訂正有価証券報告書-第62期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
① ビジョン・ミッション・バリューズ
当社グループの経営理念として、基本理念、ビジョン(目指す世界観)、ミッション(果たす役割)、バリューズ(大切にする価値観)を掲げています。
これらを実現するため、当社グループが創業より大切にし活用してきたリボンモデルをビジネスモデルの基礎としています。リボンモデルとは、個人ユーザーと、企業クライアントのマッチング・プラットフォームを作り出し、より多くの最適なマッチングソリューションを提供することにより双方の満足を追求するビジネスモデルです。
現在は、テクノロジーとデータを活用することで、マッチングの更なる効率性向上と高速化に注力し、個人ユーザーに対して最適な選択肢を提供し、企業クライアントに対して更なる業務効率化を支援しています。
② 企業活動の重要な基盤
当社グループでは、ステークホルダーとのESGに関する対話や、取締役会や各委員会等における議論を踏まえて、持続的な企業価値の向上に向けてステークホルダーと共存共栄をする上で重要となる企業活動の基盤を特定しています。各テーマについては、取締役会の諮問機関である各委員会での審議を踏まえて取締役会にて進捗確認をすることで、取組みを推進しています。
当社グループの企業活動の重要基盤は、以下のとおりです。
コーポレート・ガバナンス
当社は、取締役 兼 常務執行役員 兼 COOを、ESG推進を含めたコーポレート・ガバナンスの責任者と位置づけ、指名委員会及び報酬委員会での審議を踏まえて、取締役会にて適切なコーポレート・ガバナンス体制や役員報酬のあり方を確認しています。
また、取締役構成員のダイバーシティ向上に向けて、2031年3月期までに当社の監査役を含む取締役会構成員の女性比率を約50%とする目標を定め、取組みを進めています(注1)。
加えて、ESGに関する取組みと役員報酬との接続をより強化するために、2023年3月期からは当社の業務執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めた温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)排出量削減と女性比率向上の達成如何を(注2)、2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注3)の一部に連動させることを取締役会において決定しています。
当社のコーポレート・ガバナンス方針及び役員報酬については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、取締役会構成員に関する目標については、本項目「(3)経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
人的資本
当社グループは、従業員の意欲を最大化することを改めて経営の重要テーマとし、特にダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)と従業員エンゲージメント、内発的動機を引き出す人材育成と環境作りに重点的に取組んでいます。
前提として、当社グループでは、企業活動において、階級、人種、肌の色、性別、言語、宗教、ジェンダー、年齢、政治的・その他の意見、国民的若しくは社会的出身、国籍、財産、性的指向、性自認、障がい、出生等を理由とした差別や人権侵害を行わないよう努め、すべての人々へ平等な機会を提供し、その人らしい生き方・働き方を尊重する「リクルートグループ人権方針」を定めています。
そして、当社グループでは、大切にする価値観(バリューズ)のひとつとして「個の尊重 - Bet on Passion」を掲げています。創業以来、多様な従業員一人ひとりの違いを大切にし、その好奇心から生まれるアイデアや情熱に投資することで新たな事業やサービスを生み出すことこそが、競合優位の源泉であると考えてきました。
DEIについては、特にグループ全体で共通のテーマであるジェンダーの多様性については、経営戦略の一環として当社グループ全体で目標を定め、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。あわせてジェンダー以外のDEIについても、国や地域、事業に応じて重要なテーマを定めて進めています。ジェンダーの多様性に関する目標の詳細は、本項目「(3) 経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
また、当社グループでは、従業員エンゲージメントを高めるために様々な取組みを行っています。例えば、当社及び主要子会社においては、従業員エンゲージメント・サーベイを実施しています。これにより、従業員エンゲージメントに向けた課題を理解し、組織風土改善等を進めています。
加えて、当社グループでは、人的資本及び知的財産への投資の一環として多様な個人の内発性動機を最大限に引き出す組織文化の醸成に継続的に取組み、事業をマネジメントしています。具体的には、当社及びメディア&ソリューションSBUの統括会社である㈱リクルートでは、従業員の可能性に期待し役割を定める「ミッショングレード制度」、個人の意志を起点としてスキル向上とミッション実現を接続する「Will - Can - Mustマネジメント」、従業員ひとり一人の育成方針を議論する「人材開発委員会」を軸として人材マネジメントを行っています。HRテクノロジーSBUのIndeedで運営する「Indeed大学」では、世界中のエンジニアが集まり、チームでアイデアを形にしていきます。この場を通じて、数多くの新たなサービスが生まれています。そして、人材派遣SBUでは「ユニット経営」と呼ばれる、現地の顧客ニーズに精通した各組織に権限移譲を行い、それぞれの深い知見に基づき柔軟に意思決定を行える経営手法を導入しています。この経営手法によって、現場の従業員は、成果に向けて高い意欲を持つことができると同時に、リーダーとしての意思決定力を高める機会を得ています。
当社グループにとって、価値創造サイクルの起点はひとり一人の従業員です。当社グループは引き続き、当社グループの人的資本を起点とした価値創造サイクルの強化に取組んでいきます。
当社グループの価値創造サイクル

企業倫理の徹底
当社グループでは、コンプライアンスを法令遵守の枠を越えて企業と個人が適正な行動を行うことで社会的な期待や要請に応えていくことであると位置づけ、事業活動の大前提としています。企業倫理の徹底のため、従業員教育等の施策、内部通報窓口の設置を行うとともに、コンプライアンス委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」「②内部統制システム整備の状況」をご参照ください。
データセキュリティ・データプライバシー対応
当社は、データセキュリティ・データプライバシー対応を当社グループのトップリスクと定め、保有するデータを重要性に応じて分類し、事業内容や国・地域ごとの法規制や保護すべき情報資産の特性に応じて必要な体制や施策を整備しています。また、リスクマネジメント委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。詳細は、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
人権の尊重
当社は、当社グループの役員と従業員、当社グループ会社の派遣サービスに登録している方々を直接の保護の対象と位置付けて「リクルートグループ人権方針」を掲げ、その中に急速なテクノロジーの発達によって影響を受ける人権の保護を含めています。人権方針は、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて決議しています。
地球環境の保全
当社は、すべての企業活動はあらゆる生命の生存基盤である地球環境が健全であってはじめて成り立つと考え、様々な活動を行っています。特に気候変動対策については重要テーマと位置づけ、当社グループ全体で温室効果ガス排出量のカーボンニュートラル達成に向けた目標を定め、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗管理と議論をしていきます。
気候変動に伴う当社グループのリスク及び機会については本項目「気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示」を、気候変動対策の詳細は「(3)経営戦略」「ProsperTogether - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
③ 気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示
当社では、地球環境の保全を、持続的な企業価値の向上に向けてステークホルダーと共存共栄をする上で重要な企業活動の基盤であると定めています。その上で、特に気候変動については、2031年3月期までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す目標を定め(注1)て、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出削減を進めています。短期目標として定めた当社グループの事業活動における温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルは、計画どおり2022年3月期に達成する見込みです(注1)。そして、2031年3月期までに目指す目標に向けては、国際的なフレームワークである地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5度未満に抑えることを目指す「1.5度目標」(注2)に沿った3カ年目標(注3)を定め、排出量削減に向けた取組みを加速しています。
あわせて、脱炭素社会に積極的に対応するためにガバナンスを強化し、気候変動が当社グループに与えるインパクトの評価や、リスク低減と成長機会の獲得に向けて取組みを進めています。その一環として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、そのフレームワーク(注4)に沿って、本項目にて気候変動への対策に関する情報開示を行っています。
ガバナンス
当社では、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会での審議を踏まえて、気候変動への対応に必要な体制整備を行い、その対応を取締役会において監督しています。サステナビリティ委員会では、気候変動に対する対応方針や戦略、及び計画について議論します。取締役会では、GHG排出量の削減目標に対する進捗とともに、気候変動関連リスクの低減と機会獲得への対策を含めた事業計画や投融資を確認、監督しています。
リスクの低減と機会の獲得は、サステナビリティ委員会に社内委員として参加する各SBU統括会社のCEOを兼務する当社執行役員が、各SBUにおける戦略を策定し、事業運営の中で実行していきます。
また、当社の気候変動への取組みは、サステナビリティ担当執行役員を責任者として進めています。当該責任者は、取締役会に対して、気候変動によるリスクや機会の評価、リスク低減と機会の獲得方法について報告します。また、当該責任者の配下にサステナビリティ所管部署を設置し、当社グループの環境関連情報の収集、GHG排出量削減の進捗管理、気候変動によるリスクや機会の識別及び評価、その対応方針の検討及び推進、ステークホルダーとの対話や関連調査を行います。
リスク管理
気候変動によるリスクは、当社グループ全体のリスクマネジメントプロセスに統合して評価し、リスクマネジメント委員会において、包括的且つ一元的に管理しています。気候変動に関する中長期的なリスクの議論はサステナビリティ委員会に委任し、リスクの低減策に関する具体的な議論を行います。その結果はリスクマネジメント委員会に連携され、取締役会に報告されます。
気候変動によるリスクと機会の管理体制(役割と会議体)

※サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント委員会の参加者及び開催回数については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「2022年3月31日時点の取締役会、監査役会、経営戦略会議、各委員会の構成」を参照ください。
戦略
(a)戦略の前提
当社グループでは、気候変動によって平均気温が4度上昇することは世界に大きな影響を及ぼすことを認識し、気温上昇を1.5度未満に抑制することが重要であると考えています。そこで、複数の気候変動シナリオ(4度と1.5度)に基づき、2031年3月期までの短期・中期・長期のリスクと機会を発生可能性と財務影響の観点で評価し、主要なリスクの低減及び機会の獲得に向けた対策を取締役会において確認しています。また、シナリオ分析においては、IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)(注1)や国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)等、国際機関及びそれに準ずる調査機関が発行するレポートを参照しています。
(注1) 共通社会経済経路(SSP: Shared Socioeconomic Pathways)5-8.5、SSP1-1.9に該当。
(b)気候変動による主要なリスクと機会
当社グループが、シナリオ分析を経て特定した主要なリスクとその発生可能性、財務影響は以下のとおりです。財務影響については、リスク項目毎に試算し、金額根拠の確度が比較的高いと考えられる炭素税のみ数値で示しています。
今回の分析を通じて、事業戦略に影響を及ぼす重大なリスクは特定されませんでした。今後も、前述のガバナンス体制の基で、世界動向を受けて気候変動が当社グループに及ぼす影響を注視し、継続的に評価の見直しと情報開示の充実を進めていきます。現時点では、当社が定める3つの経営戦略を推進することこそが、気候変動に対するレジリエンスを高め、主要リスクを低減すると考えています。
当社グループが、シナリオ分析を経て特定した主要な機会とその発生可能性、財務影響は以下のとおりです。
今回の分析を通じて、当社が定める3つの経営戦略を推進することこそが、気候変動による機会の獲得に繋がることを確認しました。今後も気候変動に関する社会やステークホルダーの動向を注視し、その変化を捉えて当社グループの機会としていくことで、労働市場のレジリエンスと持続可能性の向上に貢献したいと考えています。
指標、目標と実績
(a)指標
当社では、GHGプロトコルに則った温室効果ガス排出量(スコープ1, 2, 3の絶対量(注1,2))を、気候関連のリスクと機会を管理する指標に定めています。
(b)目標
当社は、「サステナビリティのコミットメント(2021年5月発表)」において、2022年3月期までに自らの事業活動におけるカーボンニュートラルを目指すこと(注1,3)、2031年3月期までにバリューチェーン全体におけるカーボンニュートラルを目指す目標を経営戦略として定めています(注2,3)。
また、当社の業務執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めたGHG排出量削減の達成如何を、2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注4)の一部に連動させることを取締役会において決定しています。(詳細は「②企業活動の重要な基盤」の「コーポレート・ガバナンス」をご覧ください。)
(c)実績
当社では、2020年3月期より、GHGプロトコルに則ったGHG排出量の算定を開始し、2021年3月期の事業活動を通じた排出量(スコープ1+2)は29,070t-CO2(前年比-30.3%)となりました(注5)。また、本GHG排出量については第三者保証(注6)を取得しています。また、短期目標である2022年3月期事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1及び2)のカーボンニュートラルは、計画どおり達成する見込みです(注1, 3)。
また、当社では、2010年に定めた、2021年3月期までに2009年3月期比で日本国内でのGHG排出量を25%削減する目標を、当連結会計年度末時点で62.4%削減と目標値を大きく上回る形で達成しています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、長期的な利益成長と企業価値及び株主価値の最大化に向け、新規事業投資や研究開発、M&A等の成長投資を機動的且つ積極的に実行していきます。そのための主な経営指標を調整後EBITDA及び調整後EPSと設定し、調整後EBITDAの成長率を役員の報酬に連動させることにより、株主の皆様との価値共有を促進しています。また、2023年3月期から、ESG目標の達成度を一部の役員の報酬に連動させることを決定しました。詳しくは、「(3)経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
当社は2023年3月期より、主な経営指標である調整後EBITDA及び調整後EPSの調整項目を変更します。
調整後EBITDAに関しては、グローバルで比較可能性の高い事業のキャッシュ・フロー創出力を示すために、調整項目に株式報酬費用を追加します。当社は、2021年1月以降、HRテクノロジーSBUにおいて当社の株式を用いた株式交付制度を導入しています。従来から実施している当社役員に対する株式報酬制度と合わせて、2022年3月期の株式報酬費用は324億円となりました。
2023年3月期以降の調整後EBITDAの計算式は以下のとおりです。
調整後EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く)+株式報酬費用 ±その他の営業収益・費用
あわせて調整後EPSに関しては、グローバルで比較可能性の高い恒常的な収益力を表す1株当たりの利益を示すため、企業結合に伴い生じた無形資産の償却額を計算式の分子である調整後当期利益の調整項目から削除します。当社は2018年3月期より、適用する会計基準を日本基準から国際会計基準に変更しています。よって、企業統合に伴い生じる無形資産のうち、重要な金額を占めるのれんは、規則的な償却ではなく、年一度以上の減損テストに基づいて減損の要否を判断し、のれんの減損が発生した場合は、非経常的な損失(下記計算式を参照)と判断しています。2023年3月期以降の調整後EPSの計算式は以下のとおりです。
調整後EPS = 調整後当期利益/((期首発行済株式総数+期末発行済株式総数)/2-(期首自己株式数+期末自己株式数)/2)
調整後当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±非経常的な損益(非支配持分帰属分を除く)±非経常的な損益(非支配持分帰属分を除く)の一部に係る税金相当額
非経常的な損益 = 子会社株式売却損益、事業統合関連費用、固定資産売却損益/除却損等、恒常的な収益力を表すために当社が非経常的であり利益指標において調整すべきであると判断した損益
2023年3月期は前年同期比較を可能にするため、2022年3月期の調整後EBITDA及び調整後EPSを新しい定義で算出した数値を開示します。
(3) 経営戦略
当社グループは、テクノロジーの進化等により急速に変化する事業環境に対応し、グローバル市場におけるニーズやビジネス機会をいち早く捉え、迅速な意思決定の下で、企業価値及び株主価値の最大化に取組んでいます。
HRテクノロジー事業、メディア&ソリューション事業の人材領域及び人材派遣事業が、グローバル人材マッチング市場において、メディア&ソリューション事業の販促領域が日本において、インターネット広告事業にとどまらず、テクノロジーを駆使して企業クライアントの業績向上及び生産性改善をサポートするソリューションプロバイダーに進化することを目指しています。
加えて、不確実性が高まる中で持続的な企業価値向上を目指すためには、健全なガバナンスの基で、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す必要があると考えています。そのため、ESG(環境・社会・ガバナンス)について具体的な目標を掲げ、社内外ステークホルダーとの対話を重視しながら、その実現に向けて取組んでいます。
① 当社グループ全体の経営戦略
当社グループ全体の経営戦略と対処すべき課題は、以下のとおりです。
Simplify Hiring - 人材マッチング市場における採用プロセスの効率化
当社は、求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場及び人材派遣市場の総称を人材マッチング市場と定義し、求職者がより速く且つ容易に仕事を得られることや、企業クライアントの採用に係るコストと時間を削減することを通じた人材マッチング市場における採用プロセスの効率化に取組んでいます。
3つの事業が、データ、自動化及びテクノロジーを活用しながら連携し、求職者と企業クライアントへの選択肢の提案の質とスピードを劇的に向上させることで採用プロセスを簡便化し、双方に更なる価値を提供することを目指しています。
長期的には、長年蓄積されたマッチングデータとAIや機械学習を通じて得られた求職者及び企業クライアントの採用に関する考え方といった情報を組み合わせることで、ボタンをクリックするだけで求職者と企業クライアントのマッチングができるような、より速く効率的な採用を目指します(注1)。
現時点では、採用プロセスの効率化の進捗度合いを表す指標は、Indeed及びGlassdoor上における1分当たりの平均採用者数であると考えています。この指標はマッチング精度の向上、採用プロセスの自動化、企業クライアントとの関係性の深化の進捗を計るものであり、これら要素の改善は更なる採用者数の増加に繋がります。当第4四半期の1分当たりの平均採用者数(注2)は、社内測定に基づくと平均20名となり、2019年3月期第4四半期の平均10名から2倍になりました。
HRテクノロジー事業は世界有数の求人情報プラットフォーム及び企業情報サイト(注3)であるIndeedとGlassdoorの運営を通じて、戦略推進の中心的な役割を担っています。Indeedは約2億5,000万人以上、Glassdoorは約5,500万人以上の月間ユニークビジター数(注4)を有しています。また、事業規模を問わず数多くの企業クライアントが求人情報の掲載や、求職者のレジュメ検索といった採用活動を行っており、掲載されている求人件数は、社外のウェブサイトからアグリゲートされたものを含めると3,000万件以上(注5)にのぼります。IndeedやGlassdoor上で求職者の求職活動及び企業クライアントの採用活動が増加することでデータが蓄積され、AIや機械学習を活用することで、マッチングの精度の向上に繋がります。結果として、最適な求人情報を求職者に提示することや、最適な候補者を企業クライアントに提供することが可能になります。
マッチングの精度の向上と同時に、採用プロセスにおけるマニュアルな作業の自動化に取組んでいます。例えば、Indeedでは求職者が企業からの事前審査に通過すると、即座にリクルーターや採用責任者との面接を予約できる機能を備えており、2022年3月期には延べ200万回を超えるオンライン面接(注6)がIndeed上で実施されました。求職者にとっては、求人情報の検索、面接、仕事に関する考えの共有等、求職活動に関する行動全てがHRテクノロジー事業の提供するプラットフォーム上で可能となります。そして、それらのデータは全てマッチングの精度向上に貢献します。
また、HRテクノロジー事業と人材派遣事業が協働し、データ活用と従来の人材派遣の事業プロセスの自動化や、求人情報、給与の選択肢及び柔軟な面接設定機能を提供するプラットフォームであるIndeed Flexの運営を通して、派遣社員の求職活動における満足度の向上に取組んでいます。
日本では、メディア&ソリューション事業の人材紹介サービスにおける試験的な取組みにおいて、HRテクノロジー事業の検索テクノロジーとメディア&ソリューション事業の採用プロセス効率化のテクノロジーを活用し、企業クライアントと求職者の面談数が前年と比較して大幅に増加しました。このような事業間の連携は2023年3月期以降も継続し、人材マッチング市場におけるあらゆる職種の採用プロセスをシンプルにすることを目指します。
当社は、2021年のグローバル人材マッチング市場規模を2,360億米ドル程度(注7)と推定しています。
人材マッチング市場の規模は、経済成長及び労働市場の状況との連関性が高く、2020年は新型コロナウイルス感染症に関連する規制の影響を受けたことで市場規模が縮小したものの、その後の労働市場環境の変化により、2021年は市場規模が大きく拡大したと推定しています。当社は、人材マッチング市場は2022年以降も拡大を続けるものの、企業クライアントの採用活動及び求職者の求職活動といった労働市場環境が正常化することから、2021年よりも緩やかな成長率で拡大していくと想定しています。
・求人広告及び採用ツール市場
2021年におけるオンライン求人広告及び採用ツール市場は、グローバルで年間売上金額ベースで240億米ドル程度(注8)と推定しています。一方で、当社グループがグローバルで年間売上金額ベースで20億米ドル(注9)を超える規模と見積もる2021年におけるオフライン求人広告市場は、今後もオンライン求人広告市場に流入を続けながら縮小していくと考えています。
・人材紹介市場
人材紹介市場は、2021年におけるグローバル市場規模を450億米ドル程度(注12)と推定しており、同市場における多くのサービスは属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しています。
・エグゼクティブサーチ市場
2021年におけるエグゼクティブサーチ市場はグローバルで年間売上金額ベースで310億米ドル程度(注12)の市場規模であると推定しており、同市場における多くのサービスは、人材紹介市場と同様に属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルによるものです。
・採用オートメーション市場
当社が新たに事業展開を行う可能性がある採用オートメーション市場は、2021年において、430億米ドル程度(注16)の市場規模であると推定しています。市場規模は、企業クライアントが人材採用のために社内リソースに費やしている金額を基に、その金額のうちどの程度が第三者による採用オートメーションサービスに代替可能であるかを推定することに加え、自動化によって得られる企業クライアントのコスト削減効果を考慮した上で算出しています。
人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場は、候補者のソーシングやスクリーニング、面接の設定、候補者の選定や配属といった、多くのサービスにおいて属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しています。当社グループはデータや自動化を活用し、これらの作業を効率化するソリューションを、業界平均よりも低価格で採用担当者や企業経営者に提供することを目指します。それによって、当社がサービスを提供する求人クライアント数を更に増やし、採用予算のうち、より多くのシェアを獲得することを目指します。
・人材派遣市場
2021年における人材派遣市場は、グローバルで年間売上金額ベースで4,730億米ドル程度(注12)の市場規模であると推定しており、売上金額から派遣スタッフの給料や関連する費用を控除した売上総利益金額は880億米ドル程度(注15)と推定しています。当社グループは、同市場において短期的には、テクノロジーを活用して人材派遣事業の効率化に繋がるオンラインプラットフォームサービスを提供し、長期的にはこれらのソリューションを通して市場の変革を図ります。当社は、人材派遣市場における革新的なソリューションの開発を模索し、それを新規及び既存事業に応用することで、データやテクノロジーを活用した将来の事業機会に繋げることを目指します。
Help Businesses Work Smarter - SaaSソリューションによる日本国内企業クライアントの業績及び生産性向上
メディア&ソリューション事業は、SUUMOやHotPepper Beauty、タウンワークをはじめとする販促・人材領域のオンラインマッチングプラットフォームと、集客・顧客管理、採用や人材管理及び決済業務の効率化のための豊富なSaaSソリューションの提供を通じて、企業クライアントの業績及び生産性の更なる向上の実現を支援しています。
今後は業務・経営支援ツールであるSaaSソリューションを更に拡充し、金融サービスを含む、企業クライアントの事業運営に係る全ての経済活動を支えるエコシステムを構築していきます。
エコシステムを構築していくにあたって、現時点では、SaaSソリューションの登録アカウント数が最重要指標であると考え、SaaSソリューションの拡充に加えて、従前より培ってきた営業体制を活用した営業戦略及び積極的なマーケティング活動を実施し、アカウント獲得に取組んでいます。
日本国内におけるアカウント数の規模及び今後の成長見通しに関しては、当社が提供するSaaSソリューションであるAir ビジネスツールズが提供しているソリューションの日本における潜在顧客事業所数を2020年3月末時点で約290万程度(注18)と推定しており、アカウント数が成長する余地は依然として大きいと認識しています。登録アカウント数の拡大を牽引するAirペイのアカウント数は、無料で提供しているAirレジやAirワーク 採用管理に次いでアカウント数が多く、2022年3月末時点では約28.1万(注19)、前連結会計年度末比33.6%増となりました。
AirペイとAirレジやAirシフト等Air ビジネスツールズの他のソリューションを併用する企業クライアントも増加しています。2022年3月末時点のAirペイアカウント数約28.1万のうち、他ソリューションを併用しているアカウント数は約17.6万となりました。
2022年3月期のSaaSソリューションの拡充としては、決済ブランドであるCoin+を搭載した個人ユーザー向けのデジタル口座管理アプリであるエアウォレットや、ATS(Applicant Tracking Service)であるAirワーク 採用管理の提供開始が挙げられます。また、2022年4月よりAirキャッシュを通して新たに企業クライアント向けの売上収益早期現金化サービスの提供を開始しました。
Coin+は、当社と㈱三菱UFJ銀行が共同出資する㈱リクルートMUFGビジネスが提供する決済ブランドです。決済手数料は0.99%(税抜)と通常のキャッシュレス決済の手数料と比較して低く、企業クライアントの負担を抑えることができます。エアウォレットは、送金のみならず、提携先銀行口座との入出金が無料のため日常生活で使用するお金をシームレスに管理・送金できる機能に加えて、QRコード(注20)決済機能も備えています。
Airワーク採用管理は、企業クライアントが採用ホームページ作成、求人掲載、応募者受付と管理といった機能を無料で利用できるクラウドベースの応募情報一元管理サービスです。Airワーク 採用管理に掲載した求人情報はIndeedを含む検索エンジンに自動で掲載することができます。Airワーク 採用管理のアカウント数(注19)は、2022年3月末時点で前連結会計年度末比2倍以上となり、約38万件を超える水準となりました。

(注18) 出典:総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査結果」及び中小企業基本法における中小企業者の定義等に基づき、中小企業者の事業所数を業種別に算定した上で、2020年3月末時点のAir ビジネスツールズの利用実績を踏まえて、Air ビジネスツールズの導入可能性があると当社が判断した業種に属する中小企業者の事業所数を合計することにより推計しています。なお、潜在店舗数の推計に当たり、2020年3月末時点Air ビジネスツールズ登録アカウント数(ノンアクティブアカウントを含む)が20アカウント以上存在する業種をAir ビジネスツールズの導入可能性があると判断しています。
(注19) 登録アカウント数は、当該サービス登録加盟店舗数及び事業所数を指し、アクティブ及びノンアクティブアカウントを含みます。
(注20) QRコードは㈱デンソーウェーブの登録商標です。
Prosper Together -ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長
当社グループは、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、全てのステークホルダーと共存共栄を目指していくことが、当社の持続的な成長に繋がると考えています。2021年5月に、経営戦略として掲げたESG(環境・社会・ガバナンス)の目標に対する当期の進捗は以下のとおりです。
・環境(E)
気候変動への対策として短期目標に掲げた、当社グループの事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量について、計画どおり、2022年3月期にカーボンニュートラルを達成する見込みです(2022年11月に第三者認証を完了予定)(注21)。また、2031年3月期までに目指すバリューチェーン全体を含めたGHG排出量のカーボンニュートラル(注21)に向けては、地球の平均気温上昇を産業革命前と比べ1.5度未満に抑える「1.5度目標」(注22)に沿って、2023年3月期から始まる3カ年目標(注23)を定め、排出量削減に向けた取組みを加速しています。
あわせて、気候変動が当社グループにもたらすリスク及び機会についてシナリオ分析を行い、TCFDフレームワーク(注24)に沿った開示を行いました。詳しくは、「(1) 経営の基本方針」「③気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示」をご参照ください。
・社会(S)
人々にとって欠かせない生活基盤である「仕事」において、当社グループの事業を通じて社会に大きなインパクトを創出し、全ての求職者の失業期間の短縮に貢献するために、2つのコミットメントを掲げています。
2031年3月期までに、就業までに掛かる時間を半分に短縮する目標に向けては、求職者が就業するまでに掛かる時間の測定を進めました。そして、個人差はあるものの、Indeedで職を得た求職者について、ほぼ全ての人が就業するまでには約15週間(注25)掛かっていることがわかりました。また、2021年に30か国で実施した求職者調査では、約50%が、就業までに要した時間は生活水準を維持できる期間よりも長かったと回答(注26)していました。今後は、Indeed上でより速く仕事に就く必要がある求職者を特定し、就業までの時間を短縮するためにIndeed上のプロダクト進化を推進していきます。
2031年3月期までに、累計3,000万人(注27)の障壁に直面する求職者の就業を支援する目標に向けては、特に失業期間が長期化する要因となっている犯罪歴(注28)や求職活動のために必要な交通手段やテクノロジーにアクセスできない(注29)といった障壁に注力し、目的を共有するパートナーとの連携を通じてその低減に努めました。今後は、テクノロジーを活用した支援を進めるとともに、企業クライアントの中で高まるインクルーシブ・ハイアリング(注30)のニーズに応えていきます。
また、当社グループでは、創業以来、従業員一人ひとりの違いを大切にすることで新たな事業やサービスを生み出し、社会に価値を提供してきました。そこで、改めて、多様な従業員の価値創造に向けた意欲を最大化することを経営の重要テーマと位置付け、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)に取組んでいます。
管理職の任用においても性別、国籍、年齢、採用経路等に関わらず多様性を重視し、特にジェンダーについては、当社グループ全体で2031年3月期までに上級管理職・管理職・従業員それぞれにおける女性比率を約50%とする目標を掲げています(注31)。
2022年3月期は、SBUごとにジェンダーギャップの根本課題の特定に注力するとともに、主要子会社のCEOやSBUの役員を意味する上級管理職の大胆な登用を進め、2022年4月1日時点の上級管理職における女性比率は約10%から約21%に上昇しました(注31)。2023年3月期からは、3カ年目標(注23)を定め、暗黙知の中にあるバイアス低減と女性候補者の拡大に向けた取組みを加速していきます。
・ガバナンス(G)
経営の透明性と健全性を向上し、意思決定の質を上げることを目指し、2031年3月期までに当社の監査役を含む取締役会構成員(注32)の女性比率を約50%にする目標を定めています。そして、2022年6月開催の定時株主総会を経て、女性の取締役会構成員の比率は20%から約27%に上昇しました(注32)。2023年3月期からは、3カ年目標(注23)を定め、女性候補者の拡大に向けた取組みを加速していきます。
また、執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めたGHG排出量削減と女性比率向上の達成如何を2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注33)の一部に連動させることを、取締役会において決定しました。
② SBU事業戦略
当社グループ全体の経営戦略を推進するために取組んでいる各SBU事業戦略は、以下のとおりです。
HRテクノロジー事業
より効率的な求職活動及び採用活動の需要に応え、テクノロジーと当社が保有する膨大なデータを活用することにより、IndeedとGlassdoorの求人広告事業及び採用ソリューション事業のグローバル市場での更なる売上収益の成長に注力していきます。
メディア&ソリューション事業
販促領域のオンラインプラットフォームを通じた販促支援は、各事業分野の市場における強固なポジションを活かし、継続的な成長を目指します。人材領域における人材マッチングサービスは、サービスの強化及びHRテクノロジー事業との連携を推進し、企業クライアント数の拡大を目指します。SaaSソリューションの提供においては、企業クライアントのアカウント数の成長に注力していきます。
人材派遣事業
幅広い業界で求職者への就業機会や企業クライアントへの柔軟な労働サービスを提供しながら、安定的な事業運営を目指します。日本では調整後EBITDAマージン水準の維持、欧州、米国及び豪州では調整後EBITDAマージンの継続的な改善に取組みます。
(4) キャピタルアロケーション方針
当社のキャピタルアロケーションは、以下を優先順位として設定しています。
- 既存事業の継続的な成長に資する開発費用及びマーケティング費用
- 安定的な1株当たりの配当の継続的な実施
- 人材マッチング市場におけるHRテクノロジー事業を中心とした戦略的M&A
- 市場環境及び財務状況の見通しを考慮した上での自己株式取得
資本効率について、ROE15%の水準を目安として設定しています。個別の投資案件の実行の是非を判断する際は、資本コストを上回るハードルレートを適用する等、資本効率の実現に取組んでいます。
(1) 経営の基本方針
① ビジョン・ミッション・バリューズ
当社グループの経営理念として、基本理念、ビジョン(目指す世界観)、ミッション(果たす役割)、バリューズ(大切にする価値観)を掲げています。
| 基本理念 | 私たちは、新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す。 | |
| ビジョン (目指す世界観) | Follow Your Heart 一人ひとりが、自分に素直に、自分で決める、自分らしい人生。本当に大切なことに夢中になれるとき、人や組織は、より良い未来を生み出せると信じています。 | |
| ミッション (果たす役割) | まだ、ここにない、出会い。 より速く、シンプルに、もっと近くに。 私たちは、個人と企業をつなぎ、より多くの選択肢を提供することで、「まだ、ここにない、出会い。」を実現してきました。 いつでもどこでも情報を得られるようになった今だからこそ、より最適な選択肢を提案することで、「まだ、ここにない、出会い。」を、桁違いに速く、驚くほどシンプルに、もっと身近にしていきたいと考えています。 | |
| バリューズ (大切にする価値観) | ||
| 新しい価値の創造 世界中があっと驚く未来のあたりまえを創りたい。遊び心を忘れずに、常識を疑うことから始めればいい。良質な失敗から学び、徹底的にこだわり、変わり続けることを楽しもう。 | 個の尊重 すべては好奇心から始まる。一人ひとりの好奇心が、抑えられない情熱を生み、その違いが価値を創る。すべての偉業は、個人の突拍子もないアイデアと、データや事実が結び付いたときに始まるのだ。私たちは、情熱に投資する。 | 社会への貢献 私たちは、すべての企業活動を通じて、持続可能で豊かな社会に貢献する。 一人ひとりが当事者として、社会の不に向き合い、より良い未来に向けて行動しよう。 |
これらを実現するため、当社グループが創業より大切にし活用してきたリボンモデルをビジネスモデルの基礎としています。リボンモデルとは、個人ユーザーと、企業クライアントのマッチング・プラットフォームを作り出し、より多くの最適なマッチングソリューションを提供することにより双方の満足を追求するビジネスモデルです。
現在は、テクノロジーとデータを活用することで、マッチングの更なる効率性向上と高速化に注力し、個人ユーザーに対して最適な選択肢を提供し、企業クライアントに対して更なる業務効率化を支援しています。
② 企業活動の重要な基盤
当社グループでは、ステークホルダーとのESGに関する対話や、取締役会や各委員会等における議論を踏まえて、持続的な企業価値の向上に向けてステークホルダーと共存共栄をする上で重要となる企業活動の基盤を特定しています。各テーマについては、取締役会の諮問機関である各委員会での審議を踏まえて取締役会にて進捗確認をすることで、取組みを推進しています。
当社グループの企業活動の重要基盤は、以下のとおりです。
コーポレート・ガバナンス
当社は、取締役 兼 常務執行役員 兼 COOを、ESG推進を含めたコーポレート・ガバナンスの責任者と位置づけ、指名委員会及び報酬委員会での審議を踏まえて、取締役会にて適切なコーポレート・ガバナンス体制や役員報酬のあり方を確認しています。
また、取締役構成員のダイバーシティ向上に向けて、2031年3月期までに当社の監査役を含む取締役会構成員の女性比率を約50%とする目標を定め、取組みを進めています(注1)。
加えて、ESGに関する取組みと役員報酬との接続をより強化するために、2023年3月期からは当社の業務執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めた温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)排出量削減と女性比率向上の達成如何を(注2)、2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注3)の一部に連動させることを取締役会において決定しています。
当社のコーポレート・ガバナンス方針及び役員報酬については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、取締役会構成員に関する目標については、本項目「(3)経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
人的資本
当社グループは、従業員の意欲を最大化することを改めて経営の重要テーマとし、特にダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)と従業員エンゲージメント、内発的動機を引き出す人材育成と環境作りに重点的に取組んでいます。
前提として、当社グループでは、企業活動において、階級、人種、肌の色、性別、言語、宗教、ジェンダー、年齢、政治的・その他の意見、国民的若しくは社会的出身、国籍、財産、性的指向、性自認、障がい、出生等を理由とした差別や人権侵害を行わないよう努め、すべての人々へ平等な機会を提供し、その人らしい生き方・働き方を尊重する「リクルートグループ人権方針」を定めています。
そして、当社グループでは、大切にする価値観(バリューズ)のひとつとして「個の尊重 - Bet on Passion」を掲げています。創業以来、多様な従業員一人ひとりの違いを大切にし、その好奇心から生まれるアイデアや情熱に投資することで新たな事業やサービスを生み出すことこそが、競合優位の源泉であると考えてきました。
DEIについては、特にグループ全体で共通のテーマであるジェンダーの多様性については、経営戦略の一環として当社グループ全体で目標を定め、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。あわせてジェンダー以外のDEIについても、国や地域、事業に応じて重要なテーマを定めて進めています。ジェンダーの多様性に関する目標の詳細は、本項目「(3) 経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
また、当社グループでは、従業員エンゲージメントを高めるために様々な取組みを行っています。例えば、当社及び主要子会社においては、従業員エンゲージメント・サーベイを実施しています。これにより、従業員エンゲージメントに向けた課題を理解し、組織風土改善等を進めています。
加えて、当社グループでは、人的資本及び知的財産への投資の一環として多様な個人の内発性動機を最大限に引き出す組織文化の醸成に継続的に取組み、事業をマネジメントしています。具体的には、当社及びメディア&ソリューションSBUの統括会社である㈱リクルートでは、従業員の可能性に期待し役割を定める「ミッショングレード制度」、個人の意志を起点としてスキル向上とミッション実現を接続する「Will - Can - Mustマネジメント」、従業員ひとり一人の育成方針を議論する「人材開発委員会」を軸として人材マネジメントを行っています。HRテクノロジーSBUのIndeedで運営する「Indeed大学」では、世界中のエンジニアが集まり、チームでアイデアを形にしていきます。この場を通じて、数多くの新たなサービスが生まれています。そして、人材派遣SBUでは「ユニット経営」と呼ばれる、現地の顧客ニーズに精通した各組織に権限移譲を行い、それぞれの深い知見に基づき柔軟に意思決定を行える経営手法を導入しています。この経営手法によって、現場の従業員は、成果に向けて高い意欲を持つことができると同時に、リーダーとしての意思決定力を高める機会を得ています。
当社グループにとって、価値創造サイクルの起点はひとり一人の従業員です。当社グループは引き続き、当社グループの人的資本を起点とした価値創造サイクルの強化に取組んでいきます。
当社グループの価値創造サイクル

企業倫理の徹底
当社グループでは、コンプライアンスを法令遵守の枠を越えて企業と個人が適正な行動を行うことで社会的な期待や要請に応えていくことであると位置づけ、事業活動の大前提としています。企業倫理の徹底のため、従業員教育等の施策、内部通報窓口の設置を行うとともに、コンプライアンス委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「(1) コーポレート・ガバナンスの概要」「②内部統制システム整備の状況」をご参照ください。
データセキュリティ・データプライバシー対応
当社は、データセキュリティ・データプライバシー対応を当社グループのトップリスクと定め、保有するデータを重要性に応じて分類し、事業内容や国・地域ごとの法規制や保護すべき情報資産の特性に応じて必要な体制や施策を整備しています。また、リスクマネジメント委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗確認と議論をしています。詳細は、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
人権の尊重
当社は、当社グループの役員と従業員、当社グループ会社の派遣サービスに登録している方々を直接の保護の対象と位置付けて「リクルートグループ人権方針」を掲げ、その中に急速なテクノロジーの発達によって影響を受ける人権の保護を含めています。人権方針は、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて決議しています。
地球環境の保全
当社は、すべての企業活動はあらゆる生命の生存基盤である地球環境が健全であってはじめて成り立つと考え、様々な活動を行っています。特に気候変動対策については重要テーマと位置づけ、当社グループ全体で温室効果ガス排出量のカーボンニュートラル達成に向けた目標を定め、サステナビリティ委員会での審議を踏まえて、取締役会にて進捗管理と議論をしていきます。
気候変動に伴う当社グループのリスク及び機会については本項目「気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示」を、気候変動対策の詳細は「(3)経営戦略」「ProsperTogether - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
| (注1) | 取締役会構成員は、取締役及び監査役の合計を示す。なお、2022年6月22日時点の当社の取締役会構成員(取締役及び監査役)の女性比率は27%。 |
| (注2) | GHG排出削減目標については2023年3月期から2025年3月期の実績、従業員おける女性比率目標については2022年4月1日時点から2025年4月1日時点までの実績、取締役会構成員における女性比率については2022年7月1日時点から2025年7月1日時点までの実績を対象とする。 |
| (注3) | 長期インセンティブ BIP信託(株式)報酬の一部として設定し、3カ年目標の達成如何によって支給有無を決定する。 |
③ 気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示
当社では、地球環境の保全を、持続的な企業価値の向上に向けてステークホルダーと共存共栄をする上で重要な企業活動の基盤であると定めています。その上で、特に気候変動については、2031年3月期までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを目指す目標を定め(注1)て、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)の排出削減を進めています。短期目標として定めた当社グループの事業活動における温室効果ガス排出量のカーボンニュートラルは、計画どおり2022年3月期に達成する見込みです(注1)。そして、2031年3月期までに目指す目標に向けては、国際的なフレームワークである地球の平均気温上昇を産業革命前と比べて1.5度未満に抑えることを目指す「1.5度目標」(注2)に沿った3カ年目標(注3)を定め、排出量削減に向けた取組みを加速しています。
あわせて、脱炭素社会に積極的に対応するためにガバナンスを強化し、気候変動が当社グループに与えるインパクトの評価や、リスク低減と成長機会の獲得に向けて取組みを進めています。その一環として、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、そのフレームワーク(注4)に沿って、本項目にて気候変動への対策に関する情報開示を行っています。
| (注1) | 事業活動における温室効果ガス排出量は、スコープ1(オフィスにて直接排出される温室効果ガス)、スコープ2(オフィスにて間接的に排出される温室効果ガス)の合計。バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量は、スコープ1、2に加えて、スコープ3(スコープ1、2を除く間接的に排出される温室効果ガス)を含むすべて。カーボンニュートラルには、温室効果ガス排出量の削減に加え、残りの排出量のオフセットを含む。温室効果ガス測定後、2022年11月までに排出量に対する第三者認証を取得し、その後オフセットを行い、2022年3月期の温室効果ガスに対するカーボンニュートラルを達成する予定。 |
| (注2) | IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) により報告された、気候科学に基づき地球温暖化を産業革命前の温度レベルと比較して1.5度以内に維持するために必要な脱炭素のレベルと一致する温室効果ガス排出削減目標。 |
| (注3) | 温室効果ガス排出削減目標については2023年3月期から2025年3月期の実績を対象とする。 |
| (注4) | 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が定める、気候変動関連リスク及び機会を示す項目。 |
ガバナンス
当社では、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会での審議を踏まえて、気候変動への対応に必要な体制整備を行い、その対応を取締役会において監督しています。サステナビリティ委員会では、気候変動に対する対応方針や戦略、及び計画について議論します。取締役会では、GHG排出量の削減目標に対する進捗とともに、気候変動関連リスクの低減と機会獲得への対策を含めた事業計画や投融資を確認、監督しています。
リスクの低減と機会の獲得は、サステナビリティ委員会に社内委員として参加する各SBU統括会社のCEOを兼務する当社執行役員が、各SBUにおける戦略を策定し、事業運営の中で実行していきます。
また、当社の気候変動への取組みは、サステナビリティ担当執行役員を責任者として進めています。当該責任者は、取締役会に対して、気候変動によるリスクや機会の評価、リスク低減と機会の獲得方法について報告します。また、当該責任者の配下にサステナビリティ所管部署を設置し、当社グループの環境関連情報の収集、GHG排出量削減の進捗管理、気候変動によるリスクや機会の識別及び評価、その対応方針の検討及び推進、ステークホルダーとの対話や関連調査を行います。
リスク管理
気候変動によるリスクは、当社グループ全体のリスクマネジメントプロセスに統合して評価し、リスクマネジメント委員会において、包括的且つ一元的に管理しています。気候変動に関する中長期的なリスクの議論はサステナビリティ委員会に委任し、リスクの低減策に関する具体的な議論を行います。その結果はリスクマネジメント委員会に連携され、取締役会に報告されます。
気候変動によるリスクと機会の管理体制(役割と会議体)

※サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント委員会の参加者及び開催回数については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」「2022年3月31日時点の取締役会、監査役会、経営戦略会議、各委員会の構成」を参照ください。
戦略
(a)戦略の前提
当社グループでは、気候変動によって平均気温が4度上昇することは世界に大きな影響を及ぼすことを認識し、気温上昇を1.5度未満に抑制することが重要であると考えています。そこで、複数の気候変動シナリオ(4度と1.5度)に基づき、2031年3月期までの短期・中期・長期のリスクと機会を発生可能性と財務影響の観点で評価し、主要なリスクの低減及び機会の獲得に向けた対策を取締役会において確認しています。また、シナリオ分析においては、IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)(注1)や国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)等、国際機関及びそれに準ずる調査機関が発行するレポートを参照しています。
(注1) 共通社会経済経路(SSP: Shared Socioeconomic Pathways)5-8.5、SSP1-1.9に該当。
(b)気候変動による主要なリスクと機会
当社グループが、シナリオ分析を経て特定した主要なリスクとその発生可能性、財務影響は以下のとおりです。財務影響については、リスク項目毎に試算し、金額根拠の確度が比較的高いと考えられる炭素税のみ数値で示しています。
| 気候変動による主要なリスク | 発生可能性 | 財務影響 | リスク低減施策 | |||
| 1 | カーボンニュートラル実現に向けたカーボンクレジット価格の高騰 | 高 | ![]() | (注1) | 高 | 2031年3月期に目指す自社の事業活動及びバリューチェーン全体を通したカーボンニュートラルに向けて、オフィスの省エネルギー化と再生可能エネルギーへの転換、リモートワーク推進や主要バリューチェーンへのエンゲージメント等を通してGHG排出量の実質削減を進める。 |
| 2 | 炭素税課税の導入及び その価格高騰 | 高 | ![]() | 低 (約4億円(注2)) | ||
| 3 | 木材や輸送費の高騰 | 高 | ![]() | (注1) | 低 | 情報誌ビジネスで使用する用紙について、GHG低排出用紙の安定供給契約を継続する。また、製紙会社に対するエンゲージメントを行う。 |
| 4 | サーバーの水没や損壊 | 低 | ![]() | 高 | サーバー設置地域の水没や損壊リスクモニタリングを開始し、一定リスクに達した際に移転や代替サーバー等の検討を行う。 | |
| (注1) | 2031年3月期に向けて、発生可能性が上昇する見込みである場合は「 | ![]() | 」、発生可能性が大きく変化しない |
| 見込みの場合は「 | ![]() | 」と記載。 | |
| (注2) | 2031年3月期時点の炭素税算定における前提は以下のとおり。 ・炭素税価格はIPCC SSP Databaseを参照し、約$300 /t-CO2とする ・当社グループの事業活動におけるGHG排出量(スコープ1, 2)は、2020年3月期の実績である約12,000t-CO2を用いる(2022年3月期以降は再生可能エネルギー化を進めるため、スコープ2の温室効果ガス排出量は約0t-CO2となる想定) | ||
今回の分析を通じて、事業戦略に影響を及ぼす重大なリスクは特定されませんでした。今後も、前述のガバナンス体制の基で、世界動向を受けて気候変動が当社グループに及ぼす影響を注視し、継続的に評価の見直しと情報開示の充実を進めていきます。現時点では、当社が定める3つの経営戦略を推進することこそが、気候変動に対するレジリエンスを高め、主要リスクを低減すると考えています。
当社グループが、シナリオ分析を経て特定した主要な機会とその発生可能性、財務影響は以下のとおりです。
| 気候変動による主要なリスク | 発生可能性 | 財務影響 | |||
| 1 | 気候変動への適応に向けた労働移動の取込み | 中 | ![]() | 高 | |
| 2 | 低炭素社会実現に向けた求人ニーズの取込み | 高 | ![]() | 中 | |
| (注1) | 2031年3月期に向けて、発生可能性が上昇する見込みがある場合は「 | ![]() | 」と記載。 |
今回の分析を通じて、当社が定める3つの経営戦略を推進することこそが、気候変動による機会の獲得に繋がることを確認しました。今後も気候変動に関する社会やステークホルダーの動向を注視し、その変化を捉えて当社グループの機会としていくことで、労働市場のレジリエンスと持続可能性の向上に貢献したいと考えています。
指標、目標と実績
(a)指標
当社では、GHGプロトコルに則った温室効果ガス排出量(スコープ1, 2, 3の絶対量(注1,2))を、気候関連のリスクと機会を管理する指標に定めています。
(b)目標
当社は、「サステナビリティのコミットメント(2021年5月発表)」において、2022年3月期までに自らの事業活動におけるカーボンニュートラルを目指すこと(注1,3)、2031年3月期までにバリューチェーン全体におけるカーボンニュートラルを目指す目標を経営戦略として定めています(注2,3)。
また、当社の業務執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めたGHG排出量削減の達成如何を、2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注4)の一部に連動させることを取締役会において決定しています。(詳細は「②企業活動の重要な基盤」の「コーポレート・ガバナンス」をご覧ください。)
(c)実績
当社では、2020年3月期より、GHGプロトコルに則ったGHG排出量の算定を開始し、2021年3月期の事業活動を通じた排出量(スコープ1+2)は29,070t-CO2(前年比-30.3%)となりました(注5)。また、本GHG排出量については第三者保証(注6)を取得しています。また、短期目標である2022年3月期事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1及び2)のカーボンニュートラルは、計画どおり達成する見込みです(注1, 3)。
| 2020年3月期(注5) (t-CO2) | 2021年3月期(注5) (t-CO2) | |
| スコープ 1 | 12,128 | 7,526 |
| スコープ 2 (マーケットベース) | 29,559 | 21,544 |
| スコープ 1+2 (マーケットベース) | 41,687 | 29,070 |
また、当社では、2010年に定めた、2021年3月期までに2009年3月期比で日本国内でのGHG排出量を25%削減する目標を、当連結会計年度末時点で62.4%削減と目標値を大きく上回る形で達成しています。
| (注1) | 事業活動における温室効果ガス排出量は、スコープ1(オフィスにて直接排出される温室効果ガス)、スコープ2(オフィスにて間接的に排出される温室効果ガス)の合計。 |
| (注2) | バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量は、スコープ1、2に加えて、スコープ3(スコープ1、2を除く間接的に排出される温室効果ガス)を含むすべて。 |
| (注3) | カーボンニュートラルの取組みには、温室効果ガス排出量の削減に加え、残りの排出量のオフセットを含む。温室効果ガス測定後、2022年11月までに排出量に対する第三者認証を取得し、その後オフセットを行い、2022年3月期の温室効果ガスに対するカーボンニュートラルを達成する予定。 |
| (注4) | 温室効果ガス排出削減目標については2023年3月期から2025年3月期の実績を対象とする。長期インセンティブ BIP信託(株式)報酬の一部として設定し、3カ年目標の達成如何によって支給有無を決定する。 |
| (注5) | 温室効果ガス排出量の数値は、すべて概数。 |
| (注6) | 温室効果ガス排出量はSOCOTEC Certification Japan及びSCS Global Servicesによる「独立した第三者保証」を得ています。 |
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、長期的な利益成長と企業価値及び株主価値の最大化に向け、新規事業投資や研究開発、M&A等の成長投資を機動的且つ積極的に実行していきます。そのための主な経営指標を調整後EBITDA及び調整後EPSと設定し、調整後EBITDAの成長率を役員の報酬に連動させることにより、株主の皆様との価値共有を促進しています。また、2023年3月期から、ESG目標の達成度を一部の役員の報酬に連動させることを決定しました。詳しくは、「(3)経営戦略」「Prosper Together - ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長」をご参照ください。
当社は2023年3月期より、主な経営指標である調整後EBITDA及び調整後EPSの調整項目を変更します。
調整後EBITDAに関しては、グローバルで比較可能性の高い事業のキャッシュ・フロー創出力を示すために、調整項目に株式報酬費用を追加します。当社は、2021年1月以降、HRテクノロジーSBUにおいて当社の株式を用いた株式交付制度を導入しています。従来から実施している当社役員に対する株式報酬制度と合わせて、2022年3月期の株式報酬費用は324億円となりました。
2023年3月期以降の調整後EBITDAの計算式は以下のとおりです。
調整後EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費(使用権資産の減価償却費を除く)+株式報酬費用 ±その他の営業収益・費用
あわせて調整後EPSに関しては、グローバルで比較可能性の高い恒常的な収益力を表す1株当たりの利益を示すため、企業結合に伴い生じた無形資産の償却額を計算式の分子である調整後当期利益の調整項目から削除します。当社は2018年3月期より、適用する会計基準を日本基準から国際会計基準に変更しています。よって、企業統合に伴い生じる無形資産のうち、重要な金額を占めるのれんは、規則的な償却ではなく、年一度以上の減損テストに基づいて減損の要否を判断し、のれんの減損が発生した場合は、非経常的な損失(下記計算式を参照)と判断しています。2023年3月期以降の調整後EPSの計算式は以下のとおりです。
調整後EPS = 調整後当期利益/((期首発行済株式総数+期末発行済株式総数)/2-(期首自己株式数+期末自己株式数)/2)
調整後当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±非経常的な損益(非支配持分帰属分を除く)±非経常的な損益(非支配持分帰属分を除く)の一部に係る税金相当額
非経常的な損益 = 子会社株式売却損益、事業統合関連費用、固定資産売却損益/除却損等、恒常的な収益力を表すために当社が非経常的であり利益指標において調整すべきであると判断した損益
2023年3月期は前年同期比較を可能にするため、2022年3月期の調整後EBITDA及び調整後EPSを新しい定義で算出した数値を開示します。
(3) 経営戦略
当社グループは、テクノロジーの進化等により急速に変化する事業環境に対応し、グローバル市場におけるニーズやビジネス機会をいち早く捉え、迅速な意思決定の下で、企業価値及び株主価値の最大化に取組んでいます。
HRテクノロジー事業、メディア&ソリューション事業の人材領域及び人材派遣事業が、グローバル人材マッチング市場において、メディア&ソリューション事業の販促領域が日本において、インターネット広告事業にとどまらず、テクノロジーを駆使して企業クライアントの業績向上及び生産性改善をサポートするソリューションプロバイダーに進化することを目指しています。
加えて、不確実性が高まる中で持続的な企業価値向上を目指すためには、健全なガバナンスの基で、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、全てのステークホルダーとの共存共栄を目指す必要があると考えています。そのため、ESG(環境・社会・ガバナンス)について具体的な目標を掲げ、社内外ステークホルダーとの対話を重視しながら、その実現に向けて取組んでいます。
① 当社グループ全体の経営戦略
当社グループ全体の経営戦略と対処すべき課題は、以下のとおりです。
Simplify Hiring - 人材マッチング市場における採用プロセスの効率化
当社は、求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場及び人材派遣市場の総称を人材マッチング市場と定義し、求職者がより速く且つ容易に仕事を得られることや、企業クライアントの採用に係るコストと時間を削減することを通じた人材マッチング市場における採用プロセスの効率化に取組んでいます。
3つの事業が、データ、自動化及びテクノロジーを活用しながら連携し、求職者と企業クライアントへの選択肢の提案の質とスピードを劇的に向上させることで採用プロセスを簡便化し、双方に更なる価値を提供することを目指しています。
長期的には、長年蓄積されたマッチングデータとAIや機械学習を通じて得られた求職者及び企業クライアントの採用に関する考え方といった情報を組み合わせることで、ボタンをクリックするだけで求職者と企業クライアントのマッチングができるような、より速く効率的な採用を目指します(注1)。
現時点では、採用プロセスの効率化の進捗度合いを表す指標は、Indeed及びGlassdoor上における1分当たりの平均採用者数であると考えています。この指標はマッチング精度の向上、採用プロセスの自動化、企業クライアントとの関係性の深化の進捗を計るものであり、これら要素の改善は更なる採用者数の増加に繋がります。当第4四半期の1分当たりの平均採用者数(注2)は、社内測定に基づくと平均20名となり、2019年3月期第4四半期の平均10名から2倍になりました。
HRテクノロジー事業は世界有数の求人情報プラットフォーム及び企業情報サイト(注3)であるIndeedとGlassdoorの運営を通じて、戦略推進の中心的な役割を担っています。Indeedは約2億5,000万人以上、Glassdoorは約5,500万人以上の月間ユニークビジター数(注4)を有しています。また、事業規模を問わず数多くの企業クライアントが求人情報の掲載や、求職者のレジュメ検索といった採用活動を行っており、掲載されている求人件数は、社外のウェブサイトからアグリゲートされたものを含めると3,000万件以上(注5)にのぼります。IndeedやGlassdoor上で求職者の求職活動及び企業クライアントの採用活動が増加することでデータが蓄積され、AIや機械学習を活用することで、マッチングの精度の向上に繋がります。結果として、最適な求人情報を求職者に提示することや、最適な候補者を企業クライアントに提供することが可能になります。
マッチングの精度の向上と同時に、採用プロセスにおけるマニュアルな作業の自動化に取組んでいます。例えば、Indeedでは求職者が企業からの事前審査に通過すると、即座にリクルーターや採用責任者との面接を予約できる機能を備えており、2022年3月期には延べ200万回を超えるオンライン面接(注6)がIndeed上で実施されました。求職者にとっては、求人情報の検索、面接、仕事に関する考えの共有等、求職活動に関する行動全てがHRテクノロジー事業の提供するプラットフォーム上で可能となります。そして、それらのデータは全てマッチングの精度向上に貢献します。
また、HRテクノロジー事業と人材派遣事業が協働し、データ活用と従来の人材派遣の事業プロセスの自動化や、求人情報、給与の選択肢及び柔軟な面接設定機能を提供するプラットフォームであるIndeed Flexの運営を通して、派遣社員の求職活動における満足度の向上に取組んでいます。
日本では、メディア&ソリューション事業の人材紹介サービスにおける試験的な取組みにおいて、HRテクノロジー事業の検索テクノロジーとメディア&ソリューション事業の採用プロセス効率化のテクノロジーを活用し、企業クライアントと求職者の面談数が前年と比較して大幅に増加しました。このような事業間の連携は2023年3月期以降も継続し、人材マッチング市場におけるあらゆる職種の採用プロセスをシンプルにすることを目指します。
当社は、2021年のグローバル人材マッチング市場規模を2,360億米ドル程度(注7)と推定しています。
人材マッチング市場の規模は、経済成長及び労働市場の状況との連関性が高く、2020年は新型コロナウイルス感染症に関連する規制の影響を受けたことで市場規模が縮小したものの、その後の労働市場環境の変化により、2021年は市場規模が大きく拡大したと推定しています。当社は、人材マッチング市場は2022年以降も拡大を続けるものの、企業クライアントの採用活動及び求職者の求職活動といった労働市場環境が正常化することから、2021年よりも緩やかな成長率で拡大していくと想定しています。
| 人材マッチング市場規模 (推定) | |||
| 単位:十億米ドル | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
| 求人広告及び採用ツール市場(注8, 9) | 21 | 19 | 26 |
| 人材紹介市場(注10, 11, 12) | 55 | 32 | 45 |
| エグゼクティブサーチ市場(注10, 11, 12) | 21 | 31 | |
| 人材派遣市場 (売上総利益ベース)(注13, 14, 15) | 82 | 72 | 88 |
| 小計 | 159 | 144 | 192 |
| 採用オートメーション市場(注16) | N/A | N/A | 43 |
| 合計(注17) | 159 | 144 | 236 |
・求人広告及び採用ツール市場
2021年におけるオンライン求人広告及び採用ツール市場は、グローバルで年間売上金額ベースで240億米ドル程度(注8)と推定しています。一方で、当社グループがグローバルで年間売上金額ベースで20億米ドル(注9)を超える規模と見積もる2021年におけるオフライン求人広告市場は、今後もオンライン求人広告市場に流入を続けながら縮小していくと考えています。
・人材紹介市場
人材紹介市場は、2021年におけるグローバル市場規模を450億米ドル程度(注12)と推定しており、同市場における多くのサービスは属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しています。
・エグゼクティブサーチ市場
2021年におけるエグゼクティブサーチ市場はグローバルで年間売上金額ベースで310億米ドル程度(注12)の市場規模であると推定しており、同市場における多くのサービスは、人材紹介市場と同様に属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルによるものです。
・採用オートメーション市場
当社が新たに事業展開を行う可能性がある採用オートメーション市場は、2021年において、430億米ドル程度(注16)の市場規模であると推定しています。市場規模は、企業クライアントが人材採用のために社内リソースに費やしている金額を基に、その金額のうちどの程度が第三者による採用オートメーションサービスに代替可能であるかを推定することに加え、自動化によって得られる企業クライアントのコスト削減効果を考慮した上で算出しています。
人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場は、候補者のソーシングやスクリーニング、面接の設定、候補者の選定や配属といった、多くのサービスにおいて属人的な関係に基づく伝統的なビジネスモデルを採用しています。当社グループはデータや自動化を活用し、これらの作業を効率化するソリューションを、業界平均よりも低価格で採用担当者や企業経営者に提供することを目指します。それによって、当社がサービスを提供する求人クライアント数を更に増やし、採用予算のうち、より多くのシェアを獲得することを目指します。
・人材派遣市場
2021年における人材派遣市場は、グローバルで年間売上金額ベースで4,730億米ドル程度(注12)の市場規模であると推定しており、売上金額から派遣スタッフの給料や関連する費用を控除した売上総利益金額は880億米ドル程度(注15)と推定しています。当社グループは、同市場において短期的には、テクノロジーを活用して人材派遣事業の効率化に繋がるオンラインプラットフォームサービスを提供し、長期的にはこれらのソリューションを通して市場の変革を図ります。当社は、人材派遣市場における革新的なソリューションの開発を模索し、それを新規及び既存事業に応用することで、データやテクノロジーを活用した将来の事業機会に繋げることを目指します。
| (注1) | 当社グループは当該領域において法的規制が存在する可能性を認識しており、それらの規制を遵守するよう努めています。 |
| (注2) | 1分当たりの採用数は、四半期当たりの採用数を四半期当たりの分数で割ることで算出される数値です。特定の求職者が特定の日付に特定の仕事に採用された場合に採用数としてカウントしています。企業クライアント又は求職者がアンケートを通じて採用の意思表示をした場合や、Indeedのレジュメやメッセージ機能において、採用が行われたという明確な証拠が確認された場合に採用数としてカウントされます。 |
| (注3) | comScoreに基づく2022年2月の訪問数 |
| (注4) | 2022年3月におけるGoogle Analyticsに基づく社内データ。ユニークビジターとは、一定期間内におけるウェブサイトの延べ訪問数から重複を除いた数値 |
| (注5) | 2022年3月においてIndeedに掲載されていた求人数の一日当たり平均 |
| (注6) | 社内データに基づくと、2021年4月1日から2022年3月31日の間に、延べ200万人以上の求職者がIndeed上で企業からの事前審査を通過し、面接を実施しました。 |
| (注7) | 本項に記載する、求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、及びエグゼクティブサーチ市場における売上金額ベースのそれぞれの市場規模、採用オートメーション市場において企業クライアントが人材採用のために社内リソースに費やしている金額のうち、第三者による採用オートメーションサービスへ代替可能な金額の推定値、並びに人材派遣市場における売上総利益ベースの市場規模に関する当社グループによる推計値の単純合計額。当社グループによる推計値の算出方法は以下の注記をご参照ください。 |
| (注8) | 各年における当社グループがHRテクノロジー事業のサービスを提供している国のオンライン求人広告におけるHRテクノロジー事業の売上及び主要な競合他社の売上総額についての外部調査機関のレポートの数値を当社グループの推計に基づき一部保守的に修正した金額にLinkedInのタレントソリューション事業の年間売上金額について同社の公表資料から当社グループの推計に基づき保守的に修正した値を合算した、オンライン求人広告及び採用ツール市場の規模 |
| (注9) | 各年のオンライン求人広告及び採用ツール市場の市場規模に、各年における広告市場全体におけるオンライン広告及びオフライン広告(但し、テレビ、映画及びラジオ広告等を除く。)の比率(外部調査機関のレポートに基づく。)を乗じて算出した、オフライン求人広告市場の規模。なお、表中の数値は、オンライン求人広告及び採用ツール市場規模の数値と、オフライン求人広告市場規模の数値を合計したものになります。 |
| (注10) | 2019年の数値は、SIA, Global Staffing Industry Market Estimates and Forecast: May 2020 Updateに基づく。2019年においては、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場の規模を個別には算定せず、当該市場を合わせた人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場の規模を算定 |
| (注11) | 2020年の数値は、SIA, Global Staffing Market Estimates and Forecast: 21 May 2021に基づく2020年のグローバル人材市場の売上金額である4,450億米ドルに、そのうち「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」が占める割合である12%を適用して市場規模を算定。同資料においては、人材紹介市場を「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」の一部と分類し、「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」をグローバル人材市場の一部と分類しています。人材紹介市場の市場規模は、上記SIAの資料におけるグローバル人材市場規模の数値に対し、当社が第三者機関から入手した非公開の市場データである当該セグメントのグローバル人材市場に対する国別の人材紹介市場比率を適用して算定。エグゼクティブサーチ市場は、人材紹介市場を除いた「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」の一部として定義され、これら2つのセグメント間の差分として算定 |
| (注12) | 2021年の数値は、SIA, Global Staffing Market Estimates and Forecast: November 2021 Updateに基づく2021年のグローバル人材市場の売上金額と推定される4,730億米ドルに、そのうち「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」が占める割合である14%を適用して市場規模を算定。同資料においては、人材紹介市場を「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」の一部と分類し、「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」をグローバル人材市場の一部と分類しています。人材紹介市場の市場規模は、上記SIAの資料におけるグローバル人材市場規模の数値に対し、当社が第三者機関から入手した非公開の市場データである当該セグメントのグローバル人材市場に対する国別の人材紹介市場比率を適用して算定。エグゼクティブサーチ市場は、人材紹介市場を除いた「人材紹介及びエグゼクティブサーチ市場」の一部として定義され、これら2つのセグメント間の差分として算定 |
| (注13) | 2019年の数値は、SIA, Global Staffing Industry Market Estimates and Forecast: May 2020 Update に基づく2019年の人材派遣市場の売上金額4,410億米ドルに、2019年におけるグローバル人材派遣上場企業の売上金額上位3社の売上総利益率の加重平均18.6%を適用して算出した額 |
| (注14) | 2020年の数値は、SIA, Global Staffing Market Estimates and Forecast: 21 May 2021に基づく2020年の人材派遣市場の売上金額3,930億米ドルに、2020年におけるグローバル人材派遣上場企業の売上金額上位3社の売上総利益率の加重平均18.2%を適用して算出した額 |
| (注15) | 2021年の数値は、SIA, Global Staffing Market Estimates and Forecast: November 2021 Updateに基づく、2021年に推定される人材派遣市場の成長率14%を2020年の人材派遣市場の売上金額4,150億米ドルに適用して算出した2021年の売上金額4,730億米ドルに、2021年におけるグローバル人材派遣上場企業の売上金額上位3社の売上総利益率の加重平均18.68%を適用して算出した額 |
| (注16) | SIA, The Evolution of Recruiting: Estimating the Addressable Market for Recruitment Automation: March 2022(Indeedは当該レポートの作成に関し、作成者に報酬を支払っています。)に基づく2020年の採用オートメーション市場の市場規模と推定される420億米ドルに、当社グループの推定に基づく成長率5%を適用して算出した額。SIAの算定は、企業クライアントが人材採用に際し社内リソースに費やしている予算のうち35%がテクノロジーに代替可能であることに加え、かかるテクノロジーにより企業クライアントがコストを35%削減することが可能になるという仮定に基づいています。グローバル市場規模を算定する上での情報の不完全性を考慮し、SIAは読者に対し、推定される市場規模が上下20%の幅を持つ可能性がある旨を念頭におくよう忠告しています。 |
| (注17) | 本項に記載する求人広告及び採用ツール市場、人材紹介市場、エグゼクティブサーチ市場、採用オートメーション市場、及び人材派遣市場の市場規模については、上記の注記に記載のとおり外部の統計資料や公表資料を基礎として当社グループが推計したものであり、その正確性には係る統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模は係る推計値と大きく異なる可能性があります。 |
Help Businesses Work Smarter - SaaSソリューションによる日本国内企業クライアントの業績及び生産性向上
メディア&ソリューション事業は、SUUMOやHotPepper Beauty、タウンワークをはじめとする販促・人材領域のオンラインマッチングプラットフォームと、集客・顧客管理、採用や人材管理及び決済業務の効率化のための豊富なSaaSソリューションの提供を通じて、企業クライアントの業績及び生産性の更なる向上の実現を支援しています。
今後は業務・経営支援ツールであるSaaSソリューションを更に拡充し、金融サービスを含む、企業クライアントの事業運営に係る全ての経済活動を支えるエコシステムを構築していきます。
エコシステムを構築していくにあたって、現時点では、SaaSソリューションの登録アカウント数が最重要指標であると考え、SaaSソリューションの拡充に加えて、従前より培ってきた営業体制を活用した営業戦略及び積極的なマーケティング活動を実施し、アカウント獲得に取組んでいます。
日本国内におけるアカウント数の規模及び今後の成長見通しに関しては、当社が提供するSaaSソリューションであるAir ビジネスツールズが提供しているソリューションの日本における潜在顧客事業所数を2020年3月末時点で約290万程度(注18)と推定しており、アカウント数が成長する余地は依然として大きいと認識しています。登録アカウント数の拡大を牽引するAirペイのアカウント数は、無料で提供しているAirレジやAirワーク 採用管理に次いでアカウント数が多く、2022年3月末時点では約28.1万(注19)、前連結会計年度末比33.6%増となりました。
AirペイとAirレジやAirシフト等Air ビジネスツールズの他のソリューションを併用する企業クライアントも増加しています。2022年3月末時点のAirペイアカウント数約28.1万のうち、他ソリューションを併用しているアカウント数は約17.6万となりました。
2022年3月期のSaaSソリューションの拡充としては、決済ブランドであるCoin+を搭載した個人ユーザー向けのデジタル口座管理アプリであるエアウォレットや、ATS(Applicant Tracking Service)であるAirワーク 採用管理の提供開始が挙げられます。また、2022年4月よりAirキャッシュを通して新たに企業クライアント向けの売上収益早期現金化サービスの提供を開始しました。
Coin+は、当社と㈱三菱UFJ銀行が共同出資する㈱リクルートMUFGビジネスが提供する決済ブランドです。決済手数料は0.99%(税抜)と通常のキャッシュレス決済の手数料と比較して低く、企業クライアントの負担を抑えることができます。エアウォレットは、送金のみならず、提携先銀行口座との入出金が無料のため日常生活で使用するお金をシームレスに管理・送金できる機能に加えて、QRコード(注20)決済機能も備えています。
Airワーク採用管理は、企業クライアントが採用ホームページ作成、求人掲載、応募者受付と管理といった機能を無料で利用できるクラウドベースの応募情報一元管理サービスです。Airワーク 採用管理に掲載した求人情報はIndeedを含む検索エンジンに自動で掲載することができます。Airワーク 採用管理のアカウント数(注19)は、2022年3月末時点で前連結会計年度末比2倍以上となり、約38万件を超える水準となりました。

(注18) 出典:総務省・経済産業省「平成28年経済センサス-活動調査結果」及び中小企業基本法における中小企業者の定義等に基づき、中小企業者の事業所数を業種別に算定した上で、2020年3月末時点のAir ビジネスツールズの利用実績を踏まえて、Air ビジネスツールズの導入可能性があると当社が判断した業種に属する中小企業者の事業所数を合計することにより推計しています。なお、潜在店舗数の推計に当たり、2020年3月末時点Air ビジネスツールズ登録アカウント数(ノンアクティブアカウントを含む)が20アカウント以上存在する業種をAir ビジネスツールズの導入可能性があると判断しています。
(注19) 登録アカウント数は、当該サービス登録加盟店舗数及び事業所数を指し、アクティブ及びノンアクティブアカウントを含みます。
(注20) QRコードは㈱デンソーウェーブの登録商標です。
Prosper Together -ステークホルダーとの共栄を通じた持続的な成長
当社グループは、企業活動全体を通じて社会や地球環境にポジティブなインパクトを与え、全てのステークホルダーと共存共栄を目指していくことが、当社の持続的な成長に繋がると考えています。2021年5月に、経営戦略として掲げたESG(環境・社会・ガバナンス)の目標に対する当期の進捗は以下のとおりです。
・環境(E)
気候変動への対策として短期目標に掲げた、当社グループの事業活動における温室効果ガス(GHG)排出量について、計画どおり、2022年3月期にカーボンニュートラルを達成する見込みです(2022年11月に第三者認証を完了予定)(注21)。また、2031年3月期までに目指すバリューチェーン全体を含めたGHG排出量のカーボンニュートラル(注21)に向けては、地球の平均気温上昇を産業革命前と比べ1.5度未満に抑える「1.5度目標」(注22)に沿って、2023年3月期から始まる3カ年目標(注23)を定め、排出量削減に向けた取組みを加速しています。
あわせて、気候変動が当社グループにもたらすリスク及び機会についてシナリオ分析を行い、TCFDフレームワーク(注24)に沿った開示を行いました。詳しくは、「(1) 経営の基本方針」「③気候変動への対策と「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に沿った情報開示」をご参照ください。
・社会(S)
人々にとって欠かせない生活基盤である「仕事」において、当社グループの事業を通じて社会に大きなインパクトを創出し、全ての求職者の失業期間の短縮に貢献するために、2つのコミットメントを掲げています。
2031年3月期までに、就業までに掛かる時間を半分に短縮する目標に向けては、求職者が就業するまでに掛かる時間の測定を進めました。そして、個人差はあるものの、Indeedで職を得た求職者について、ほぼ全ての人が就業するまでには約15週間(注25)掛かっていることがわかりました。また、2021年に30か国で実施した求職者調査では、約50%が、就業までに要した時間は生活水準を維持できる期間よりも長かったと回答(注26)していました。今後は、Indeed上でより速く仕事に就く必要がある求職者を特定し、就業までの時間を短縮するためにIndeed上のプロダクト進化を推進していきます。
2031年3月期までに、累計3,000万人(注27)の障壁に直面する求職者の就業を支援する目標に向けては、特に失業期間が長期化する要因となっている犯罪歴(注28)や求職活動のために必要な交通手段やテクノロジーにアクセスできない(注29)といった障壁に注力し、目的を共有するパートナーとの連携を通じてその低減に努めました。今後は、テクノロジーを活用した支援を進めるとともに、企業クライアントの中で高まるインクルーシブ・ハイアリング(注30)のニーズに応えていきます。
また、当社グループでは、創業以来、従業員一人ひとりの違いを大切にすることで新たな事業やサービスを生み出し、社会に価値を提供してきました。そこで、改めて、多様な従業員の価値創造に向けた意欲を最大化することを経営の重要テーマと位置付け、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DEI)に取組んでいます。
管理職の任用においても性別、国籍、年齢、採用経路等に関わらず多様性を重視し、特にジェンダーについては、当社グループ全体で2031年3月期までに上級管理職・管理職・従業員それぞれにおける女性比率を約50%とする目標を掲げています(注31)。
2022年3月期は、SBUごとにジェンダーギャップの根本課題の特定に注力するとともに、主要子会社のCEOやSBUの役員を意味する上級管理職の大胆な登用を進め、2022年4月1日時点の上級管理職における女性比率は約10%から約21%に上昇しました(注31)。2023年3月期からは、3カ年目標(注23)を定め、暗黙知の中にあるバイアス低減と女性候補者の拡大に向けた取組みを加速していきます。
・ガバナンス(G)
経営の透明性と健全性を向上し、意思決定の質を上げることを目指し、2031年3月期までに当社の監査役を含む取締役会構成員(注32)の女性比率を約50%にする目標を定めています。そして、2022年6月開催の定時株主総会を経て、女性の取締役会構成員の比率は20%から約27%に上昇しました(注32)。2023年3月期からは、3カ年目標(注23)を定め、女性候補者の拡大に向けた取組みを加速していきます。
また、執行取締役と主にテーマを推進する執行役員に対して、3カ年目標を定めたGHG排出量削減と女性比率向上の達成如何を2023年3月期からの長期インセンティブ報酬(注33)の一部に連動させることを、取締役会において決定しました。
| (注21) | 事業活動における温室効果ガス排出量は、スコープ1(オフィスにて直接排出される温室効果ガス)、スコープ2(オフィスにて間接的に排出される温室効果ガス)の合計。バリューチェーン全体における温室効果ガス排出量は、スコープ1、2に加えて、スコープ3(スコープ1、2を除く間接的に排出される温室効果ガス)を含む全て。カーボンニュートラルには、温室効果ガス排出量の削減に加え、残りの排出量のオフセットを含む。温室効果ガス測定後、2022年11月までに排出量に対する第三者認証を取得し、その後オフセットを行い、2022年3月期の温室効果ガスに対するカーボンニュートラルを達成する予定 |
| (注22) | IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) により報告された気候科学に基づき、地球温暖化を産業革命前の温度レベルと比較して1.5度以内に維持するために必要な脱炭素のレベルと一致するGHG排出削減目標 |
| (注23) | GHG排出削減目標については2023年3月期年度から2025年3月期の実績、従業員における女性比率目標については2022年4月1日時点から2025年4月1日時点までの実績、取締役会構成員における女性比率目標については2022年7月1日時点から2025年7月1日時点までの実績を対象とする。 |
| (注24) | 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が定める、気候変動関連リスク及び機会を示す項目 |
| (注25) | 2022年3月31日時点の基準値。Indeedの求人プラットフォームで就業したユーザーが就職活動を始めた時点から、その90%が採用オファーを獲得するまでの期間。2021年9月から2022年3月までの間に就業が確認できたデータから、統計上有効な数値として90%のユーザーが就業するまでに掛かった期間を集計 |
| (注26) | Indeedが事業展開する30か国を対象に17言語で2021年9月から12月までの間に実施した求職者サーベイ調査 |
| (注27) | 当社グループが運営する求人プラットフォーム上の応募を通じた就業、当社グループが支援するNPO等の団体を通じた就業等を含む。2031年3月期までに雇用市場における課題を見極めた上で様々な障壁の低減を行っていく。 |
| (注28) | 米国では約7,000万人に犯罪歴があり(出典:The Sentencing Project)、犯罪歴がある求職者の失業率は米国平均の約5倍(出典:Prison Policy Initiative)。しかし、出所後2カ月以内に最低賃金を上回る仕事に就くことができた場合、再犯率が大幅に減少することが分かっている(出典:The Urban Institute)。 |
| (注29) | インターネットに接続することができず求人プラットフォームにアクセスすることができない、面接や仕事に行くための交通手段がないといった、就職活動を阻害する障壁を示す。 |
| (注30) | 社会の多様性を反映した職場を実現するために、公正性を高めた採用を実現するための企業の取組みを示す。 |
| (注31) | 上級管理職は、当社及びメディア&ソリューション戦略ビジネスユニット(Strategic Business Unit、 以下SBU)においては執行役員/専門役員、HRテクノロジーSBUと人材派遣SBUにおいては主要子会社社長/重要機能トップを示す。管理職・従業員の女性比率は、リクルートホールディングス、全SBU統括会社及び各SBU配下の主要会社について集計。管理職は、部下を持つ全ての管理職 |
| (注32) | 取締役会構成員は、取締役及び監査役の合計を示す。なお、2022年5月16日時点の当社の取締役会構成員(取締役及び監査役)の女性比率は20%。 |
| (注33) | 長期インセンティブ BIP信託(株式)報酬の一部として設定し、3カ年目標の達成如何によって支給有無を決定する。 |
② SBU事業戦略
当社グループ全体の経営戦略を推進するために取組んでいる各SBU事業戦略は、以下のとおりです。
HRテクノロジー事業
より効率的な求職活動及び採用活動の需要に応え、テクノロジーと当社が保有する膨大なデータを活用することにより、IndeedとGlassdoorの求人広告事業及び採用ソリューション事業のグローバル市場での更なる売上収益の成長に注力していきます。
メディア&ソリューション事業
販促領域のオンラインプラットフォームを通じた販促支援は、各事業分野の市場における強固なポジションを活かし、継続的な成長を目指します。人材領域における人材マッチングサービスは、サービスの強化及びHRテクノロジー事業との連携を推進し、企業クライアント数の拡大を目指します。SaaSソリューションの提供においては、企業クライアントのアカウント数の成長に注力していきます。
人材派遣事業
幅広い業界で求職者への就業機会や企業クライアントへの柔軟な労働サービスを提供しながら、安定的な事業運営を目指します。日本では調整後EBITDAマージン水準の維持、欧州、米国及び豪州では調整後EBITDAマージンの継続的な改善に取組みます。
(4) キャピタルアロケーション方針
当社のキャピタルアロケーションは、以下を優先順位として設定しています。
- 既存事業の継続的な成長に資する開発費用及びマーケティング費用
- 安定的な1株当たりの配当の継続的な実施
- 人材マッチング市場におけるHRテクノロジー事業を中心とした戦略的M&A
- 市場環境及び財務状況の見通しを考慮した上での自己株式取得
資本効率について、ROE15%の水準を目安として設定しています。個別の投資案件の実行の是非を判断する際は、資本コストを上回るハードルレートを適用する等、資本効率の実現に取組んでいます。

