有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/05 15:00
【資料】
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【項目】
145項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、ソフトウェアという無形の財産を世に送り出している企業であります。現在のような高度情報化社会において、ソフトウェアは武器にもなれば、平和を守るための道具にもなります。真に社会に役立つ結果を導き出すのは、豊かな人間性に他なりません。従業員一人ひとりがこの想いを胸に、人格を高めることで、より社会に必要とされる企業に成長することが当社グループの望みでもあります。
そして、自ら行動を起こし、常に本質を追求する姿勢を持ち、積極的なソリューションビジネスを展開し、株主、取引先、従業員といった全てのステークホルダー及び社会に貢献することが当社グループの使命であると考えており、これらを具現化するため当社は、社是を「人間性の追求」と定めております。
また、当社は、以下の3つの経営理念を定め、社是と共に従業員に浸透させております。
一、現状打破の経営 常にステップアップをめざし、現状に甘えず、チャレンジしていく精神が人格を高め、良
い商品を世に送り出すことにつながります。
一、率先垂範の経営 情報産業のパイオニアとして、業界を代表し、さらには日本を代表する企業となるため、社員一人ひとりが率先して経営を考えます。
一、誠心誠意の経営 常に「真」を求める「誠」の精神で経営を推し進めることが社内においても、社外に対し
ても、厚い信頼を得ることにつながります。
(2)経営戦略等
① 当社グループの経営上の強み
当社グループは、独立系であるためメーカーの系列、機種・OS等に限定されることなく、パソコンから汎用大型コンピューターまで幅広い提案・対応が可能であること及び売上高の約7割を取引年数10年以上の顧客で構成し、長期的な安定顧客のポートフォリオを構築していることにより、特定産業の好況・不況の波や技術トレンドの変遷といった環境変化に左右されにくい安定性を保ちつつ、同時に長期的成長を見込むことが可能であります。また、従業員の採用、教育に関し積極的に投資を行っており、地方展開による現地の優秀な人材を確保するとともに、採用した従業員については階層別研修、ITスキル研修、選抜研修の3つの研修を実施し、質、量を伴った動員力の確保を実現しております。
事業としては、ゼネラルソリューションサービス、インフラソリューションサービス、ERPソリューションサービスを展開し、売上の約半数を継続案件や運用・保守等が占めており、安定的な収益基盤を確立していると認識しております。
営業拠点については、大阪、東京、四国(松山、高松)、仙台、広島、福岡に営業拠点を置いており、全国規模でのサービス提供が可能であります。
財務基盤については、安定的な利益の積み上げを実現していることや、保有固定資産が少額であり、重大な評価
損の発生リスクが小さいこと等から、健全であると考えております。
② 当社グループの経営上の弱み
当社グループは中堅独立ITトータルソリューションプロバイダーのため、ネームバリューやブランドイメージを求めるユーザーや求職者へのアピールにおいて、他社との競合面、採用面で不利な場合があります。また、直ユーザーへの売上比率は大手Sierと遜色ない関西圏に比べ、首都圏では相対的に低く、利益率の低下につながっていると考えております。加えてプロジェクトマネージャー(以下「PM」という。)(注1)の育成が遅れており、その結果一括請負業務の割合が低くなり、こちらも利益率の低下につながっております。
また、ビジネスパートナー(以下「BP」という。)(注2)獲得に苦戦しており、平成31年3月期における当社グループの製造費用に占める外注費の割合は33.3%と同業他社に比較して低く、プロパー社員に頼る構造となっており固定費率の上昇につながっております。
(注)1.PMとは、プロジェクトの計画、遂行に責任を負うプロジェクトの管理者を意味しております。
2.BPとは、ビジネス上の目的や目標を果たすために、協同して取り組む関係にある人や企業であって、当社が委託を行う外注先を意味しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、動員力の強化に基づくさらなる業容拡大を図り、高い成長性及び収益性を確保する視点から、期末人員数、BP平均人員数、非稼働人員数の労務費額を重要な経営指標と捉えております。
(4)経営環境
国内経済が緩やかな回復基調が続く中、当社グループが属する情報サービス産業においては、クラウド、IoT、フィンテック(注3)、ビッグデータ、AI、RPA等の技術革新の進展や、「働き方改革」の実現に向けたIT活用意識の高まりを背景に企業の将来を見据えた戦略的IT活用の重要性が高まり、引き続き情報サービス業界における経営環境は堅調に推移していくものとみられ、当社グループについても受注獲得に努めてまいります。
(注)3.フィンテックとは、Finance(ファイナンス)とTechnology(テクノロジー)の造語で、金融サービス
と情報技術を結び付けた様々な革新的な動きを意味しております。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社は、「人間性の追求」の社是の下、さらなる事業収益の拡大を図ることにより、持続的かつ飛躍的な成長と、より強固な経営基盤を確立すべく、以下の事項を重要課題と捉え、その対応に引き続き取り組んでまいります。
① 既存の事業分野の更なる強化
ITサービスの多様化とサービスの低価格化で、ますます競争が激しくなる中、当社グループが業容拡大を続けていくには、高い専門性で付加価値を創造し、他社との差別化を図っていく必要があります。そのためには、これまで得意分野としていたゼネラルソリューションサービス、中でも金融、公共、流通、医療といった分野についてさらなる強化をしていかなければなりません。そのためには、今まで培ってきた業界・業務知識と技術を基に体制を整え、顧客にワンストップソリューションを提供するとともに、潜在ニーズまで踏み込んでトータルソリューションサービスへの進化を目指します。
② 新たな成長分野への展開
当社グループが本格参入を視野に入れている新たな成長分野として、クラウド、フィンテック、BPO、RPA、AI等があります。新たな成長分野への参入の基本的な考え方として、顧客の要望・顧客システムを理解し、最適な技術サービスの提案・提供することを通じて、新規ビジネスの創出を目指してまいります。また、新たな成長分野への参入のため、研究開発チームの創設等を行い、体制の整備を図ってまいります。
③ 優秀な人材の確保
当社グループの業容拡大策の柱は動員力の強化であり、優秀な人材確保が今後の重要課題であります。そのため、新卒採用、キャリア採用を問わず、積極的な採用活動を展開しております。また、首都圏でのキャリア採用を推進するため、ヒューマン・リソース調達室を開設し、首都圏キャリア採用担当者が採用活動を行っております。
④ プロジェクトマネジメント力の強化
顧客との取引を拡大し適正な利益を確保するためには、PMの一人ひとりのマネジメント能力を更に強化するとともに、プロジェクトマネジメントができる技術者を拡充していくことが重要な課題であります。従業員個々のプロジェクトマネジメント能力向上のため、当社グループではプロジェクト管理の国際標準的な資格であるPMP資格(注4)の取得プロジェクトを行っております。本プロジェクトでは、年10名程度の候補者を選出し、教育を施し、年5~7名程度のPMP合格者を輩出させております。
(注)4.PMP資格とは、Project Management Professionalの略称であり、アメリカに本部を置く非営利団体PMI(Project Management Institute)が認定しているプロジェクトマネジメントに関する国際資格であります。PMP試験は、PMIが策定した知識体系であるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)ガイドに基づいて実施され、受験者のプロジェクトマネジメントに関する経験、教育、知識を測り、プロフェッショナルとしての確認を目的としております。全世界ですでに会員数が10万人以上存在しております。
⑤ 品質の向上
顧客との安定した取引を継続、発展させていくには、顧客に満足していただけるシステムの品質確保が重要な課題と認識し、品質向上に取り組んでおります。具体的には、ISO9001認証を取得するとともに、全社のPMO(注5)たる組織を確立する目的で技術統括部を立ち上げ、開発標準の確立を行い、全社レベルで品質管理を行っております。
(注)5.PMOとは、Project Management Officeの略称であり、組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システムを意味しております。
一般的なPMOの主な役割は以下のとおりであります。
1. プロジェクトマネジメント方式の標準化
2. プロジェクトマネジメントに関する研修等人材開発
3. プロジェクトマネジメント業務の支援
4. プロジェクト間のリソースやコストの各種調整
5. 個別企業に適応したプロジェクト環境の整備