有価証券報告書-第22期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

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2017/06/21 15:09
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな景気回復基調で推移しましたが、欧米の政治情勢に対する不透明感、人手不足による人件費上昇圧力の高まりなど、企業の業況判断に慎重さが見られました。その中で当社グループが属する業界では、ソフトウエアを含む企業の投資計画は、底堅く推移をしております。また、当社グループの顧客である中堅・中小企業の業況は、一部業種に足踏みが見られるものの、持ち直しの動きを示しております。
このような事業環境のもと、従来までは商材に関連付けられた部門別組織を採用しておりましたが、商材毎に販売担当者が存在し、さらに担当者各々の情報の連携が十分でないと考えたことから、当社は当期より、顧客にとって最適な体制へ移行し定期訪問による顧客との良好な関係を通じて、顧客目線に立ち、中小企業等のニーズに対応していくため、顧客にとって望ましい体制、仕組みである「カスタマー1st(ファースト)」を構築しております。
また当社は、中堅・中小企業のネットワークセキュリティ強化の需要が増加すると見込んでおり、中堅・中小企業向けのネットワーク構築の重要性が増している動向を踏まえて、中小企業向けネットワーク機器の保守サービス「GateCare(ゲートケア)」において、次世代ファイアウォール製品「Clavister(クラビスター)」を採用し、平成28年4月20日より提供を開始いたしました。ストック商材は、毎月安定した収益計上ができることに加え、顧客の囲い込みにもきわめて有効であると考えております。
一方で、平成28年4月28日に発表した「会社分割に関するお知らせ」に記載のとおり、株式会社エーティーワークス(富山県富山市 代表取締役社長:伊東孝悦 以下、エーティーワークス)に対して会社分割によるホスティング事業の承継を実施し、平成28年7月1日付で吸収分割の効力発生となりました。この譲渡によりホスティングサービスの開発及び運用をエーティーワークスへ移管し、当社の販売力の強化を進めてまいります。
また、平成28年6月29日に発表した「連結子会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、連結子会社である株式会社クロスチェック(東京都港区 代表取締役:木村育生 以下、クロスチェック)の第三者割当増資の実施及び同社の発行済株式を一部譲渡したことにより、持分法適用関連会社へと変更いたしました。クロスチェックは当社グループの事業領域であるIT分野の枠を超えて事業領域を拡大させており、当社グループ以外からの資本を受け入れ、財務基盤を強化し、同社の事業拡大を図る意向であります。
さらに、平成28年7月29日に発表した「ビーシーメディア株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」に記載のとおり、大阪府堺市を中心とする泉北地域の顧客をもつ同社の発行済株式の100%を取得し子会社化いたしました。加えて、平成29年1月31日に発表した「連結子会社株式の追加取得による完全子会社化に関するお知らせ」に記載のとおり、平成27年10月より連結子会社としている株式会社エヌオーエスについて追加株式取得を行い、完全子会社化いたしました。これにより、新規顧客の獲得、クロスセルによる取引拡大による既存ビジネスのスケールメリットの享受、また、子会社との人材交流を図り、既存・新規のお客さまとの取引商材・サービスの拡大を強化しております。
平成28年7月1日より、オムロンヘルスケア株式会社(京都府向日市 代表取締役:荻野勲)が提供する自動体外式除細動器『AED』の販売転貸を開始し、顧客視点に立脚した「カスタマー1st」体制における取扱商材として当社の顧客に対する安心、安全を通じた関係の強化及び新卒社員育成のひとつの商材として活用しております。
当社は、平成28年11月11日に、経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行するため自己株式の取得を決定し、平成29年2月28日までに、94,500株(発行済株式総数に対する割合0.92%)を取得いたしました。
他方、デジタルマーケティング関連事業においては、販売ターゲット層の変更により販売が低迷し、当初策定した計画に対して大幅に遅れる結果となった為、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき減損処理の判定を行ったところ、当社連結子会社のスターティアラボ株式会社が保有する固定資産について収益性の低下が認められたことから、減損処理を行うこととし、減損損失284,080千円を特別損失に計上いたしました。また、同社の繰延税金資産の回収可能性につきましても慎重に検討いたしました結果、22,806千円の繰延税金資産の取崩しを行いました。しかし、スターティアラボ株式会社は、引き続きデジタルマーケティング関連事業における重要な位置づけとしており、今後も持続的な成長を目指してまいります。
ITインフラ関連事業においては、「カスタマー1st」体制構築によるストック収益獲得に傾注したこともあり、フロー収益計画が未達となりました。
その結果、当連結会計年度における業績は、売上高10,282,411千円(前期比1.1%増)、営業利益265,390千円(前期比47.3%減)、経常利益285,619千円(前期比47.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益5,912千円(前期比97.7%減)となりました。
セグメント別の業績を示すと、次の通りであります。
なお、前連結会計年度において、セグメント情報におけるセグメント区分は、「ウェブソリューション関連事業」、「ネットワークソリューション関連事業」、「ビジネスソリューション関連事業」及び「その他事業」に区分しておりましたが、顧客第一の目線に立ち、顧客にとって望ましく、未来を見据えて安定的に利益を生みだせる体制、仕組みにするため、当連結会計年度より「デジタルマーケティング関連事業」、「ITインフラ関連事業」及び「その他事業」のセグメント区分に変更することといたしました。以下の前期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
<デジタルマーケティング関連事業>当連結会計年度におけるデジタルマーケティング関連事業は、以下の通りであります。
第1四半期連結会計期間より、今後の事業展開を踏まえ、報告セグメントを「ウェブソリューション関連事業」から「デジタルマーケティング関連事業」としてセグメントの名称変更を行いました。デジタルマーケティング関連事業におきましては、「ActiBook(アクティブック)」をはじめとする当社グループの複数の企業向けソフトウェアを定額で利用できるサービスとして、統合型デジタルマーケティングサービスである「Cloud Circus( クラウドサーカス)」の提供や、「ActiBook」や、「ActiBook AR COCOAR(アクティブックエーアールココアル)(以下、COCOARといいます。)」、「CMS Blue Monkey(シーエムエスブルーモンキー)」、「App Goose(アップグース)」や「Bow Now(バウナウ)」のパッケージ販売を行い、Webアプリケーションの企画、開発、販売に留まらず、Web制作やアクセスアップコンサルティング、システムの受託開発・カスタマイズといった顧客の売上増大や業務効率アップを目的としたWebアプリケーションに関するトータルソリューションを提供しております。企業は「Cloud Circus」により複数の企業向けソフトウェアを活用することで、ポスター等、紙媒体にAR(拡張現実)を設定しウェブサイトへの誘導を促し、ウェブサイトの閲覧履歴を計測、自社の製品やサービスに興味がある有望な顧客を割り出し、顧客の関心事に合ったシナリオに基づいて電子メールを送信するといった自動的な販売促進活動(マーケティングオートメーション)が可能となります。
また、O2O(オンライントゥオフライン)アプリを簡単に作成出来る「App Goose」は、店舗向けの集客支援アプリから、多種多様な業種の集客を支援するための機能拡充を行い、スマートフォンサイトが制作できるソフト「creca(クリカ)」は、インバウンドや海外へのプロモーションを視野に入れ、機能強化を行いました。そして、平成28 年10 月に動画事例を活用したマッチングサイト「MoviePrint(ムービープリント)」を発表しサービスを開始いたしました。
販売ターゲット層につきましては、第1四半期連結会計期間よりクリエイティブ企業をパートナーとし、一般企業に対しても導入を進めております。ARを利用したスマートフォンアプリが人気を博して以降、ARが販売促進に利用できるという一般企業の期待が高まり、ARが有する価値に対する理解が浸透したことによって、一般企業からの「COCOAR」に対する問い合わせが増加いたしました。また、「COCOAR」にスタンプラリー機能を実装し、リアルイベントや実店舗の集客ツールとして利用できるよう機能追加を行いました。引き続き販促・集客・情報配信ツールとしての新たな価値を提供してまいります。一方で、Webプロモーションに関する商材は新規顧客及び大型のWeb制作案件の獲得が進み、計画通りの受注を達成しており、これまで課題であった制作の効率化が機能し始め、生産性の向上が図れました。
しかしながら、アーリーアダプター層と呼ばれる新規性が強いサービスに対する投資意欲が旺盛な顧客に対する販売が一旦は落ち着き、一方アーリーマジョリティー層と呼ばれる顧客が、未だサービスに対する導入に対して慎重であり、当社サービスの費用対効果が認知されるまで足踏みしている状況でした。アーリーマジョリティー層への対応は、クリエイティブ企業とのパートナープランにより拡販を行っているものの、フロー売上の低迷により、クリエイティブ企業とのパートナープランが限定的な活動に留まりました。また、我々が期待している価格とアーリーマジョリティー層が求める価格に差が生じているため、計画していた収益獲得には至りませんでした。よって、当初策定した計画に対して大幅に遅れる結果となった為、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき減損処理の判定を行ったところ、当社連結子会社のスターティアラボ株式会社が保有する固定資産について収益性の低下が認められたことから、減損処理を行うこととし、減損損失284,080千円を特別損失に計上いたしました。また、同社の繰延税金資産の回収可能性につきましても慎重に検討いたしました結果、22,806千円の繰延税金資産の取崩しを行いました。しかし、スターティアラボ株式会社は引き続きデジタルマーケティング関連事業における重要な位置づけとしており、今後も持続的な成長を目指してまいります。
その結果、デジタルマーケティング関連事業の当連結会計年度における業績は、売上高1,802,566千円(前期比1.9%減)、セグメント損失(営業損失)2,319千円(前期はセグメント利益(営業利益)12,700千円)となりました。
当連結会計年度におけるITインフラ関連事業は、以下の通りであります。
ITインフラ関連事業は、前連結会計年度における「ビジネスソリューション関連事業」及び「ネットワークソリューション関連事業」を第1四半期連結会計期間より新たな事業体制の移行に伴い新組織・名称として統合変更いたしました。
ITインフラ関連事業におきましては、顧客目線に立ち、中小企業等のニーズに対応していくため、顧客にとって望ましい体制、仕組みである「カスタマー1st」を構築しております。
ITインフラ関連事業は、従業員50名以上の企業を中規模企業、従業員50名未満の企業を小規模企業と捉えてソリューション展開を行っております。業務効率化及びコスト削減のツールとしてITを積極的に利用する傾向が強まっていることで、中規模企業におきましては、特に情報システム部門の負担が高まっている状況を背景に、「ネットワークインフラの進化」と「担当者のITスキル」のギャップを埋めることが当社グループの果たす役割であると考えております。当社グループでは、メーカーや通信キャリアが提供する機器やサービスを、中小企業等向けに使いやすくカスタマイズして提供することで、『わかりやすい』『使いやすい』サービスを展開しております。その主な取り組みとしては、インターネットの脅威に対してのセキュリティソリューション及び企業インフラの効率化を実現するクラウドインテグレーションの2分野に注力しました。セキュリティソリューションについては、インターネットの脅威について、正しい知識の啓蒙活動を積極的に実施しており、顧客からの相談件数及び受注件数も堅調に推移していました。また、クラウドインテグレーションにおいては、「Amazon Web Service(AWS)」の構築及び運用の件数が増え、着実にノウハウが蓄積できている状況です。このクラウドインテグレーションの分野に関しては、インフラ領域にとどまらず、顧客の事業そのものの拡大に寄与できるようなソリューションの展開も進めていく方針です。
一方、小規模企業に対しては、地域密着のソリューション展開を行っております。小規模企業は、ITサービスが普及し、ITデバイスの選定に課題を抱えている企業が多く、「ワンストップ」かつ「迅速」にサービスを提供することが当社の役割であると考えております。第1四半期連結会計期間から、専任担当制の強い顧客基盤を築くため、商材知識の観点から従業員教育を行いました。最先端の技術・知識を学び、「face to face(フェイストゥーフェイス)」による顧客訪問を行い、販売するための知識ではなく、顧客をサポートするための知識の習得に努め、顧客案件化スキルの向上に注力しました。小規模企業に対しては、中長期的な関係を構築する礎となりました。
また、顧客に「ワンストップ」サポートを提供するために、技術サポートにおいても分かれていたフィールド組織をネットワークエンジニアとして統合して、組織の技術力を向上させ、顧客対応も効率良く行えるように連携をしております。その結果、広い商材知識と、尖った技術力を追求する技術部隊へと成長しております。また、月間3,000件のお問い合わせがあるコンタクトセンターは、複数商材の対応を正確かつ効率よく行うために、ナレッジシステムを活用し、放棄呼率は5%を大幅に下回っており継続して安定した受電ができております。またその上、応対品質向上のために通話録音から個人別の診断、教育を継続的に行っております。引き続き、「つながりやすく、お客様に寄り添えるコンタクトセンター」を目指してまいります。
当連結会計年度は、「カスタマー1st」構築のため、ストック収益獲得に傾注したことにより、フロー収益が計画に対して未達となりました。
その結果、ITインフラ関連事業の当連結会計年度における業績は、売上高8,479,844千円(前期比1.8%増)、セグメント利益(営業利益)308,471千円(前期比44.7%減)となりました。
<その他事業>当連結会計年度におけるその他事業は、以下の通りであります。
その他事業におきましては、コーポレートベンチャーキャピタル事業を行っております。
当該事業は、キャピタルゲインの獲得を目的としたベンチャー企業への投資事業を専門に行うためにコーポレートベンチャーキャピタル室(以下、CVC室)が推進しております。CVC室では、斬新なアイデアや革新的なテクノロジーによって新しいビジネスの開拓に挑むITベンチャー企業に出資をすると同時に、当社グループの顧客基盤やITソリューション力といった経営資源を活用することで、投資先企業の成長をサポートする事業を行っております。同時に、そうした投資先との資本を通した連携により当社グループ内にイノベーションを誘発し、新たな企業価値を生み出すことを目指しております。CVC室は活動の範囲を日本から東南アジアを中心とした海外に移し有望なITベンチャー企業を選定、投資し、その企業の成長をサポートしております。当連結会計年度において、THE ODDLE COMPANY Pte Ltd(シンガポール)、Qourier Pte Ltd(シンガポール)、Y&P Global Holdings Pte Ltd(シンガポール)に投資を行いました。
その結果、その他事業の当連結会計年度における売上高はなく、セグメント損失(営業損失)33,757千円(前期はセグメント損失(営業損失)66,942千円)となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は2,199,926千円(前期比16.0%減)となりました。
当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は以下の通りです。
① 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは155,252千円の収入となりました(前連結会計年度は366,738千円の収入)。その主な内容は、税金等調整前当期純利益182,329千円、減価償却費431,253千円、減損損失284,080千円及び法人税等の還付額59,319千円がありましたが、その一方で、売上債権の増加206,986千円、法人税等の支払額249,307千円、営業投資有価証券の増加156,883千円、持分変動損益101,414千円、未払消費税等の減少91,031千円があったことなどによるものであります。
② 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは165,631千円の支出となりました(前連結会計年度は762,919千円の支出)。その主な内容は、投資有価証券の売却による収入83,772千円、事業譲渡による収入70,000千円がありましたが、その一方で、固定資産の取得による支出216,108千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出59,106千円および連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による支出37,125千円があったことなどによるものであります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは403,352千円の支出となりました(前連結会計年度は705,957千円の収入)。その主な内容は、非支配株主からの払込みによる収入120,000千円がありましたが、その一方で、長期借入金の返済による支出348,629千円、配当金の支払額81,567千円、自己株式の取得による支出48,865千円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出43,350千円があったことなどによるものであります。