有価証券報告書-第56期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/27 14:19
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度(平成28年4月1日~平成29年3月31日)の日本経済は、個人消費には足踏みがみられるものの、各種政策の効果などにより、企業収益や雇用情勢が改善するなど、緩やかな回復基調で推移しました。一方、中国をはじめとする新興国の経済、英国のEU離脱、米国の経済・金融政策の動向などによる不確実性や、金融市場の変動の影響など、留意が必要な状況が続きました。
このような状況の中で、「安全・安心・快適・便利」に対する社会的ニーズはますます多様化・高度化しており、当社グループは、“いつでも、どこでも、誰もが安全・安心に暮らせる社会”を実現する「社会システム産業」の構築を目指し、セキュリティサービス事業をはじめ、防災事業、メディカルサービス事業、保険事業、地理情報サービス事業、情報通信事業および不動産・その他の事業で、お客様のニーズに合致した、質の高いサービス・商品を提供することに努めました。また、更なる成長に向けて、各事業のサービスがそれぞれ自立しつつも、相互の連携を更に深め、より一層の相乗効果を生み出すことを目的に、“ALL SECOM”(セコムグループ総力の結集)を継続的に推進しました。さらに、今後の日本の社会を見据えて、「セキュリティ」をベースに「超高齢社会」、「災害・BCP(事業継続計画)・環境」といったキーワードを切り口として、“ALL SECOM”により新たなサービスを創出する取り組みを推進しました。
平成28年9月には、G7伊勢志摩サミットの警備でその有効性が実証された高精度な3D立体画像を警備計画に利用する「セコム3Dセキュリティプランニング」の本格販売を開始しました。また、平成28年12月には、当社グループの「安全・安心」に関わる幅広いサービスメニューの強みを生かし、リストバンド型ウェアラブル端末を用いた健康管理・救急対応サービス「セコム・マイドクターウォッチ」を平成29年夏から提供開始することを発表しました。
この結果、当連結会計年度における連結売上高は9,280億円(前期比5.3%増加)となり、営業利益は1,310億円(前期比1.9%増加)となりました。経常利益は営業外収益として米国などにおける投資事業組合運用益144億円(前連結会計年度は11億円)を計上したことなどにより、1,470億円(前期比9.1%増加)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は841億円(前期比9.3%増加)となりました。なお、売上高、営業利益、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益はいずれも過去最高を達成することができました。
事業別にみますと、セキュリティサービス事業では、事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)を中心に、常駐警備や現金護送のサービスを提供するとともに、安全商品を販売しております。当連結会計年度も、お客様のニーズを的確に把握し、最適なサービスを提供することにより、お客様の満足度向上とリレーション強化につなげ、長期にわたりお客様に「安全・安心・快適・便利」を提供することに努めました。
事業所向けでは、当連結会計年度も高度な画像認識技術を搭載した「セコムAX」、出入管理機能によって労務管理などを効率化しお客様のコスト削減を可能にする「セコムLX」、設備制御機能を持つ「セコムFX」など、付加価値の高いオンライン・セキュリティシステムの拡販に努めました。また当連結会計年度は、大規模イベント向けのサービスやシステムを拡充し、「安全・安心」なイベント開催・運営を支援しました。警備計画立案においては、「セコム3Dセキュリティプランニング」を活用して、最適な警備計画の立案をサポートし、また、警備実施においては、セコムの常駐警備員とイベント会場を上空から見守る「セコム気球」と地上の「仮設監視カメラ」、「ウェアラブルカメラ」、「セコム・ドローン検知システム」など、最新のセキュリティシステムが連携する「立体セキュリティ」により、「安全・安心」なイベント運営に貢献しました。
家庭向けでは、ご家庭の「安全・安心・快適・便利」なサービスへの高いニーズが続いており、当連結会計年度もホームセキュリティに生活に身近なサービスを提供する機能を付加した「セコム・ホームセキュリティ G-カスタム」の拡販に努めました。また、スマートフォンアプリで「セコム・ホームセキュリティ」の操作が行えるセコム公式アプリ「セコム・ホームセキュリティアプリ」の配信を開始しました。加えて、大手総合通信会社より平成29年1月に発売された新しいジュニア向けスマートフォンに、GPSと携帯電話基地局を使った位置検索と、セコムの緊急対処員による現場急行サービスを組み合わせた「ココセコム」サービスの提供を開始しました。
海外では、経済発展が続く東南アジアや中国を中心に、緊急対処サービスを特徴とする「セコム方式」のセキュリティサービスの拡販に努めました。また、海外進出する日本企業への提案活動の強化を図りました。その他、英国におけるサービス体制の拡充を図るために、英国子会社のセコムPLCが、北アイルランドに拠点を有するスキャンアラーム Ltd.の株式100%を取得しました。
当連結会計年度は事業所向け・家庭向けのセントラライズドシステム(オンライン・セキュリティシステム)や、出入管理システムなどの安全商品の販売が好調だったことおよび平成27年12月より連結子会社となった株式会社アサヒセキュリティの寄与もあり、売上高は5,342億円(前期比8.4%増加)となり、営業利益は1,135億円(前期比1.3%増加)となりました。
防災事業では、オフィスビル、プラント、トンネル、文化財、船舶、住宅といったさまざまな施設に対し、お客様のご要望に応えた高品質な自動火災報知設備や消火設備等の各種防災システムを提供しております。当連結会計年度も、国内防災業界大手2社である能美防災株式会社およびニッタン株式会社が、それぞれの営業基盤や商品開発力などを活かした防災システムの受注に努めました。
当連結会計年度は積極的な営業活動に努めましたが、前連結会計年度に大型案件の計上があったため、売上高は1,262億円(前期比4.2%減少)となり、営業利益は131億円(前期比5.2%減少)となりました。
メディカルサービス事業では、訪問看護サービスや薬剤提供サービス等の在宅医療サービスを中心として、シニアレジデンスの運営、電子カルテの提供、医療機器・医薬品等の販売、介護サービス、医療機関向け不動産賃貸等さまざまなメディカルサービスを提供しております。
当連結会計年度は医薬品などの販売が好調に推移したことおよびインドにおける総合病院事業会社タクシャシーラ ホスピタルズ オペレーティング Pvt.Ltd.が新たに連結子会社となったことなどにより、売上高は668億円(前期比4.4%増加)となりましたが、営業利益は原価率の上昇などにより、46億円(前期比10.0%減少)となりました。
保険事業では、当連結会計年度もセキュリティシステム導入によるリスク軽減を保険料に反映した事業所向けの「火災保険セキュリティ割引」や家庭総合保険「セコム安心マイホーム保険」、ガン治療費の実額を補償する「自由診療保険メディコム」、セコムの緊急対処員が要請に応じて事故現場に急行するサービスを付帯した自動車総合保険「セコム安心マイカー保険」等、当社グループならではの保険の販売を推進しました。
当連結会計年度はセコム損害保険株式会社のガン保険「自由診療保険メディコム」の販売が順調に推移したことなどにより、売上高は419億円(前期比4.4%増加)となり、営業利益は21億円(前期比16.0%増加)となりました。
地理情報サービス事業では、航空機や車両、人工衛星などを利用した測量や計測で地理情報を集積し、加工・処理・解析した空間情報サービスを、国および地方自治体などの公共機関や民間企業、さらには新興国や発展途上国を含めた諸外国政府機関に提供しております。当連結会計年度も国内外の社会インフラ整備や維持管理、リスク・災害対策など、多様化・高度化したニーズに空間情報技術で応えることに注力しました。
当連結会計年度は海外部門の減収により、売上高は516億円(前期比1.8%減少)となりましたが、営業利益は原価率が改善したこと、販売費及び一般管理費の減少などにより、12億円(前期比47.4%増加)となりました。
情報通信事業では、データセンターを中核に、セコムならではのBCP(事業継続計画)支援や情報セキュリティ、クラウドサービスを提供しております。当連結会計年度は、複雑・巧妙化するサイバー攻撃への抜本的な安全対策として、1台のPCで「業務環境」と「インターネット環境」を分離する「セコム・プレミアムネット・リモートブラウザ」を販売開始しました。
当連結会計年度は前連結会計年度より販売開始した「セコムあんしんマイナンバーサービス」の寄与などにより、売上高は498億円(前期比2.8%増加)となり、営業利益はデータセンターの運営費用の減少などにより、69億円(前期比34.0%増加)となりました。
不動産・その他の事業には、防犯・防災対策を充実させたマンションの開発・販売、不動産賃貸および建築設備工事などが含まれます。
当連結会計年度は不動産開発・販売事業が増収となったことなどにより、売上高は573億円(前期比12.0%増加)となり、営業利益は52億円(前期比5.5%増加)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の状況は、以下のとおりであります。
前連結会計年度
(百万円)
当連結会計年度
(百万円)
増減
(百万円)
営業活動によるキャッシュ・フロー136,734171,12134,386
投資活動によるキャッシュ・フロー△129,247△ 42,96486,282
財務活動によるキャッシュ・フロー△ 26,849△ 55,942△ 29,092
現金及び現金同等物に係る換算差額△ 805△ 979△ 174
現金及び現金同等物の増減額△ 20,16871,23491,402
現金及び現金同等物の期首残高241,716221,760△ 19,956
新規連結に伴う現金及び現金同等物の増加額212△ 212
現金及び現金同等物の期末残高221,760292,99471,234

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、全体で1,711億円の資金の増加(前連結会計年度は1,367億円の資金の増加)となりました。主な資金の増加要因は、税金等調整前当期純利益1,418億円、減価償却費556億円であります。また、主な資金の減少要因は、法人税等の支払額400億円であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、全体で429億円の資金の減少(前連結会計年度は1,292億円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、警報機器及び設備等の有形固定資産の取得による支出460億円、投資有価証券の取得による支出317億円であります。また、主な資金の増加要因は、投資有価証券の売却及び償還による収入432億円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、全体で559億円の資金の減少(前連結会計年度は268億円の資金の減少)となりました。主な資金の減少要因は、配当金の支払額305億円、短期借入金の減少額127億円、長期借入金の返済による支出65億円であります。また、主な資金の増加要因は、長期借入れによる収入31億円であります。
これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ712億円増加して2,929億円となりました。