有価証券報告書-第5期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営戦略
『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンに、2018年度より5か年の第6次連結中期経営計画を推進しております。
現在、石油製品の国内需要は漸減傾向であるものの、中長期的に石油ビジネスは健在と考えております。しかし、脱化石燃料へ向かう社会の中で当社が持続的に成長するためには、将来に向けた新しい事業の柱を作っていくことが必要不可欠です。このことを見据え第6次連結中期経営計画では、「再投資可能な収益力の確保」「将来に向けた成長ドライバーの強化」「財務体質の健全化」「グループ経営基盤の強化」を基本方針として、次の成長へ向け事業ポートフォリオを強化させつつ、石油開発事業や石油事業で収益力を強化し財務基盤を確立させてまいります。
<第6次連結中期経営計画の基本方針>
下の図は当社グループの長期的な事業ポートフォリオの移行イメージを示しております。脱化石燃料の動きを睨みながらも、石油関連事業の競争力を強化することで一定規模の収益力を維持しつつ、積極的な投資により成長が見込まれる再生可能エネルギー事業や石油化学事業を新たな柱にしてまいります。
<事業ポートフォリオ移行のイメージ>
なお、以下の通り、第6次連結中期経営計画の重点施策は、着実に進捗しております。
重点施策①石油事業の更なる競争力強化
石油事業においては、国際海事機関(IMO)の船舶燃料向け硫黄分規制が強化され、全海域で高硫黄C重油が使えなくなりました。当社グループでは、規制が導入される2020年よりも前倒しでコスモ石油㈱堺製油所の重質油熱分解装置(コーカー)を増強し、高硫黄C重油を生産しない体制を構築しました。また、2017年に資本業務提携契約を締結したキグナス石油㈱へ燃料油供給を2019年7月から開始しております。2020年度は更なる販売数量増加により収益改善効果を見込んでおります。
石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度は当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、生産を意図的に抑制いたしました。2020年度に油層圧回復のため、2次回収に向けた投資を実施する予定でしたが、原油価格の下落と、世界経済の状況を踏まえて、投資の実施時期を再検討しております。将来的には、フル生産による利益貢献拡大を期待しております。
重点施策②事業ポートフォリオの転換
再生可能エネルギー事業で中心となるのが、風力発電事業です。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業で、国内シェアは第3位です。陸上風力発電は2022年度までに発電量を23万kWから約40万kWに拡大する計画を着実に進めております。洋上風力発電事業は、固定価格買取制度(FIT制)から入札制に移行する中で大企業の参入が予想されますが、当社グループは、他の大手企業に先駆けて、複数のエリアでプロジェクトを進めており、競争優位にあると考えております。秋田港・能代港、秋田由利本荘沖、青森西北沖、秋田中央海域などのプロジェクトを進め、洋上風力発電のリーディングカンパニーとしての地位を確立することを目指しております。洋上風力発電の本格展開に伴い、2030年には100万kWの発電能力を目指してまいります。
石油化学事業は、成長ドライバーのひとつとして位置づけ、石油事業とのシナジーを追求しながら、積極的な投資を行っております。国内最大規模のエチレン生産能力を持つ丸善石油化学㈱は、環境に左右されにくい機能品等の生産を拡大します。2020年度に荒川化学工業㈱と共同で建設している、紙おむつ等の衛生材料の組み立てに用いられる水素化石油樹脂の生産設備が完成する予定です。また、Hyundai Oilbank Co.,Ltd.との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co.,Ltd.にてパラキシレン製造装置の競争力向上のための省エネ・増産投資が完了を予定しております。2021年度には、基礎化学品の高付加価値化を目的として丸善石油化学㈱と共同で建設しているプロピレン精留塔の商業運転が開始される見込みです。
重点施策③業務改革(ダイバーシティー・働き方改革)の取り組み
今後、中期的に労働人口減少が予想される中、業務改革として属人的な仕事を大幅に削減し、BPOの推進、RPA及びAIといった新しいIT技術の投資が必要であると考えております。今よりももっと短時間かつフレキシブルな働き方ができる体制に変革させ、生産性の向上、ダイバーシティの推進を目指しております。
当社グループの主要各社では従前より、育児や介護支援のための在宅勤務制度を設けておりましたが、2019年度に制度を拡充し、事由や場所を問わず週2日テレワークができる体制を整えています。また、テレワークの事由が育児や介護であれば回数制限なく利用できるようになりました。2019年度の制度利用率は前年比で3倍以上と大きく伸びました。今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言を受けて、臨時的に週5日テレワークが可能となり、事業所や勤務形態によっては、ほぼ全ての社員が使うことになりました。既に時間や場所を問わず働く体制ができていたため、順調に対応できました。今回得た経験を基に、当社グループの業務改革を更に進めてまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度における日本経済は、雇用情勢の改善と所得の緩やかな増加を背景に個人消費の持ち直しが続き、企業収益が高い水準にあるなど緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、設備投資に弱さが見られ、また、新型コロナウイルス感染症の影響により先行きに不透明感が生じました。
原油価格は、期初に1バレル68ドル台であったドバイ原油が、米国と中国の貿易摩擦等を受けた世界経済の先行き不透明感の強まり、サウジアラビアの石油関連施設への攻撃、米中貿易協議の進展によって景気失速や原油需要減退への懸念が後退したこと等を背景として50ドル台後半から70ドル台前半のレンジで推移いたしました。その後、3月にOPEC加盟国と非加盟国が協調減産の合意に至らず、さらに新型コロナウイルス感染症の経済活動への影響が拡大したことにより急落し、期末は23ドル台で終えました。
為替相場は、期初は1ドル111円台から始まり、米国と中国の貿易摩擦により一時105円台まで円高が進行したものの、米中貿易協議の進展とともに円安傾向となりました。その後、新型コロナウイルス感染症による世界経済の減速懸念から相場は不安定になりましたが、期末は108円台で終えました。
石油製品の国内需要は、依然として減退傾向が続いており、軽油は前期並みに推移したものの、ガソリン・灯油・重油がそれぞれ減少した結果、燃料油全体では前期を下回りました。
石油化学製品は、海外のプラント新設・増設の影響等により、エチレンやパラキシレン等の主要製品の需給が緩和し、低調な市況が続きました。
日本経済の今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続くと予想されます。石油業界を取り巻く環境につきましては、感染症の影響による世界的な需要減により供給過剰がしばらく続くことが予想されます。国内においては、燃料転換や人口減少等の構造的要因による燃料油需要の減少傾向も継続するものと推察されます。
石油をはじめとする化石燃料は、日々の生活に欠かすことのできないエネルギーですが、気候変動が深刻化する中、消費抑制が強く求められるようになってきております。新型コロナウイルス感染症が与える影響を勘案すると、脱化石燃料がさらに加速する可能性があります。
このような経営環境の中、当社グループは、前中期経営計画から全社を挙げて懸命に進めてきた構造改革により、事業に抵抗力をつけることができました。構造改革の中で、燃料油の中期的な需要減少に備えた体制構築が完了していたため、燃料油需要の減少に対して、外部調達を調整することで、製油所の稼働率を低下させることなく、対応が可能になりました。業界再編が進む中で、統合による規模の拡大よりも、バランスを重視した戦略が功を奏しました。
今後も長期的な大きな潮流を捉えつつ、短期的な変化に柔軟に対応しながら、石油関連事業の競争力の強化と再生可能エネルギーへのシフトを同時に進める「Oil & New」の基本方針を着実に、かつスピード感をもって実行することで、企業価値の向上を目指してまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
上述の経営環境の中で第6次連結中期経営計画を実行する上で、各事業セグメントにおいて当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題は以下の通りです。
石油開発事業
当社グループが長年信頼関係を築いてきたアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国やカタール国を中心とする中東地域をコアエリアとして、既存権益鉱区での安全・安定操業のための取り組みを進めております。当社グループは、中東地域において日系企業がオペレーターとなる会社としては最大規模の原油生産量を誇っており、アブダビ石油㈱、カタール石油開発㈱及び合同石油開発㈱が、安全・安定操業を継続しました。
アブダビ石油㈱においては、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度は当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、意図的に生産を抑制しました。2020年度に油層圧回復のため、二次回収に向けた投資を実施する予定でしたが、足元の経営環境を踏まえ、投資の実施時期を再検討しております。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラ油田)全体では生産数量が回復し、安定した生産を継続しました。
カタール石油開発㈱においては、改造電動ポンプが順調に稼働したことにより、安定的な原油生産を実現するとともに、増産に向けた既存井の改修の取り組みを進めました。
当社グループでは引き続き、半世紀にわたるUAEアブダビ首長国での安定した海上油田の生産実績による強固な信頼関係と自社操業を強みとして、既存油田の安定的な生産の継続、操業コストの削減、次代の新規投資案件の検討を行ってまいります。
石油事業(石油精製事業)
2020年1月から実施されているIMO規制の強化への対応として、コスモ石油㈱堺製油所のコーカーの能力を増強し高硫黄C重油から中間留分(灯油・軽油・A重油)や低硫黄C重油といった収益油種の生産へシフトしました。また、供給面においては、国内に400店舗を超える販売網を有するキグナス石油㈱へ燃料油の供給を開始いたしました。
引き続き、燃料需要の減退や、IT活用の活発化が予想される中、収益油種への集中及び石油化学事業へのシフト、製油所のIT化等を推進してまいります。
石油事業(石油販売・カーライフ事業)
カーライフ事業につきましては、コスモステーションのさらなる発展に向けたプログラムとして「Oil & New for COSMO STATION 2019」を策定し、カーライフマーケット全体をターゲットとし、お客様に最適なカーライフを提供することにより、コスモステーションの大幅な収益改善を実現するという理念のもと、「成長事業の育成」への変革に取り組んでおります。
お客様とのつながりの強化の一環として、2019年8月に新アプリ「カーライフスクエア」をリリースし、店舗ごとのお買い得商品の情報や異業種店舗で利用可能なお得なクーポンの提供等を開始いたしました。また、車検予約サービスによる車検顧客の店舗への送客により新たな顧客の獲得も図っております。今後も、「カーライフスクエア」を通じたさらなるOne to Oneサービスの実現に向け、開発を進めてまいります。
石油販売事業の収益構造の再構築に向けて取り組みを進めている「コスモ My カーリース」につきましては、サービス開始以来多くのお客様の支持をいただいております。また、カーライフの多様化にワンストップでお応えする車両販売の業態につきましては2019年11月に「コスモ My カーリース STORE」としてブランドを一新し、全国235店舗まで拡大しました。
電力小売販売ビジネスとしましては、4月に東北電力・東京電力・中部電力の各エリア管内のコスモ・ザ・カードユーザーを対象に家庭用電力「コスモでんき」の販売を開始し、販売エリアを沖縄エリア除く全国に拡大いたしました。使用量に応じて電気料金が割引になる「コスモでんき『スタンダード』」に加え、実質、再生エネルギー100%の「コスモでんき『グリーン』」、電気料金に応じてdポイントを付与する「コスモでんき『ポイントプラス』」も開始し、ニーズに合わせたサービスプランを展開しております。ホームライフ市場への足がかりとして、順次、代理店となる加盟店舗を拡大して取り組みを強化してまいります。
引き続き、カーライフの変化に対応したビジネスモデルへの変革により事業領域を確保し、石油精製と併せて競争力を確保してまいります。また、カーライフ事業の拡大を志向しつつ長期的な事業環境を鑑み、カーシェア事業への参入、コスモステーションにおける車両買い取り機能の強化、電力小売販売等の新規ビジネスの拡大を進めてまいります。
石油化学事業
丸善石油化学㈱につきましては、前連結会計年度の定期整備の影響が解消したため生産数量及び販売数量ともに前期比で増加しましたが、海外において石油化学プラントの新設・増設が相次いだうえ、新型コロナウイルス感染症の影響による需要低下の影響も重なり、低調な市況で推移したため、前年を下回る業績となりました。
当社、丸善石油化学㈱及び荒川化学工業㈱による水素化石油樹脂の共同事業に関しましては、2020年末の装置完成に向け、2019年7月に水素化石油樹脂製造設備建設工事の起工式を実施しました。この取り組みは、コスモ石油㈱千葉製油所と丸善石油化学㈱千葉工場との一体運営を契機に、石油化学事業におけるコンビナート全体の競争力強化を進めるもので、共同事業のために設立した千葉アルコン製造㈱は、丸善石油化学㈱のエチレンプラントから副生される留分を原料として、付加価値の高い水素化石油樹脂の製造及び販売を行う予定です。その生産能力は年間2万トンとなる見込みであり、日本で最大規模の生産設備となります。
韓国のHyundai Oilbank Co.,Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co.,Ltd.につきましては、当社グループ各社から安定的にミックスキシレンの供給を受け、パラキシレン製造装置の安定稼働を維持しました。
石油化学市場は、新型コロナウイルス感染症の影響による需要の低迷が見込まれますが、長期的には石油化学製品は世界の人口増加を背景に国際市場が拡大していくことが予想されるため、引き続き、燃料油から石化原料へのシフトを推進してまいります。このほか、エチレン・パラキシレン生産での競争力優位性を最大限活用しながら、未利用留分の活用等の石油精製と石油化学のシナジー享受や、レジスト等の環境に左右されにくい機能化学品の事業拡大を目指してまいります。また、2021年の完成を目標に高純度のポリマーグレードのプロピレン精製設備導入を計画しており、より一層の事業拡大を図ってまいります。
再生可能エネルギー事業
脱炭素の世界的な潮流の中、わが国においても今後大きな成長が期待されます。石油業界においてトップの業容を有する風力発電事業を中心に、当事業を新たな柱とすべく、積極的な拡大を目指してまいります。
風力発電事業につきましては、コスモエコパワー㈱の発電設備(総発電出力26.6万kW)が順調な稼働を継続した結果、10期連続の増収を達成するとともに前期を上回る利益を確保しました。
陸上風力発電事業に関しましては、2022年までに風力発電出力40万kW体制を目指しております。2019年度は4月に姫神ウィンドパーク(岩手県)、度会ウィンドファーム(第2期)(三重県)の運転を開始し、また、中紀ウィンドファーム(和歌山県)の2021年度の運転開始を目指して建設を進めました。
洋上風力発電事業に関しましては、2016年4月に設立した特別目的会社秋田洋上風力発電㈱が秋田県の秋田港及び能代港の港湾区域において、日本国内で初の商業ベースでの大型洋上風力発電事業の実施を決定いたしました。本事業は、発電容量約14万kWの洋上風力発電所を建設・保守・運転し、完工後20年間にわたり再生可能エネルギーのFIT制度に基づき東北電力㈱に売電するものです。2022年の商業運転開始を目指して建設を進めています。今後、事業環境の整備・投資機会の拡大が見込まれる洋上風力発電事業をさらに推し進め、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指してまいります。具体的には、秋田県の秋田港及び能代港における洋上風力発電プロジェクト、秋田由利本荘沖洋上風力発電事業、青森西北沖洋上風力発電事業及び秋田中央海域洋上風力発電事業について実現に向けた検討を進めてまいります。
グループ経営基盤の強化
ESG経営の推進について
当社グループは、グループ理念に基づき、お客様・株主・地域住民・従業員等の全てのステークホルダーを含む社会の皆様の信頼と期待に応える経営を目指しております。第6次連結中期経営計画では重点施策の一つとして、ESG(環境施策・人権と社会貢献・安全とガバナンス)の観点から重要指標を設定した連結中期CSR計画を策定し、様々な取り組みを実行しております。また、2020年4月には、グループ全体として持続的成長への取り組みをさらに強化するため「サステナビリティ推進部」を設置いたしました。引き続きESG経営の継続的な改善・向上を図り、SDGsの実現を目指してまいります。
財務体質の健全化
当社は財務体質の健全化を最重要課題の一つとして認識しております。当連結会計年度は、原油価格の下落による在庫評価損の計上により、財務体質は悪化いたしましたが、これは一過性のものであると考えております。新型コロナウイルス感染症に起因する需要減少と原油価格下落が解消することにより、第6次連結中期経営計画最終年度となる2022年度には財務体質を健全化できると見込んでおります。今後も収益機会を確実に享受しながら、成長分野への積極的な投資を行ってまいります。
引き続き財務体質とのバランスを考慮しながら、株主還元への比重を高めてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化することで、市場環境変化に耐え得る自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半を早期に実現すべく第6次連結中期経営計画を策定し、下記を経営目標として掲げております。
※ 2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出
(1)経営方針及び経営戦略
『Oil & New 石油のすべてを。次の「エネルギー」を。』をスローガンに、2018年度より5か年の第6次連結中期経営計画を推進しております。
現在、石油製品の国内需要は漸減傾向であるものの、中長期的に石油ビジネスは健在と考えております。しかし、脱化石燃料へ向かう社会の中で当社が持続的に成長するためには、将来に向けた新しい事業の柱を作っていくことが必要不可欠です。このことを見据え第6次連結中期経営計画では、「再投資可能な収益力の確保」「将来に向けた成長ドライバーの強化」「財務体質の健全化」「グループ経営基盤の強化」を基本方針として、次の成長へ向け事業ポートフォリオを強化させつつ、石油開発事業や石油事業で収益力を強化し財務基盤を確立させてまいります。
<第6次連結中期経営計画の基本方針>

下の図は当社グループの長期的な事業ポートフォリオの移行イメージを示しております。脱化石燃料の動きを睨みながらも、石油関連事業の競争力を強化することで一定規模の収益力を維持しつつ、積極的な投資により成長が見込まれる再生可能エネルギー事業や石油化学事業を新たな柱にしてまいります。
<事業ポートフォリオ移行のイメージ>

なお、以下の通り、第6次連結中期経営計画の重点施策は、着実に進捗しております。
重点施策①石油事業の更なる競争力強化
石油事業においては、国際海事機関(IMO)の船舶燃料向け硫黄分規制が強化され、全海域で高硫黄C重油が使えなくなりました。当社グループでは、規制が導入される2020年よりも前倒しでコスモ石油㈱堺製油所の重質油熱分解装置(コーカー)を増強し、高硫黄C重油を生産しない体制を構築しました。また、2017年に資本業務提携契約を締結したキグナス石油㈱へ燃料油供給を2019年7月から開始しております。2020年度は更なる販売数量増加により収益改善効果を見込んでおります。
石油開発事業では、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度は当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、生産を意図的に抑制いたしました。2020年度に油層圧回復のため、2次回収に向けた投資を実施する予定でしたが、原油価格の下落と、世界経済の状況を踏まえて、投資の実施時期を再検討しております。将来的には、フル生産による利益貢献拡大を期待しております。
重点施策②事業ポートフォリオの転換
再生可能エネルギー事業で中心となるのが、風力発電事業です。コスモエコパワー㈱は、風力発電業界におけるパイオニア的企業で、国内シェアは第3位です。陸上風力発電は2022年度までに発電量を23万kWから約40万kWに拡大する計画を着実に進めております。洋上風力発電事業は、固定価格買取制度(FIT制)から入札制に移行する中で大企業の参入が予想されますが、当社グループは、他の大手企業に先駆けて、複数のエリアでプロジェクトを進めており、競争優位にあると考えております。秋田港・能代港、秋田由利本荘沖、青森西北沖、秋田中央海域などのプロジェクトを進め、洋上風力発電のリーディングカンパニーとしての地位を確立することを目指しております。洋上風力発電の本格展開に伴い、2030年には100万kWの発電能力を目指してまいります。
石油化学事業は、成長ドライバーのひとつとして位置づけ、石油事業とのシナジーを追求しながら、積極的な投資を行っております。国内最大規模のエチレン生産能力を持つ丸善石油化学㈱は、環境に左右されにくい機能品等の生産を拡大します。2020年度に荒川化学工業㈱と共同で建設している、紙おむつ等の衛生材料の組み立てに用いられる水素化石油樹脂の生産設備が完成する予定です。また、Hyundai Oilbank Co.,Ltd.との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co.,Ltd.にてパラキシレン製造装置の競争力向上のための省エネ・増産投資が完了を予定しております。2021年度には、基礎化学品の高付加価値化を目的として丸善石油化学㈱と共同で建設しているプロピレン精留塔の商業運転が開始される見込みです。
重点施策③業務改革(ダイバーシティー・働き方改革)の取り組み
今後、中期的に労働人口減少が予想される中、業務改革として属人的な仕事を大幅に削減し、BPOの推進、RPA及びAIといった新しいIT技術の投資が必要であると考えております。今よりももっと短時間かつフレキシブルな働き方ができる体制に変革させ、生産性の向上、ダイバーシティの推進を目指しております。
当社グループの主要各社では従前より、育児や介護支援のための在宅勤務制度を設けておりましたが、2019年度に制度を拡充し、事由や場所を問わず週2日テレワークができる体制を整えています。また、テレワークの事由が育児や介護であれば回数制限なく利用できるようになりました。2019年度の制度利用率は前年比で3倍以上と大きく伸びました。今般の新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言を受けて、臨時的に週5日テレワークが可能となり、事業所や勤務形態によっては、ほぼ全ての社員が使うことになりました。既に時間や場所を問わず働く体制ができていたため、順調に対応できました。今回得た経験を基に、当社グループの業務改革を更に進めてまいります。
(2)経営環境
当連結会計年度における日本経済は、雇用情勢の改善と所得の緩やかな増加を背景に個人消費の持ち直しが続き、企業収益が高い水準にあるなど緩やかな回復基調が続きました。しかしながら、設備投資に弱さが見られ、また、新型コロナウイルス感染症の影響により先行きに不透明感が生じました。
原油価格は、期初に1バレル68ドル台であったドバイ原油が、米国と中国の貿易摩擦等を受けた世界経済の先行き不透明感の強まり、サウジアラビアの石油関連施設への攻撃、米中貿易協議の進展によって景気失速や原油需要減退への懸念が後退したこと等を背景として50ドル台後半から70ドル台前半のレンジで推移いたしました。その後、3月にOPEC加盟国と非加盟国が協調減産の合意に至らず、さらに新型コロナウイルス感染症の経済活動への影響が拡大したことにより急落し、期末は23ドル台で終えました。
為替相場は、期初は1ドル111円台から始まり、米国と中国の貿易摩擦により一時105円台まで円高が進行したものの、米中貿易協議の進展とともに円安傾向となりました。その後、新型コロナウイルス感染症による世界経済の減速懸念から相場は不安定になりましたが、期末は108円台で終えました。
石油製品の国内需要は、依然として減退傾向が続いており、軽油は前期並みに推移したものの、ガソリン・灯油・重油がそれぞれ減少した結果、燃料油全体では前期を下回りました。
石油化学製品は、海外のプラント新設・増設の影響等により、エチレンやパラキシレン等の主要製品の需給が緩和し、低調な市況が続きました。
日本経済の今後の見通しにつきましては、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況が続くと予想されます。石油業界を取り巻く環境につきましては、感染症の影響による世界的な需要減により供給過剰がしばらく続くことが予想されます。国内においては、燃料転換や人口減少等の構造的要因による燃料油需要の減少傾向も継続するものと推察されます。
石油をはじめとする化石燃料は、日々の生活に欠かすことのできないエネルギーですが、気候変動が深刻化する中、消費抑制が強く求められるようになってきております。新型コロナウイルス感染症が与える影響を勘案すると、脱化石燃料がさらに加速する可能性があります。
このような経営環境の中、当社グループは、前中期経営計画から全社を挙げて懸命に進めてきた構造改革により、事業に抵抗力をつけることができました。構造改革の中で、燃料油の中期的な需要減少に備えた体制構築が完了していたため、燃料油需要の減少に対して、外部調達を調整することで、製油所の稼働率を低下させることなく、対応が可能になりました。業界再編が進む中で、統合による規模の拡大よりも、バランスを重視した戦略が功を奏しました。
今後も長期的な大きな潮流を捉えつつ、短期的な変化に柔軟に対応しながら、石油関連事業の競争力の強化と再生可能エネルギーへのシフトを同時に進める「Oil & New」の基本方針を着実に、かつスピード感をもって実行することで、企業価値の向上を目指してまいります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題
上述の経営環境の中で第6次連結中期経営計画を実行する上で、各事業セグメントにおいて当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の対処すべき課題は以下の通りです。
石油開発事業
当社グループが長年信頼関係を築いてきたアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国やカタール国を中心とする中東地域をコアエリアとして、既存権益鉱区での安全・安定操業のための取り組みを進めております。当社グループは、中東地域において日系企業がオペレーターとなる会社としては最大規模の原油生産量を誇っており、アブダビ石油㈱、カタール石油開発㈱及び合同石油開発㈱が、安全・安定操業を継続しました。
アブダビ石油㈱においては、2017年度よりヘイル油田において生産を開始しておりますが、2019年度は当初想定よりも油層の圧力低下が見られるため、意図的に生産を抑制しました。2020年度に油層圧回復のため、二次回収に向けた投資を実施する予定でしたが、足元の経営環境を踏まえ、投資の実施時期を再検討しております。このほかの既存油田(ムバラス油田、ウム・アル・アンバー油田、ニーワット・アル・ギャラ油田)全体では生産数量が回復し、安定した生産を継続しました。
カタール石油開発㈱においては、改造電動ポンプが順調に稼働したことにより、安定的な原油生産を実現するとともに、増産に向けた既存井の改修の取り組みを進めました。
当社グループでは引き続き、半世紀にわたるUAEアブダビ首長国での安定した海上油田の生産実績による強固な信頼関係と自社操業を強みとして、既存油田の安定的な生産の継続、操業コストの削減、次代の新規投資案件の検討を行ってまいります。
石油事業(石油精製事業)
2020年1月から実施されているIMO規制の強化への対応として、コスモ石油㈱堺製油所のコーカーの能力を増強し高硫黄C重油から中間留分(灯油・軽油・A重油)や低硫黄C重油といった収益油種の生産へシフトしました。また、供給面においては、国内に400店舗を超える販売網を有するキグナス石油㈱へ燃料油の供給を開始いたしました。
引き続き、燃料需要の減退や、IT活用の活発化が予想される中、収益油種への集中及び石油化学事業へのシフト、製油所のIT化等を推進してまいります。
石油事業(石油販売・カーライフ事業)
カーライフ事業につきましては、コスモステーションのさらなる発展に向けたプログラムとして「Oil & New for COSMO STATION 2019」を策定し、カーライフマーケット全体をターゲットとし、お客様に最適なカーライフを提供することにより、コスモステーションの大幅な収益改善を実現するという理念のもと、「成長事業の育成」への変革に取り組んでおります。
お客様とのつながりの強化の一環として、2019年8月に新アプリ「カーライフスクエア」をリリースし、店舗ごとのお買い得商品の情報や異業種店舗で利用可能なお得なクーポンの提供等を開始いたしました。また、車検予約サービスによる車検顧客の店舗への送客により新たな顧客の獲得も図っております。今後も、「カーライフスクエア」を通じたさらなるOne to Oneサービスの実現に向け、開発を進めてまいります。
石油販売事業の収益構造の再構築に向けて取り組みを進めている「コスモ My カーリース」につきましては、サービス開始以来多くのお客様の支持をいただいております。また、カーライフの多様化にワンストップでお応えする車両販売の業態につきましては2019年11月に「コスモ My カーリース STORE」としてブランドを一新し、全国235店舗まで拡大しました。
電力小売販売ビジネスとしましては、4月に東北電力・東京電力・中部電力の各エリア管内のコスモ・ザ・カードユーザーを対象に家庭用電力「コスモでんき」の販売を開始し、販売エリアを沖縄エリア除く全国に拡大いたしました。使用量に応じて電気料金が割引になる「コスモでんき『スタンダード』」に加え、実質、再生エネルギー100%の「コスモでんき『グリーン』」、電気料金に応じてdポイントを付与する「コスモでんき『ポイントプラス』」も開始し、ニーズに合わせたサービスプランを展開しております。ホームライフ市場への足がかりとして、順次、代理店となる加盟店舗を拡大して取り組みを強化してまいります。
引き続き、カーライフの変化に対応したビジネスモデルへの変革により事業領域を確保し、石油精製と併せて競争力を確保してまいります。また、カーライフ事業の拡大を志向しつつ長期的な事業環境を鑑み、カーシェア事業への参入、コスモステーションにおける車両買い取り機能の強化、電力小売販売等の新規ビジネスの拡大を進めてまいります。
石油化学事業
丸善石油化学㈱につきましては、前連結会計年度の定期整備の影響が解消したため生産数量及び販売数量ともに前期比で増加しましたが、海外において石油化学プラントの新設・増設が相次いだうえ、新型コロナウイルス感染症の影響による需要低下の影響も重なり、低調な市況で推移したため、前年を下回る業績となりました。
当社、丸善石油化学㈱及び荒川化学工業㈱による水素化石油樹脂の共同事業に関しましては、2020年末の装置完成に向け、2019年7月に水素化石油樹脂製造設備建設工事の起工式を実施しました。この取り組みは、コスモ石油㈱千葉製油所と丸善石油化学㈱千葉工場との一体運営を契機に、石油化学事業におけるコンビナート全体の競争力強化を進めるもので、共同事業のために設立した千葉アルコン製造㈱は、丸善石油化学㈱のエチレンプラントから副生される留分を原料として、付加価値の高い水素化石油樹脂の製造及び販売を行う予定です。その生産能力は年間2万トンとなる見込みであり、日本で最大規模の生産設備となります。
韓国のHyundai Oilbank Co.,Ltd.とコスモ石油㈱との合弁会社であるHyundai Cosmo Petrochemical Co.,Ltd.につきましては、当社グループ各社から安定的にミックスキシレンの供給を受け、パラキシレン製造装置の安定稼働を維持しました。
石油化学市場は、新型コロナウイルス感染症の影響による需要の低迷が見込まれますが、長期的には石油化学製品は世界の人口増加を背景に国際市場が拡大していくことが予想されるため、引き続き、燃料油から石化原料へのシフトを推進してまいります。このほか、エチレン・パラキシレン生産での競争力優位性を最大限活用しながら、未利用留分の活用等の石油精製と石油化学のシナジー享受や、レジスト等の環境に左右されにくい機能化学品の事業拡大を目指してまいります。また、2021年の完成を目標に高純度のポリマーグレードのプロピレン精製設備導入を計画しており、より一層の事業拡大を図ってまいります。
再生可能エネルギー事業
脱炭素の世界的な潮流の中、わが国においても今後大きな成長が期待されます。石油業界においてトップの業容を有する風力発電事業を中心に、当事業を新たな柱とすべく、積極的な拡大を目指してまいります。
風力発電事業につきましては、コスモエコパワー㈱の発電設備(総発電出力26.6万kW)が順調な稼働を継続した結果、10期連続の増収を達成するとともに前期を上回る利益を確保しました。
陸上風力発電事業に関しましては、2022年までに風力発電出力40万kW体制を目指しております。2019年度は4月に姫神ウィンドパーク(岩手県)、度会ウィンドファーム(第2期)(三重県)の運転を開始し、また、中紀ウィンドファーム(和歌山県)の2021年度の運転開始を目指して建設を進めました。
洋上風力発電事業に関しましては、2016年4月に設立した特別目的会社秋田洋上風力発電㈱が秋田県の秋田港及び能代港の港湾区域において、日本国内で初の商業ベースでの大型洋上風力発電事業の実施を決定いたしました。本事業は、発電容量約14万kWの洋上風力発電所を建設・保守・運転し、完工後20年間にわたり再生可能エネルギーのFIT制度に基づき東北電力㈱に売電するものです。2022年の商業運転開始を目指して建設を進めています。今後、事業環境の整備・投資機会の拡大が見込まれる洋上風力発電事業をさらに推し進め、日本における同分野のリーディングカンパニーを目指してまいります。具体的には、秋田県の秋田港及び能代港における洋上風力発電プロジェクト、秋田由利本荘沖洋上風力発電事業、青森西北沖洋上風力発電事業及び秋田中央海域洋上風力発電事業について実現に向けた検討を進めてまいります。
グループ経営基盤の強化
ESG経営の推進について
当社グループは、グループ理念に基づき、お客様・株主・地域住民・従業員等の全てのステークホルダーを含む社会の皆様の信頼と期待に応える経営を目指しております。第6次連結中期経営計画では重点施策の一つとして、ESG(環境施策・人権と社会貢献・安全とガバナンス)の観点から重要指標を設定した連結中期CSR計画を策定し、様々な取り組みを実行しております。また、2020年4月には、グループ全体として持続的成長への取り組みをさらに強化するため「サステナビリティ推進部」を設置いたしました。引き続きESG経営の継続的な改善・向上を図り、SDGsの実現を目指してまいります。
財務体質の健全化
当社は財務体質の健全化を最重要課題の一つとして認識しております。当連結会計年度は、原油価格の下落による在庫評価損の計上により、財務体質は悪化いたしましたが、これは一過性のものであると考えております。新型コロナウイルス感染症に起因する需要減少と原油価格下落が解消することにより、第6次連結中期経営計画最終年度となる2022年度には財務体質を健全化できると見込んでおります。今後も収益機会を確実に享受しながら、成長分野への積極的な投資を行ってまいります。
引き続き財務体質とのバランスを考慮しながら、株主還元への比重を高めてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、“稼ぐ力”と“財務体質”を強化することで、市場環境変化に耐え得る自己資本の厚みとネットD/Eレシオ1倍台前半を早期に実現すべく第6次連結中期経営計画を策定し、下記を経営目標として掲げております。
※ 2020年3月31日実行のハイブリッドローン300億円について、50%を資本とみなして算出