスト効率化
当社グループは、成長戦略「Beyond Carrier」の推進に向け、事業投資を機動的に実施する一方で、コストの効率化に継続的に取り組みます。全社的な業務のデジタル化や在宅勤務の推進などの働き方改革により、社員一人当たりの生産性の向上を図ります。また、PHSや3Gサービスの終了などに合わせ、通信設備の最適化を実施します。加えて、Zホールディングスグループとの共同購買やグループ企業を活用した業務の内製化などを推進し、グループ全体のコスト効率化を図ります。
c. 財務戦略
当社グループは、調整後フリー・キャッシュ・フロー(注)を重要な経営指標と考えています。高い株主還元を維持しながら、成長への投資を実施していくため、今後も安定的な調整後フリー・キャッシュ・フローの創出を図ります。また、健全な財務体質の維持にも取り組みます。
(注) 調整後フリー・キャッシュ・フローの算定方法は、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (4) <財務指標に関する説明>IFRSに基づかない指標」をご参照ください。