有価証券報告書-第37期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/27 15:00
【資料】
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【項目】
133項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1)経営方針
○ NTTグループのビジョンとめざすべき企業像
NTTグループは、「Your Value Partner」として、事業活動を通じてパートナーの皆さまとともに社会的課題の解決をめざすというビジョンを掲げています。
公共性と企業性を有する企業として、研究開発やICT基盤、人材等、様々な経営資源や能力をフル活用し、パートナーの皆さまとコラボレーションしながらデジタルトランスフォーメーション(DX)とCSRの推進により社会的な課題を解決していきます。
ビジョンを実現していくうえでめざすべき企業像として、NTTグループは人材(People)を中核に据え、求められる能力を、サービス能力、技術能力、インテリジェンスとしています。また、Shared Values(共有価値)は、私たちのDNAであるConnect(つなぐ)、Trust(信頼)、Integrity(誠実)としています。約90の国と地域で働く30万人の社員と、こうしたビジョン・企業像をもとに、未来への夢を共有していきます。
お客さま、株主、地域、コミュニティ、社員等、あらゆるステークホルダーにとって価値ある存在として、オープン、グローバル、イノベーティブな新たなNTTへの自己変革を加速させ、選ばれ続ける「Your Value Partner」をめざしていきます。
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(2)経営環境
当事業年度における情報通信市場では、クラウドサービスや5Gサービスの拡大に加え、IoT、ビッグデータ、AI等の技術の急速な進展により、デジタル化への取組みが加速することに伴い、サービスの利用を通じて蓄積されたデータを分析・活用(データマネジメント)することで、人々の生活における利便性向上や、ビジネスにおける新たなモデル創出や生産性向上等、より良い方向への変革を実現するデジタルトランスフォーメーションが世界的に進みつつあります。一方で、高度化・複雑化するサイバー攻撃に対する情報セキュリティ強化、災害対策への取組み強化や環境保護への貢献に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえた社会生活の変容に対応した分散型ネットワーク社会への移行も求められています。
こうした様々な社会的課題を解決するうえでも、情報通信の役割はますます重要になっています。
(3)対処すべき課題
○ NTTグループ中期経営戦略に基づく事業展開
新型コロナウイルス感染症拡大等により、世界の分断が加速しており、リモート・分散型社会が拡大しています。これらにより、デジタル化やデジタルトランスフォーメーションが進展する一方で、監視社会等のデジタル化の負の側面が課題となっています。また、経済安全保障の重要性の増大や世界規模での自然災害の巨大化等、環境が大きく変化しています。
このような環境変化に対応するために、2018年11月に発表したNTTグループ中期経営戦略を見直し、2021年10月にNTTグループの変革の方向性を新たに定めました。社会・経済の方向性に合わせ、分散型ネットワーク社会に対応した新たな経営スタイル、国内/グローバル事業の強化、ESGへの取組みによる企業価値の向上という3つの変革を通じて、サステナブルな社会実現への貢献をめざします。
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新たな経営スタイルへの変革
業務変革やデジタルトランスフォーメーション、制度見直しや環境の整備を進めていくことにより、リモートワークを推進し、ワークインライフ(健康経営)の推進や、オープン、グローバル、イノベーティブな業務運営を実現していきます。コンダクトリスク等を考慮したガバナンスの充実については、ステークホルダーとの適切な関係構築、サービス等ライフサイクルの的確な管理、危機管理能力の向上等の対策を実行していきます。
また、自らの変革を進めることで、お客さまのデジタルトランスフォーメーション支援、地域創生の促進、レジリエンスの向上、分散型社会への貢献等につなげていきます。
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国内/グローバル事業の強化
新生ドコモグループの成長・強化、IOWN※開発・導入計画の推進、グローバル事業の競争力強化、B2B2Xモデル推進、新規事業の強化に取り組んでいきます。
当社は、2020年12月にNTTドコモの競争力強化・成長並びにNTTグループ全体の成長に向けNTTドコモを完全子会社化しました。NTTドコモは2022年1月に子会社化したNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアの機能統合を進め、新ドコモグループ中期戦略として掲げる7つの取組み(法人事業の拡大、スマートライフ事業の拡大、通信事業の強化、国際事業の強化、ITの強化、R&Dの強化、ESGの推進)を通じて、更なる成長に挑戦していきます。
また、2022年5月、NTTグループにおけるグローバル事業の強化に向けた再編を公表しました。NTTデータとNTT Ltd.で行ってきたビジネスユーザ向け海外事業をNTTデータ傘下に集約し、両社がより一体となって事業運営を行います。また、NTTデータの持つコンサルティング、アプリケーション開発等のケイパビリティと、NTT Ltd.が得意とするデータセンター、ネットワーク、マネージドサービス等の高付加価値サービスを組み合わせ、お客さまにトータルで新たな価値を提供するとともに、長期的には当社のIOWN技術を活用した革新的なサービスをグローバルで展開していきます。さらに、NTTグループの海外事業に関する人材を結集することで、海外各地域における事業特性やお客さま特性等に合わせた迅速な意思決定を実現し、グローバルガバナンスを強化していきます。
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※IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)の詳細については、「第2 事業の状況 5 研究開発活動」をご参照ください。

企業価値の向上
新たな環境エネルギービジョンに基づく環境負荷削減に向けた取組み、災害対策、株主還元の充実を進めます。
新たな環境エネルギービジョンとしてNTT Green Innovation toward 2040を掲げ、事業活動による環境負荷の削減と限界打破のイノベーション創出を通じて、環境負荷ゼロと経済成長といった背反する目的の同時実現をめざします。2030年度にはNTTグループ全体で温室効果ガス排出量を2013年度比80%削減し、モバイル(NTTドコモ)、データセンターは先駆けてカーボンニュートラルを実現します。2040年度にはNTTグループ全体でカーボンニュートラルを実現します(対象はScope1+2)。
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○ 中期財務目標
中期経営戦略の見直し(2021年10月公表)にあわせ、財務目標についても見直しを行いました。
メインの財務指標であるEPS(1株当たり当期利益)は従来目標の2023年度約320円から+50円の上方修正となる2023年度370円をめざします。新生ドコモグループのシナジー効果(2023年度に1,000億円の増益)やデジタルトランスフォーメーションの更なる推進を通じたコスト削減(2023年度に2,000億円以上)等により、利益成長を中心にEPS目標の達成に取り組んでいきます。コスト削減目標は2017年度からの累計削減額を従来の2023年度8,000億円以上から1兆円以上としました。
このほか、2023年度の財務目標である海外営業利益率7%やROIC(投下資本利益率)8%は、引き続き従来設定した目標の達成をめざし、様々な取組みを進めていきます。
中期財務目標(目標年度は2023年度)
指標新目標
(2021年10月公表)
従来目標(参考)
2022年度計画
EPS(1株当たり当期利益)370円約320円340円
海外営業利益率※17%7%7.0%
コスト削減※2
(固定/移動アクセス系)
▲1兆円以上▲8,000億円以上▲9,300億円
ROIC(投下資本利益率)8%8%7.6%

※1 集計範囲は、中期計画設定時にNTT, Inc.に帰属していた子会社(NTTデータ海外事業、NTT Ltd.、NTTコミュニケーションズ海外事業等)
海外営業利益率は、買収に伴う無形資産の償却費等、一時的なコストを除いて算定
※2 2017年度からの累計削減額
(4)NTTグループのサステナビリティへの取組み
サステナビリティを巡る課題への対応が重要な経営課題であるとの認識のもと、サステナビリティ委員会を取締役会直下の機関として任意に設置し、重要な課題・指標の決定については、取締役会で決議することで、その取組みの更なる推進を図っています。サステナビリティの推進体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。
サステナビリティへの取組みに関する概要は以下のとおりです。
○ サステナビリティ憲章の制定
2021年11月、これまでのCSR憲章を見直し、グローバル水準のNTTグループサステナビリティ憲章を制定しました。新たにSelf as We(“われわれ”としての“わたし”※)という考えを基本理念に据え、①自然(地球)との共生、②文化(集団・社会~国)の共栄、③Well-beingの最大化という3つのテーマに関する様々な取組みを進めることで、企業としての成長と社会課題の解決を同時実現し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
※“わたし”は“われわれ(人・モノ・テクノロジーを含めたあらゆる存在)”の中で多様な人・モノ・テクノロジーというつながりの中で支えられている、という考え方
≪サステナビリティ憲章に基づく取組みの概要≫
3つのテーマに対して、9つのチャレンジ、30のアクティビティを設定しています。
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