有価証券報告書-第37期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/27 15:00
【資料】
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【項目】
133項目

研究開発活動

世界に変革をもたらす革新的な研究開発を進めており、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想の具現化に向けては、要素技術の研究開発及び様々な産業での活用事例創出に取り組みました。また、国内外の様々な分野の産業界の方々とともに、産業競争力の強化や社会的課題の解決をめざす取組みを推進しました。
IOWN構想イメージ
IOWNは主に、光技術を適用するオールフォトニクス・ネットワーク(APN)、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とするデジタルツインコンピューティング(DTC)、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備するコグニティブ・ファウンデーション(CF)の3つで構成されます。
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○ IOWN構想の具現化に向けた研究開発
-IOWN構想のカギを握る光信号と電気信号を融合する光電融合技術の研究開発は、革新的な技術の創出と、早期実用化の両立をめざし、5つの世代を設定したロードマップを策定し、取組みを進めています。これまでに、光と電気の変換を行う光インターフェースの機能を小型化した通信用モジュール(COSA)を実用化してきましたが、今回新たに、従来は個別の部品であったCOSAとデジタル信号処理を行うDSP(Digital Signal Processor)を一体化する光・電子コパッケージ(CoPKG)技術を開発しました。これにより、光インターフェースの更なる小型化や低消費電力化が可能となります。
光電融合デバイス研究開発ロードマップ
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-APNの具現化に向けては、1波長あたり100Gbpsを超える大容量、低遅延性、遅延ゆらぎゼロの特徴を持つ光伝送パスを、ユーザ要望に応じて多地点間で動的に提供可能とする実証環境を構築しました。また、分散したコンピュータデバイスを光で接続するディスアグリゲーティッドコンピューティングにおいては、新たなコンピュータアーキテクチャ(メモリセントリックアーキテクチャ)を考案、試作開発しました。その効果を検証した結果、従来方式と比較して約2分の1程度の低消費電力化の見込みを得ました。
-街全体をリアルタイム・精緻に把握する4Dデジタル基盤®を用い、様々な未来予測とデジタルツイン間の連鎖により、街の全体最適化を行う街づくりDTC®を活用した取組みの一つとして、短期間データからの快適性予測を可能とするフィードフォワード型のAI空調制御技術を確立し、省エネと快適環境の両立の有効性を実証しました。加えて、自分自身のデジタルツイン“Another Me”の実現に向けて、京都大学との共創によりSelf as We の自己観に基づいて自分自身とAnother Meも包含した“わたし”の哲学的な再定義を行い、発表しました。
-2020年1月に設立したIOWN Global Forumには、IOWNがめざす世界、及びそのイノベーションに賛同した世界の主要なICT企業が参加しており、そのメンバー数は93社にまで成長しました(2022年3月時点)。2021年4月に第1回Annual Member Meetingを開催し、400名を超えるメンバーが参加しました。また、2021年10月には、ユースケースドキュメントとして、2文書を制定・公開、加えて、2022年1月には、技術ドキュメントとして、6文書を制定・公開しました。
○ IOWN構想の実現に向けた協業の推進
-富士通株式会社と持続可能な未来型デジタル社会の実現を目的とした戦略的業務提携に合意しました。この提携を通じて創出されるイノベーションにより、IOWN構想に賛同する幅広いパートナーとグローバルかつオープンに連携し、低エネルギーで高効率な新しいデジタル社会の実現をめざします。
-株式会社ACCESSとIOWN構想の実現を目的とした提携に合意しました。IOWN時代の新たなユーザインタフェース及びユーザエクスペリエンスの研究開発を推進するとともに、株式会社ACCESSの100%子会社であるIP Infusionの体制を活用し、開発したソフトウェア製品をグローバル市場で販売していく体制の整備を進めます。
-株式会社スカパーJSATホールディングスと持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携に合意しました。成層圏を飛行する高高度プラットフォーム、宇宙空間の低軌道・静止軌道まで複数の軌道を統合、それらと地上を光無線通信ネットワークで結び、分散コンピューティングによって様々なデータ処理を高速化、また、地上のモバイル端末へのアクセス手段を提供し、超カバレッジを実現する宇宙統合コンピューティング・ネットワークの構築に挑戦します。
宇宙統合コンピューティング・ネットワーク
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○ 環境問題の解決等安心安全な社会の実現に向けた研究開発
-高出力レーザの照射によってアスベスト(石綿)を繊維形状から球形状に変形できる技術を開発しました。本技術を用いることで、アスベストを無害な球形状へ変形するとともに、飛散する粉塵量を抑制できるため、アスベスト粉塵の吸引による作業者の健康リスクを大幅に低減することが可能となります。
-日本電気株式会社と共同で、情報通信インフラを構成する通信機器及びシステムの構成やリスクをサプライチェーン全体で共有し、セキュリティに関する透明性を確保することによりセキュリティリスクの抜本的な低減を図る、セキュリティトランスペアレンシー確保技術を開発しました。
○ 最先端の研究開発の推進
-IOWN構想の実現とその先を見据えた当社の研究開発の推進を目的に、各分野の著名な権威者である研究者で構成されたNTT R&Dオーソリティチームを結成するとともに、長期的視野に立った研究開発を一層強化するため、オーソリティチームの一員である若山正人 数学研究プリンシパルが統括する基礎数学研究センタを新設しました。
-大規模な冷凍・真空装置を要する等、実用化に向け小型化が大きな課題となっていた量子コンピュータについて、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、ラックサイズの大規模光量子コンピュータ実現の基幹技術である光ファイバ結合型量子光源(スクィーズド光源)を開発しました。
これらの研究開発活動に取り組んだ結果、当事業年度において当社が要した費用の総額は1,206億円(前期比15.7%増)となり、その対価として、基盤的研究開発収入1,220億円(前期比19.0%増)を得ました。
当連結会計年度における各セグメントの研究開発の概要は、次のとおりです。
セグメントの名称金額
(百万円)
摘 要
総合ICT事業138,387通信事業の競争力強化に向けた移動・固定が融合した高品質かつ経済的な高機能ネットワーク、及びスマートライフ事業の拡大をめざしたサービスやデバイスの分野におけるイノベーション創出、さらにソリューション事業領域拡大に向け、ソフトウェア開発力強化によるデータドリブン・ESG経営を支える研究開発等
地域通信事業83,297IP・ブロードバンド化の進展、ユーザニーズの多様化に対応するアクセスサービスの拡充及び付加価値の高いサービスの研究開発等
グローバル・ソリューション事業25,202グローバル・ソリューション、システムインテグレーションの競争力強化に向けた技術開発等
その他
(不動産、エネルギー等)
126,016ICT社会の発展を支える高度なネットワークと新サービスを実現する基盤技術や、環境負荷低減に貢献する技術、通信・情報分野に大きな技術革新をもたらす新原理・新部品・新素材技術に関する研究開発等
小計372,902
セグメント間取引消去124,914
合計247,988

上表の研究開発費用は、基礎的・基盤的研究から実用化研究開発までに係る費用を示しています。
当社が開発した技術のビジネス展開にあたっては、サービス・製品化を図る必要がありますが、このサービス開発に関する設備投資・費用※は1,778億円であり、研究開発費用との合計については、4,258億円となっております。
※ サービス開発・機能追加に必要となる固定資産(ハードウェア、ソフトウェア等)への投資額や、サービス開発に要した人件費、委託費等が含まれています。