有価証券報告書-第35期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 15:01
【資料】
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【項目】
87項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
(1)経営方針
NTTグループは、100年以上の永きにわたりわが国の電気通信の発展を支えてきた自信・実績と世界をリードする研究開発力を基盤として「これからも安心・安全なサービスを提供し続け、いつまでも皆さまに信頼される企業としてお役に立ち続ける」ために、激しい競争環境の中でそれぞれの事業において求められる法の責務や社会的な使命を果たしながら、多様化し、増大するICTのニーズに応えられるよう積極的に事業を展開し、お客さまや株主の皆さまから常に高い信頼を得て持続的な発展をめざしてまいります。
この経営の基本方針の下、NTTグループは、中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、「Your Value Partner」としてパートナーの皆さまとともに、社会的課題の解決をめざす取り組みを推進してまいります。
(2)経営環境
地球規模の人口増加と都市化の進展がますます加速し、環境問題が深刻化していくとともに、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大も起こり、私たちの社会や経済に与える影響がますます不透明な状況になっています。一方、国際連合で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のもと、持続可能な社会の実現に向けた動きも世界中で活発化しています。
このような社会情勢のもと、情報通信市場では、新たなプレイヤーを含めた熾烈な競争も進む中、5G・仮想化・AI等の最新技術を活用した新たなサービスが発展し、デジタルトランスフォーメーションを通じたスマートな社会が実現していくと見込まれます。その際、新たな価値創造や社会的課題の解決に向けて、従来の事業領域の垣根を越えた様々なプレイヤーとの協創・連携が進み、情報通信に求められる役割もますます拡大すると考えられます。
(3)対処すべき課題
《中期経営戦略に基づく事業展開》
NTTグループは、中期経営戦略「Your Value Partner 2025」に基づき、パートナーの皆さまとともに、事業活動を通じた社会的課題の解決に取り組んでまいります。
これからも引き続き以下の取り組みの推進による企業価値の向上に努めてまいります。
○ お客さまのデジタルトランスフォーメーションをサポート
スマートな社会の実現に向け、デジタルサービスやデータマネジメントを活用したB2B2Xモデルを推進し、プロジェクト数を拡大させます。また、5Gサービスの展開については、幅広いパートナーとともに、5Gの特徴を活かした高臨場、インタラクティブ(双方向)なサービスによる新しい価値を創出します。さらに、NTTドコモの「ギガホ」「ギガライト」の提供による顧客基盤の強化や、dポイントクラブ会員向けのサービスによる収益機会の創出等を通じ、お客さま一人ひとりに合わせたきめ細やかなパーソナルソリューションを実現し、お客さまのライフスタイルの変革をサポートします。
○ 自らのデジタルトランスフォーメーションを推進
お客さまのデジタル化を推進する統合ソリューションと、最先端技術を活用した革新的な取り組みを掛け合わせ相乗効果を高めるとともに、NTTグループのグローバル人材・ブランディングとあわせて、One NTTとしてグローバルビジネスの競争力強化と成長を加速させます。具体的には、NTT Ltd.を中心に、マネージドサービス等の高付加価値サービスを中核とするビジネスへの転換や、NTTブランドの更なるグローバル展開に向けた取り組みを推進します。
国内事業については、主要各社に設置しているCDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)を中心に、デジタル化施策を推進します。自らの業務プロセスについて、AIやRPA(Robotic Process Automation)等を活用し、デジタル化することで効率化を図るとともに、社外の協力会社も含めた業務プロセスにおいて、人手を介さないスマートなオペレーションを実現します。また、グループ経営の高度化に向けて、統一ERP(Enterprise Resources Planning)を導入し、共通的な業務を統合していきます。
○ 人・技術・資産の活用
NTTグループが持つ不動産やICT・エネルギー・環境技術等を最大限活用し、NTTアーバンソリューションズ株式会社を中心に、従来の不動産開発にとどまらない新たな街づくり事業を推進します。また、新たなエネルギーソリューションを迅速に提供するため、NTTアノードエナジー株式会社は、サービス開発・提供・運用リソースの最適化等を進め、ICTを活用したスマートエネルギー事業を推進します。
さらに、地域密着の営業体制、最新技術、設備・拠点といった経営資源を活かし、自治体等、様々なパートナーとのコラボレーションを通じて、行政・生活サービスの充実、地場産業の活性化を支援します。
また、災害対策においては設備の強靭化、復旧の迅速化等に取り組み、安心・安全なICT基盤の確保に引き続き注力します。
○ ESG経営の推進、株主還元の充実による企業価値の向上
ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を通じて社会的課題を解決し、持続的な企業価値の向上をめざします。ESG経営の観点で特に優先度の高いマテリアリティ(重要課題)として「環境負荷の低減」「セキュリティの強化」「多様な人材の活用」「災害対策の強化」「持続的成長に向けたガバナンス強化」を設定し、事業機会を拡大するとともに、事業リスクを最小化することに努めます。
環境については、研究開発による限界打破のイノベーションの創出、及び事業における環境負荷低減への取り組みにより、お客さま・企業・社会の環境負荷低減に貢献することで、環境負荷ゼロをめざします。具体的には、宇宙環境エネルギー研究所を新設するとともに、圧倒的な低消費電力をめざしIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の研究開発を進めます。また、自らのグリーン電力化の推進として、再生可能エネルギーの活用を2030年度までに30%以上とする目標をめざすほか、TCFDへの賛同、グリーンボンドの発行等、環境エネルギーへの取り組みの充実を図ります。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進については、2012年度時点の国内の女性管理者比率2.9%を、2020年度までに6%へ倍増させることに取り組んでいましたが、2019年度に1年前倒しで達成しました。今後は、新たな目標として2025年度までに女性管理者比率10%以上をめざします。引き続き、働きやすい環境を整備していくことでイノベーションを創出し、社会課題の解決に貢献していきます。
そのほか、ネットワークの高い安定性と信頼性の確保に向けて、日々のネットワーク運用のノウハウ蓄積等を通じて、一層の安心・安全なサービス提供に努めます。
持続的成長にむけたガバナンス強化の一環として、2020年3月に、執行役員制度を導入する方針を決定し、公表しました。取締役会が担う経営に関する決定・監督の機能と、執行役員が担う業務執行の機能を明確に分離する体制を整え、コーポレート・ガバナンスをより強化するとともに、経営の機動力の向上を図っていきます。
配当については継続的な増配の実施を基本的な考えとし、自己株式の取得についても機動的に実施することで、資本効率の向上を図ります。
《基盤的研究開発等の推進》
ネットワーク基盤技術、新たなサービスやアプリケーションの基盤となる技術、先端及び基礎的な技術の調和を図りながら、より付加価値の高い研究開発を推進するとともに、IOWN Global Forumをはじめとして国内外において、他研究機関・パートナー企業等と連携したイノベーションや技術交流、普及・標準化活動等に引き続き積極的に努めます。