有価証券報告書-第16期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
業績等の概要
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績
当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、2007年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。
最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究が多く行われるようになりました。日本でも昨年8月、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、今後ますますiPS細胞の活用が広がっていくと期待されます。
さらに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が2014年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
このような事業環境の下、当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
セグメントごとの詳細な当連結会計年度の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。
この結果、当連結会計年度の売上高は926百万円(前年同期比 26.4%減)、営業損失は1,025百万円(前年同期 944百万円の損失)、経常損失は935百万円(前年同期 937百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,172百万円(前年同期 911百万円の損失)となりました。
売上高については、当初予想していた成長事業として、欧米における創薬支援サービスを中心に売上の増加を見込んでおりました。しかし、実際には予定していた案件の一部について当期中に受注することができず、引き続き顧客との交渉を続けております。
また、前連結会計年度においては、下記の一時的な大きな売上が2つ含まれておりました。
1つ目は、REPROCELL Europe(前Biopta社)が前々年度(2016年3月期)より前から進めていた総額150百万円相当のサービス業務があり、決算期をまたいで納品されたことにより、前年度(2017年3月期)の売上及び費用として計上していたものです。
2つ目は、REPROCELL USA Inc.の決算期を12月31日から3月31日に変更したことで、前連結会計年度はREPROCELL USA Inc.のみ2016年1月1日から2017年3月31日まで15か月分の売上高及び費用を計上しており、最後の3か月間の売上高については118百万円となっておりました。
上記の2つの一時的な売上高を合計した268百万円による影響額を除いて比較すると、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と同水準となっており、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
a.研究支援事業
現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の良い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。
当社グループでは、ヒトiPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しております。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えております。このように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、製薬企業では、自社研究所内で実施している新薬候補化合物のスクリーニングや毒性試験など専門性の高い研究の一部を、高度な技術を保有する外部の専門機関に委託する需要が増加しています。
当社グループではこのような需要に対応し、iPS細胞技術を含む高度な技術を用いた受託ビジネスを積極的に展開するため、ヒトiPS細胞の研究施設を日米欧の3拠点に集約・設置いたしました。これらの拠点では、アルツハイマー病など各種患者由来のiPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。多くの大手製薬企業やバイオテック企業が研究拠点を置いている日米欧でこれらのサービスを提供することにより、研究支援ビジネスをさらに加速してまいります。
具体的には、米国ではREPROCELL USA本社の研究施設を拡張し、米国内に2か所あった研究施設を1か所に統合いたしました。さらに欧州のREPROCELL Europe内には、新施設「Centre for Predictive Drug Discovery」を開設いたしました。日本では、新しい創薬支援サービスとして、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室にバンキングされている疾患特異的iPS細胞を活用し、疾患特異的な機能性細胞を提供するサービスの提供を開始いたしました。
最先端の技術を用いた創薬支援サービスを各地域で素早く提供できるよう、研究施設を集約することにより、競合優位性を高め、事業を積極的に推進してまいります。
さらに、当社グループは日米欧だけでなくインドにも進出を開始いたしました。2017年4月にアメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)と戦略的業務提携を行い、今後、インドにおいて合弁会社を設立する事を決定いたしました。今後FCCCで採取された、質の高いがん組織を供給することや、人口数世界第2位のインドで圧倒的な数のがん及びヒト組織を採取することが可能となります。これにより、細胞調達能力をさらに強化し、グループ事業の競争力をより一層強化してまいります。
製薬企業では、前述の通りヒト細胞を活用した実験へのシフトが進んでおりますが、その他にもヒト細胞自体を用いた再生医療製品の開発に取り組む企業も増加しており、高い安全性が求められる再生医療向けの臨床用試薬に対するニーズも高まっております。当社グループでは、現在販売を行っている研究向け試薬の改良を行い、再生医療向け臨床用試薬の開発を行っています。
再生医療向け臨床研究用試薬としてヒトiPS細胞用培養液「ReproMed iPSC Medium」を開発し、2018年4月より発売しております。本試薬は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療等製品の原材料としての適格性が確認されています。本製品を用いて拡大培養したiPS細胞から、心筋細胞、神経細胞、肝細胞などへ効率よく分化誘導できることも確認しており、優れた性能を有しております。本製品は安全性が高く、かつ、優れた性能を有しており、iPS細胞の再生医療向けとして最適な培養液となっております。
さらに、同じく再生医療等製品向け試薬としてヒトiPS細胞用凍結保存液「ReproCryo RM」(リプロクライオ アールエム)を開発、上市いたしました。本試薬はPMDAにおいてマスターファイル(原料等登録原簿)登録され、臨床用iPS細胞を用いた細胞医薬品の開発に最適な製品となっています。
当社グループでは、拡大する再生医療市場に向けた臨床用試薬の販売を積極的に行っていくとともに、今後自社の再生医療事業へも活用してまいります。
当社グループと外部研究機関による共同研究では、研究課題3件に対して補助金交付が決定しました。
当社グループでは公的補助金の有効活用や産学連携により、日米欧の3拠点で積極的に研究開発活動を推進しております。今後も競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関との連携及び技術シーズの導入を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、たゆまぬ技術革新に取り組んでまいります。
最後に、化粧品販売事業を行っている当社関連子会社のリプロキレート社が第1号製品「セルアージュ バイオマスク」の販売を開始しました。化粧品関連の市場規模(出荷額ベース)は2016年で1兆5千億円を超えており、その中でも本製品が属する「皮膚用化粧品」は50%近い出荷額を占めています。当社グループでは、引き続き幹細胞の培養技術を活かした化粧品の共同開発を推進し、新製品の開発を行ってまいります。
この結果、売上高は872百万円(前年同期比27.7%減)、セグメント損失は173百万円(前年同期117百万円の損失)となりました。
b.メディカル事業
再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んにおこなわれており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。そして、なにより画期的な再生医療製品の開発による医療の発展を、世界中の患者が待ち望んでいます。
特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保であり、遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が挙げられています。
当社グループでは、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「第3世代RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。
メディカル事業では本技術の臨床応用を進め、再生医療製品の早期承認を目指しております。また、再生医療とは別に、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、1号パイプラインとして、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」の治験準備を進めております。
ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品です。当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。
脊髄小脳変性症は小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の疾患です。日本では指定難病とされており、患者数は約3万人と言われている希少疾患です。
日本では、治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、早期に承認を得る事が可能であり、再生医療製品の開発を加速化できる環境が整っています。さらに、ステムカイマルは台湾において既にⅠ/Ⅱa相の治験を完了しており、安全性に問題無い旨が確認されております。
これらの制度や台湾での治験データを活用し、患者様へ少しでも早く新しい治療法を届けられるよう、事業を推進してまいります。
2号パイプラインとしては、米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品の研究開発に取り組んでいます。
当社は、独自の強みとして、次世代のiPS細胞作製技術であるRNAリプログラミング法により、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を保有しています。一方Qセラ社では、米国においてiPS細胞と異なる細胞(体性幹細胞)を用いて再生医療製品の開発を進めており、米国FDAに対して筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした治験申請(IND)を完了しています。
再生医療製品であるiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の開発を加速するため、当社とQセラ社は、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立いたしました。MQ社では、iGRPの前臨床試験の実施、及び、その後の臨床開発を行い、中枢神経領域の様々な疾患を対象とした再生医療技術の商業化権のライセンスアウトを行います。
日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)に関しては、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。さらに、他の中枢神経系疾患及び他の地域においても、当社がiGRPの独占的な製造ライセンス契約を締結しており、さらなる適用拡大を進めてまいります。2号パイプラインにより、当社は、自社のiPS細胞技術を用いて様々な中枢神経疾患に有効な再生医療製品の実用化を目指し、中長期の事業の成長を推進してまいります。
臨床検査関連事業では、当連結会計年度において、主力検査項目の抗HLA抗体スクリーニング検査と抗HLA抗体シングル抗原同定検査が、全ての臓器移植後の検査として保険収載されました。これにより、今後これらの検査を行う医療機関の増加が見込まれるため、当社として積極的に受注を獲得してまいります。
さらに、日立化成株式会社と契約を締結し、同社が開発した研究用試薬ExoCompleteキット(尿中エクソソームからのmRNA抽出キット)を用いて、腎臓移植後の免疫拒絶反応を早期検出する検査「尿中エクソソーム腎移植モニタリング検査」を開始しております。
この結果、売上高は53百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント損失は7百万円(前年同期11百万円の利益)となりました。
なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が753百万円あります。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて160百万円増加し、5,580百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は636百万円(前年同期は775百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,281百万円が発生した一方、減損損失1,324百万円、のれん償却費133百万円等の発生によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は228百万円(前年同期は685百万円の獲得)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出206百万円が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は1,028百万円(前年同期は1,127百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,031百万円によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.メディカル事業に生産実績はありません。
(2) 受注実績
当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて69百万円増加し、5,979百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加160百万円、商品及び製品の減少52百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて1,325百万円減少し、617百万円となりました。主な内訳は、無形固定資産の減少1,467百万円、投資その他の資産の増加165百万円であります。
セグメント別に示すと、研究支援事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて1,498百万円減少し、589百万円となりました。また、メディカル事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて124百万円増加し、142百万円となりました。なお、各報告セグメントに配分していない全社資産については、前連結会計年度末に比べて117百万円増加し、5,865百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて20百万円減少し、261百万円となりました。主な内訳は、買掛金の減少12百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて115百万円減少し、88百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の減少112百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて1,120百万円減少し、6,248百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加519百万円、資本剰余金の増加519百万円、利益剰余金の減少2,172百万円であります。
(2) 経営成績の分析
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。
(3) キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2018年3月期における研究開発費の総額は191百万円と、販売費及び一般管理費の約14%を占めています。今後も研究開発は積極的に推進する予定であり、継続的な研究開発費の支出を見込んでいます。
(5) 資金の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当連結会計年度末における当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,573百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、十分な流動性を確保しています。
(6) 経営戦略の現状と見通し
2019年3月期の業績につきましては、売上高1,167百万円(前期比26.1%増)、営業損失757百万円(前年同期は1,025百万円の損失)、経常損失709百万円(前年同期は935百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失709百万円(前年同期は2,172百万円の損失)を見込んでおります。
2018年3月期(前事業年度)において売上高は926百万円となり、2017年3月期実績1,257百万円を下回る結果となりました。ただし、2017年3月期実績には、2つの一時的な売上が含まれており、影響額を除いて比較すると前事業年度と2017年3月期は同水準の売上高となっています。そのため、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
また、当社グループが注力している創薬支援サービスについては、将来的に売上高につながる受注数やリード件数をみた場合、成長傾向が見られており、引き続き事業を推進してまいります。また、2018年4月にインドの企業Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.の株式を取得しており、同社の売上高が取り込まれます。
また、費用面では、ステムカイマルの治験準備費用や、iPS細胞を活用した再生医療製品の研究開発費の計上を想定しております。
連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=110円、1英ポンド=140円を前提としております。
また、2018年3月期(前事業年度)は減損損失の発生により大幅な損失を計上しておりますが、2019年3月期においてはそのような特別な要因は想定しておりません。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
① 研究支援事業
当社グループでは、iPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しています。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えています。
以上のように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで多様化する顧客ニーズに対応し、より一層競合優位性を高めてまいります。
特に、この2~3年は「創薬支援サービス」の事業拡大に注力してまいりました。前連結会計年度に受注したファンケル社との共同開発案件を進めるとともに、日米欧の製薬及びバイオ企業等からiPS細胞樹立サービスやヒト細胞・組織を使用した薬剤スクリーニングサービスなどを受託しております。今後とも、引き続き営業活動を強化し、受注を拡大してまいります。
② メディカル事業
iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題としては安全性の確保があり、遺伝子の変異、がん化のリスク等が挙げられています。当社グループでは、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を開発・保有しており、本技術を用いたビジネスを行っています。
現在、ステミネント社から導入した再生医療製品ステムカイマルの脊椎小脳変性症をターゲットとした治験準備を進めており、早期に治験を開始した後、2020年頃に承認申請を行う予定です。
さらに、iPS細胞を活用した再生医療製品としてiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で行っております。中長期的には本研究開発の技術によりiPS細胞の再生医療事業を牽引してまいります。
今後の成長事業として、引き続きメディカル事業を積極的に推進してまいります。
海外事業については、上場以来約4年の間、海外子会社の買収や海外代理店との販売提携により、グローバル展開を積極的に進め、現在では連結売上高の約7割を海外が占めるまでにグローバル化を実現しました。今後もインドや中国なども視野に入れて引き続きグローバル展開を拡大するとともに、各地域での活動を強化することによって、事業の成長に貢献してまいります。
以上、事業展開及びグローバル展開ともに順調に進んでおり、今後とも、この成長戦略のもとに事業を拡大してまいります。
また、経営資源を有効活用して、スケジュールに沿った事業計画を達成するため、以下の3点を優先して進めてまいります。
(a) グローバルにおける事業成長
iPS細胞事業の市場は、グローバルで成長しています。現在、日本、米国、欧州が世界の主力市場であり、当社グループでは、米国市場をREPROCELL USA Inc.、欧州市場をREPROCELL Europe Ltd.、日本市場を株式会社リプロセルが担当し、それぞれの地域でグループ製品及び受託サービスの販売拡大に取り組んでおります。
さらに当連結会計年度では、インドに米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」との合弁会社設立を決定しました。FCCCで採取された質の高いがん及びヒト組織の供給を通じて細胞調達能力を向上させることで、競争力をより一層強化してまいります。
今後は、日米欧の3拠点に加え、インドでも事業を展開することで更なる事業成長を目指すとともに、将来の大きな市場が見込まれる中国への展開も視野に入れながら、事業を拡大してまいります。
(b) グループシナジーの追求と技術開発の加速
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が繰り広げられており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。
当社グループは、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。特に、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規技術の開発を行ってまいります。
さらに、引き続き、京都大学、慶応義塾大学等の日本のトップ大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に導入してまいります。
(c) 再生医療事業の加速
ステミネント社から導入した細胞医薬品ステムカイマルの治験開始に向けた準備を着実に進め、2020年頃の承認申請を目指します。
さらに、当連結会計年度よりiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Qセラ社と開始いたしました。当社とQセラ社の技術を組み合わせることで、安定的に供給可能なiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)を開発してまいります。さらに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と横断性脊髄炎(TM)を対象とした再生医療製品として早期の承認取得を目指してまいります。
また、国内外の未上場のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーを投資対象とする、株式会社新生銀行との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を通じ、世界中の革新的な技術シーズの確保と育成、そして連携を図ります。
(7) 経営者の問題意識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)業績
当社グループの事業領域であるiPS細胞関連の研究は、2007年に山中伸弥教授がヒトiPS細胞を発見して以来、世界中の研究施設で盛んに行われるようになっております。
最近では、iPS細胞を活用した病態解明や再生医療への応用など、実用的な研究が多く行われるようになりました。日本でも昨年8月、希少難病の患者から作製したiPS細胞を活用して病態を解明し、新薬候補の治験へつなげた事例が報告され、今後ますますiPS細胞の活用が広がっていくと期待されます。
さらに「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が2014年11月25日に施行されました。本法律は、治験において安全性が確認され、有効性が推定された再生医療等製品に対して早期承認(条件・期限付き承認)を与えることにより、患者に対して新たな治療機会を早期に提供すると共に、治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる制度です。本法律の施行により、わが国は世界で最も再生医療の産業化に適した環境が整いつつあります。また、経済産業省の試算(「再生医療の実用化・産業化に関する研究会の最終報告」)によると、再生医療産業のグローバルでの市場規模は2030年で約17兆円、2050年で約53兆円となっており、今後、巨大市場に成長することが見込まれています。
このような事業環境の下、当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
セグメントごとの詳細な当連結会計年度の成績に関しては、後述のセグメント別の業績にて記載いたします。
この結果、当連結会計年度の売上高は926百万円(前年同期比 26.4%減)、営業損失は1,025百万円(前年同期 944百万円の損失)、経常損失は935百万円(前年同期 937百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,172百万円(前年同期 911百万円の損失)となりました。
売上高については、当初予想していた成長事業として、欧米における創薬支援サービスを中心に売上の増加を見込んでおりました。しかし、実際には予定していた案件の一部について当期中に受注することができず、引き続き顧客との交渉を続けております。
また、前連結会計年度においては、下記の一時的な大きな売上が2つ含まれておりました。
1つ目は、REPROCELL Europe(前Biopta社)が前々年度(2016年3月期)より前から進めていた総額150百万円相当のサービス業務があり、決算期をまたいで納品されたことにより、前年度(2017年3月期)の売上及び費用として計上していたものです。
2つ目は、REPROCELL USA Inc.の決算期を12月31日から3月31日に変更したことで、前連結会計年度はREPROCELL USA Inc.のみ2016年1月1日から2017年3月31日まで15か月分の売上高及び費用を計上しており、最後の3か月間の売上高については118百万円となっておりました。
上記の2つの一時的な売上高を合計した268百万円による影響額を除いて比較すると、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度と同水準となっており、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
セグメント別の業績を示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
a.研究支援事業
現在、世界中の製薬企業では、動物愛護の観点や、ヒトと動物の種の違いによる試験結果の差といった問題点などから「動物実験からヒト細胞実験」への大きなシフトが進んでいます。今後、ヒト細胞実験が普及することで、これまで十数年かかっていた新薬開発のプロセスが大幅に短縮され、さらに、従来と比べて性能の良い新薬が開発できることが期待されています。中でもヒトiPS細胞はその中心的存在として注目を集めており、例えば、アルツハイマー病患者の血液から作製したiPS細胞を研究で使うことで、アルツハイマー病の病態解明及び新薬開発が加速されると期待されています。
当社グループでは、ヒトiPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しております。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えております。このように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで、より一層、競合優位性を高めてまいります。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、製薬企業では、自社研究所内で実施している新薬候補化合物のスクリーニングや毒性試験など専門性の高い研究の一部を、高度な技術を保有する外部の専門機関に委託する需要が増加しています。
当社グループではこのような需要に対応し、iPS細胞技術を含む高度な技術を用いた受託ビジネスを積極的に展開するため、ヒトiPS細胞の研究施設を日米欧の3拠点に集約・設置いたしました。これらの拠点では、アルツハイマー病など各種患者由来のiPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。多くの大手製薬企業やバイオテック企業が研究拠点を置いている日米欧でこれらのサービスを提供することにより、研究支援ビジネスをさらに加速してまいります。
具体的には、米国ではREPROCELL USA本社の研究施設を拡張し、米国内に2か所あった研究施設を1か所に統合いたしました。さらに欧州のREPROCELL Europe内には、新施設「Centre for Predictive Drug Discovery」を開設いたしました。日本では、新しい創薬支援サービスとして、国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンター細胞材料開発室にバンキングされている疾患特異的iPS細胞を活用し、疾患特異的な機能性細胞を提供するサービスの提供を開始いたしました。
最先端の技術を用いた創薬支援サービスを各地域で素早く提供できるよう、研究施設を集約することにより、競合優位性を高め、事業を積極的に推進してまいります。
さらに、当社グループは日米欧だけでなくインドにも進出を開始いたしました。2017年4月にアメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)と戦略的業務提携を行い、今後、インドにおいて合弁会社を設立する事を決定いたしました。今後FCCCで採取された、質の高いがん組織を供給することや、人口数世界第2位のインドで圧倒的な数のがん及びヒト組織を採取することが可能となります。これにより、細胞調達能力をさらに強化し、グループ事業の競争力をより一層強化してまいります。
製薬企業では、前述の通りヒト細胞を活用した実験へのシフトが進んでおりますが、その他にもヒト細胞自体を用いた再生医療製品の開発に取り組む企業も増加しており、高い安全性が求められる再生医療向けの臨床用試薬に対するニーズも高まっております。当社グループでは、現在販売を行っている研究向け試薬の改良を行い、再生医療向け臨床用試薬の開発を行っています。
再生医療向け臨床研究用試薬としてヒトiPS細胞用培養液「ReproMed iPSC Medium」を開発し、2018年4月より発売しております。本試薬は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療等製品の原材料としての適格性が確認されています。本製品を用いて拡大培養したiPS細胞から、心筋細胞、神経細胞、肝細胞などへ効率よく分化誘導できることも確認しており、優れた性能を有しております。本製品は安全性が高く、かつ、優れた性能を有しており、iPS細胞の再生医療向けとして最適な培養液となっております。
さらに、同じく再生医療等製品向け試薬としてヒトiPS細胞用凍結保存液「ReproCryo RM」(リプロクライオ アールエム)を開発、上市いたしました。本試薬はPMDAにおいてマスターファイル(原料等登録原簿)登録され、臨床用iPS細胞を用いた細胞医薬品の開発に最適な製品となっています。
当社グループでは、拡大する再生医療市場に向けた臨床用試薬の販売を積極的に行っていくとともに、今後自社の再生医療事業へも活用してまいります。
当社グループと外部研究機関による共同研究では、研究課題3件に対して補助金交付が決定しました。
当社グループでは公的補助金の有効活用や産学連携により、日米欧の3拠点で積極的に研究開発活動を推進しております。今後も競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関との連携及び技術シーズの導入を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、たゆまぬ技術革新に取り組んでまいります。
最後に、化粧品販売事業を行っている当社関連子会社のリプロキレート社が第1号製品「セルアージュ バイオマスク」の販売を開始しました。化粧品関連の市場規模(出荷額ベース)は2016年で1兆5千億円を超えており、その中でも本製品が属する「皮膚用化粧品」は50%近い出荷額を占めています。当社グループでは、引き続き幹細胞の培養技術を活かした化粧品の共同開発を推進し、新製品の開発を行ってまいります。
この結果、売上高は872百万円(前年同期比27.7%減)、セグメント損失は173百万円(前年同期117百万円の損失)となりました。
b.メディカル事業
再生医療分野においては、ヒト体性幹細胞やヒトiPS細胞の臨床応用を目指した研究が世界中で盛んにおこなわれており、将来、再生医療製品がグローバルで巨大産業に成長することが見込まれています。そして、なにより画期的な再生医療製品の開発による医療の発展を、世界中の患者が待ち望んでいます。
特にiPS細胞は、体の様々な細胞に分化させる事が可能であることから、有効な治療法のない難病に対する臨床応用に大きな期待が寄せられています。iPS細胞を医療に応用する場合の最大の技術課題は安全性の確保であり、遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が挙げられています。
当社グループでは、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する「第3世代RNAリプログラミング技術」を開発・保有しております。特に、遺伝子変異につながる染色体異常の発生する頻度は、他のiPS細胞作製法と比べて顕著に低いことが論文でも報告されており、現在最も臨床に適した最新のiPS細胞作製技術だと言えます。
メディカル事業では本技術の臨床応用を進め、再生医療製品の早期承認を目指しております。また、再生医療とは別に、臓器移植に関連した臨床検査の受託サービスも行っております。
当連結会計年度においては、下記の事項を推進いたしました。
現在、1号パイプラインとして、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」の治験準備を進めております。
ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品です。当社は脊髄小脳変性症を対象とした日本における独占的商業ライセンス契約を締結しております。
脊髄小脳変性症は小脳や脳幹、脊髄の神経細胞が変性してしまう事により徐々に歩行障害や嚥下障害などの運動失調が現れ、日常の生活が不自由となってしまう原因不明の疾患です。日本では指定難病とされており、患者数は約3万人と言われている希少疾患です。
日本では、治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、早期に承認を得る事が可能であり、再生医療製品の開発を加速化できる環境が整っています。さらに、ステムカイマルは台湾において既にⅠ/Ⅱa相の治験を完了しており、安全性に問題無い旨が確認されております。
これらの制度や台湾での治験データを活用し、患者様へ少しでも早く新しい治療法を届けられるよう、事業を推進してまいります。
2号パイプラインとしては、米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で、中枢神経系疾患に対するiPS細胞再生医療製品の研究開発に取り組んでいます。
当社は、独自の強みとして、次世代のiPS細胞作製技術であるRNAリプログラミング法により、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を保有しています。一方Qセラ社では、米国においてiPS細胞と異なる細胞(体性幹細胞)を用いて再生医療製品の開発を進めており、米国FDAに対して筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)を対象疾患とした治験申請(IND)を完了しています。
再生医療製品であるiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の開発を加速するため、当社とQセラ社は、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立いたしました。MQ社では、iGRPの前臨床試験の実施、及び、その後の臨床開発を行い、中枢神経領域の様々な疾患を対象とした再生医療技術の商業化権のライセンスアウトを行います。
日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)に関しては、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。さらに、他の中枢神経系疾患及び他の地域においても、当社がiGRPの独占的な製造ライセンス契約を締結しており、さらなる適用拡大を進めてまいります。2号パイプラインにより、当社は、自社のiPS細胞技術を用いて様々な中枢神経疾患に有効な再生医療製品の実用化を目指し、中長期の事業の成長を推進してまいります。
臨床検査関連事業では、当連結会計年度において、主力検査項目の抗HLA抗体スクリーニング検査と抗HLA抗体シングル抗原同定検査が、全ての臓器移植後の検査として保険収載されました。これにより、今後これらの検査を行う医療機関の増加が見込まれるため、当社として積極的に受注を獲得してまいります。
さらに、日立化成株式会社と契約を締結し、同社が開発した研究用試薬ExoCompleteキット(尿中エクソソームからのmRNA抽出キット)を用いて、腎臓移植後の免疫拒絶反応を早期検出する検査「尿中エクソソーム腎移植モニタリング検査」を開始しております。
この結果、売上高は53百万円(前年同期比5.3%増)、セグメント損失は7百万円(前年同期11百万円の利益)となりました。
なお、管理部門にかかる費用など各事業セグメントに配分していない全社費用が753百万円あります。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて160百万円増加し、5,580百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果使用した資金は636百万円(前年同期は775百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失2,281百万円が発生した一方、減損損失1,324百万円、のれん償却費133百万円等の発生によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果使用した資金は228百万円(前年同期は685百万円の獲得)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出206百万円が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果獲得した資金は1,028百万円(前年同期は1,127百万円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入1,031百万円によるものであります。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | |
| 金額(千円) | 前年同期比(%) | |
| 研究支援事業(千円) | 513,717 | 79.7 |
| 合計(千円) | 513,717 | 79.7 |
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.メディカル事業に生産実績はありません。
(2) 受注実績
当社は、主として需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
| セグメントの名称 | 当連結会計年度 (自 2017年4月1日 至 2018年3月31日) | |
| 金額(千円) | 前年同期比(%) | |
| 研究支援事業(千円) | 872,625 | 72.3 |
| メディカル事業(千円) | 53,630 | 105.3 |
| 合計(千円) | 926,255 | 73.6 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末に比べて69百万円増加し、5,979百万円となりました。主な内訳は、現金及び預金の増加160百万円、商品及び製品の減少52百万円であります。固定資産は前連結会計年度末に比べて1,325百万円減少し、617百万円となりました。主な内訳は、無形固定資産の減少1,467百万円、投資その他の資産の増加165百万円であります。
セグメント別に示すと、研究支援事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて1,498百万円減少し、589百万円となりました。また、メディカル事業におけるセグメント資産は前連結会計年度末に比べて124百万円増加し、142百万円となりました。なお、各報告セグメントに配分していない全社資産については、前連結会計年度末に比べて117百万円増加し、5,865百万円となりました。
(負債の部)
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末に比べて20百万円減少し、261百万円となりました。主な内訳は、買掛金の減少12百万円であります。固定負債は前連結会計年度末に比べて115百万円減少し、88百万円となりました。主な内訳は、繰延税金負債の減少112百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末に比べて1,120百万円減少し、6,248百万円となりました。主な内訳は、資本金の増加519百万円、資本剰余金の増加519百万円、利益剰余金の減少2,172百万円であります。
(2) 経営成績の分析
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。
(3) キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フロー」をご参照ください。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
研究支援事業については、研究試薬製品、細胞製品ともに、積極的な研究開発を行っており、2018年3月期における研究開発費の総額は191百万円と、販売費及び一般管理費の約14%を占めています。今後も研究開発は積極的に推進する予定であり、継続的な研究開発費の支出を見込んでいます。
(5) 資金の財源及び資金の流動性について
当社グループの資金需要のうち主なものは、研究支援事業における製品・サービスの研究開発やグローバル展開の推進及びメディカル事業における再生医療製品の導入や開発等によるものの他、製造費、販売費及び一般管理費などの営業費用であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。しかしながら、事業収益がこれらの資金需要を賄うには十分ではないことから、公的助成金、第三者割当増資による調達資金を利用しています。なお、当連結会計年度末における当社グループの当連結会計年度末の現金及び預金残高は3,573百万円、短期的な資金運用を行っている有価証券が1,999百万円あり、十分な流動性を確保しています。
(6) 経営戦略の現状と見通し
2019年3月期の業績につきましては、売上高1,167百万円(前期比26.1%増)、営業損失757百万円(前年同期は1,025百万円の損失)、経常損失709百万円(前年同期は935百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失709百万円(前年同期は2,172百万円の損失)を見込んでおります。
2018年3月期(前事業年度)において売上高は926百万円となり、2017年3月期実績1,257百万円を下回る結果となりました。ただし、2017年3月期実績には、2つの一時的な売上が含まれており、影響額を除いて比較すると前事業年度と2017年3月期は同水準の売上高となっています。そのため、当社グループの進めているビジネスに大きな問題は生じておりません。
また、当社グループが注力している創薬支援サービスについては、将来的に売上高につながる受注数やリード件数をみた場合、成長傾向が見られており、引き続き事業を推進してまいります。また、2018年4月にインドの企業Bioserve Biotechnologies India Pvt. Ltd.の株式を取得しており、同社の売上高が取り込まれます。
また、費用面では、ステムカイマルの治験準備費用や、iPS細胞を活用した再生医療製品の研究開発費の計上を想定しております。
連結経常損失、連結当期純損失の予想額は、為替を一定の水準として推移することとして策定しており、為替損益を業績予想に織り込んでおりません。本業績見通しにおける外国為替レートは、1米ドル=110円、1英ポンド=140円を前提としております。
また、2018年3月期(前事業年度)は減損損失の発生により大幅な損失を計上しておりますが、2019年3月期においてはそのような特別な要因は想定しておりません。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
① 研究支援事業
当社グループでは、iPS細胞に関して世界最先端の技術プラットフォームを保有しており、その強みを生かして本事業を推進しています。さらに、ヒトiPS細胞では作製が困難ながん細胞やヒト組織を、ヒトから直接採取することで、さらに幅広い「ヒト細胞」ラインナップを取り揃えています。
以上のように、ヒトiPS細胞及びヒト組織を幅広く取り揃えることで多様化する顧客ニーズに対応し、より一層競合優位性を高めてまいります。
特に、この2~3年は「創薬支援サービス」の事業拡大に注力してまいりました。前連結会計年度に受注したファンケル社との共同開発案件を進めるとともに、日米欧の製薬及びバイオ企業等からiPS細胞樹立サービスやヒト細胞・組織を使用した薬剤スクリーニングサービスなどを受託しております。今後とも、引き続き営業活動を強化し、受注を拡大してまいります。
② メディカル事業
iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題としては安全性の確保があり、遺伝子の変異、がん化のリスク等が挙げられています。当社グループでは、高品質で臨床応用に適したiPS細胞を作製する技術を開発・保有しており、本技術を用いたビジネスを行っています。
現在、ステミネント社から導入した再生医療製品ステムカイマルの脊椎小脳変性症をターゲットとした治験準備を進めており、早期に治験を開始した後、2020年頃に承認申請を行う予定です。
さらに、iPS細胞を活用した再生医療製品としてiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Q Therapeutics Inc.(以下、Qセラ社)と共同で行っております。中長期的には本研究開発の技術によりiPS細胞の再生医療事業を牽引してまいります。
今後の成長事業として、引き続きメディカル事業を積極的に推進してまいります。
海外事業については、上場以来約4年の間、海外子会社の買収や海外代理店との販売提携により、グローバル展開を積極的に進め、現在では連結売上高の約7割を海外が占めるまでにグローバル化を実現しました。今後もインドや中国なども視野に入れて引き続きグローバル展開を拡大するとともに、各地域での活動を強化することによって、事業の成長に貢献してまいります。
以上、事業展開及びグローバル展開ともに順調に進んでおり、今後とも、この成長戦略のもとに事業を拡大してまいります。
また、経営資源を有効活用して、スケジュールに沿った事業計画を達成するため、以下の3点を優先して進めてまいります。
(a) グローバルにおける事業成長
iPS細胞事業の市場は、グローバルで成長しています。現在、日本、米国、欧州が世界の主力市場であり、当社グループでは、米国市場をREPROCELL USA Inc.、欧州市場をREPROCELL Europe Ltd.、日本市場を株式会社リプロセルが担当し、それぞれの地域でグループ製品及び受託サービスの販売拡大に取り組んでおります。
さらに当連結会計年度では、インドに米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」との合弁会社設立を決定しました。FCCCで採取された質の高いがん及びヒト組織の供給を通じて細胞調達能力を向上させることで、競争力をより一層強化してまいります。
今後は、日米欧の3拠点に加え、インドでも事業を展開することで更なる事業成長を目指すとともに、将来の大きな市場が見込まれる中国への展開も視野に入れながら、事業を拡大してまいります。
(b) グループシナジーの追求と技術開発の加速
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が繰り広げられており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。
当社グループは、引き続き技術開発を積極的に推進することで競争力の強化を図ってまいります。特に、リプロセルグループ内の各要素技術を組み合わせ、シナジーを追求することで競争優位性の高い新規技術の開発を行ってまいります。
さらに、引き続き、京都大学、慶応義塾大学等の日本のトップ大学の他、米国のハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、英国のダーラム大学等とのコラボレーションを通じて、世界最先端の技術を積極的に導入してまいります。
(c) 再生医療事業の加速
ステミネント社から導入した細胞医薬品ステムカイマルの治験開始に向けた準備を着実に進め、2020年頃の承認申請を目指します。
さらに、当連結会計年度よりiPS細胞由来神経グリア細胞の研究開発を米国Qセラ社と開始いたしました。当社とQセラ社の技術を組み合わせることで、安定的に供給可能なiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)を開発してまいります。さらに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と横断性脊髄炎(TM)を対象とした再生医療製品として早期の承認取得を目指してまいります。
また、国内外の未上場のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーを投資対象とする、株式会社新生銀行との共同ベンチャーファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を通じ、世界中の革新的な技術シーズの確保と育成、そして連携を図ります。
(7) 経営者の問題意識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
また、経営者の視点による経営成績等の状況についての認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績」をご参照ください。なお、当社グループにおいては、事業計画に基づく事業の成長と早期の黒字化を重要指標として売上高、各段階損益について分析を行っております。