有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/03/23 15:02
【資料】
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【項目】
158項目

対処すべき課題

本文中における将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針及び経営環境
当社グループは、コアビジネスである不動産関連事業を通じて「街づくり」と「地域の活性化」を使命と考え、「人々が“安心”して住める街づくり」・「人々が“快適”に暮らせる街づくり」・「人々が“満足”する街づくり」を通して、地域の発展とそこに住む人々の幸せを追求することを企業理念に掲げております。
当社グループは、事業用不動産の取得~開発(商品化)~販売・賃貸・仲介まで縦断的に扱う専門集団としての特徴を基盤とし、不動産業界の特定の領域に特化するのではなく、時代の趨勢や社会構造の変化、国策の転換等に応じて、柔軟に経営資源の選択と集中を行い、長期にわたり安定的に成長を続けていくことを基本方針としております。
2019年の我が国は、新天皇即位に伴う改元、働き方改革、消費増税など、社会経済の大きな転換期を迎えました。不動産業界に関しては、近年、建設コストの増加や都市部における用地取得の競争激化により不動産価格が上昇し、一般顧客層への販売価格が高止まりしております。短期的には、現在庫の販売が進む間は販売価格の高止まりが続くことが想定されますが、2020年東京オリンピック以降の首都圏での不動産市場動向が不透明であり、また、地政学的リスクの顕在化や米中貿易摩擦の影響、金融情勢の変化などの懸念事項が多く、中長期的な市況変化の予測は困難であると認識しております。
こうした経営環境の下、当社グループの中期経営計画としては、次の取組みを中心に展開していく方針です。
①不動産開発・賃貸事業
当社保有物件のテナント選定に関しては、昨今の健康志向、少子高齢化、Eコマースの深化といった社会経済構造の大きな変化に合わせ、将来性の見込まれる業種に対するリーシング営業に注力し、収益を長期的に安定させることを図ります。新規物件の取得に関しては、近畿圏での既存ビジネスモデルの深耕を進めることに加え、各地方の優良都市ならびに首都圏での優良物件取得を目指します。
②不動産開発・販売事業
今後の中期的な戦略として、現在進行中である兵庫県西宮市における案件を着実に進捗させることで知名度や企業イメージの向上を図り、次なる住宅用地開発案件の取得を目指します。和歌山エリアでは、地場の確固たる地位を築きシェアの拡大を目指します。
③マンション事業
大阪市内を中心に、交通利便性の高い優良物件の取得に努め、これまで主力としてきたファミリー層や一次取得層向けのマンション供給を着実に拡大していく方針です。また、地方の優良都市における土地取得にも注力し、営業エリア拡大を図ります。
④その他の事業
株式会社ウェルネス・コートとして、高齢者向け事業を中心とした安定的収益獲得を維持するとともに、企業グループのイメージ向上に寄与すべく各種サービスの充実を図ります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは持続的な成長と安定的な収益性を重視する視点から中期経営計画を策定し、目標達成に取り組んでおります。当社グループでは、保有する資産のほとんどが事業性不動産であることから、不動産投資の効率性を判断する目的で、総資産営業利益率(ROA)を経営指標としており、収益性の高い不動産投資に努めます。

(3)対処すべき課題
①不動産開発・賃貸事業の安定的拡大
当社グループでは郊外ロードサイドの商業用地開発を得意としており、物販や飲食業の適地取得に注力してきましたが、昨今の都市部への人口集中やインターネット販売の拡大といった社会構造の変化を受けて、小売業の一部等に郊外型店舗の出店ペースの鈍化が見受けられます。対応として、今後はこれまでの営業活動に加えて、物流倉庫やドラッグストアなど、データ社会や少子高齢化等に適応した成長過程にある業界への賃貸を目的とした新規事業用地の取得・開発も推進します。
住居系の自社保有賃貸物件については、特に築年数の古い物件に関する修繕費用や稼働率低下が課題となります。当社グループでは、築古物件に関してはそれぞれの立地条件や地域性を考慮し、販売用不動産への切り替えや、用途変更などを検討しながら、収益を最大化、又は、長期に渡り安定化する方針です。
②不動産開発・販売事業のエリア拡大
当社グループの主力とする戸建分譲地の開発事業については、情報網の地域性が強く、優良な物件情報を取得するための仲介事業者とのネットワーク構築や地域での企業知名度・ブランド力向上が課題となります。当社は数年前からこうした情報ネットワークの拡大活動を続けておりますが、今後はこれらをさらに活用し、和歌山エリア外での開発案件を加速します。
また、戸建用分譲地以外の土地開発についても注力し、立地特性やユーザーのニーズに応じた事業用地開発と販売活動も進めてまいります。
住宅販売・建築請負事業については、株式会社LIXIL住宅研究所が展開する「GLホーム」の販売に注力し、大手ハウスメーカーが取りこぼす中間価格帯の客層に向けた住宅販売の強化を進めていきます。
③マンション事業の利益確保
近年、マンション用地となる都市部や駅近傍の土地価格の高騰や建設費の上昇など、事業コストが高まっております。過年度は販売期間が長引いたために固定費が膨らむ案件があったため、今後は販売期間を短くするために営業支援用のITツールやクラウドサービスに基づくマーケティングや顧客管理システムを導入し、販売活動の能率化とスピードアップを推進します。また、マンション販売そのものに加えて、販売時に付随的に発生する不動産仲介や販売した居室のリフォームといった事業を積極的に展開し、トータルとしての利益率を向上させていく方針です。
④人材確保と育成
和歌山市のような地方都市では若い人材の確保が困難であります。事業拡大や新規事業の展開などには、優秀な人材の確保と育成が必要であると考えております。今後、エリア展開の広域化に合わせて、都市部での採用活動を推進し、人事制度や研修制度の充実を図ります。
⑤財務体質の改善
一部金融機関における不正融資の発覚や賃貸集合住宅の施工不良問題などの影響もあり、不動産関連への融資姿勢が硬化しつつあります。当社グループでは不動産取得の際はそのほとんどを金融機関からの調達で賄っておりますが、融資を受けられない場合は物件取得が困難になる可能性があります。優良物件取得の好機を逸することのないよう、取引先金融機関の拡大や資金調達手段の多様化などを進めます。
⑥住宅品質の担保
昨今、集合住宅の施工不良問題が相次いで発覚しております。当社グループとしては、法令遵守と品質向上を重要な経営課題と考えておりますが、注文建築の場合は商品ごとの個別性が高く、また、担当者の技術レベルの違いによっては仕上がりにムラが生じる可能性があることから、現在当社ではITツールを活用した現場管理システムの導入に加えて、管理監督担当者の定期的な教育研修制度の充実やコンプライアンス教育の徹底、関係業者への周知徹底の強化を推進しています。