有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/20 15:00
【資料】
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【項目】
70項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」という経営理念のもと、不正アクセスやサイバー攻撃に対する対策としてのWebセキュリティを当たり前にするべく、「攻撃遮断くん」と「WafCharm」等の提供により、高度情報社会におけるサイバー空間を支えることを通じ、企業価値の最大化を図ります。
(2)目標とする経営指標
当社は、売上高及びMRRを重視しております。MRRを最大化すべく、新規の月額課金額の増大及び低い解約率の水準の維持低減のための事業活動により、結果として売上高及び利益の成長を実現し、継続的な企業価値の向上を目指します。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
近年、インターネット技術やAI技術の進化によりWebシステムへのサイバー攻撃の手口が加速度的に高度化しております。不正アクセスによる情報漏洩や、企業のサービスの妨害や破壊を目的としたDDoS攻撃など、通信を媒介し、様々なアプリケーションの脆弱性が悪用されることにより深刻な被害につながっております。 加えて、AIを悪用したより複雑な攻撃や、未知のサイバー攻撃が今後増加していくことも予想されております。
これらの脅威に対して、世界中の人々が使うサイバー空間を守り、安心安全に使えるサイバー空間を実現するために、当社は以下の事項を中長期的な経営戦略として、事業を推進してまいります。
①当社のサービスは、サイバーセキュリティに特化しているからこそ、サイバーセキュリティ技術による言語や文化の壁を越えたグローバル展開が可能となっております。日本発のグローバルサイバーセキュリティカンパニーとして、当社の技術力を活かした独自のプロダクトを提供し、世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間の創造の実現を目指してまいります。
②コア技術だけでは多くの利用者を満足させる製品づくりはできません。当社では技術、サポート、販売が密な連携を行うことで、ユーザーの声を開発に反映した満足度の高い製品づくりを行ってまいります。
当社のサービスはクラウド型で提供することにより、当社に多くのアクセス及び攻撃データが集まります。そのデータをAI技術を用いて分析することで、新たな顧客課題の発見へとつながり、新たな製品を生み出してまいります。
③当社は、サイバーセキュリティ分野において、攻撃手法の研究技術、サイバーセキュリティ製品に搭載することを目的としたコア技術の開発力、大量のデータを知見に変えるAI技術を保有しております。
サイバーセキュリティは多層防御といわれ、それぞれの層において対処すべき事項が多岐に渡ります。現在の製品を軸足におきながらも、他分野におけるセキュリティ対策の製品化など、社会トレンドを踏まえたリサーチを基としたR&Dを実行する体制を構築することでトレンドに適した製品をサブスクリプションモデルで開発・提供してまいります。
サイバー攻撃の手法は日々進化しており、それに対応するための方法もまた日々進化させることが重要です。脅威インテリジェンス(注)を活用し、最新の攻撃手法の研究を行いプロダクトへの反映を瞬時に行っていきます。
また、ビッグデータを保持するサービスを多く提供していくことで、ビッグデータとAIの技術を組み合わせた新たな知見を生み出し、サイバー攻撃の防御への活用のみならず、ユーザーの利便性向上のための研究開発を行ってまいります。
(注)脅威インテリジェンス:Threat Intelligence(スレットインテリジェンス)を日本語に翻訳したもの。
新たな脅威の防止や検知に利用できる情報の総称。
(4)対処すべき課題
(人材の確保と育成)
当社が中長期にわたって成長するにあたり、優秀な技術者を中心とした人材の確保と育成は重要であります。
成長性のあるセキュリティ市場の中でも、導入実績国内No.1のWebセキュリティメーカーとしての優位性があるため、現時点では優秀なエンジニア、営業、サポート要員が集まる環境が実現できておりますが、引き続き従業員が能力を最大限発揮できる体制を構築し、優秀な人材の採用と併せて、技術者の育成を進めてまいります。
(サービスの認知度向上、新規ユーザーの獲得)
当社が今後も高い成長率を持続していくためには、当社サービスの認知度を向上させ、新規ユーザーを獲得することが必要不可欠であると考えております。従来より、積極的な広報活動に加え、インターネットを活用したマーケティング・広告活動、大手企業との提携等により認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後、これらの活動をより一層強化・推進してまいります。
(セキュリティ対策の認知向上)
当社の経営理念である「世界中の人々が安心安全に使えるサイバー空間を創造する」を実現するためには、Webアプリケーションを取り巻く脅威の内容及びそれに対する対策の必要性を正しく理解していただくことが重要であると考えております。未だWebセキュリティ対策に関して経営者の多くが誤認しているという実態(注)があるため、当社は、通常の営業活動に加え、Webセキュリティに関するセミナーをはじめとしたWebセキュリティ対策の重要性の啓蒙活動、当社が所持するデータに基づく統計情報などを各種媒体を通じて情報発信することにより、正しいWebセキュリティ対策の認知向上と適切な対策を促す活動に取り組んでおります。
(注)出典:株式会社マーケティングアンドアソシェイツ「セキュリティソフト浸透度調査」
(サービス開発への積極的な投資)
今日のサイバー攻撃は多種多様化し、新たな脅威に対する対策が求められております。当社事業の根幹となるサービス開発に対する投資は、より強固なサイバーセキュリティを実現し、結果として安心安全に使える信頼性のあるサービス開発へつながるのみならず、サービスの高付加価値化から更なる当社業域の拡大を目指すものであります。
(研究開発)
サイバー攻撃の手法が高度化している中、AIやBot(注)などを活用した複雑な攻撃や未知の攻撃に対しては検知が困難であり、正常なアクセスを誤検知してしまうなどの問題が発生してしまう可能性があります。そのため、防御側にもAIのような柔軟性を持った技術の活用が求められております。当社では、攻撃者の動機・目的・手口・行動などの分析を行う脅威インテリジェンスの活用や、当社が保有する膨大なデータをAIに学習させることで、様々なアクセスの中から未知のサイバー攻撃の可能性が高いアクセスを発見・検知することなど、最新のセキュリティ対策のための研究開発に取り組んでまいります。
(注)Bot:コンピューター・ウイルスや不正アクセスなどによって第三者のコンピューターに置かれたプログラム で、外部からのコントロールによって様々な破壊行為を行う機能を持ったもの
(海外展開)
世界の情報セキュリティ市場における日本発の製品シェアは少なく、海外製品が多くを占めておりますが、サイバーセキュリティ技術は世界共通であることから、日本国内へ海外企業のセキュリティ製品が浸透していることと同様に、当社による海外市場へのサービス提供のハードルは高くないと考え、Managed Rulesの販売を足掛かりとして、既存サービスの海外市場への展開に取り組んでまいります。
(内部管理体制の強化)
当社は成長段階にあり、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。従来より当社は監査役会の設置、社外取締役の選任、内部監査の強化などを通じて、コンプライアンス強化に努めております。内部統制の実効性を高め、当社のコーポレート・ガバナンス体制をより一層整備してまいります。