有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/16 15:00
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132項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性のあると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)当社の事業環境について
① EC市場について
当社は、ブランドメーカーに向けて、EC事業における様々な支援サービスを提供しております。EC市場については、順調に拡大しておりますが、インターネット及びECは歴史が浅いため、将来性については不透明な部分があります。また、急激な成長による安定性や信頼性が損なわれるような弊害が発生した場合や、法的規制等により、インターネット利用者数やEC市場が順調に成長しない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度は低いと判断しておりますが、経済状況や主要市場の変化により常に起こりうるものとして認識しております。当社では当該リスクへの対応策として、常に市場動向を観察・分析しタイムリーな計画変更を実施してまいります。
② 競合会社について
当社が提供するECマーケティングサービスでは、EC事業における様々な支援サービスがあり、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングをはじめとした各ECプラットフォームにて、マーケティング支援や、マーケティング代行サービスなどのECコンサルティングに大手広告代理店企業、ベンチャー企業など多くの企業が参入し、競合会社が存在しています。
当社の競合優位性を失わせるような競合会社におけるサービス品質の向上や当社より低価格のサービスを持つ企業が出現する等、当社が明確な競争優位戦略を確立できなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は常にあるものと認識しております。当社では、当該リスクへの対応策として当社がこれまでに築き上げた豊富な経験、実績及び社内ノウハウや教育システムを強みにし、市場ニーズに照らし適切なサービスを提供していくことで、競合要素の排除及び強固なポジションの維持に努めております。
③ 技術革新について
当社が事業を展開するECの根幹となるインターネット環境、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングをはじめとする各ECプラットフォームに関連する技術革新のスピードや消費者ニーズの変化が速く、それに基づく新サービスの導入が相次いで行われております。当社は、これらの変化に対応するため、技術者の確保や必要な研修活動を行っておりますが、これらの対応が想定通りに進まない場合、当社の提供するサービスが陳腐化し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は常にあるものと認識しております。当社では、これらのニーズ変化に対応すべく、さらなる技術者の確保や必要な研修活動を行い、積極的に技術情報の収集及び技術ノウハウの吸収並びにサービス開発への展開に努めてまいります。
(2)当社の事業について
① ECマーケットプレイスサービスについて
ECマーケットプレイスサービスは、当社がAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングをはじめとしたECプラットフォーム上で、ブランドメーカーの公式ショップを運営し、ブランドメーカーから商品を仕入れ、一般消費者からの受注対応から物流倉庫での保管・出荷まで一気通貫でサービス提供をしております。当社が出店するECプラットフォームにて運営方針の変更などにより、出店に関する費用が増加した場合やECプラットフォームを利用する消費者が減少する場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の取り扱いブランドの人気低下が起こった場合や受託しているブランドとの契約解除があった場合にも、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は低いと判断しております。
② 特定ブランドへの依存について
ECマーケットプレイスサービスにおいては、「SK-Ⅱ」及び「BRAUN シルクエキスパート」ブランドにおける売上高の割合がECマーケットプレイスサービスの売上高の過半数を占める状況にあります。当社としては、取引先の多様化の観点から、新規取引先を開拓することで、取引先の裾野を広げ、その割合の低減に努める方針です。また、「SK-Ⅱ」の仕入先であるP&Gプレステージ合同会社、「BRAUN シルクエキスパート」の仕入先である富士器業株式会社とは共に良好な関係を構築しておりますが、今後消費者の嗜好に変化が生じた場合や、当該ブランドの人気低下が起こった場合、受託しているブランドとの契約解除があった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度は低いと判断しております。
③ ECマーケティングサービスについて
ECマーケティングサービスは、国内の複数のECプラットフォームにおける、マーケティング・コンサルティング、デザイン、サイト運営等の事業における様々な支援サービスを提供しております。このサービスにとって獲得したユーザーの新規契約件数、及び継続率は重要な要素であり、Webセミナー等のマーケティング活動による新規取引先の獲得、ユーザーの利便性の向上、取り扱う情報やサービスの拡充等の施策を通じて、新規契約件数の確保、継続率の維持、向上を図っております。しかしながら何らかの施策の見誤りやトラブル等で、新規契約件数や継続率が想定を大きく下回る事態が続いた場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度は低いと判断しております。
④ 物流外注先の活用について
当社の提供するECマーケットプレイスサービスにおける物流サービスは、当社が提携している物流倉庫会社に外注しております。現状では、有力な協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保っておりますが、必要なキャパシティが確保できない場合、物流の運賃上昇があった場合あるいは新たな協力会社が発掘できなかった場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 新規事業について
当社は、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針であります。新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 需要予測に基づく仕入れについて
当社のEC事業において販売する商品の大部分は、需要予測に基づいた仕入を行っております。しかしながら、実際の受注が需要予測を上回った場合には販売機会を失うこととなります。また、実際の受注が需要予測を下回った場合には、当社に過剰在庫が発生しキャッシュ・フローへの影響や商品評価損が発生する可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、経済状況や主要市場における需要の変化により常に起こりうるものとして認識しております。当社では、市場動向を分析し、過剰在庫が発生しないよう適正在庫のコントロールを行ってまいります。
(3)組織体制について
① 人材の確保・育成について
当社が提供する各サービス分野において、高度な専門知識及び経験を有している優秀な人材の確保及び育成は経営の最重要課題であると考えております。当社では、優秀で意欲に満ちた魅力ある人材を確保できるよう、自由で創造性に満ちた誇りある企業文化の醸成に力を入れております。また、従業員にとって、働きがいのある目標の設定、能力に応じた積極的な権限委譲、さらには、社内人材育成を目的とした研修プログラムの構築による社内育成体制の強化も進めております。しかしながら、今後、取引先の需要に対して、当社が必要とする人材が必要なだけ必要な時期に確保・育成できなかった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② システムトラブルについて
当社が提供しているサービスは、インターネット通信網に依存しております。したがって、想定を超えたアクセスの増加によるシステム障害、自然災害や事故によりコンピューターシステムが停止し、またはインターネット回線の接続が不能となった場合、サービスの提供が困難となります。当社では、そのような事態を想定し、ほぼ全てのサーバーを外部のデータセンターへ設置するとともに、オフィスの選定に関してもシステム保守・保全の点を重視するなどバックアップ及び可及的速やかな復旧が可能な体制を構築しております。しかしながら、自然災害等の既述の予測不能な様々な要因により、システムトラブルが発生し、安定的なサービス提供を行うことができない事態が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定の人物への依存について
当社の創業者である代表取締役社長坂本守、取締役副社長望月智之は、経営方針や経営戦略等、当社の事業活動において重要な役割を果たしており、当人に対する当社の依存度は高くなっております。当社においては、当人に過度な依存をしない経営体制を構築すべく、担当役員等に権限委譲を進めておりますが、何らかの理由で当人の業務遂行が困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)関連法的規制について
① 法的規制について
当社事業は、「不当景品類及び不当表示防止法」、「特定商取引に関する法律」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「下請代金支払遅延等防止法」、「個人情報保護に関する法律」等による法的規制を受けております。
当社では、当該規制に対して、遵守体制の整備・強化、社員教育、顧問弁護士との定期的な情報交換等の対応を行っておりますが、今後、新たな法令等の制定や、既存法令等の解釈変更等がなされ、当社の事業が制約を受ける可能性があり、そのような場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、越境ECを対象とする法的規制が整備されていない国が多くあります。当社では、海外のプラットフォームとの契約時には、顧問弁護士と連携の上、現地の主要法令の調査を実施した上で締結する方針ですが、新たな規制や法令等の制定、既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期については、各国の法改正等によりに翌期においても相当にあるものと認識しております。当社では、当該リスクの対策として、法的規則に対応できる体制強化を図り、法的規則の変更等の外部要因に起因するリスクについても関連法令の改正等の動向をモニタリングすることで、顕在化のリスクを早期把握に努めております。
② 個人情報管理及び機密情報の管理について
当社はサービス提供にあたり、消費者、サービス利用会員等の個人情報及び多数の取引先に関する機密情報を取得しております。当社では、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営するプライバシーマーク、並びに一般社団法人情報マネジメントシステム認定センターよりISMSの認証を取得して情報資産の保護に注力するとともに、重要な情報の機密性・完全性・可用性の確保を図っております。しかしながら、今後何らかの理由により個人情報や機密情報が漏洩した場合には、損害賠償や信用力の失墜により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 知的財産権について
当社では、当社が運営する事業に関する知的財産権を確保するとともに、第三者の知的財産権を侵害しない体制の構築に努めております。しかしながら、当社の認識していない知的財産権が既に成立していることにより当社の事業運営が制約を受ける場合や、第三者の知的財産権侵害が発覚した場合等においては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は低いと判断しております。
(5)その他
① M&A及び資本業務提携等のリスク
当社は、持続的な成長のため、M&Aや資本業務提携等を行うことがあります。これらの実施にあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約内容等審査を十分に行い、各種リスクの低減に努める方針です。しかしながら、これらの調査後の事業環境の変化等により、当初想定していた成果が得られない場合や、資本業務提携等を解消・変更する場合、のれんや持分法で会計処理されている投資の減損損失が発生する場合には、当社の財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、当該M&Aが実施される時期及びM&A実施後の事業展開に起因することから、合理的な予測は困難であると認識しております。当社では当該リスクに対し、継続的な業績のモニタリングを行っており、減損損失が発生する前に対策を講じるように努めております。
② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社では、役職員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。
今後においても同様の目的でストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。
なお、本書提出日現在、新株予約権による潜在株式数は393,200株であり、発行済株式総数4,600,000株の8.5%に相当しております。
③ 配当政策について
当社の利益配分につきましては、将来の事業の展開と経営基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を維持することを基本方針としております。しかしながら当社は、成長過程にあることから、内部留保の充実を優先し、創業以来無配としてまいりました。将来的には、業績及び財務状態等を勘案しながら株主への利益の配当を目指していく方針でありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
④ 資金使途についてのリスク
当社が上場時に調達した資金の使途については、ECビジネスパートナーの拡大に向けた仕入資金や業容拡大に対応する採用費及び人件費、システム投資にかかる設備投資資金や、借入金の返済資金に充当する計画であります。
しかしながら、急速に変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点における資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。
また、当初の計画に沿って資金を使用したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性もあり、このような場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 自然災害について
地震、台風、津波、長時間の停電、火災、疫病の蔓延、その他の予期せぬ災害またはテロ、戦争等の紛争が発生した場合、当社の事業の運営または継続に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社では、複数サーバーやバックアップ体制等、事業継続のために必要な体制をとっておりますが、リスクの発現による人的、物的損害が甚大な場合は当社の事業継続そのものが困難となる可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性は、常にあるものと認識しております。当社では当該リスクが顕在化した緊急事態の際には、代表取締役社長を責任者とし、発生原因、緊急措置、被害、経過等の状況を可能な限り迅速かつ詳細に把握した上で、対応方針を協議し決定するなど、大規模災害や感染症蔓延への対応を図ることとしております。
⑥ 新型コロナウイルス感染拡大について
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、拡散脅威や外出禁止令による経済の停滞や、国内消費量が減退する可能性があります。そのような環境の中でも、当社が属するEC業界では、在宅での消費活動や在宅勤務によるいわゆる「巣ごもり消費」が活況となることで継続的な需要が期待できるものと考えております。
当社では、新型コロナウイルス感染症に対する対応として、消費者や取引先、社員の安全を第一に考え、在宅勤務(テレワーク)の原則化、海外出張の禁止等の感染予防に努めておりますが、商品の仕入先、外注先の物流倉庫、物流などのサプライチェーンに影響が生じた場合や、当社の従業員に影響が生じた場合、当社の事業活動が遅延または中断する可能性があり、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 決算期変更について
当社は、2018年12月3日開催の臨時株主総会決議において、事業繁忙期と決算業務の重複を回避することを目的として、決算期末日を12月31日から3月31日に変更しました。この変更により、第12期は2018年1月1日から2019年3月31日までの15か月間の変則決算となり、第13期との適切な比較対照が困難となっております。
そこで、当社は、投資情報として期間比較可能性を担保するための補足的情報を提供することを目的に、「みなし要約損益計算書(未監査)」を以下のとおり、開示しております。
「みなし要約損益計算書(未監査)」は、第12期の15か月決算の内、2018年4月1日から2019年3月31日までの12か月間の損益計算書を作成したものであります。なお、「みなし要約損益計算書(未監査)」は法定の財務諸表ではないため、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査や、その他いかなる監査も受けていないことにご留意ください。
「みなし要約損益計算書(未監査)」の数値を基に、第13期の主要な経営成績の比較を掲げると、以下のとおりとなります。
みなし要約損益計算書
(未監査)
(自 2018年1月1日
至 2019年3月31日)
第13期損益計算書
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
みなし要約損益計算書
期間比
売上高(千円)3,740,2095,261,614140.7%
売上原価(千円)2,747,0863,798,551138.3%
売上総利益(千円)993,1221,463,062147.3%
販売費及び一般管理費(千円)942,8501,293,059137.1%
営業利益(千円)50,271170,003338.2%
経常利益(千円)60,346198,165328.4%