有価証券報告書-第64期(令和3年7月1日-令和4年6月30日)

【提出】
2022/09/09 15:12
【資料】
PDFをみる
【項目】
120項目

対処すべき課題

(1)経営の基本方針
当社は、社会とともに目指す未来像・方向性としてソート(Thought)「Innovating for a Wise Future」を掲げております。これは、「工学知」をベースにした有益な技術を社会に普及させることで、より賢慮にみちた未来社会を創出していきたいという思いを込めております。
また、「大学、研究機関と実業界をブリッジする」という創業以来の経営理念に加えて、世界で最も価値のある最新の技術を探索、発見し、当社ならではの付加価値を加え顧客に提供いたします。組織形態としては、「Professional Design & Engineering Firm」として、技術の探求に加えて社会や顧客のニーズを見極めるマーケティング活動を行いながら、ステークホルダーとともに将来に向けた新たな価値を創造し、サステナブルな成長を目指して参ります。
(2)経営施策の実践
当社が目指すサステナブルな成長のために、エンジニアリングコンサルティング事業とプロダクツサービス事業の双方において、引き続き高いレベルでの品質保証に取り組んで参ります。更に、新たなビジネス形態・提供サービスの品質保証についても検討を進めて参ります。
事業活動におきましては、既存ビジネスにおいてこれまで培った技術に加えて、顧客密着型営業により顧客価値を高めることで着実な利益性の確保を図りながら、社内発の新規ビジネスの立ち上げ・更なる成長に向けた積極的なマーケティング活動に取り組んで参ります。特に新規ビジネスの立ち上げにおいては、オープンイノベーションの実践として、大学、研究機関との長期的な関係の維持、発展を継続しつつも、海外パートナーの立ち上がりつつあるサービスを日本に導入しております。具体的には、Twilio Inc.、NavVis GmbH、LockState, Inc.、Vitracom GmbH、Inferics GmbH等の海外スタートアップ企業のサービスを導入いたしました。海外のパートナーにとどまらず、プログレス・ソリューション社、AKRD社等の国内のパートナーと協業を行うとともに、次世代事業開発部による社内事業開発を進めて参ります。このように当社とWin-Winの関係構築が出来る企業と共に、オープンイノベーションを推進します。
また、21世紀を代表する知識集約型企業を目指す構造計画研究所の場の整備として、新卒者及びキャリア採用活動の強化、若手所員の待遇の改善による優秀な人才の確保、評価の仕組みの充実及び外部マネージャー研修や専門分野の探究支援に取り組み、やり甲斐感のある職場風土の醸成に努めます。
(3)知識集約型企業としての行動指針
当社は、知識集約型企業としての行動指針・方針として、以下の点を重視しております。
① 自律・自立と機動性
公開企業としてのガバナンスを尊重しつつも、フラットで意思決定が早い組織の維持に努めます。社内外を繋げることで生まれるオープンイノベーションを推進するためにも、自由闊達な知の探索を奨励します。
② 独立性
信頼されるパートナーとして安心して業務を任せて頂けるように、業務の透明性を確保し、全ての顧客と対等なパートナーシップ構築による良好な関係を築いて参ります。さまざまな企業の業務の経験知を蓄積し、知識集約型企業に相応しい価値提供を目指します。
③ 多様性と透明性
国籍や性別にとらわれることなく、若手には研鑽の機会があり、経験者にはプロジェクト運営についての自由度が与えられ、その結果として、顧客満足度の高い成果が提供出来る企業風土を維持します。また、単に特定の年齢で立場や処遇を決定することなく、若手からシニアメンバーまでそれぞれの所員が持つ豊富な経験知を評価しております。更に、組織としての目標を所員全員で共有し、その目標達成を目指します。また、技術力のみに秀でた人才だけでなく、営業力、マーケティング力、企画力などに秀でた多様な人才の参画により、多様な領域へとビジネスを拡大して参ります。
(4)目標とする経営指標
当社では、サステナブルな成長を実現していく上で、人才こそがその源泉であり、より優れた人才を確保し育成していくことが必要だと考えております。こうした考えから、利益の追求に加えて、成長の源泉である人才への還元も鑑み、営業利益に人件費と福利厚生費(フリンジベネフィット)を加えた指標を総付加価値と定義し、中長期的に5%~7%の年間成長を経営目標としております。
当事業年度末(第64期)の状況を踏まえて、翌事業年度(第65期)の年度計画における総付加価値額は94億10百万円と設定しております。また、期末のネット有利子負債については、今後も事業投資とのバランスを勘案しつつ適切な水準を維持していくとともに、自己資本比率の確実な改善、ROEの維持・向上、中長期保有株主に対する継続的かつ安定した配当も目標とします。
(5)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、品質管理を最重要事業リスクとして捉えるとともに、人才をサステナブルな成長の源泉と考えております。
品質管理の点では、納期・予算・質の面から第一級の顧客満足度の獲得を目指し各々のビジネスモデルに適した品質確保に取り組み続けております。人才の点では、個人の成長を促す機会の提供に加え、優秀な人才が参画し意欲的に働ける場作り行っております。
そして、中長期的な経営目標を達成するために、特に、事業ユニット部門の利益性向上・着実な成長、受注活動における量と質の確保、及び次のシーズ・案件創出の取り組みを今後の課題と考えております。
このような認識のもと、当社は以下の観点を踏まえた施策を積極的に推進して参ります。
① 付加価値向上と高い品質をベースとした既存事業の着実な推進
当社の事業においては、工学知の積み重ねやバラエティに富んだ解決策の提案による顧客への着実な付加価値提供及び、各プロジェクトにおける高い品質を目指す必要があると考えております。
まず、今後当社が安定的かつ継続的な成長を実現するために、対面分野における豊富な経験知や複数分野の工学知による多角的な視点に加え、顧客密着により得られる信頼関係に基づき、価値ある提案となるように注力して参ります。
事業の中核となるエンジニアリングコンサルティング事業においては、着実なプロジェクト推進に裏付けられた高い品質が必要不可欠です。過去の経験やこれまで積み上げてきた取り組みを振り返り、品質に妥協しない組織風土の醸成に引き続き全社で取り組んで参ります。
また、もう一つの柱であるプロダクツサービス事業においても、顧客からのフィードバックやエンジニアリングコンサルティング事業で得られた知見を、各プロダクトに還元することで、継続して品質の向上に取り組んで参ります。
今後は既存事業だけでなく、多岐にわたるビジネスの形態に応じた品質保証のあり方についても引き続き検討し全社的に取り組んで参ります。
② 中長期的な企業価値向上を目指した新たな事業の開発
世界情勢の変化やコロナウイルスの拡大、それによる生活様式の変化等、社会状況や顧客にとっての価値が急速に変化しております。このような状況において、中長期的な成長には新しい事業の開発が不可欠であり、そのためには当社の蓄積してきた様々な分野の知見を活用しつつ、最新の技術を把握することが重要であると考えております。このため、社内における活動にとどまらず、国内外の大学・企業・研究機関等のパートナーとの中長期的な関係構築と協業を通じて、最新の技術動向を踏まえた、新しいビジネスの立ち上げ・成長に取り組んでおります。近年では、各パートナーから得た知見を利用し、クラウド技術や最先端のデジタル化技術の導入等の新たな事業の展開に繋げて参りました。
また、新たな事業開発に向けては最新技術の把握だけでなく、顧客価値を創造できるような視点も重要になるため、今後はそのような視点も踏まえた人才の確保と育成に注力して参ります。
③ 今後のビジネスを担う優秀な人才の確保と育成
様々なバックグラウンドを持った人才が参画することにより、所員一人一人が価値観を広げ、多角的な視点を醸成できると考えております。少子化及び社会環境の変化に伴い厳しさを増す採用環境下においても、性別・年齢・国籍・専門分野を問わず、役割や成果に応じた報酬の提供、多様な働き方の制度設計と運用による働く場を整備することにより、引き続き優秀な人才の確保に努めて参ります。
また、現在及び将来のリーダー層の育成を目指し、社内外の組織と連携した様々な成長機会の創出に力を入れております。今後も優秀な人才が大いに活躍できるような場となるように、当社らしい取り組みを続けて参ります。