有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/08/08 15:00
【資料】
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【項目】
91項目

財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

前事業年度末において、連結対象子会社が存在しなくなったため、財政状態の分析及び経営成績の分析における前年対比は、提出会社の前事業年度との対比を記載しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。
当該見積りにつきましては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(2)財政状態の分析
第31期事業年度(自 平成28年10月1日 至 平成29年9月30日)
①流動資産
当事業年度末における流動資産は2,461百万円となり、前事業年度末に比べ1,374百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が358百万円、販売用不動産が1,028百万円増加したことによるものであります。
②固定資産
当事業年度末における固定資産は14,565百万円となり、前事業年度末に比べ、1,909百万円減少いたしました。これは主に、土地建物一体としての賃貸用不動産の販売用不動産勘定への振替等により有形固定資産が1,896百万円減少したことによるものであります。
③流動負債
当事業年度末における流動負債は871百万円となり、前事業年度末に比べ805百万円減少いたしました。これは主に、短期借入金が816百万円、1年内償還予定の匿名組合預り金が283百万円減少したことによるものであります。
④固定負債
当事業年度末における固定負債は13,587百万円となり、前事業年度末に比べ318百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金が101百万円、匿名組合預り金が224百万円減少したことによるものであります。
⑤純資産
当事業年度末における純資産は2,568百万円となり、前事業年度末に比べ588百万円増加いたしました。これは第三者割当増資により資本金が204百万円、資本準備金が204百万円増加したことに加え、当期純利益の計上により利益剰余金が152百万円増加したことによるものであります。
第32期第3四半期累計期間(自 平成29年10月1日 至 平成30年6月30日)
①流動資産
当第3四半期会計期間末における流動資産は1,468百万円となり、前事業年度末に比べ992百万円減少いたしました。これは主に、販売用不動産が799百万円、現金及び預金が192百万円それぞれ減少したことによるものであります。
②固定資産
当第3四半期会計期間末における固定資産は14,404百万円となり、前事業年度末に比べ160百万円減少いたしました。これは主に、減価償却等により有形固定資産が164百万円減少したことによるものであります。
③流動負債
当第3四半期会計期間末における流動負債は1,440百万円となり、前事業年度末に比べ568百万円増加いたしました。これは主に、その他のうち未払金が205百万円減少した一方、1年内償還予定の匿名組合預り金が824百万円増加したことによるものであります。
④固定負債
当第3四半期会計期間末における固定負債は11,559百万円となり、前事業年度末に比べ2,027百万円減少いたしました。これは主に、1年内償還予定の匿名組合預り金への振替及び満期前償還の実施により匿名組合預り金が1,558百万円、満期前償還により社債が380百万円それぞれ減少したことによるものであります。
⑤純資産
当第3四半期会計期間末における純資産は2,873百万円となり、前事業年度末に比べ305百万円増加いたしました。これは主に、四半期純利益の計上により利益剰余金が295百万円増加したことによるものであります。
(3)経営成績の分析
第31期事業年度(自 平成28年10月1日 至 平成29年9月30日)
①売上高
当事業年度における売上高は2,511百万円となり、前事業年度に対し111百万円の増加(前事業年度比4.6%増)となりました。これは、主に前事業年度における新規取得賃貸不動産及び前事業年度中に企業結合を行った有限会社HONJINに関する賃貸不動産関連売上高が通年寄与したことによるものであります。
②売上原価、売上総利益
当事業年度における売上原価は1,332百万円となり、前事業年度に対し34百万円の増加となりました。これは、主に賃貸原価が147百万円増加する一方、販売用不動産関連原価が減少したことによるものであります。
その結果、当事業年度の売上総利益は1,178百万円(前事業年度比76百万円増、7.0%増)となりました。
③販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度における販売費及び一般管理費は415百万円となり、前事業年度に対し19百万円の減少となりました。これは主に、租税公課が11百万円増加する一方、地代家賃が22百万円、広告宣伝費が12百万円減少したことによるものであります。
その結果、当事業年度の営業利益は763百万円(前事業年度比96百万円増、14.5%増)となりました。
④営業外損益、経常利益
当事業年度における営業外収益は11百万円となり、前事業年度に対し68百万円の減少となりました。これは主に、前事業年度に計上した受取利息が14百万円、貸倒引当金戻入額が54百万円減少したことによるものであります。
当事業年度における営業外費用は499百万円となり、前事業年度に対し52百万円の増加となりました。これは主に、匿名組合損益分配額が89百万円減少する一方、支払利息が45百万円、支払手数料が93百万円増加したことによるものであります。
その結果、当事業年度の経常利益は275百万円(前事業年度比24百万円減、8.2%減)となりました。
⑤特別損益、当期純利益
当事業年度における特別利益は、計上がありませんでした。
当事業年度における特別損失は、29百万円を計上致しました。これは、保有不動産の減損損失等の計上によるものであります。
その結果、当事業年度の当期純利益は152百万円(前事業年度は当期純損失18百万円)となりました。
第32期第3四半期累計期間(自 平成29年10月1日 至 平成30年6月30日)
①売上高
当第3四半期累計期間における売上高は、物件(マリオン南青山)の売却により1,250百万円を計上したほか、既存の賃貸物件における賃貸収入等が安定的に推移した結果、2,365百万円となりました。
②売上原価、売上総利益
当第3四半期累計期間における売上原価は、物件の売却に係る販売原価を計上したほか、賃貸物件に係る経常的賃貸経費等を計上したことにより1,368百万円となりました。
その結果、当第3四半期累計期間の売上総利益は997百万円となりました。
③販売費及び一般管理費、営業利益
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は、人件費、事業税などの租税公課等、経常的費用の計上により、299百万円となりました。
その結果、当第3四半期累計期間の営業利益は697百万円となりました。
④営業外損益、経常利益、四半期純利益
当第3四半期累計期間における営業外収益は、受取利息及び配当金等の計上により6百万円となりました。また、営業外費用は、匿名組合損益分配額、支払利息等の計上により285百万円となりました。
その結果、当第3四半期累計期間の経常利益は419百万円、四半期純利益は295百万円となりました。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの事業に重要な影響を与える要因といたしましては、法的規制、景気や金利の変動などの経済状況の影響など様々な要因が挙げられます。詳細につきましては、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」をご参照ください。
(5)経営戦略の現状と見通し
株式会社野村総合研究所が総務省の住宅・土地統計調査に基づき作成した「日本の不動産投資市場2015」と題する資料によれば、賃貸マンションに居住する世帯は昭和63年には全世帯の9%であったところ、平成25年には約20%まで増加しており、転居世帯数が平成6年-10年の1,221万世帯から平成21年-25年には939万世帯に減少する中、賃貸マンションに転居する世帯の比率はむしろ46%から48%に増加し、賃貸マンション需要を底支えしているというデータも確認されております。また、同資料によれば、東京圏において中長期的に人口・世帯の減少が始まる見込みの中、当社が主に顧客層とする単身世帯については、少なくとも平成45年頃までは世帯増を牽引する見込みであるとしております。
一方、賃貸不動産の投資利回りは首都圏を中心に低下が著しく、日本銀行が公表する金融機関の貸出姿勢も改善が継続するなど、ポジティブな資金調達環境を受けて不動産市場への資金流入が継続しているほか、建築費も引き続き上昇傾向にあり、賃貸不動産についても価格が高値圏で推移していることから、賃貸不動産及び証券化対象不動産の仕入れにあたっては、収益性と不動産市況リスクの見極めが一層重要になる局面にあるものと考えられます。
当社が許可を有する不特法関連では、国土交通省が平成28年3月に取り纏めた「不動産投資市場の成長戦略~2020年に向けた成長目標と具体的取組」の中で、不特法の事業については、投資家保護とのバランスを斟酌しつつ、既存の枠組みについて必要な検討を行い、事業の充実を図る必要があるとされ、平成29年6月2日に公布された改正不特法において、クラウドファンディング対応に係る改正が盛り込まれ、平成29年12月1日に施行されております。法令対応を含め、監督当局の支援姿勢も明確であることから、銀行借入と並ぶ資金調達手段の選択肢として、引き続きポジティブな環境が見込まれております。
当社といたしましては、これらの状況を踏まえまして、以下のとおり考えております。
①不動産賃貸サービス
当社事業の基盤を構成する不動産賃貸サービスについては、相対的に入居率変動リスクが少なく、底堅い需要が期待される居住者向け物件、中でも単身者向け物件を中心に事業を展開致します。
平成29年9月30日現在、首都圏における当社賃貸顧客の29.1%を占め当社の賃貸業務の比較優位性のひとつである地方公共団体等の安定的な賃貸顧客基盤の維持拡大など、既存保有物件の入居率の維持・安定・改善施策の着実な実施につとめることにより、ストック収益の安定的な確保を図って参ります。
投資利回りの低下、不動産市況リスクの増大を踏まえて、新規仕入れについては慎重検討を基本としつつ、利回りの低下は特に首都圏において顕著であることから、首都圏以外の主要都市における仕入れ機会を引き続き追求し、賃貸業務基盤の拡充と、新規証券化案件の組成につなげて参ります。
②不動産証券化サービス
不特法に基づく当社の証券化商品は、平成29年9月30日現在当社総負債の42.3%、当事業年度売上高に占める対象賃貸不動産の賃貸売上比率が20.8%を構成するなど、当社事業において重要な位置づけにあるほか、不動産業界向けの金融機関の融資姿勢の後退時など金融環境が難しい状況下にあっても、投資家からの直接の資金調達に基づく物件の仕入れを可能とし、当社賃貸不動産ポートフォリオ構築において大きな役割を果たして参りました。
金融機関の融資姿勢の改善の継続を受けての代替資金調達手段としての間接金融の調達コストの低下、物件価格の高止まりによる新規証券化物件に係る仕入れリスクの高まりを受け、証券化商品の組成にあたっては、分配率水準の決定及び物件の選定等において、慎重且つ選別的な対応を基本としつつ、既存投資家との関係の維持発展に留意し案件の組成につとめて参ります。
改正不特法を受けた契約締結の電磁化などクラウドファンディング対応の推進等、監督当局の不特法への支援姿勢も明確であることから、業務機会の一段の拡大を展望し、サラリーマンボンドの名称のもといち早くクラウドファンディング型証券化商品を手がけた当社の優位性を維持強化すべく、システム対応を含めた商品性及び投資家サービスの一段の高度化を図っており、今後も継続的に注力して参ります。
③不動産売買
当社は、賃貸・証券化業務のライフサイクルの一環として、含み益の実現益への転換による投資収益の確定の手段として不動産の売却を行います。また、新規賃貸物件、新規証券化物件の対象資産の仕入れ、既存ポートフォリオの入れ替え等の目的で、不動産の購入を実施致します。
不動産市況のリスク増大を踏まえ、物件の売却については、賃貸業務・証券業務の総合的な取り組みの一環として時宜を捉えた対応を行う一方、物件の購入については、案件の選別、利回りの検討等において、慎重な対応を基本とする方針であります。
(6)資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要(2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
当社の資金需要の主なものは、賃貸不動産の取得費用であり、その調達手段は主として、金融機関からの借入金及び不特法許可に基づく匿名組合預り金によっております。賃貸不動産取得費用以外の運転資金につきましては、自己資金で対応することを原則とし、一定程度の手元流動性を維持し、金融費用を低減するようつとめております。
(7)経営者の問題認識と今後の方針について
当社の経営陣は、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案するようつとめておりますが、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載のとおり、当社の経営に関しては、不動産市況、金融市況をはじめとした種々のリスクが存在します。
一方、不特法に基づく証券化商品についての監督当局の支援姿勢等もあり事業機会の一段の拡大も展望できるところでありますが、今後のリスク・事業機会については、その規模、顕現化の時期等について確定的な経営判断を行うことについて限界が認められます。
当社としては、不動産賃貸サービス及び不動産証券化サービスにおける当社業務基盤の一段の安定化につとめるとともに、「第2 事業の状況 3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した対処すべき課題に的確に対処することにより、リスク制御のもとでの事業機会拡大に対応し、長期安定的な企業価値の向上につとめてまいります。