有価証券報告書-第41期(令和2年4月1日-令和3年3月31日)

【提出】
2021/06/25 15:31
【資料】
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【項目】
103項目
文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
日本国内のエンジニア人材市場は、社会の高齢化と人口減少を背景として構造的な人材不足に直面している一方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした新しいニーズが生まれてきております。従って、国内エンジニア人材関連サービス業界はこの両面から転換期を迎えているというのが当社の基本的な環境認識です。
この認識の下、当社は「エンジニア人材の流動性の向上」が求職人材・求人企業双方のニーズを充足する鍵であると考え、当社のビジョンとして「エンジニア人材流動プラットフォームの構築」と「テクノロジーによる求職人材・求人企業マッチング自動化・無人化の実現」の2つを掲げております。
(2)経営戦略等
当社は、上述のビジョンの実現を目指して、長期的な視点に立ってICTへの先行投資を行ってまいりました。その成果がAIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」であり、2020年3月期にエンジニア人材の全ての流動パターンを捕捉できる5種類の「コグナビ」サービスが出揃いました(第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容 ご参照)。今後当社は、従来の主業であるエンジニア人材派遣サービスの顧客企業に対してこれらの「コグナビ」サービスを提供することを通じて、エンジニア人材不足に悩む顧客企業のニーズを充足しながら、当社収益基盤の拡充に努める方針です。
従来当社は高い収益性と安定した需要の存在の双方を兼ね備えた機電系設計エンジニア人材セグメントにフォーカスしてまいりましたが、今後はツリー構造によってエンジニアのスキルを記述できる新たな人材セグメントの開拓を検討いたします。第1弾として、2021年3月期よりIT系エンジニア人材の紹介サービス「コグナビ 転職IT」を開始いたしました。
また、2020年4月、5月と2021年3月にテレビCMを中心としたメディアミックスによる認知度向上施策を展開し、「コグナビ」ブランド認知度の向上とそれに伴う「コグナビ」サービス登録会員数の増強に取り組んでおります。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、収益性を判断する指標として売上総利益率を重視しており、また中長期的成長状況を判断する指標として営業利益を重視しております。
また、当社の売上高と営業利益の大半を占めるエンジニア派遣サービスにおける売上高の構成要素となる稼働人数を、目標の達成状況を判断する指標として重視しております。
(4)経営環境
当社の中心的な人材セグメントである機電系エンジニアの需要は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした外出自粛による経済の停滞による影響を受けております。在宅勤務等による派遣エンジニア稼働時間の減少に加え、景気の先行き不透明感から顧客企業の機電系エンジニア人材採用が慎重になっております。
しかしながら、我が国の15~64才労働力人口約5,912万人(出典:総務省統計局 2021年3月 労働力調査)の中で、機電系エンジニアは概ね64万人(出典:2015年国勢調査、当社が元データの「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)、機械技術者、輸送機器技術者」合計人数から65歳以上の人数を除いて算出)であり、機電系エンジニアの労働人口に占める割合は少ない状況にあります。
さらに、少子化に伴う就労人口の減少や学生の理系離れなどを背景として、機電系エンジニアは正社員、非正規社員ともに構造的な不足状態が未だ解消されておりません。
一方、世界的にカーボンニュートラルをはじめとした新たな技術的課題への対応が求められる中、当社はエンジニアに対するニーズが今後も拡大するものと見込んでおります。
この環境の下で、近年機電系エンジニアの派遣単価は継続的な上昇傾向が続きました。2020年4月の所謂「同一労働同一賃金」の導入もその傾向を後押ししていると考えられます。
また、一連の労働者派遣法の改正に伴って人材派遣業界では資本の小さな企業の淘汰と寡占化の進行が見込まれております。
一方、近年のHRテック企業の台頭や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大などを背景として人材紹介サービスを取り巻く環境にも変化の兆しが表れる可能性があります。
当社は国内エンジニア派遣業界大手の一角を占めておりますが、このような経営環境の動きを的確に捉えて事業機会を見出し、当社ビジョンの達成と持続的成長の実現を図っていく所存です。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上述の経営方針、経営戦略等、経営環境を踏まえ、今後当社は主に以下の課題に対処いたします。
①エンジニア人材の確保
日本国内のエンジニア人材市場は社会の高齢化と人口減少を背景とした構造的な人材不足に直面していることから、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う短期的な人材需要の落ち込みは想定されるものの、中長期的にはエンジニア人材の確保が難しい状況が継続するものと予想されます。
従って、エンジニア人材採用力を強化することは当社の重要な経営課題であると考えております。
このような環境下において、当社は、AIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を基盤として、全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉し得るサービスラインアップを有しております。今後当社が持続的に成長するためには、「コグナビ」ブランドの認知度を高めて「コグナビ」各サービスに登録し、それらを利用する人材の数を増やしていくことが最も重要であると考えております。
②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立
所謂「同一労働同一賃金」の実現を目的とした2020年4月の労働者派遣法の改正に伴い、人材派遣業界では資本の小さな企業の淘汰と寡占化の進行が見込まれており、また近年のHRテック企業の台頭や新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を背景として人材紹介サービスを取り巻く環境にも変化が表れております。一方で、様々なHRテックが登場しているものの、まだ業界に根本的な変化を起こして市場を制覇するテクノロジーやビジネスモデルが見当たらないことも事実です。
当社は、数年間にわたる時間と先行投資を投下して独自のAIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉するという当社のビジネスモデルは類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。当社独自のスキルマッチング機能を前面に営業活動を展開し、ターゲット顧客である機電系大手製造業やIT企業との取引拡大を目指してまいります。
このように、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差別化の源泉であり、これらを活用してテクノロジーとビジネスモデルで競合優位性を確立することは重要な経営課題であると考えております。
③財務体質の強化と流動性資金の確保
当社は健全な財務体質の維持に努めておりますが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による環境の変化に対応するべく、手許資金額・借入枠を積み増しております。
今後も取引金融機関からの高い信用力を維持し、流動性資金を適宜確保することは当社の重要な経営課題であると考えております。
④リスク管理の強化
当社はリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることが重要であると考えております。そのため、リスクマネジメント規程を定め、リスク発生においては適切かつ迅速な対応に努めております。また、自然災害等不測の事態に備えBCP(事業継続計画)を策定しております。今後も社内教育や訓練を継続的に実施するとともに、備えるべきリスク項目の見直しやその対応策を検討する等リスク管理を継続的に強化していくことは当社の重要な経営課題であると考えております。
⑤新型コロナウイルス感染症への取り組み
当社は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、当社従業員とその家族、顧客企業や取引先等、ステークホルダーの安全確保、感染拡大防止を最優先に考え、在宅勤務や時差出勤、オンラインでの面接や商談等の基本対策を実施しながら事業活動に取り組んでおります。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けた基本対策の徹底は当社の重要な経営課題であると考えております。
(6)対処すべき課題に対する具体的な取組状況等
①エンジニア人材の確保のための取り組み
当社のエンジニア派遣サービスにおいては、上述のとおり、顧客となる大手製造業からの需要が存在するものの、エンジニアの確保が難しい市場構造ができております。
このような環境下において、当社は、AIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を基盤として、全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備し、全てのエンジニア人材カテゴリー(エンジニア正社員、エンジニア派遣社員、理工系学生、その他エンジニア就業希望者)に対応することが可能となりました。
今後当社がエンジニア人材を持続的に確保するためには、「コグナビ」ブランドの認知度を高めて「コグナビ」各サービスに登録しそれらを利用する人材の数を増やしていくことが最も重要であると考えております。このため、当社は2020年4月、5月及び2021年3月にテレビCMを中心としたメディアミックス型認知度向上施策の展開を開始し、「コグナビ」ブランド認知度の向上と「コグナビ」各サービス登録会員数の増強に取り組んでおります。
②テクノロジーとビジネスモデルによる競合優位性の確立のための取り組み
当社は、これまで製造業のうち収益性の高い「主要8業種(自動車、輸送用機械、産業用機械、精密機器、電気機器、家電、電子部品、情報通信)」に集中し、同時にICTの活用による営業活動の効率化に取り組むことで、エンジニア派遣他社よりも高い売上高総利益率を実現してまいりました。
さらに当社は、数年間にわたる時間と先行投資を投下して独自のAIを活用したスキルマッチング機能を有するプラットフォーム「コグナビ」を構築し、この「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉し得るサービスラインアップを2021年3月期までに整備いたしました。「コグナビ」テクノロジーを基盤として全ての機電系及びITエンジニア人材の流動パターンを捕捉するという当社のビジネスモデルは知られている限りあまり類例を見ない革新的なものであり、国内エンジニア派遣企業他社のそれと明確に異なっております。従って、「コグナビ」テクノロジー及び「コグナビ」ビジネスモデルは当社の差別化・競合優位性の源泉であり、当社が求人企業・求職人材双方に対して独自の付加価値を提供する基盤となります。
今後当社は、「コグナビ」各サービスを本格展開することを通じて、競合優位性を顕在化させていく方針です。
③財務体質の強化と流動性資金の確保への取り組み
当社は、これまでも健全な財務体質の構築に取り組んでまいりましたが、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による環境の変化を踏まえて、銀行借入による手許資金の積み増しを行いました。この結果、現時点で6ヶ月分以上の月間支出額に相当する手許資金(銀行借入枠を含む)を確保しております。
当社は、今後も引き続き取引金融機関からの高い信用力を維持し、適時に流動性資金を確保できる状況を整備する方針です。
④リスク管理の強化への取り組み
当社は、これまでもリスクを事前に回避すること及び万一リスクが顕在化した場合の被害最小化を図ることに取り組んでまいりましたが、外部機関を利用したリスクの洗い出しを実施し、定期的な社内教育の実施や、BCPに基づいた訓練を継続的に実施するなど、リスク管理の体制を強化してまいります。
⑤新型コロナウイルス感染症への取り組み
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響が継続する状況において、業務プロセスの見直しを積極的に行い、在宅勤務や労働時間の弾力的な運用にも耐えられる業務システムを構築するため、新たなシステムの導入検討などを積極的に進めてまいります。