有価証券報告書-第88期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/26 15:24
【資料】
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【項目】
166項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
藤田観光グループでは、「健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております」を社是とし、これに基づいて具体的な指針となる経営指針および行動指針を定めております。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、中長期的な経営基盤の強化と持続的成長を図るため、2020年から2024年までの「中期経営計画」を策定し、主要戦略に基づき、目標達成に向け準備を進めてまいりました。
しかしながら、2019年末に発生した新型コロナウィルス感染症拡大の影響は、2020年度単年度の業績にとどまらず、会社存立に重大な影響を及ぼす水準にまで達し、債務超過も危ぶまれるほど当社の経営は逼迫いたしました。また、当社事業の脆弱さ・構造的な課題が顕在化するなど、これまで不十分であった取組みや先送りしていた課題が浮き彫りとなりました。 現下の厳しい経営環境は、外的要因によるものだけではなく、当社の風土等の内部要因にも起因しているものであると強く認識しております。
スタートしたばかりの「中期経営計画」については、事業構造等に関する課題認識は変わらないものの、策定時に前提としていた条件や事業環境が大きく変化したことから主要戦略を見直すこととし、再建に向けた「事業計画」を新たに策定いたしました。 積年の課題と正面から向き合い、長期にわたり従業員の痛みを伴う「自己変革と挑戦」となりますが、必ず会社を再建するという「志」を胸に全従業員一丸となって本事業計画を推し進めてまいります。
●事業計画(2021~2025)の主要戦略と骨子
主要戦略骨子
Ⅰ.構造改革の推進足元の止血を最優先に、コスト削減、不採算事業対策、賃金、雇用に対する対策、人事制度改革等、事業構造の再構築を推進
Ⅱ.事業ポートフォリオの見直し・短期的には、with/afterコロナにおける、マーケティング・ブランディング強化を推進
・中長期的には、自社保有資産の活用・再開発、WHG事業のビジネスモデル変革等の成長戦略を推進
Ⅲ.経営管理体制の強化外部環境の変化に耐えうる経営基盤を構築


●事業計画の概要 Ⅰ.構造改革の推進①労務費改革:早期希望退職、役員報酬カット、給与・賞与カット、社外出向等以下の人件費削減策を実施します。
主要戦略骨子
早期希望退職対象:40歳以上且つ勤続10年以上の社員等
役員報酬カット、給与・賞与カット・役員は業績報酬の不支給に加え25%~55%カット
・従業員は賞与不支給、給与減額で合計13%~31%カット
その他雇用調整新規採用の無期限停止、社外出向、ヘルプ体制の強化

②コスト改革:客室清掃・警備・食器洗浄等の外注業務の内製化、新規出店の見直し、賃料減額交渉等を実施します。③不採算事業所対応:営業縮小、コスト対策を実施してもなお赤字継続が見込まれる事業については、可及的速やかに撤退します。④人事制度改革:従業員のモチベーション向上と良い人材の確保を目的に、育成・評価等の見直しを含めた新人事制度を導入します。
Ⅱ.事業ポートフォリオの見直し①短期・足元対策:マーケティング・ブランディングの強化、デジタルマーケティングの確立など、基盤整備を実施します。②中長期・抜本対策:商品力・事業競争力の強化を目的とした、自社保有の「ホテル椿山荘東京」と「箱根小涌園」への大型投資と、既存WHGホテルにおける収益性向上を目的としたビジネスモデルの再構築を行います。
Ⅲ.経営管理体制の強化①戦略・プロセスの明確化とモニタリング強化:より迅速に課題を把握し、対策立案と意思決定を行うため、モニタリングの仕組みを再構築するなど管理体制を強化します。②新規事業開発時の対応強化:事業形態・契約形態等の見直しにより、赤字リスク最小化と収益最大化を図ります。
Ⅳ.数値計画①事業計画:数値計画
事業計画の中核である「事業構造改革」を中心に、すでに会社再建に向けた各施策を推進しておりますが、1月7日に政府より発出された緊急事態宣言およびその延長により、現時点においては、需要回復の時期が見通せず、事業計画初年度である2021年度の業績予想を合理的に試算することが困難であるため、数値目標については、緊急事態宣言の解除後を目途に公表することを検討しております。
②必要資本の調達および成長戦略
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響による財務状況の悪化をふまえ、毀損した資本を早期に増強し、財務状況の改善および経営基盤の強化を行うことが喫緊の課題であると認識し、様々な資金調達・資本増強の方法について検討を進めてまいりました。資金調達においては、昨年4月に手元資金を厚くすることを目的に、金融機関より緊急的な追加借入を実施いたしました。資本増強につきましては、様々な方法を検討いたしましたが、Go Toトラベルキャンペーンの一時停止や緊急事態宣言の発出等、更なる事業環境の悪化を受け、今後の業績回復の目途が不透明であることなどから、十分な調達額が見込めず、調達を断念いたしました。このような状況の中、当社グループ存続のための選択肢として事業用資産も含めた保有資産の売却を検討せざるを得ない状態となり、その結果、2021年2月12日開示の「固定資産の譲渡及び特別利益の計上に関するお知らせ」のとおり、「太閤園」の土地・建物を売却し、営業を終了することといたしました。
この売却により、約329億円の特別利益の発生が見込まれ、2021年12月期第1四半期決算において計上する予定です。なお、2021年3月31日の引き渡しを予定しておりますが、「太閤園」は2021年6月30日まで営業を継続いたします。
売却によって得た資金・資本については、新型コロナウイルス感染症の影響が収束するまでの運転資金、および本事業計画における早期希望退職等の構造改革策を推進する費用、ならびに今後の「ホテル椿山荘東京」「箱根小涌園」への投資やWHG事業の構造改革など、成長のための原資とすることを予定しております。
Ⅴ.セグメント別戦略①WHG事業 販売力の強化と競合ホテルとの差別化が優先課題であり、より一歩踏み込んだコストの見直しと併せて、以下の取り組みを中心に進めてまいります。
主要戦略主な取り組み
1.付加価値の向上<商品造成・営業強化による顧客獲得・単価向上>高付加価値商品造成、デジタルマーケティング・ブランディング、イールドマネジメント(*)強化等
2.コスト優位性の確立<業務内容や事業運営の抜本的見直しによるコスト削減>本部・販管業務の集約、現場業務の合理化および内製化、要員配置の見直し、不採算事業対策等
3.ビジネスモデルの見直しローコストオペレーションの横展開、出店形態の見直し

(*)需要予測に応じて販売価格・量をコントロールする手法
②ラグジュアリー&バンケット事業 コロナ禍以前より、収益力低下が課題であった「ホテル椿山荘東京」を再建するため、以下の取り組みを中心に進めてまいります。
主要戦略主な取り組み
1.椿山荘ブランド再生<ホテルの付加価値向上、婚礼の品質改善>庭園プロモーション等への取組み、料理・サービス・付帯商品の品質向上等による婚礼ブランド再構築
2.組織の活性化(運営体制改編)<余剰人員の有効活用、業務の内製化>組織を横断した働き方の実現、外部委託業務内製化の更なる進化
3.資産活用策<ブライダル需要の減退に対応した資産の有効活用>低稼働の宴会場や客室等の有効活用策について検討

③リゾート事業 変化する顧客ニーズへ対応し、箱根再開発と併せ以下の取り組みを中心に進めてまいります。
主要戦略主な取り組み
1.資産活用策(再開発)<広範な顧客層を取り込むための再開発>「箱根ホテル小涌園」「箱根小涌園ユネッサン」の再開発、新たなスキームの検討
2.顧客への訴求力強化<マーケティング活動の強化と提供価値の向上>販売チャネル、近隣とのタイアップ、顧客体験の強化
3.コスト構造改革間接部門のスリム化、マルチタスク化によるコスト構造の見直し

④本社・その他・共通事項
全社共通事項として、販管部門のスリム化、現場運営体制の見直しを行い、生産性を向上します。当該セグメントにおいても、本社のスリム化、所管事業の不採算対策を実施します。
コロナ禍の影響を受け、危機的状況となった会社の再建に向け、不退転の決意をもって事業構造改革に取り組むとともに、持続的成長が可能な事業ポートフォリオの見直しにも着実に取り組んでまいります。