有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/09/05 15:00
【資料】
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【項目】
74項目
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
① 経営成績の状況
第8期事業年度(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)
世界の医薬品市場は、がん領域におけるCAR-T療法や免疫チェックポイント阻害剤を中心として、また中枢神経領域や希少病領域においても画期的な新薬の開発が進められ、引き続き拡大が見込まれています。特に、中国では平成29年10月に医薬品・医療機器のイノベーション奨励を目的に、治験管理の改革や医薬品上市に向けた審査・承認をスピードアップすることなど6項目36件の意見がまとめられ、新薬の開発が一段と加速されています。これにより、がん領域ではCAR-T療法での10件以上の治験申請と共に、PD-L1抗体で初の上市申請が行われるなど、中国におけるブランド薬の市場規模は、平成27年度(2015年)の210億ドルから平成32年度(2020年)には380億ドルへと拡大すると予測されています。一方、わが国の医薬品市場は、平成30年度の薬価制度抜本改革と共に社会保障制度改革の議論が本格化され、財務省は今年度の「骨太方針」へ医療費抑制に関する内容を反映させるとして、引き続き厳しい状況が予想されています。
当社では、がん患者の高齢化が進む中、安心して身内のがん患者にも勧められる治療法を提供することを目指して、「モジュール創薬」に基づく研究開発に取り組み、着実に臨床開発を前進させました。
抗がん剤候補化合物DFP-10917は、平成30年1月に米国食品医薬品局(FDA)と臨床第Ⅱ相試験終了時相談(End of Phase Ⅱ meeting)を実施し、臨床第Ⅲ相試験の主要評価項目をCR率(Complete Remission rate)とすることで合意に至り、臨床試験責任医師や生物統計解析専門家との協議に基づき、プロトコールの作成を進めました。抗がん剤候補化合物DFP-11207は、臨床第Ⅱ相試験を開始する前の段階として、食事の影響試験を進め、症例登録を終了しました。抗がん剤候補化合物DFP-14323は、平成30年1月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ治験計画届を提出し、臨床第Ⅱ相試験を開始すると共に、ライセンス契約先の協和化学工業㈱からマイルストーンを取得しました。また、抗がん剤候補化合物DFP-14927は、平成30年3月に三洋化成工業㈱による第三者割当増資引受と共に、同社と共同開発契約を締結し、米国での臨床試験に向けて準備を開始しました。
以上の結果、当事業年度の事業収益は150百万円(前年同期比83.4%の減少)となりました。事業費用につきましては、開発パイプラインの各臨床試験の開始時期などの見直しに伴う研究開発費の減少により、393百万円(前年同期比31.3%の減少)となりました。この結果、営業損失は243百万円(前年同期は328百万円の営業利益)、経常損失は244百万円(前年同期は323百万円の経常利益)、当期純損失は246百万円(前年同期は305百万円の当期純利益)となりました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績を記載しておりません。
第9期第1四半期累計期間(自 平成30年4月1日 至 平成30年6月30日)
世界の医薬品市場は、中国やインドを中心とした新興国において高成長が続き、米国などの先進国においても画期的な細胞療法(CAR-T)の新薬開発により成長は堅調であり、さらなる拡大が見込まれています。また、今後は細胞治療や遺伝子治療、再生医療等の新たな領域から新薬の上市が見込まれており、このような次世代のバイオ医薬品は、患者1人当たりの費用が10万ドル以上に達するものもあるため、新しい治療アクセスを最大限にする新しい支払いと償還のパラダイムを作り出すことが課題として指摘されています。一方、わが国の医薬品市場は、平成30年度の薬価制度ならびに薬価改定による薬剤費の抑制政策により、先進国の中では低い成長を続けており、国民皆保険の維持とイノベーションの推進の両立を目指しながらも、引き続き厳しい状況が予想されています。
当社では、がん患者の高齢化が進む中、安心して身内のがん患者にも勧められる治療法を提供することを目指して、「モジュール創薬」に基づく研究開発に取り組み、着実に臨床開発を前進させました。
抗がん剤候補化合物DFP-10917は、臨床第Ⅲ相試験の主要評価項目をCR率(Complete Remission rate)として、治験責任医師や生物統計解析専門家との協議を重ね、プロトコールを作成しFDAに提出しました。抗がん剤候補化合物DFP-14323は、臨床第Ⅱ相試験を国内で開始し、第1症例の登録ならびに治験薬の投与が開始されました。抗がん剤候補化合物DFP-11207は、臨床第Ⅱ相試験を開始する前の段階として、食事の影響試験を進め、症例登録を完了しました。また、抗がん剤候補化合物DFP-14927は、三洋化成工業㈱との共同開発に基づき、米国での臨床第Ⅰ相試験に向けて治験薬製造の準備を進めました。
以上の結果、当第1四半期累計期間におけるマイルストーン等の計画はなく、事業収益はありませんでした。事業費用につきましては、開発パイプラインの進捗に伴い、既存試験の終了と新規試験の準備の境界時期になっている影響から、研究開発費が63百万円となりました。この結果、営業損失は105百万円、経常損失は104百万円、四半期純損失は105百万円となりました。
なお、当社は医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績を記載しておりません。
② キャッシュ・フローの状況
第8期事業年度(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純損失の計上、売上債権の減少及び株式の発行による収入等により、前事業年度末に比べ393百万円増加し、当事業年度末には781百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は100百万円(前事業年度は251百万円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失244百万円の計上、売上債権の減少額540百万円、未払金の減少額78百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動によるキャッシュ・フローはありませんでした(前事業年度は1百万円の支出)。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果得られた資金は292百万円(前事業年度は6百万円の支出)となりました。これは主に、株式の発行による収入298百万円によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
販売実績は、次のとおりであります。
第8期事業年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
金額(千円)前年同期比(%)
150,00016.6

(注)1.当社の事業セグメントは医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。
2.最近2事業年度及び第9期第1四半期累計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。
相手先第7期事業年度
(自 平成28年4月1日
至 平成29年3月31日)
第8期事業年度
(自 平成29年4月1日
至 平成30年3月31日)
第9期第1四半期累計期間
(自 平成30年4月1日
至 平成30年6月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
協和化学工業㈱200,00022.2150,000100.0--
日本新薬㈱500,00055.4----
㈱ヤクルト本社202,04622.4----

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成において、会計方針の選択・適用及び損益又は資産の状況に影響を与える見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。
② 財政状態の分析
第8期事業年度(自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日)
a.資産
(流動資産)
当事業年度末の流動資産の残高は、前事業年度末比103百万円減少し、831百万円となりました。これは主に、現金及び預金が393百万円増加した一方で、売掛金が540百万円減少したことによるものであります。
(固定資産)
当事業年度末の固定資産の残高は、前事業年度末比1百万円減少し、32百万円となりました。
b.負債
(流動負債)
当事業年度末の流動負債の残高は、前事業年度末比147百万円減少し、28百万円となりました。これは主に、未払金が78百万円、未払消費税等が47百万円減少したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末の固定負債の残高は、前事業年度末比10百万円減少し、13百万円となりました。これは主に、長期借入金が6百万円、長期未払金が4百万円減少したことによるものであります。
c.純資産
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末比53百万円増加し、822百万円となりました。これは主に、新株の発行に伴い資本金及び資本準備金がそれぞれ150百万円増加したことや、当期純損失の計上246百万円があったことによるものであります。
第9期第1四半期累計期間(自 平成30年4月1日 至 平成30年6月30日)
a.資産
当第1四半期会計期間末における資産合計は742百万円となり、前事業年度末と比較して121百万円減少しました。このうち、流動資産は710百万円となり、前事業年度末と比較して121百万円減少しました。これは主として、現金及び預金が88百万円減少したことによるものであります。また、固定資産は32百万円と、前事業年度末とほぼ同じ水準となりました。
b.負債
当第1四半期会計期間末における負債合計は25百万円となり、前事業年度末と比較して15百万円減少しました。このうち、流動負債は14百万円となり、前事業年度末と比較して14百万円減少しました。これは主として、未払金が12百万円減少したことによるものであります。また、固定負債は11百万円となり、前事業年度末と比較して1百万円減少しました。これは、長期借入金が1百万円減少したことによるものであります。
c.純資産
当第1四半期会計期間末における純資産合計は717百万円となり、前事業年度末と比較して105百万円減少しました。これは、四半期純損失の計上により利益剰余金が105百万円減少したことによるものであります。
③ 経営成績の分析
a.事業収益
当事業年度における事業収益は、150百万円(前年同期比83.4%減)となりました。これは主に、協和化学工業㈱とのライセンス契約に基づく契約対価の計上によるものであります。
b.事業費用、営業損益
当事業年度における事業費用は393百万円(前年同期比31.3%減)となりました。これは主に、開発パイプラインの各臨床試験の開始時期などの見直しに伴う研究開発費の減少によるものであります。
この結果、営業損失は243百万円(前年同期は営業利益328百万円)となりました。
c.経常損益
当事業年度における経常損失は244百万円(前年同期は経常利益323百万円)となりました。
d.当期純損益
当事業年度における当期純損失は246百万円(前年同期は当期純利益305百万円)となりました。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤ 資産の財源及び資金の流動性についての分析
当社の運転資金については、自己資金により充当しています。当事業年度末における現金及び現金同等物は781百万円であり、充分な流動性を確保しています。
キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑥ 経営戦略の現状と見通し
当社の中長期における最重要課題は、抗がん剤候補化合物の開発を進めて承認を取得し、当社が開発した抗がん剤の製品売上高により利益を確保することです。当事業年度では、DFP-10917及びDFP-11207の臨床試験が順調に進んでおり、DFP-14323についても臨床試験を開始いたしました。今後も開発パイプラインを着実に進捗させ、抗がん剤の早期上市を実現できるよう、当社は提携パートナーの製薬会社との連携を模索しながら、経営資源を結集して開発に取り組んでまいります。

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。