有価証券報告書-第19期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/30 9:39
【資料】
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【項目】
104項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、平成29年12月末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
①経営方針
当社グループは、「生命が長い時間をかけて獲得した遺伝子の力を借りて画期的な遺伝子医薬を開発・実用化し、人々の健康と希望にあふれた暮らしの実現に貢献する」ことを企業理念としています。
遺伝子の働きを利用して病気を治す遺伝子医薬は、従来の薬とは違う新しいタイプの医薬品であり、今までにない薬の効果が期待されます。当社グループは、大学や研究機関で生まれた研究成果を基に世界市場を対象とした遺伝子医薬の開発と実用化に取り組むことで、「遺伝子医薬のグローバルリーダー」を目指してまいります。
②利益配分に関する基本方針
当社グループの事業のステージは、現時点では創薬における先行投資の段階にあることから、利益配当は実施しておりません。
当社グループは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は、利益配当は実施せず、内部留保に努め、研究開発資金の確保を優先する方針です。しかしながら株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当も検討する所存です。
③投資単位の引き下げに関する方針
投資単位の引き下げは、個人株主増加や株式流動性向上のために望ましい施策であると考えております。このため、投資単位の引き下げについては、引き下げによる費用増加、当社株式の出来高、株主数、株主分布状況を考慮しながら、慎重に検討していきたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは研究開発型の創薬系バイオベンチャーであり、利益が本格的に拡大するのは、現在開発している新薬が上市され、提携先からロイヤリティの支払いを受ける時期になる予定です。したがって、現段階においては、提携先から契約一時金や開発協力金を受け取り財務リスクの低減を図りながら、研究開発を進め、早期の黒字化を目指しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
平成27年に、10年後の当社グループのあるべき姿を定めた「2025年ビジョン」を策定しました。世界で認知される遺伝子治療・核酸医薬のスペシャリストを意味する「遺伝子医薬のグローバルリーダー」となることがその柱です。これを実現するために、治療法のない病気に対する新薬を開発することで新市場を創出し、2025年における売上高として500億円以上という目標を掲げています。
具体的には以下のビジネスモデルに沿って事業を進めていきます。
当社グループは、設立以来、遺伝子医薬品の創薬技術・開発技術を活かした事業化を目指しております。遺伝子医薬品とは、HGF遺伝子治療薬に加えNF-κBデコイオリゴDNAなど核酸医薬品を含んだ総称です。遺伝子医薬の領域は、既存の製薬会社にとってノウハウが少なく、研究開発に取り組みにくい技術分野です。当社グループは、国内外の大学などで生まれた研究成果を積極的に導入し、遺伝子医薬を中心とした次世代バイオ医薬の開発と実用化を進めてまいります。
<当社グループの経営戦略>当社グループでは、以下のビジネスモデルに沿って事業を進めてまいります。

医薬品開発には一般に多額の資金と長い期間が必要とされ、しかも開発の成功確率の点で大きなリスクを伴います。最先端の技術を使い革新的な医薬品開発に挑戦している当社の場合には、特にこれが当てはまります。さらに販売面においても、マーケティング・販売機能を自社で構築するには多額の資金を必要とします。このため、経営資源の限られたベンチャー企業である当社グループは、当社医薬品の販売権を確保したい製薬企業と積極的に提携することで、提携先が持つ医薬品開発力・販売力を活用し、さらに提携先から契約金・マイルストーン及びロイヤリティを受け取ることで、開発・財務面でのリスクを低減することを目指しています。
なお当社グループは、事業が未だ先行投資の段階にあるため現時点では親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画です。
<一般的な新薬開発のプロセスと期間>
プロセス期間内容
基礎研究2~3年医薬品ターゲットの同定、候補物質の創製及び絞込み
前臨床試験3~5年実験動物を用いた有効性及び安全性の確認試験
臨床試験3~7年第Ⅰ相:少数の健康人を対象に、安全性及び薬物動態を確認する試験
第Ⅱ相:少数の患者を対象に、有効性及び安全性を確認する試験
第Ⅲ相:多数の患者を対象に、有効性及び安全性を最終的に確認する試験
申請・承認1~2年国(厚生労働省)による審査


<開発段階と収益構成><主な収益内容>
収益内容
契約一時金契約締結時に受ける収益
開発協力金研究開発に対する経済的援助として受け取る収益
マイルストーン研究開発の進捗(予め設定されたイベント達成)に応じて受け取る収益
ロイヤリティ製品上市後に販売額の一定比率を受け取る収益

(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しており、長期間の臨床試験と多額の先行投資を必要とします。実用化による収益を得るまでの間、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 資金調達の実施
当社グループにとって、研究開発推進のため継続的に資金調達を行うことが必要です。過去、株式上場以降も公募増資、第三者割当増資、新株予約権の発行などによって資金調達をしてまいりました。今後も、各プロジェクトの推進のために機動的な資金調達の可能性を適時検討してまいります。
② 継続企業の前提に関する重要な疑義の解消
医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、創薬ベンチャーである当社グループにおいては、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあります。そのため、一部のプロジェクトにおいては提携先を確保し、開発協力金等を得ることにより開発資金の低減に努めているほか、ムコ多糖症Ⅵ型治療薬「ナグラザイム®」の販売を行っておりますが、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。当社グループは、当連結会計年度末において現金及び預金11億47百万円(前連結会計年度末は9億95百万円)を有しているものの、すべてのプロジェクトを継続的に進めるための十分な資金が不足していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社グループは当該状況を解消すべく、以下の諸施策に取り組んでおります。
①選択と集中による開発対象の選別
②資金の調達
①に関しましては、当社グループの開発プロジェクトの選択を行い、開発の最終段階にあるプロジェクト及び早期に製薬企業等に導出することで一時金等の収入や研究開発費の負担削減が見込めるプロジェクトを中心に開発を行ってまいります。
②に関しましては、新規提携先確保による契約一時金等の調達及びエクイティファイナンスによる早期の資金調達等の施策を実行してまいります。
当社グループは、上記の各施策を確実に実行することによって、継続企業の前提に関する重要な疑義の解消を目指してまいります。
③ 開発プロジェクトにおける提携先の確保
一般的に、医薬品開発においては多額の資金と長い時間が必要とされ、また予定通りに開発が進捗するとは限らない等、開発上のリスクが存在いたします。このため、当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを回避しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
現在、重症虚血肢を対象疾患としたHGF遺伝子治療薬について、米国と日本を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しております。
今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。