有価証券報告書-第20期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/30 16:30
【資料】
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【項目】
84項目

対処すべき課題

ここに記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、入手可能な情報に基づいて当社グループが判断したものです。
従来「その他エマージング事業群」に含めていた医療機関運営サポート事業等については、事業規模の拡大に伴い、当連結会計年度から「サイトソリューション」に報告セグメントの区分を変更しています。
なお、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメント区分に基づき作成したものを開示しています。
(1) 経営の基本方針
「インターネットを活用して、健康で楽しく長生きできる人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」―――それがエムスリーの願いであり、事業の目的です。社名のエムスリーは、医療(Medicine)、メディア(Media)、変容(Metamorphosis)の3つのMを表しています。インターネットというメディアの力を活かして、医療の世界を変えていくことが、当社の設立の志です。
上記の目的を実現する上で、当社グループでは主に4つのステークホルダーを意識して、経営を行っています。
・株主に対しては、企業価値の最大化で答えると同時に、当社グループへの投資が医療の改善に役立ち、社会的に意義があると感じてもらえるような経営を行います。
・顧客である医療従事者に対しては、インターネットという媒体を活用して、良質な医療情報をいち早く研究や臨床の現場に届け、医療の改善、変革に寄与することを目指します。また、同じく顧客である医療関連会社等に対しては、対価以上の価値に加えて、驚き、感動、喜びを感じてもらえるサービスを提供し続けることを目指します。
・従業員に対しては、個々人が成長、活躍できる場を整備し、会社の価値向上に貢献したスタッフには、厚く報いることができる経営を行います。
・社会に対しては、上記理念の通り「インターネットを活用して、健康で楽しく長生きできる人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」の実現を目指します。
(2) 目標とする経営指標
当社グループでは、企業価値を計る指標として、営業キャッシュ・フロー並びに1株当たり当期利益を重視しています。また、資本効率については、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)を重視しています。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
現在、当社グループの国内における事業は、医療従事者専門サイト「m3.com」の運営と、このサイトを通じて繋がる28万人以上の医師会員を含む、医療従事者会員へのアクセスを中核に展開しています。
「m3.com」は、「医師をはじめとする医療従事者が、『欲しい!』と思った情報に、最も迅速かつ的確にたどりつけるサイト」を目指し、専門医療情報に特化したニュース、サーチエンジン、ディレクトリ、文献検索、会員専用コミュニティサイト、独自コンテンツ等を会員に対して無料で提供しています。
メディカルプラットフォームにおいては、「m3.com」のプラットフォーム上で会員医師が主体的、継続的に高頻度で情報を受け取れる「MR君」ファミリーの各種サービスに加え、会員医療従事者を対象とした調査サービス、会員へ医療情報以外のライフサポート情報を提供する「QOL君」等の一般企業向けマーケティング支援サービス等、顧客の意図や用途により選べるサービスメニューを提供しています。さらに、次世代MR「メディカルマーケター」の提供、医療系広告代理店等の事業を、グループ各社を通じて展開しています。
エビデンスソリューションでは、治験に参加する施設・対象患者を発見する治験支援サービス「治験君」を核に、大規模臨床研究支援サービス、治験業務の支援を行うCRO、治験実施医療機関において治験業務全般の管理・運営を支援するSMO等の事業を、グループ各社を通じて提供しています。
キャリアソリューションでは、エムスリーキャリア株式会社において、医師、薬剤師向けの求人求職支援サービスの展開を進めています。
サイトソリューションでは、医療機関の運営をサポートする各種サービスを展開しています。
さらに、一般の方々からの健康や疾病に関する質問に「m3.com」会員医師が回答する「AskDoctors」(https:// www.AskDoctors.jp/)等のコンシューマ向けサービスや医療福祉系国家試験の対策等の事業を行う株式会社テコムに加え、LINE株式会社と設立したオンライン医療事業を目的とした持分法適用関連会社「LINEヘルスケア株式会社」においてもサービス展開を進めています。
海外においては、米国で、医療従事者向けウェブサイト「MDLinx」を運営し、この会員基盤を活かした製薬会社向けサービスの他、医師向けの転職支援サービスや治験支援サービスも展開しています。欧州では、英国で医師向けウェブサイト「Doctors.net.uk」において製薬会社向けサービスの展開を進める他、フランス、ドイツ、スペインでVidal Groupを通じて医薬品情報データベースの提供を行っています。中国では、医療従事者向けウェブサイトに登録する医師会員数は300万人を超え、順調に拡大しています。インドにおいても合弁事業を開始しています。2020年3月には米国において採用マーケティング事業を行うNAS Recruitment Innovationを子会社化し、さらにインドのManthan Software Services Pvt. Ltd.からグローバル医師向け市場調査事業を買収しています。
また、日本、米国、欧州、中国、韓国をはじめ、当社グループが世界中で運営する医療従事者向けウェブサイト及び医師パネルに登録する医師は合計で約600万人となっており、医師パネルを活用したグローバルな調査サービスの提供も行っています。
(4) 優先的に対処すべき課題
当社グループでは、次の4項目での成長、展開に重点を置いた経営を進めていきます。
① 「m3.com」サイトの一層の価値向上
サイトの内容、機能の充実を進め、より多くの医療従事者会員からの、より多くのトラフィックを獲得することで、この「場」を活かして提供する他の様々なサービスの価値を底上げしていきます。
② メディカルプラットフォーム事業の更なる成長
「MR君」ファミリーをはじめ、製薬会社等の顧客への各サービス展開に加え、疾病、医療課題を解決し、医療の全体最適の実現に向けて、経営資源を投入していきます。
③ 新規事業の立ち上げ
「双方向コミュニケーションで繋がった、医師をはじめとする医療従事者会員」のプラットフォームから生み出される事業機会は数多く、順次事業化を進めていきます。また、グループ各社の事業拡大とグループ内シナジー効果の最大化を図ります。
④ 海外展開
日本と同様に、海外においても医療従事者向けプラットフォームを活かした製薬会社向けマーケティング支援、調査、医師向け転職支援、治験事業等のサービスを展開しています。日本で開発したサービスの海外展開を進めることに加え、その国のニーズにあった独自サービスの開発も進めていきます。
なお、当社グループでは成長を具現化、促進する手段として、必要に応じて提携、買収、資本参加を進めていきます。
(新型コロナウイルス感染症拡大に伴う影響への対応)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な拡大による当社グループへの影響について、短期的にはエビデンスソリューションにおける一部治験の一時停止による需要の期ずれ、メディカルプラットフォームにおけるリハビリ施設の顧客数減少及びサイトソリューションにおける医療機関の経営環境変化による一時的な需要の消失等が見込まれますが、個々の事象は一時的なものでその影響は限定的と見込んでいます。一方で、主にメディカルプラットフォームにおいて、不可逆的な構造変化による国内外の医療従事者向けウェブサイトの活性化や製薬会社のオンラインシフトの加速など新たな需要の拡大が短期的にも中長期的にも見込まれます。これらに合わせて「MR君」ファミリーをはじめとする製薬会社向けマーケティング支援サービスの拡大等に注力してまいります。このように当社グループの事業及び業績に対して、短期的にはその影響は限定的であり、中長期的には事業機会の拡大の可能性があると想定しています。
また、当社では、社員の安全確保とともに徹底した衛生管理を呼びかけ、時差出勤・在宅勤務・情報収集等を実施し、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、企業活動の継続を維持してまいります。