有価証券報告書-第40期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:32
【資料】
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【項目】
110項目
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
当社は、「エンジニアに、明日への地図を。」を経営方針とし、機電系エンジニア人材とものづくり企業の双方を、AIを活用して結びつけるプラットフォームサービスを提供することで支援し、社会に貢献いたします。また企業として持続的に成長し、中長期的な企業価値の向上に取り組んでいく所存です。
(2)経営戦略等
当社は、機電系エンジニア人材市場全体を網羅する流動化促進プラットフォームを推進することでエンジニアの確保を実現すると共に、新たな収益モデルの構築に取り組んでまいります。
また、AIを活用して業務効率化を推進し、最少の人数で最大の成果をもたらす仕組みを構築することで、従来から人材派遣業界の慣習でもある「労働集約型ビジネス」からの脱却を図り、収益性の向上を目指します。
さらに、現在の当社の主要な事業領域である機電系エンジニア人材の派遣及び紹介等に比較的近い、ソフトウエアの開発等のIT系エンジニアの人材紹介等も対象としていくことで、エンジニア紹介サービスの対象となるエンジニア人材の拡大を目指します。
これらに加え、テレビCMをはじめとしたさまざまなメディアによるプロモーションを展開し、当社サービスの認知度向上を図ってまいります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、事業の成長性を評価する客観的な指標として、売上高及び営業利益を掲げております。また、当社の売上高と営業利益の大半を占めるエンジニア派遣サービスにおける売上高の構成要素となる稼働人数を、目標の達成状況を判断する指標として重視しております。
(4)経営環境
わが国の15~64才労働力人口は約5,960万人(出典:総務省統計局 2020年3月 労働力調査)、その中でも機電系エンジニア人材は概ね64万人(出典:2015年国勢調査、当社が元データの「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)、機械技術者、輸送機器技術者」合計人数から65歳以上の人数を除いて算出)という極めて限定的な市場環境となります。少子化に伴う就労人口の減少、学生の理系離れも加速する中、正社員、派遣ともエンジニア不足が加速しております。
また、この状態の下で、近年機電系エンジニアの派遣単価は継続的な上昇傾向が続きました。2020年4月のいわゆる「同一労働同一賃金」の導入もその傾向を後押ししていると考えられます。
一方で、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした外出自粛や生産活動の一時的帰休の広がりは、機電系エンジニア人材市場にも大きな影響を及ぼし始めております。派遣エンジニア稼働時間の減少など既に顕在化している影響に加えて、少なくとも短期的には顧客企業の機電系エンジニア人材採用意欲に変化が出て来る可能性があると考えられます。
他方、一連の労働者派遣法の改正に伴って人材派遣業界では資本の小さな企業の淘汰と寡占化の進行が見込まれており、また近年のHRテック企業の台頭や、新型コロナウイルス感染拡大などを背景として人材紹介サービスを取り巻く環境にも変化の兆しが表れる可能性があります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上述の経営方針、経営戦略等、経営環境を踏まえ、今後当社は主に以下の課題に対処いたします。
①エンジニア人材の確保
労働力人口の減少やメーカーによる正社員雇用の増加など、エンジニアの確保が難しい状況が継続するものと予想されます。このような環境下において、当社事業の主要サービスであるエンジニア派遣において、業容を拡大するにはエンジニア人材の確保が最重要課題と認識しております。
②競合他社との差別化を通じた持続的利益成長の実現
上記(4)の状況に対し、競合他社は派遣先業種の拡大や海外展開などで業容の拡大を目指しており、当社も独自の戦略で競合他社との差別化を図り、持続的利益成長を実現することが課題であると認識しております。
③新たな「働き方」に対応するための業務体制の構築
当社は、これまでもICTの活用等を進めてまいりましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止を契機として、在宅勤務や時差通勤などこれまでにない勤務形態を継続する必要性が高まっております。
従って、今後の当社にとって、これら新しい「働き方」に対応するための業務体制を早期に確立することが重要かつ喫緊の経営課題となると認識しております。
④財務体質の強化と流動性資金の確保
新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な経済活動の低迷とそれに伴う景気見通しの不透明性が予測される状況において、強固な財務体質と流動性資金の確保は事業継続性の観点から喫緊の経営課題であると認識しております。
⑤業界再編への対応
当社は国内エンジニア派遣業界大手の一角を占めておりますが、上述のとおり当社を取り巻く経営環境は今後大きく変化していく可能性があります。
従って、このような経営環境の動きを的確に捉えて事業機会を見出し、当社ビジョンの達成と持続的成長の実現につなげることは重要な経営課題であると考えております。
(6)対処すべき課題に対する具体的な取組状況等
①エンジニア人材の確保のための取り組み
当社は、AIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を基盤として、全ての機電系エンジニア人材流動パターンを捕捉し得る5種類のサービスを2020年3月期までに整備いたしました。この「コグナビ」サービスラインアップ(コグナビ 派遣、コグナビ 転職、コグナビ 新卒、コグナビ タレントマネジメント、コグナビ カレッジ)によって、当社は全てのエンジニア人材カテゴリー(エンジニア正社員、エンジニア派遣社員、理工系学生、その他エンジニア就業希望者)に対応することが可能となりました。
今後当社がエンジニア人材を持続的に確保するためには、「コグナビ」ブランドの認知度を高めて「コグナビ」各サービスに登録しそれらを利用する人材の数を増やしていくことが最も重要であると考えております。このため、当社は2020年4月よりテレビCMを中心としたメディアミックス型認知度向上施策の展開を開始し、「コグナビ」ブランド認知度の向上と「コグナビ」各サービス登録会員数の増強に取り組んでまいります。
なお、当社は2019年7月の「コグナビ 新卒」紹介サービス開始に伴い、エンジニア派遣サービスにおける新卒学生の技術社員採用を控えてまいりました。しかしながら、2021年3月期においては、新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気悪化の影響によって機電系大手製造業の新卒学生採用数が減少する可能性を鑑みて、エンジニアを志望する新卒学生を当社エンジニア派遣サービス技術社員として採用することを計画しております。
②競合他社との差別化を通じた持続的利益成長の実現のための取り組み
当社は、これまで製造業のうち収益性の高い「主要8業種(自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信)」に集中し、同時にICTの活用による営業活動の効率化に取り組むことで、エンジニア派遣他社よりも高い売上高総利益率を実現してまいりました。
さらに当社は、数年間にわたる時間と先行投資を投下して独自のAIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系エンジニア人材流動パターンを捕捉し得るサービスラインアップを2020年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系エンジニア人材流動パターンを捕捉するという当社のビジネスモデルは知られている限りあまり類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。従って、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差別化・競合優位性の源泉であり、当社が求人企業・求職人材双方に対して独自の付加価値を提供する基盤となります。
今後当社は、「コグナビ」各サービスを本格展開することを通じて、競合優位性を顕在化させていく方針です。
また、2021年3月期中に、新たにITエンジニア正社員向けの転職支援サービス「コグナビ 転職 IT」を新たに立ち上げて、ツリー構造によってエンジニアのスキルを記述できる次の人材セグメントに本格的に参入する方針です。
③新たな業務体制構築への取り組み
当社はこれまでもICTを積極的に導入するなど「労働集約型ビジネス」からの脱却を図ってまいりましたが、今般の新型コロナウイルスの影響が継続する状況においては、業務プロセスの見直しを積極的に行い、在宅勤務や労働時間の弾力的な運用にも耐えられる業務システムを構築するため、新たなシステムの導入検討などを積極的に進めてまいります。
④財務体質の強化への取り組み
当社は、これまでも健全な財務体質の構築に取り組んでまいりましたが、今般の新型コロナウイルス感染拡大による環境の急変を踏まえて、銀行借入による手許資金の積み増しを行ってまいります。この結果、現時点で6ヶ月分以上の平均月間支出額に相当する手許資金(銀行借入枠を含む)を確保しております。
当社は、今後も引き続き取引金融機関との関係を維持し、適時に流動性資金を確保できる状況を整備する方針です。
⑤業界再編の動きへの取り組み
当社は、関係各方面からの情報収集を強化し、業界動向を注視しております。寡占化や再編の動きを察知した場合には、当社にとって有利な形で活用するよう努めてまいります。必要に応じて、業務提携、共同事業、資本提携、M&Aなど様々な選択肢を検討する方針です。