有価証券報告書-第14期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 15:02
【資料】
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【項目】
154項目
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、創業の精神「飛脚の精神(こころ)」のもと、一.お客様と社会の信頼に応え 共に成長します
一.新しい価値を創造し 社会の発展に貢献します
一.常に挑戦を続け あらゆる可能性を追求します
を企業理念とし、お客様から「安心」「満足」「信頼」をいただけるサービス・品質向上を図っております。今後も社会の変化・顧客のニーズに迅速に対応し、トータルなソリューションの提供を実現させ、一層社会に必要とされる企業体を目指してまいります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、約24兆円の市場規模がある物流業界全体を事業領域としております。法人顧客の様々な物流ニーズに対応するため、主力の宅配便に加え、「TМS」をはじめとする総合物流ソリューションを提供しております。そして、更なる高付加価値サービスの提供と持続的な成長に向けて、「GOALの強化」「人材の高度化」「トータルロジスティクス機能の強化」等の成長戦略に取り組んでおります。
「GOALの強化」については、ソリューションを提供するメンバーの専門性を高めるとともに、より広範囲で高度な物流ソリューションを提供するために、組織体制を強化しております。
「人材の高度化」については、セールスドライバーの役割の進化に取り組んでおります。従来、セールスドライバーは、「営業」「集荷」「配達」「集金」などの業務を中心にしておりましたが、顧客ニーズの多様化、高度化に対応するために、セールスドライバーが能動的に顧客の「ニーズの把握」「ウォンツの発掘」に取り組んでおります。
「トータルロジスティクス機能の強化」については、当社グループの様々な物流機能を有機的に結合し、また、様々な物流企業と連携することで付加価値の高いソリューション機能を強化しております。
2020年3月期から2022年3月期までの中期経営計画「Second Stage 2021」は「経営基盤の強化」と位置付け、次の経営戦略に重点的に取り組んでおります。
(中期経営計画の経営戦略)
① グループ総合力の結集による進化した物流ソリューションの提供
② 経営資源の価値最大化による成長基盤の確立
③ デジタル化の推進と最新技術の導入による効率化・顧客利便性の追求
④ グローバル物流事業における顧客基盤拡大と高いプレゼンスの発揮
⑤ 組織・人材の課題解決力の高度化による競争優位性の創出
⑥ 経営管理体制の一層の強化及びステークホルダーの満足度向上
(中期経営計画の進捗状況)
① グループ総合力の結集による進化した物流ソリューションの提供
・物流ニーズの高度化
eコマース市場の拡大、消費者ニーズの複雑化により、商品の多頻度出荷と多品種小ロット化、サービスの多様化が進んでおります。このような環境の中、物流業界におきましても、宅配便ニーズの高まりに加え、物流機能の多様化・高度化が求められております。
当社グループでは、2020年2月に次世代型大型物流センター「Xフロンティア」(以下「Xフロンティア」という)を開設いたしました。「Xフロンティア」は、宅配便の大規模中継センター機能に加え、国際物流、eコマース向け物流プラットフォーム、大型・特殊輸送などグループの様々な物流機能を集約した拠点であり、2021年3月期後半に向けて順次稼働してまいります。グループ機能を集約することで、更なる付加価値の創出が可能となります。また、「GOAL」を継続的に強化・進化させながら、物流ソリューションを提供し、事業拡大を推進してまいります。
・アライアンスによるソリューションの強化
2016年3月30日付で株式会社日立物流と資本業務提携契約を締結いたしました。また、2019年8月に、セイノーホールディングス株式会社と業務連携に向けた基本合意を締結し、続いてCBcloud株式会社と資本・業務提携契約を締結するなど、物流業界での協業関係の強化を進めております。当社グループとアライアンス先との経営資源を双方で活用することで、新たな物流ソリューションの提供、車両・センターの共同活用による効率化等、様々な事業連携に取り組んでおり、今後も引き続き事業シナジーを創出してまいります。
② 経営資源の価値最大化による成長基盤の確立
・輸送ネットワークの強化
eコマース市場の拡大により、社会の宅配便に対するニーズが高まっております。当社グループは、このようなニーズに応えるため、「Xフロンティア」を新設いたしました。関東の複数の中継センターを「Xフロンティア」に集約することで、より効率的な輸送ネットワークを構築し、高品質で安定的な宅配サービスの提供を実現してまいります。2021年3月期後半に向けて順次稼働し、段階的に拠点の集約を進めてまいります。また、輸送品質を高め、安定的な輸送ネットワークを提供できる体制を強化するために、人員の増強、路線便の拡充、委託先との良好な関係の構築など輸送インフラの強化に取り組むとともに、生産性の向上に努めてまいります。
・機能分担の明確化など競争力のある組織の構築
労働需給が逼迫する環境の中、様々な顧客のニーズに対応するため、営業力・ソリューション力の強化及び輸送効率の向上に取り組んでおります。具体的には、セールスドライバーがより営業活動に注力するために、手書き伝票のデジタル化や、点呼・運行管理のスマートフォンを使用した遠隔管理等、ITによる作業負荷軽減を進めております。また、個人宅の配送においては、品質を維持・向上させながら、輸送効率を高めていくために、宅配の専門ドライバーや委託先の拡充を推進しております。加えて、それぞれの職務の成果に応じた評価制度・報酬体系を構築することにより、従業員のモチベーションの向上など組織力の強化に取り組んでおります。
③ デジタル化の推進と最新技術の導入による効率化・顧客利便性の追求
・デジタル化の推進
生産年齢人口の継続的な減少が見込まれるわが国では、労働集約型の物流業界において、労働力不足は極めて重要な課題であります。当社グループでは、労働力の確保・強化を図る一方で、積極的に最新技術を含むIT技術の利用を促進し、省力化・省人化に取り組んでおります。具体的には、様々なデータを組み合わせることで、荷物の集荷・配達業務の生産性を可視化し、効率化を進めております。今後も積極的にデジタル化を推進し、生産性の向上や顧客利便性を高めてまいります。
・新技術の事業への活用可能性の調査・研究
技術革新が目まぐるしい昨今、新技術の利活用は競争力を維持・強化するために重要であります。当社グループでは、次代に向けた更なるサービスの高度化・事業の効率化を推進するために、新技術の事業への活用可能性の調査・研究を推進しております。具体的には、内閣府主導の国家プロジェクトSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)において、荷物データを自動解析し、自動荷降ろし技術の開発に参画するなど、自社の研究開発のみならず、様々なパートナーと連携し、オープンイノベーションを推進しております。
④ グローバル物流事業における顧客基盤拡大と高いプレゼンスの発揮
・グローバルネットワークの更なる強化
世界規模で蔓延している新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」という)の影響により、航空貨物、海上貨物双方の物流において先行きが不透明な状況が続いております。このような環境の中、南アジア・東南アジア・東アジア・アフリカ等から欧米への物流ネットワークに強みがあるEXPOLANKA HOLDINGS PLCと日本を基軸として展開した国際物流ネットワークを連携させることにより、今後の成長が期待される新興地域でのグローバル物流の強化に取り組んでまいります。
・国際事業の強化
高まる顧客のグローバルな物流機能へのニーズに応えるため、営業情報の連携を一層高めるとともに、有機的に連携した一貫物流機能を強化してまいります。当社グループの3PLを担う佐川グローバルロジスティクス株式会社が、中国全域をカバーする上海虹迪物流科技有限公司をグループ化するなど、中国国内の物流を強化するとともに、中国・日本間の国際物流の拡大に取り組んでまいります。今後も、海外現地の有力なパートナーとのアライアンスの構築などを積極的に展開し、物流機能の高度化を推進してまいります。
⑤ 組織・人材の課題解決力の高度化による競争優位性の創出
・フラットな組織風土の醸成
現場と経営のコミュニケーションを活発化させることで、最新で詳細な顧客ニーズや現場の課題などをタイムリーに把握し、顧客へのソリューションの提供や組織力の強化に取り組んでおります。課題解決能力や変化への対応力を備えた多様な人材の育成を目的として人事制度を見直し、幅広い人材の登用に取り組んでおります。
・働き方改革の一層の取り組み
働き方改革関連法が順次施行される中、採用の強化、従業員の定着化を図るために、ワークライフバランスを意識した多様な働き方が可能な環境の充実、制度の拡充、労働時間の更なる短縮など労働環境の向上に積極的に取り組んでまいります。
⑥ 経営管理体制の一層の強化及びステークホルダーの満足度向上
・コンプライアンス体制の強化
当社グループでは、「SGホールディングスグループ倫理・行動規範」に則ったコンプライアンスを含む経営管理体制について、適宜必要な委員会・プロジェクトの発足及び推進を通じて着実に強化を図っております。具体的には、当社のガバナンス高度化を目的として、取締役候補者の指名や取締役が受ける報酬の妥当性を判断するために「指名・報酬諮問委員会」を設置いたしました。また、当社及びグループ各社においてコンプライアンス統括責任者を任命し、法令等の遵守、懸念事象発生時の報告及び対応を行うとともに、グループリスクマネジメント会議においても定期的に重要事項の報告を行うなど、グループ横断的に対応しております。
・事業活動を通じたSDGsへの貢献
当社グループでは、「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」採択の趣旨に賛同し、独自の目標を定め、事業活動を通じて、積極的に推進しております。具体的には、2019年5月に、金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同するなど社会の課題解決に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献しております。また、ステークホルダー経営を推進するために、CSR重要課題として次の7項目を定めて、事業活動を推進しております。
(CSR重要課題)
① 安全・安心なサービスの提供
② 環境に配慮した事業推進
③ 個性・多様性を尊重した組織づくり
④ 総合物流ソリューションによる新しい価値の創造
⑤ 地域社会への貢献
⑥ サステナブル調達の推進
⑦ 責任ある経営基盤の構築
(3)経営環境と対応方針
① 全般
現在の日本経済を取り巻く環境は、少子高齢化を背景に労働需給が一段と逼迫する中、長時間労働の是正や同一労働同一賃金を目的とした働き方改革関連法が順次施行されております。また、顧客のグローバル化、消費者ニーズの多様化により物流機能の高度化が求められる中、物流業界、とりわけ宅配便に対する社会のニーズは、eコマース市場の伸長を背景に高まっております。
今後の日本経済の見通しにつきましては、新型コロナに対応する政府の総合経済対策の効果はあるものの、世界的な新型コロナ拡大により国内外の経済活動が引き続き抑制されることを主因に、景気は減速することが見込まれます。
当社の主力事業であるデリバリー事業や、ロジスティクス事業におきましては、eコマース市場の拡大や、物流ニーズの高度化・多様化を背景に、拡大トレンドが続いておりますが、足元では政府による外出自粛要請などの影響で、巣ごもり消費による荷動きの増加は想定されるものの、経済活動全般が抑制されることから鈍化することも想定され、先行きの不透明感は増しております。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、社会インフラの一部を担う物流企業グループとして、お客様に最適な物流ソリューションを提供すべく、グループ一体となった付加価値サービスの更なる強化や経営基盤の強化に取り組んでまいります。
② デリバリー事業
トラック運送事業は、約14兆円の市場規模を有するものの、国内貨物輸送量が減少傾向にあり、積載効率は約40%と低い水準となっております。また、ドライバーの高齢化が進行しており、将来的にはドライバー不足も懸念されております。一方、eコマース市場は近年急速に拡大しており、個人宅向けの配達が急増する中、宅配事業者以外の参入等、競争環境に変化が生じております。このような環境の中、2020年3月期の国内における宅配便取扱個数は、前年比0.8%増の4,258百万個となりました。
当社グループは、主力の宅配便に加え、「TМS」をはじめとする付加価値サービスにより、法人顧客の様々な輸送ニーズに対応しております。キャパシティに応じた宅配便取扱個数のコントロールによる輸送品質の維持・向上を継続しております。また、多様な働き方への対応、業務に応じた協力会社の活用、現場業務の効率化や荷物の集荷・配達業務の可視化など、労働環境の改善や生産性の向上に積極的に取り組んでおります。「TМS」では、最適かつ安定した輸送サービスの提供により、宅配便以外の様々な輸送ニーズに対応し、積載効率やドライバー不足などの社会課題にも対応しております。
将来的には、「TMS」を宅配便に次ぐ第2の柱として成長させ、収益基盤を拡大してまいります。引き続き顧客の幅広い輸送ニーズに対して最適なモードを提案し、高い付加価値を提供してまいります。
③ ロジスティクス事業
国内3PL市場は拡大が続いており、2019年には市場規模が3兆円を超えました。今後も市場は拡大することが見込まれる一方で、新規参入等により競争が激化しております。このような環境のもと、当セグメントではデリバリー事業と連携し、高付加価値サービスを提供してまいります。また、ECプラットフォームの展開により、拡大するeコマースのニーズに対応するとともに、新たな技術を積極的に取り入れることで、安定的かつ高品質な物流を提供してまいります。
国際物流は、サプライチェーンの広域化・多様化・複雑化や足元の米中貿易摩擦等を受け、生産拠点の分散が加速し、流通の広域化が進んでおります。このような環境のもと、当セグメントではグローバルネットワークの拡大に取り組んでおります。越境通販の拡大や顧客のサプライチェーンのグローバル化に対応するため、付加価値の高い国内外一貫物流の強化を進めてまいります。
④ 不動産事業
eコマース市場の拡大を背景に、都市近郊を中心に大型物流施設に対するニーズは堅調に推移することが見込まれます。また、当社グループにおいても、宅配便需要の高まりや3PLのニーズ等に対応するために、物流施設の強化に取り組んでおります。2020年1月には、宅配便の大規模中継機能に加え、グループの様々な物流機能を結集した「Xフロンティア」を開設するなど、付加価値の高い施設開発を進めております。
⑤ その他
その他の事業は、効率的な物流ソリューションを提供するための基盤となる様々な機能で構成されております。高度化する物流ニーズや生産年齢人口の減少が続く中、効率的で安定的な物流を実現するために、デジタル化による生産性の向上や顧客の利便性の向上に取り組んでおります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、次のとおりです。
(連結業績見通し)(単位:百万円)
2021年3月期
業績予想
前期比(%)2022年3月期
業績見通し
営業収益1,200,000102.31,230,000
営業利益78,500104.080,000
経常利益82,500102.484,500
親会社株主に帰属する当期純利益48,500102.649,000
EBITDA105,000106.2109,000

(セグメント別業績見通し)(単位:百万円)
2021年3月期
業績予想
前期比(%)2022年3月期
業績見通し
営業収益 合計1,200,000102.31,230,000
デリバリー事業963,500100.8988,900
ロジスティクス事業149,000109.7160,000
不動産事業22,500138.614,400
その他65,00098.566,700
営業利益 合計78,500104.080,000
デリバリー事業58,800100.162,800
ロジスティクス事業2,900140.64,700
不動産事業10,800136.86,100
その他4,60084.94,800
調整額1,400103.41,600

(注)営業収益は外部顧客に対する売上高を示しております。
① 2021年3月期の連結業績予想
当社グループの2021年3月期連結業績見通しは、新型コロナの拡大により先行き不透明感があるものの、足元の状況を踏まえて見込んでおります。また、当社の持分法適用会社である株式会社日立物流が2021年3月期の連結通期業績見通しを非開示としたため、中期経営計画で見込んでいた数値を参考に作成しております。
② 2022年3月期の連結業績見通し
2019年4月26日に公表した中期経営計画「Second Stage 2021」において、2022年3月期の経営目標を開示いたしましたが、2020年3月期の業績を踏まえ、上方修正しております。