有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/08/08 15:00
【資料】
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【項目】
91項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「不動産の賃貸料から生成されるマリオンのサービスを以って、年金・医療・介護・環境のサプリメントとなし、皆様に夢のある快適な老後と幸せをお届けすること」を経営理念に掲げております。
この経営理念を具体化するため、居住用を中心とした賃貸不動産による安定的な事業基盤を確保するとともに、賃貸事業の基盤に基づく信頼される不動産証券化商品を生成し、かかる住に関連したサービスを通じて社会に貢献することにより当社の企業価値を高め、ステーク・ホルダー各位の期待に応えてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、不動産賃貸及び関連証券化商品による安定成長を目指していくことを基本方針に、財務指標としては売上高経常利益率の水準と推移を、業務指標としては入居率及び収入率(注)の推移を重視しております。
(注)収入率=実際の月間受取賃料÷満室時想定月間賃料
(3)経営環境
不動産業界におきましては、旺盛な不動産投資需要を背景に不動産売買が活発に行われたことや、オフィスの空
室率の低下や外国人観光客の増加によるホテル・商業施設への需要増加などから、三大都市圏の商業地における地
価上昇が特に顕著となっております。住宅地についても、分譲マンションをはじめとする住宅需要に加え、相続対
策としての不動産投資需要、日本銀行により導入されたマイナス金利付き量的・質的金融緩和の影響、不動産業界
に対する金融機関の緩和的な貸出態度の継続等により、不動産市場への資金流入が継続し、当社の主要業務である
不動産賃貸市場においては、賃貸不動産価格の高止まりと投資利回りの低下が顕著となっております。
不動産証券化に関しては、当社が提供する証券化商品の根拠法規である不特法が改正され、契約締結の電磁化対応などクラウドファンディング対応に係る改正が盛り込まれるなど、不特法関連証券化市場の一段の成長、商品の高度化・多様化が展望される経営環境にあるといえます。
金融環境においては、日本銀行の量的・質的金融緩和の継続に加え、日本銀行が公表する金融機関の貸出姿勢も引き続き改善が継続するなど、良好な資金調達環境が継続しております。
(4)中長期的な経営戦略
賃貸事業基盤に基づく持続的な安定成長を果たし、証券化商品の安定的な供給を行うため、不動産市況、金融市場の状況を適切にモニターするとともに、賃貸業務運営、仕入れ・売却、証券化のそれぞれの分野で総合的な施策を推進してまいります。
賃貸業務運営においては、保有物件の適切な運営管理による入居率、収入率の維持向上につとめるとともに、関連事務の効率化・合理化をすすめることにより、保有物件の収益力の向上に継続的に注力してまいります。
物件仕入れ・売却については、首都圏を中心に新規物件の不動産市況リスクの増大と投資利回り低下が顕著であることから、仕入れについては、居住者向け物件を中心に、社内利回り基準の充足を条件とした優良物件の選別的な検討を継続するとともに、市況を踏まえて、償還期限近接の証券化対象物件を中心に、毎期1-2物件の売却を検討し、実現益確保による事業収益の確定を図ります。
証券化については、物件仕入れ状況、保有物件の状況等を総合的に判断し、金融市場の動向、投資家ニーズの状況を踏まえたきめ細かな条件設定に基づき、毎期1-2件の新規商品の組成を検討してまいります。併せて、不特法等法制等の変更の動向を踏まえた商品の高度化・多様化、証券化関連事務の効率化・合理化についても継続的に注力してまいります。
(5)会社の対処すべき課題
このような経営環境の下、株主をはじめ、賃貸顧客、投資家などの利害関係者各位の期待に応え、当社が持続的な成長を実現し株主価値を高めるために対処すべき課題として、以下を認識しております。
①賃貸物件仕入れ力の持続的強化と物件価値査定力の一段の強化
賃貸業務基盤の持続的拡大を実現するとともに、投資家各位に安定的かつ継続的に証券化商品を提供していくためには、優良な対象物件の仕入れを安定的に実現していくことが課題であります。
現下の市場環境においては、特に首都圏において優良な賃貸物件は超過需要の状況にあり、投資利回りの低下が顕著となっていることから、物件の仕入れについてはリスク分析に基づく選別を強化するとともに、首都圏のみならず全国主要都市にわたる優良物件の情報収集力、物件価値査定力の継続的強化を図っていく方針です。
②保有物件の稼働率の維持向上
新規物件の利回り低下に伴い、新規物件調達のリスクが拡大するなか、安定的な収益基盤を確保するためには、既存保有物件の稼働率の維持向上が課題であります。そのため、当社は首都圏においては、平成29年9月末現在、当社賃貸顧客の30%程度を占める地方公共団体顧客等の安定的な顧客基盤維持拡大のため顧客満足度の維持向上につとめるともに、入居率の動向をきめ細かく管理し、退去等に伴い空室が見込まれる場合等においては、種々の施策を能動的かつ機動的に講じております。
③資金調達基盤の維持拡大
金融機関及び不特法に基づく匿名組合出資調達基盤の維持・拡大・選択肢の多様化が課題であります。そのため当社は、金融市場の動向を注視し資金調達環境の変化の捕捉につとめるとともに、金融機関、証券化商品の既存投資家との関係の維持向上を図ってまいります。
④物件ポートフォリオの品質の維持向上
不動産証券化商品の提供においては、安定的な賃貸収益基盤に基づく優良運用商品を投資家に継続的に提供することが求められ、そのため賃貸物件ポートフォリオを優良なものに維持することが課題であります。このため、当社は償還期限が到来する不動産証券化商品対象物件について、償還時点又は償還日近接時点における市況等を捉えて売却または物件の入れ替え等を行うなど、きめ細かな物件ポートフォリオ管理につとめ、物件ポートフォリオの品質の継続的な維持向上を図っております。
⑤内部統制とコーポレート・ガバナンスの強化
経営の透明性を確保し、当社の持続的な成長を実現するためには、適正な内部統制環境の整備と、コーポレート・ガバナンスの不断の強化が継続的な課題であると認識しております。
このため、組織体制の整備、内部管理体制の継続的な強化を図るとともに、平成27年に監査等委員会設置会社に移行し、全役員10名のうち、2名の社外取締役監査等委員、2名の非常勤社外取締役を配し、社外取締役による牽制のもとでの事業運営を行っております。
また、当社は、宅地建物取引業法、不特法をはじめとする各種法規制等のもとで事業をおこなっております。そのため、コンプライアンスを重視した企業経営を推進し、高い倫理観と社会的良識を持った事業運営を進めてまいります。
⑥人材の育成と確保
適正なコーポレート・ガバナンス体制のもとでの組織的な事業運営を行い、当社の持続的な成長を実現するためには、各種の施策を組織のもとで適切に推進できる人材の育成と確保が課題であります。このため、当社は役職員の教育強化、組織体制の強化に注力してまいります。
⑦商品力の継続的強化と拡充
当社は不特法の許可に基づき証券化商品を提供しておりますが、根拠法令である不特法については、平成29年6月2日に「不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)」が公布され、平成29年12月1日に施行されております。
改正に伴い、クラウドファンディングの進展への対応を可能とするため、不特法においても、従来書面での締結が要件とされていた証券化商品の契約についても、電磁的方法が認められることとなりました。
当社は、既に平成27年にインターネットでの申込が可能なクラウドファンディング形式の不特法不動産証券化商品を提供しており、当該分野での実績を有しておりますが、改正を受けて、契約を含む全面的な電磁的対応が可能となるなど、不特法関連のクラウドファンディングの拡大が見込まれることから、クラウドファンディング対応をはじめとする不動産証券化分野での商品力の継続的強化と拡充が課題であると認識しております。
そのため、契約の電磁化対応をはじめとする不動産クラウドファンディング業務のIT化の一段の推進に向けたシステム開発等に注力しておりますが、引き続き商品力の強化に向けた諸施策を推進してまいります。
⑧情報開示体制の強化
当社賃貸物件に基づく証券化商品について、投資家が有用な運用商品と認識して投資を継続するためには、証券化対象の各賃貸物件の運用状況についての適切な情報還元を行い、当社及び当社商品に対する信頼を醸成・維持・向上することが課題となります。
当社はウェブページ上で証券化対象物件毎の入居・収入状況等を月次で開示している他、インターネットでの申し込みが可能なサラリーマンボンドについては、投資家が各人の投資資産の状況をインターネットで検索できる機能を提供するなど、適切な開示と投資家利便の向上につとめているところでありますが、不特法改正を受けたクラウドファンディングの一段の進展も踏まえて、システム対応の一段の強化等の施策を実施してまいります。