有価証券報告書-第21期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/30 9:36
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
①経営方針
当社グループは、「生命が長い時間をかけて獲得した遺伝子の力を借りて画期的な遺伝子医薬を開発・実用化し、人々の健康と希望にあふれた暮らしの実現に貢献する」ことを企業理念としています。
遺伝子の働きを利用して病気を治す遺伝子医薬は、従来の薬とは違う新しいタイプの医薬品であり、今までに有効性を示す薬剤がなかった疾患への効果が期待されます。当社グループは、大学や研究機関で生まれた研究成果を基に世界市場を対象とした遺伝子医薬の開発と実用化に取り組むことで、「遺伝子医薬のグローバルリーダー」を目指してまいります。
②利益配分に関する基本方針
当社グループの事業のステージは、現時点では創薬における先行投資の段階にあることから、利益配当は実施しておりません。
当社グループは研究開発活動を継続的に実施していく必要があることから、当面は、利益配当は実施せず、内部留保に努め、研究開発資金の確保を優先する方針です。しかしながら株主への利益還元についても重要な経営課題と認識しており、将来、経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当も検討する所存です。
③投資単位の引き下げに関する方針
投資単位の引き下げは、個人株主増加や株式流動性向上のために望ましい施策であると考えております。このため、投資単位の引き下げについては、引き下げによる費用増加、当社株式の出来高、株主数、株主分布状況を考慮しながら、慎重に検討していきたいと考えております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは研究開発型の創薬系バイオベンチャーであり、利益が本格的に拡大するのは、現在開発している複数の新薬が上市され、提携先からロイヤリティの支払いを受ける時期になる予定です。したがって、現段階においては、提携先から契約一時金や開発協力金を受け取り財務リスクの低減を図りながら、研究開発を進め、早期の黒字化を目指しております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略(2025年に向けて)
・唯一の製品である「コラテジェン®」の価値最大化を図る。
具体的には安静時疼痛症、リンパ浮腫、強皮症などに適用できるかどうかを見極めてまいります。
・「コラテジェン®」に続く臨床開発中のNF-κBデコイオリゴDNAや高血圧DNAワクチン開発または導出を進め遺伝子治療・核酸医薬のパイプラインを充実させる。
・新たに投資したBarcode Diagnostics Ltd.(ビジネス対象:抗がん剤選択のための診断技術,以下 Barcode Diagnostics社といいます)、Emendo Biotherapeutics Inc.(ゲノム編集、以下 Emendo Biotherapeutics社といいます )、MyBiotics Pharma Ltd.(マイクロバイオーム-常在菌の培養、製剤化、以下 MyBiotics Pharma社といいます )の具体的なビジネスに向けた取り組みを行う。
10年後の当社グループのあるべき姿を定めた、世界で認知されるスペシャリストを意味する「遺伝子医薬のグローバルリーダー」となることがその柱です。これを実現するために、治療法のない病気に対する新薬を開発することで新市場を創出するという目標を掲げております。
具体的には以下のビジネスモデルに沿って事業を進めてまいります。
当社グループは、設立以来、遺伝子医薬品の創薬技術・開発技術を活かした事業化を目指しております。遺伝子医薬品とは、HGF遺伝子治療用製品に加えNF-κBデコイオリゴDNAなどの核酸医薬品を含んだ総称です。遺伝子医薬の領域は、既存の製薬会社にとってノウハウが少なく、研究開発に取り組みにくい技術分野です。当社グループは、国内外の大学などで生まれた研究成果を積極的に導入し、遺伝子医薬を中心とした開発と実用化を進めてまいります。

<当社グループの経営戦略>医薬品開発には一般に多額の資金と長い期間が必要とされ、しかも開発の成功確率の点で大きなリスクを伴います。最先端の技術を使い革新的な医薬品開発に挑戦している当社の場合には、特にこれが当てはまります。さらに販売面においても、マーケティング・販売機能を自社で構築するには多額の資金を必要とします。このため、経営資源の限られたベンチャー企業である当社グループは、当社医薬品の販売権を確保したい製薬企業と積極的に提携することで、提携先が持つ医薬品開発力・販売力を活用し、さらに提携先から契約金・マイルストーン及びロイヤリティを受け取ることで、開発・財務面でのリスクを低減することを目指しています。
なお当社グループは、事業が未だ先行投資の段階にあるため現時点では親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりますが、事業計画に沿って研究開発を着実に進め、将来、医薬品の販売から得られる収益によって損益を改善し、さらには利益を拡大する計画です。
<開発段階と収益構成>
<一般的な新薬開発のプロセスと期間>
プロセス期間内容
基礎研究2~3年医薬品ターゲットの同定、候補物質の創製及び絞込み
前臨床試験3~5年実験動物を用いた有効性及び安全性の確認試験
臨床試験3~7年第Ⅰ相:少数の健康人を対象に、安全性及び薬物動態を確認する試験
第Ⅱ相:少数の患者を対象に、有効性及び安全性を確認する試験
第Ⅲ相:多数の患者を対象に、有効性及び安全性を最終的に確認する試験
申請・承認1~2年国(厚生労働省)による審査

(4) 会社の対処すべき課題
当社グループは、創薬系バイオベンチャーとして、次世代のバイオ医薬品である遺伝子医薬(DNAプラスミド製剤、核酸医薬)や治療ワクチンなどの医薬品開発と製造販売の事業を推進しております。
一方で医薬品事業は、製品化までに多額の資金と長い時間を要する等の特性があり、当社グループは継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、すべての開発投資を補うに足る収益は生じておりません。そのため、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
このような環境のもと、当社グループは継続的な発展のため、下記を重要な課題として取り組んでおります。
① 自社既存プロジェクトの推進と事業基盤の拡大
当社グループでは、2019年3月に国内初の遺伝子治療用製品「コラテジェン®」の条件及び期限付承認を厚生労働省から取得し、9月から販売を開始いたしました。今後は国内での同製品の適用拡大のための臨床試験及び米国での慢性動脈閉塞症を対象とした臨床試験を進めてまいります。また、現在海外で臨床試験を進めております椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンを含めた3プロジェクトを推進しております。これらのプロジェクトを確実に推進していくことが最優先課題であると考えております。
さらに、これらの既存プロジェクトに加え、ライセンス導入や共同開発、創薬プラットフォーム技術の獲得を目指した事業提携に加え、他社に対する一部資本参加や他社の買収等により開発品パイプラインの拡充による事業基盤の拡大を図り、将来の成長を実現してまいります。
② 開発プロジェクトにおける提携先の確保
当社グループでは、開発プロジェクトのリスクを低減するために、製薬会社と提携し、契約金・マイルストーンや開発協力金を受け取ることにより財務リスクを低減しながら開発を進めるという提携モデルを基本方針としております。
「コラテジェン®」については、米国と日本を対象とした独占的販売契約を田辺三菱製薬株式会社と締結しており、マイルストーン収入やロイヤリティ収入が見込めます。また椎間板性腰痛症向けの核酸医薬(NF-κBデコイオリゴDNA)、高血圧DNAワクチンにつきましては臨床試験を実施しており、良好な結果が得られましたら早期に製薬企業等に導出することで契約一時金等を得ることにより開発費の負担削減を目指してまいります。
今後も、製薬会社との提携を進めることにより、事業基盤の強化に努めてまいります。
③ 資金調達の実施開発
当社グループにとって、研究開発活動及び事業基盤の拡大を推進することは継続的な発展のために重要であり、そのためには状況に応じ機動的に資金調達を行うことが必要となります。2018年10月11日に発行した三田証券株式会社を割当先とする第33回新株予約権(第三者割当て)について2019年5月までに全数が行使され、当連結会計年度において77億18百万円(発行日からの累計で105億66百万円)を調達いたしました。また、2020年2月17日開催の取締役会において、第37回新株予約権(第三者割当て)(行使価額修正条項付)の発行を決議いたしました。今後も、研究開発活動推進及び企業維持のために必要となる資金調達の可能性を適宜検討してまいります。
これら諸施策の実施により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。