有価証券報告書-第33期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/29 14:10
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
Our Vision: A world safe for exchanging digital information.
私たちのビジョン:デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現
インターネットを中心とするITインフラは、個人及び企業また国を問わず、情報化社会における世界的ライフラインとなって久しくなりました。
今日、ネットワーク上の脅威として挙げられるコンピュータウイルス、スパイウェア、迷惑メール、Webサイトの改ざん、情報漏洩等の多くは、事前にそれを予測し、絶対的な対策を立てられるような性質のものではありません。情報詐取、金銭的利益、破壊行為などの目的で、標的に特化した様々な手を用いて執拗に特定の組織を狙う標的型攻撃の増加においては企業や公共団体、国家機関がその攻撃対象となる他、個人においてもスマートフォンやタブレットなどの多機能携帯端末やSNSをはじめとする新しいIT技術やサービスの普及に伴いそれらも攻撃対象となっており、セキュリティ対策は、もはや企業や個人にとって必須となりました。
当社グループは普及しつつあるクラウドコンピューティングやIT技術によってビジネスや生活の質を高めていくデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流に乗って加速度的に拡大する世界的ITインフラを守るという大きな責務に対し、標的型攻撃をはじめとする一連のサイバー攻撃を防ぐソリューション、そして万が一、被害にあった場合は損害の最小化、システムの復旧等、攻撃遭遇時に経験し得る一連の作業を強力にサポートする製品やサービスを、国境を超えて迅速に提供していきます。個々の企業や個人をネットワーク上の脅威から守るだけでなく、経済活動の遮断やユーザに負荷をかけることなくネットワークシステム全体の安全性を高めることにより、情報化社会のさらなる発展に寄与していきたいと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社は現在、Pre-GAAP(繰延収益考慮前売上高)ベースの営業利益“額”成長を、重要な経営指標として意識しております。かつて営業利益“率”を経営指標としていた時期もございましたが、過度に利益率に固執することにより、相対的に利益率の低いビジネスの除外や中長期のプロジェクトへの投資を避けること等による機会損失に繋がるリスクを意識するようになりました。
当社のビジネス構造は基本的に資本集約的ではありません。従い、新たな追加資本投資を伴わなければ相対的に利益率の低いビジネスを獲得することの不合理は特段生じず、当該ビジネスが赤字でない限り、結果としてROE(株主資本利益率)の向上に繋がるものと考えております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
今日、ITインフラは、どのような人にも、そしてありとあらゆる場面において使われており、我々の社会や生活の根幹となっています。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなどの多機能携帯端末他、IoT並びにAIと呼ばれる人工知能を活用する技術のもと、スマート家電やスマートカーも誕生し、インターネットに繋がる様々なデジタルデバイスやアプリケーション、ユーザの使用目的が多様化したことで、すべての環境に適する単一なセキュリティソリューションはもはや存在しなくなりました。ネットワーク環境におきましても、クラウドコンピューティングが、ビッグデータへのアクセスやデータ解析をより簡単、速く、手頃なものにし、デジタルトランスフォーメーション(DX)の躍進からも益々デジタル情報の交換の仕方に変革を起こしていくことが予想されます。上記のようなIT技術の進化の流れは、企業や個人に関わらず、行き交う情報量を爆発的に増大させると共に、従来のように予防だけでなく侵入を前提としたセキュリティ対策の需要も生み出しており、便利さと引き換えに情報セキュリティの重要性は今後も益々増大します。
このような背景を受け、当社グループではセキュリティプラットフォーム「Trend Micro Vision One™」を展開し、メール、エンドポイント、サーバ、クラウドワークロード、ネットワークといった複数レイヤの各種SaaS型ソリューションを連携させ、同プラットフォームに含まれる高度なXDR(Extended Detection & Response)機能により脅威情報を組み合わせて分析し、攻撃の全体像をシンプルに可視化、さらに迅速で適切な対応まで自動化が可能になる統合ソリューションを提供してまいります。
幅広くセキュリティ製品及びサービスを展開している当社グループだからこそ可能となる各種SaaS型ソリューションを連携させ、複数レイヤからの広く深い様々なアクティビティデータの蓄積、脅威インテリジェンスによるセキュリティ分析、攻撃の全体像を可視化して迅速で適切な対応を可能にすることで、従来のような各端末の防御や、ネットワーク環境下を各領域に分けた境界線によって守る境界防御対策だけではなく、侵入後の対策も含む幅広いソリューションを展開し、今後より一層デジタル化が進むビジネスや社会、そしてユーザの生活を守るために、企業と個人といった垣根なく安心できるセキュリティソリューションを一層強化して「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界」というビジョンを実現して参ります。
(4)会社の対処すべき課題
当社グループが属するサイバーセキュリティ業界は、既存セキュリティベンダの他、他業種からのM&Aや新規参入なども国内外問わず多く、競争が活発となっております。当社グループにとってこのような業界再編や新しい競合企業の市場参入は流動的で今後の展開が読みにくく、市場競争を更に熾烈なものにすることと予想されます。あわせてIoT時代を迎えたことにより、膨大かつ重要なデータ及びインフラの安全確保や、AI技術の進化への対応、更に多岐に渡るセキュリティ製品群を適切に運用するためのマネージドセキュリティサービスなど、今後益々「環境」や「ユーザ行動」の変化を捉えた適切な対策が求められます。
一方、お客様環境においては、IT技術によってビジネスや生活の質を高めていくデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流に加え、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが急速に一般化した環境下、効率化や迅速性に優れたクラウドの活用が益々拡大しております。お客様のITインフラのセキュリティ担当者は、以前はパソコンとサーバを監視しておけばセキュリティ対策ができたといえましたが、今日ではそれらに加えてIoT端末、クラウド、仮想プライベートネットワーク(VPN)など複雑な複数レイヤでのセキュリティ対策が日々求められ、その負荷はますます高まっています。
お客様が選択する各種ソフトウェアについても、ソフトウェアを「購入」する形態からクラウドを介してサービスとして「利用」するSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)と呼ばれる形態への移行が進んでおります。セキュリティサービス市場においてもSaaS型のソリューションが今後更に求められる環境に移行しつつあり、これらは当社グループの従来製品及びサービスの単純な置き換えに留まりません。
当社グループは、オンラインネットワークへの依存度がますます高まり広範囲のセキュリティ対策が日々求められるお客様の問題解決のために、迅速に優れたセキュリティ対策を提供すべく、セキュリティプラットフォーム「Trend Micro Vision One™」を中心に、幅広くセキュリティ製品及びサービスを提供しております。お客様のITインフラのセキュリティ担当者は、当社の各種SaaS型ソリューションを導入し、「Trend Micro Vision One™」で一元管理することにより、高度なセキュリティと運用負荷軽減が両立できるようになります。
当社グループはセキュリティプラットフォーム「Trend Micro Vision One™」を中心に、より付加価値の高いセキュリティソリューションをお客様に提供すると共に、安定的な財務基盤を維持しつつ継続的な成長を目指していきたいと考えております。