有価証券報告書-第20期(2024/01/01-2024/12/31)
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析の検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(業績等の概要)
(1)事業の進捗の状況
① 当期の経営成績
現在、トレアキシン®点滴静注液100mg/4mL[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]に関する市場環境については、コロナやインフルエンザ等感染症の流行により、ベンダムスチン治療中または治療後に感染が持続・重症化する可能性が懸念されているためベンダムスチンの処方が控えられる傾向があり、ベンダムスチン全体の市場規模にマイナスの影響を与えており、特に期の後半に影響が大きくなりました。加えて、後発品への切替が徐々に進んでいる状況です。これらのことから、売上高は2,452,912千円(前年同期比56.1%減、2024年5月7日に開示した修正通期業績予想比6.5%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、研究開発費が3,379,471千円(前年同期比28.1%増)と大きく増加しましたが、その他の販売費及び一般管理費を大きく削減し、販売費及び一般管理費合計では5,750,161千円と、前年同期比10.1%の増加に留まりました。
これらの結果、営業損失は3,876,971千円(前年同期は営業損失811,668千円)、外貨建資産の為替評価差益172,323千円もあり、経常損失は3,689,435千円(前年同期は経常損失736,130千円)、減損損失等として131,820千円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は3,833,480千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失1,962,817千円)と赤字が増加しましたが、2024年5月7日に開示しました修正通期業績予想と大きな乖離はありませんでした。
2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が取得し、内2社が同年に後発医薬品の販売を開始しました。ファイザー株式会社及び東和薬品株式会社が、当社製品であるトレアキシン®点滴静注液100mg/4mL(トレアキシン®)の後発医薬品につき、製造販売承認を得て販売を開始したことを受け、当社は、2022年12月に、トレアキシン®に係る特許権のライセンス元であるイーグル社と共同で、両社に対してそれぞれ特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止請求及び損害賠償請求訴訟を提起しておりましたが、連結会計年度末時点で両社に対する裁判はいずれも終了しております。
なお、2025年1月時点において、3社が後発医薬品を販売しております。
なお、当社グループの事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
② 研究開発活動
当連結会計年度においては、各開発パイプラインにおいて、以下のとおり研究開発を推進しました。
(ⅰ)抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)
移植後感染症領域
グローバル展開を見据えキメリックス・インク社(Chimerix Inc.、本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)から導入したBCVの注射剤(SyB V-1901、以下各々「IV BCV」)の事業展開については、二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)に対し広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。
IV BCVについては、造血幹細胞移植後や臓器移植後などの免疫不全状態にある患者のアデノウイルス(AdV)感染及び感染症の治療を対象に、IV BCVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス感染及び感染症を対象とする第Ⅱa相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)に治験許可申請(Investigational New Drug(IND)Application)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファストトラック指定を受けています。2023年5月、本試験において、IV BCVの抗アデノウイルス活性を認め、ヒトPOC(Proof of Concept)を確立し、2024年上半期に、第Ⅱa相臨床試験は完了しました。現在関係各国の規制当局との間で国際第Ⅲ相臨床試験の開始に向けて協議中で、同時に、国際共同治験実施のための当社体制の構築を進めてまいります。なお、本試験に関しては、当試験の有効性を示すポジティブ・データが欧米の各学会において口頭発表されました。また、本試験の結果に基づき出願したアデノウイルス感染及び感染症の治療に関するBCVの用途特許が2024年1月に日本において成立し登録されました。
造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス感染症患者を対象とした米国における第Ⅱa相臨床試験は、2024年5月に開始し、同年6月に第1例目の登録が行われ、現在試験が進行中です。
腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症に対する開発は、現在プロトコルの修正の検討を行っております。
ポリオーマウイルス、特にJCウイルス(JCV)は、dsDNAウイルスの中でも、その感染によって脳に重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果が見られないため、有効な治療薬の開発が待ち望まれています。2022年11月に米国ペンシルベニア州立大学医学部との間で試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、ポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの抗ウイルス活性を検証する非臨床試験を実施しています。また、2024年7月には、その研究成果の第一報として、新たな知見がmBio誌に公表されました。
血液腫瘍領域
BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されており、シンガポール国立がんセンター(NCCS: National Cancer Centre Singapore)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、EBウイルス陽性リンパ腫、難治性脳腫瘍等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。また、2022年12月、米国ニューオーリンズで開催された第64回米国血液学会年次総会(The 64th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting)において現在有効な治療方法が確立していない進行の早いNK/T細胞リンパ腫に対するBCVの治療効果に関するNCCSとの共同研究成果について口頭発表されました。さらに、2023年6月にはスイス・ルガーノで開催された第17回国際悪性リンパ腫会議(17th International Conference on Malignant Lymphoma: ICML)でBCVの抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーに関する研究成果について発表、2024年4月には、米国サンディエゴで開催された米国がん学会(AACR Annual Meeting 2024)においてB細胞リンパ腫に対するBCVの抗腫瘍効果について発表、さらに2024年6月スペイン・マドリードで開催された欧州血液学会(EHA2024 Hybrid Congress)において、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対するBCVの抗腫瘍効果について発表されました。
2024年8月には、がん領域におけるIV BCVのFIH(First in Human)試験として、悪性リンパ腫患者を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を開始しました。本試験はBCVのがん領域におけるヒトPOCを確立することを目的としています。
その他の領域
EBウイルス(EBV)の関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)について、2022年8月に、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)に所属する国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で、共同研究試料提供契約(Collaboration Agreement for The Transfer of Human Materials)を締結しました。2023年3月には、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結し、2023年10月にはその研究成果が、イタリア・ミラノで開催された第9回 ECTRIMS-ACTRIMS 合同学会(The 9th Joint ECTRIMS-ACTRIMS Meeting)において発表されました。現在、本共同研究ではマーモセット(非ヒト霊長類)を用いた試験を実施しております。米国国立衛生研究所に所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID:National Institute of Allergy and Infectious Diseases)との間で、EBウイルス関連リンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価する共同研究開発契約(CRADA)を2023年4月に締結しました。
dsDNAウイルスの中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)など、脳神経組織への指向性を有するものがあり、アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、それらが潜伏しているウイルスの再活性化が関与している可能性についての研究がこの数年進み、知見が増えています。2022年12月に米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養した脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を実施しています。
2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・エムポックスを含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした、全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。
2024年3月には、当社の子会社であるシンバイオ ファーマ アイルランド(SymBio Pharma Ireland Limited、アイルランド ダブリン)の設立に伴い、エマージェント・バイオソリューションズ社から、EU(欧州連合)における免疫不全患者におけるアデノウイルス感染症とサイトメガロウイルス感染症予防に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定が移管されました。
(ⅱ) 抗がん剤 SyB L-1701(RTD製剤)/ SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)
東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな開発の可能性を探索しております。
(ⅲ)抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)
オンコノバ・セラピューティクス社(Onconova Therapeutics, Inc.、本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」)から導入したリゴセルチブ注射剤については、リゴセルチブとトレアキシン®に関して、東京大学との共同研究及び社会連携講座の設置などを通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っております。なお、2024年4月オンコノバ社はトラウスファーマ社(Traws Pharma Inc.、本社:米国ペンシルベニア州)に社名を変更いたしました。
③ 海外事業
引き続き、シンバイオファーマUSAをIV BCVのグローバル事業の戦略的拠点とし、欧米日英においての開発を加速し、商業化を実現するために活動を発展させてまいります。2025年1月1日付で、シンバイオファーマUSAの取締役CEO兼社長として、当社執行役員兼社長補佐である田口賢を選任し、2030年に向けた当社のBCV事業の牽引を目指します。
④ 新規開発候補品の導入
当社グループは2019年に導入したBCVのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品の探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。
⑤ 設備投資等の状況
当連結会計年度中に実施いたしました当社グループの設備投資等の総額は、46,878千円で、その主なものは、事務所設備・什器、ネットワーク機器及び業務用ソフトウエアの購入等であります。
⑥ 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は4,968,333千円となりました。流動資産は4,924,231千円となり、主な内訳は、現金及び預金が3,963,580千円、売掛金が423,153千円、商品及び製品が115,188千円であります。固定資産は減損した結果、敷金及び保証金44,102千円となりました。
負債の部については、総額770,772千円となりました。流動負債は766,169千円となり、主な内訳は、未払金が635,852千円であります。固定負債は4,603千円となり、内訳は、退職給付に係る負債4,603千円であります。純資産の部については、総額4,197,560千円となりました。主な内訳は、資本金が18,336,841千円、資本剰余金が18,311,713千円、新株予約権が316,758千円であります。
この結果、自己資本比率は78.1%となりました。
⑦ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、3,963,580千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純損失3,806,957千円の計上、減損損失131,820千円の発生、売上債権489,940千円の減少、棚卸資産54,663千円の減少等により営業活動資金が増加、未払又は未収消費税等65,693千円の減少等により、全体では3,416,518千円の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出19,816千円、無形固定資産の取得による支出27,061千円等により、全体では3,955千円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
新株の発行による収入728,850千円等により、全体では708,472千円の増加となりました。
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1. 当社グループは、第18期より連結財務諸表を作成しているため、第17期以前の各数値は記載しておりません。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
3. 第18期以降は利払いがないため、債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載していません。
⑧ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは生産を行っていないため、該当事項はありません。
(仕入実績)
当連結会計年度の仕入実績は次のとおりであります。
(注) 当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
ため、セグメント別の記載を省略しております。
(受注実績)
当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
(注) 1.当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
⑨ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは、新規開発品の導入と、その研究開発に対して積極的に資金を投下して参りました。
また、安定的に運転資金を確保することを目的として銀行から融資枠の設定を受けております。
当面の資金需要に関しては、事業から生じるキャッシュ・フロー及び自己資金により賄うことを基本方針としております。
一方、今後の資金需要を想定し、内部資金を充当することに加え、資金調達と共にグローバル製薬会社との業務提携を中長期的に検討いたします。
⑩ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(業績等の概要)
(1)事業の進捗の状況
① 当期の経営成績
現在、トレアキシン®点滴静注液100mg/4mL[RTD (Ready-To-Dilute)製剤]に関する市場環境については、コロナやインフルエンザ等感染症の流行により、ベンダムスチン治療中または治療後に感染が持続・重症化する可能性が懸念されているためベンダムスチンの処方が控えられる傾向があり、ベンダムスチン全体の市場規模にマイナスの影響を与えており、特に期の後半に影響が大きくなりました。加えて、後発品への切替が徐々に進んでいる状況です。これらのことから、売上高は2,452,912千円(前年同期比56.1%減、2024年5月7日に開示した修正通期業績予想比6.5%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、研究開発費が3,379,471千円(前年同期比28.1%増)と大きく増加しましたが、その他の販売費及び一般管理費を大きく削減し、販売費及び一般管理費合計では5,750,161千円と、前年同期比10.1%の増加に留まりました。
これらの結果、営業損失は3,876,971千円(前年同期は営業損失811,668千円)、外貨建資産の為替評価差益172,323千円もあり、経常損失は3,689,435千円(前年同期は経常損失736,130千円)、減損損失等として131,820千円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は3,833,480千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失1,962,817千円)と赤字が増加しましたが、2024年5月7日に開示しました修正通期業績予想と大きな乖離はありませんでした。
2022年2月に当社製品トレアキシン®RTD製剤を先発医薬品とする後発医薬品の製造販売承認を4社が取得し、内2社が同年に後発医薬品の販売を開始しました。ファイザー株式会社及び東和薬品株式会社が、当社製品であるトレアキシン®点滴静注液100mg/4mL(トレアキシン®)の後発医薬品につき、製造販売承認を得て販売を開始したことを受け、当社は、2022年12月に、トレアキシン®に係る特許権のライセンス元であるイーグル社と共同で、両社に対してそれぞれ特許権侵害に基づく後発医薬品の製造販売の差止請求及び損害賠償請求訴訟を提起しておりましたが、連結会計年度末時点で両社に対する裁判はいずれも終了しております。
なお、2025年1月時点において、3社が後発医薬品を販売しております。
なお、当社グループの事業は医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。
② 研究開発活動
当連結会計年度においては、各開発パイプラインにおいて、以下のとおり研究開発を推進しました。
(ⅰ)抗ウイルス薬SyB V-1901(一般名:brincidofovir<ブリンシドフォビル>「BCV」)
移植後感染症領域
グローバル展開を見据えキメリックス・インク社(Chimerix Inc.、本社:米国ノースカロライナ州、以下「キメリックス社」)から導入したBCVの注射剤(SyB V-1901、以下各々「IV BCV」)の事業展開については、二本鎖DNAウイルス(dsDNAウイルス)に対し広範な活性を有することから、国内及び海外の専門領域の有力な研究施設と共同研究を進めており、研究成果である科学的知見を基にグローバルの臨床試験を検討、実施してまいります。
IV BCVについては、造血幹細胞移植後や臓器移植後などの免疫不全状態にある患者のアデノウイルス(AdV)感染及び感染症の治療を対象に、IV BCVのグローバル開発を優先的に進めることを決定し、2021年3月に、主に小児対象(成人も含む)のアデノウイルス感染及び感染症を対象とする第Ⅱa相臨床試験を開始するため、米国食品医薬品局(FDA)に治験許可申請(Investigational New Drug(IND)Application)を行いました。本開発プログラムについては、2021年4月に、FDAからファストトラック指定を受けています。2023年5月、本試験において、IV BCVの抗アデノウイルス活性を認め、ヒトPOC(Proof of Concept)を確立し、2024年上半期に、第Ⅱa相臨床試験は完了しました。現在関係各国の規制当局との間で国際第Ⅲ相臨床試験の開始に向けて協議中で、同時に、国際共同治験実施のための当社体制の構築を進めてまいります。なお、本試験に関しては、当試験の有効性を示すポジティブ・データが欧米の各学会において口頭発表されました。また、本試験の結果に基づき出願したアデノウイルス感染及び感染症の治療に関するBCVの用途特許が2024年1月に日本において成立し登録されました。
造血幹細胞移植後のサイトメガロウイルス感染症患者を対象とした米国における第Ⅱa相臨床試験は、2024年5月に開始し、同年6月に第1例目の登録が行われ、現在試験が進行中です。
腎移植後のBKウイルス(BKV)感染症に対する開発は、現在プロトコルの修正の検討を行っております。
ポリオーマウイルス、特にJCウイルス(JCV)は、dsDNAウイルスの中でも、その感染によって脳に重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果が見られないため、有効な治療薬の開発が待ち望まれています。2022年11月に米国ペンシルベニア州立大学医学部との間で試料提供契約(MTA:Material Transfer Agreement)を締結し、ポリオーマウイルス感染マウスモデルにおけるBCVの抗ウイルス活性を検証する非臨床試験を実施しています。また、2024年7月には、その研究成果の第一報として、新たな知見がmBio誌に公表されました。
血液腫瘍領域
BCVは高い抗ウイルス作用に加え、抗腫瘍効果も確認されており、シンガポール国立がんセンター(NCCS: National Cancer Centre Singapore)やカリフォルニア大学サンフランシスコ校脳神経外科脳腫瘍センターとの共同研究等を通じて、EBウイルス陽性リンパ腫、難治性脳腫瘍等、がん領域における新規適応症の探索も行っています。また、2022年12月、米国ニューオーリンズで開催された第64回米国血液学会年次総会(The 64th American Society of Hematology (ASH) Annual Meeting)において現在有効な治療方法が確立していない進行の早いNK/T細胞リンパ腫に対するBCVの治療効果に関するNCCSとの共同研究成果について口頭発表されました。さらに、2023年6月にはスイス・ルガーノで開催された第17回国際悪性リンパ腫会議(17th International Conference on Malignant Lymphoma: ICML)でBCVの抗腫瘍効果を予測するバイオマーカーに関する研究成果について発表、2024年4月には、米国サンディエゴで開催された米国がん学会(AACR Annual Meeting 2024)においてB細胞リンパ腫に対するBCVの抗腫瘍効果について発表、さらに2024年6月スペイン・マドリードで開催された欧州血液学会(EHA2024 Hybrid Congress)において、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)に対するBCVの抗腫瘍効果について発表されました。
2024年8月には、がん領域におけるIV BCVのFIH(First in Human)試験として、悪性リンパ腫患者を対象とした国際共同第Ⅰb相臨床試験を開始しました。本試験はBCVのがん領域におけるヒトPOCを確立することを目的としています。
その他の領域
EBウイルス(EBV)の関連疾患であることが近年証明された難病の多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)について、2022年8月に、米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)に所属する国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)との間で、共同研究試料提供契約(Collaboration Agreement for The Transfer of Human Materials)を締結しました。2023年3月には、多発性硬化症の治療におけるBCVのEBウイルスに対する効果を検証し、今後の臨床試験の実施に向けて必要とされる情報を得ることを目的として共同研究開発契約(CRADA:Cooperative Research and Development Agreement)を締結し、2023年10月にはその研究成果が、イタリア・ミラノで開催された第9回 ECTRIMS-ACTRIMS 合同学会(The 9th Joint ECTRIMS-ACTRIMS Meeting)において発表されました。現在、本共同研究ではマーモセット(非ヒト霊長類)を用いた試験を実施しております。米国国立衛生研究所に所属する国立アレルギー・感染症研究所(NIAID:National Institute of Allergy and Infectious Diseases)との間で、EBウイルス関連リンパ増殖性疾患に対するBCVの有効性を評価する共同研究開発契約(CRADA)を2023年4月に締結しました。
dsDNAウイルスの中には単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)をはじめ水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)など、脳神経組織への指向性を有するものがあり、アルツハイマー型認知症を含めた様々な脳神経領域の重篤性疾患に、それらが潜伏しているウイルスの再活性化が関与している可能性についての研究がこの数年進み、知見が増えています。2022年12月に米国タフツ大学により確立されたヒト神経幹細胞を培養した脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染に対するBCVの効果を検証するための委託研究契約(Sponsored Research Agreement)を締結し、共同研究を実施しています。
2022年9月、キメリックス社はエマージェント・バイオソリューションズ社(本社:米国メリーランド州)へのBCVに関する権利の譲渡手続きの完了を発表しましたが、当社の取得したBCVに関する、天然痘・エムポックスを含むオルソポックスウイルスの疾患を除いたすべての適応症を対象とした、全世界での独占的開発・製造・販売権に対する影響はありません。
2024年3月には、当社の子会社であるシンバイオ ファーマ アイルランド(SymBio Pharma Ireland Limited、アイルランド ダブリン)の設立に伴い、エマージェント・バイオソリューションズ社から、EU(欧州連合)における免疫不全患者におけるアデノウイルス感染症とサイトメガロウイルス感染症予防に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定が移管されました。
(ⅱ) 抗がん剤 SyB L-1701(RTD製剤)/ SyB L-1702(RI投与)(一般名:ベンダムスチン塩酸塩水和物、製品名:トレアキシン®)
東京大学や京都大学との共同研究等に積極的に取り組み、新たな開発の可能性を探索しております。
(ⅲ)抗がん剤SyB L-1101(注射剤) / SyB C-1101(経口剤)(一般名:リゴセルチブナトリウム)
オンコノバ・セラピューティクス社(Onconova Therapeutics, Inc.、本社:米国ペンシルベニア州、以下「オンコノバ社」)から導入したリゴセルチブ注射剤については、リゴセルチブとトレアキシン®に関して、東京大学との共同研究及び社会連携講座の設置などを通じて、両化合物あるいは他の既存薬との併用により新たな有用性を見出すとともに新規適応症の探索を行っております。なお、2024年4月オンコノバ社はトラウスファーマ社(Traws Pharma Inc.、本社:米国ペンシルベニア州)に社名を変更いたしました。
③ 海外事業
引き続き、シンバイオファーマUSAをIV BCVのグローバル事業の戦略的拠点とし、欧米日英においての開発を加速し、商業化を実現するために活動を発展させてまいります。2025年1月1日付で、シンバイオファーマUSAの取締役CEO兼社長として、当社執行役員兼社長補佐である田口賢を選任し、2030年に向けた当社のBCV事業の牽引を目指します。
④ 新規開発候補品の導入
当社グループは2019年に導入したBCVのグローバル開発を推進するとともに、従来からの取り組みである複数のライセンス案件の検討を進め、新規開発候補品の探索評価の実施を通じて、収益性と成長性を兼ね備えたバイオ製薬企業として中長期的な事業価値の創造を目指してまいります。
⑤ 設備投資等の状況
当連結会計年度中に実施いたしました当社グループの設備投資等の総額は、46,878千円で、その主なものは、事務所設備・什器、ネットワーク機器及び業務用ソフトウエアの購入等であります。
⑥ 財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は4,968,333千円となりました。流動資産は4,924,231千円となり、主な内訳は、現金及び預金が3,963,580千円、売掛金が423,153千円、商品及び製品が115,188千円であります。固定資産は減損した結果、敷金及び保証金44,102千円となりました。
負債の部については、総額770,772千円となりました。流動負債は766,169千円となり、主な内訳は、未払金が635,852千円であります。固定負債は4,603千円となり、内訳は、退職給付に係る負債4,603千円であります。純資産の部については、総額4,197,560千円となりました。主な内訳は、資本金が18,336,841千円、資本剰余金が18,311,713千円、新株予約権が316,758千円であります。
この結果、自己資本比率は78.1%となりました。
⑦ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、3,963,580千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純損失3,806,957千円の計上、減損損失131,820千円の発生、売上債権489,940千円の減少、棚卸資産54,663千円の減少等により営業活動資金が増加、未払又は未収消費税等65,693千円の減少等により、全体では3,416,518千円の減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
有形固定資産の取得による支出19,816千円、無形固定資産の取得による支出27,061千円等により、全体では3,955千円の減少となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
新株の発行による収入728,850千円等により、全体では708,472千円の増加となりました。
| 第18期 2022年12月期 | 第19期 2023年12月期 | 第20期 2024年12月期 | |
| 自己資本比率(%) | 77.6 | 84.9 | 78.1 |
| 時価ベースの自己資本比率(%) | 243.6 | 127.55 | 183.60 |
| 債務償還年数(年) | ― | ― | ― |
| インタレスト・カバレッジ・レシオ | ― | ― | ― |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
債務償還年数:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注) 1. 当社グループは、第18期より連結財務諸表を作成しているため、第17期以前の各数値は記載しておりません。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。
3. 第18期以降は利払いがないため、債務償還年数及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載していません。
⑧ 生産、受注及び販売の状況
(生産実績)
当社グループは生産を行っていないため、該当事項はありません。
(仕入実績)
当連結会計年度の仕入実績は次のとおりであります。
| 当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) | ||
| 仕入高(千円) | 前年同期比(%) | |
| 仕入 | 525,060 | 55.8 |
| 合計 | 525,060 | 55.8 |
(注) 当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントである
ため、セグメント別の記載を省略しております。
(受注実績)
当社は受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
(販売実績)
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
| 当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) | ||
| 販売高(千円) | 前年同期比(%) | |
| 商品及び製品販売 | 2,452,912 | 43.9 |
| マイルストーン収入 | - | |
| 合計 | 2,452,912 | 43.9 |
(注) 1.当社グループの事業は、医薬品等の研究開発及び製造販売並びにこれらの付随業務の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) | 当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) | ||
| 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
| 株式会社スズケン | 3,316,841 | 59.3 | 1,438,684 | 58.7 |
| 東邦薬品株式会社 | 2,272,867 | 40.7 | 1,014,228 | 41.3 |
⑨ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループは、新規開発品の導入と、その研究開発に対して積極的に資金を投下して参りました。
また、安定的に運転資金を確保することを目的として銀行から融資枠の設定を受けております。
当面の資金需要に関しては、事業から生じるキャッシュ・フロー及び自己資金により賄うことを基本方針としております。
一方、今後の資金需要を想定し、内部資金を充当することに加え、資金調達と共にグローバル製薬会社との業務提携を中長期的に検討いたします。
⑩ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。