有価証券届出書(新規公開時)

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2021/07/15 15:00
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147項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
第35期連結会計年度(自 2019年6月1日 至 2020年5月31日)
当連結会計年度におけるわが国経済は、米中貿易摩擦や日韓関係の悪化などによる海外の政治経済情勢の不確実性がありながら横ばいで推移しておりました。しかしながら、COVID-19によるパンデミックの発生により、景気は停滞に留まらず後退へ向かう兆候にあり、先行きは予断を許さない状況であります。
一方、当社グループが属する情報サービス産業においては、DXを推進する動きが拡大しており、お客様のシステム投資は堅調に推移しております。しかしながら、競合他社との人材獲得競争(特に中途採用市場)は厳しい状況が継続していることや当連結会計年度から順次施行が開始された働き方改革関連法案の対応、COVID-19の対策で在宅勤務を推進するための環境構築及び維持や在宅勤務下での成果物の品質確保・生産性確保等、当社グループを取り巻く環境は依然として厳しい状況であると認識しております。
COVID-19の対策については、2020年3月からお客様へ各種ご相談を進め、お客様のご理解とご協力、そして当社情報システムチームのスピーディな環境整備によって、緊急事態宣言の発令時には従業員の約80%の在宅勤務を実現致しました。これにより大きな混乱なく事業の継続ができたことをご報告致します。
このような状況の中、当社グループが取り組むビッグデータアナリティクスやクラウドサービスを活用したシステム構築などが順調に拡大しております。
当社グループはお客様とのパートナーシップ強化、及びベンダアライアンスを活用したビジネスエリアの拡大を営業戦略として実施しております。お客様とのパートナーシップ強化の例として、お客様が計画している案件の規模や必要とする技術エリアを定期的に共有いただき、それに対応できる人員の育成から両社で協力して実施していくパートナーシップを形成し、お客様は僅少な特定技術者の安定的確保、当社は継続的な売上確保を達成しました。また、ビッグデータ分析事業においては、ベンダとのアライアンス強化として、リセールパートナー契約等の活用や、共同営業活動により、事業の売上拡大に寄与しています。
既存顧客の安定拡大の観点では、デジタル革新推進事業が前連結会計年度から着手したシステム運用自動化プロジェクトが大きく拡大しました。本プロジェクトでクラウドサービス(ServiceNow(ServiceNow, Inc.社製品))を活用しており、その需要が高まったことから技術者の育成と増強を進め、積極的な営業活動を行った結果、期初対比5倍の売上増を実現できました。この需要は当連結会計年度へ継続しており、新しいビジネスエリアの獲得と評価しております。業務システムインテグレーション事業では、主要顧客のシステム投資に関わる大きな方針転換がありました。その結果、保守運用案件に関しては当第4四半期連結会計期間から受注減の結果になりましたが、当第3四半期連結会計期間よりリスクとして注視し、他の案件の獲得や人員配置の変更を早期に実施したことでリスクの回避を行いました。システム基盤事業では、引き続きクラウドを活用したシステム構築案件や大規模更改案件が好調であり、既存顧客からの安定拡大を実現できました。
前連結会計年度では、品質不良に起因する不採算プロジェクトの発生により業績に多大な影響を与えました。当連結会計年度では、その反省を踏まえ不採算プロジェクトの撲滅を目指し管理プロセスの改善と第三者チェックの強化を実施しました。経営レベルで重要プロジェクトの状況管理を徹底し先手の対策を実施したことや品質保証委員会による見積り段階から作業工程毎の基準品質の達成を監視することで品質の確保を行い、不採算プロジェクトの発生を未然に防ぐことができました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績については、売上高は4,577,752千円(前期比3.2%増)、営業利益は437,184千円(前期比212.3%増)、経常利益は486,211千円(前期比76.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は325,306千円(前期比127.6%増)となりました。
なお、当社グループはシステムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
第36期第3四半期連結累計期間(自 2020年6月1日 至 2021年2月28日)
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、日経平均株価が30年半ぶりに3万円台を回復したものの、大きな変動のない横ばい傾向で推移しました。COVID-19の第三波が拡大し首都圏は二度目の緊急事態宣言下に突入する事態となり、経済への影響に対する不安感が継続した状況でありました。
国内の情報サービス市場においては、ビッグデータやクラウドなど先進的な技術を活用してビジネスの改革を行い新しい価値を創り出すというDXを推進する動きが継続しております。
トラディショナルな案件(DXではない従来の開発手法を用いた案件)の成長は鈍化傾向にあり、DX活用への加速が少しずつ見え始めておりますが、当社グループではクラウド技術、ビッグデータ技術・分析統計技術を活用するビジネスを10年来継続しており、蓄積した技術力をベースにDXビジネスの裾野を着実に広げております。
当第3四半期連結会計期間においては、システム運用の自動化や業務の効率化を行う製品「ServiceNow」の導入・構築支援が引き続き好調でありました。金融系システム開発では、バーゼルⅢ最終化対応などの中型案件の受注により好調に推移しました。ビッグデータとクラウドに関するビジネスも継続的に好調です。また、新しい取り組みとして、お客様のビジネス改革に直接的に関与し、デジタル技術の普及に携われるコンサルティング領域への進出をスタートしました。これはビジネス変革に本質的に必要となるデジタル技術を適切にコンサルティングするサービスであり、活用する技術要素に対して当社がエンジニアリングサービスを提供するスキームとなるためビジネスの拡大に貢献するものです。
COVID-19の影響については、計画していた案件の一部規模縮小や開始時期の遅延などの発生による影響が出たことを受け、当第3四半期連結会計期間以降での回復を進めて参りましたが、顧客状況のヒアリング結果から売上高については全ての回復が難しいと判断致しました。また、営業利益に関しては計画に対してCOVID-19の影響で使用できない販売費及び一般管理費が多く発生したことや利益向上や売上減に対応して外注加工費を削減したこと等により増加する結果となっております。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高3,490,070千円、営業利益366,656千円、経常利益391,319千円、親会社株主に帰属する四半期純利益263,314千円となりました。
なお、当社グループはシステムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載をしておりません。
財政状態は、次のとおりであります。
第35期連結会計年度(自 2019年6月1日 至 2020年5月31日)
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて380,007千円増加し、2,803,419千円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて278,834千円増加し、2,069,223千円となりました。これは主に、業績が好調に推移したことに伴い現金及び預金が566,406千円増加したことによりますが、この増加のために売掛金が93,347千円、短期貸付金が102,500千円、未収入金が55,774千円減少となっております。
固定資産は、前連結会計年度末に比べて101,172千円増加し、734,195千円となりました。これは主に、役員及び従業員の保険として積み立てている保険積立金が95,669千円増加したことが主な要因であります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて104,959千円増加し、1,083,472千円となりました。これは主に、業績が好調に推移したことに伴う法人税等の増加により未払法人税等が132,883千円、未払消費税等が52,466千円増加したことによるものであります。一方で、1年内償還予定の社債がその償還期限を迎えたことにより100,000千円減少しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて275,048千円増加し、1,719,947千円となりました。これは、利益剰余金が275,146千円増加したことが主な要因であります。
第36期第3四半期連結累計期間(自 2020年6月1日 至 2021年2月28日)
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における総資産は、2,915,566千円となり、前連結会計年度末に比べ112,146千円増加しました。主な要因は、売上増加に伴い売掛金が163,412千円、役員および従業員の保険として積み立てている保険積立金が63,866千円増加し、一方で主に税金等の支払いに伴い現金及び預金が123,062千円減少したことによるものです。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における負債は、994,742千円となり、前連結会計年度末に比べ88,729千円減少しました。主な要因は、前連結会計年度末に計上されていた賞与支払いに伴う未払金100,431千円、及び、未払法人税等77,823千円が減少し、一方で外注費の増加に伴う買掛金が55,058千円、賞与引当金48,148千円が増加したことによるものです。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は、1,920,823千円となり、前連結会計年度末に比べ200,876千円増加しました。主な要因は、利益剰余金が配当により62,700千円減少したものの、親会社株主に帰属する四半期純利益の計上により263,314千円増加したことによるものです。
②キャッシュ・フローの状況
第35期連結会計年度(自 2019年6月1日 至 2020年5月31日)
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ506,374千円増加し、1,162,661千円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、646,282千円(前期比741,147千円増)の増加となりました。これは主として、業績が好調に推移したことに伴う税金等調整前当期純利益が481,034千円あったほか、売上債権の減少額による増加が93,347千円、未払消費税等の増加額が52,466千円あったことによる影響です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、11,538千円(前期比23,171千円増)の増加となりました。これは主として、貸付金の回収による収入が105,060千円あったほか、役員及び従業員の保険として積み立てている保険積立金の解約による収入127,426千円、及び、保険積立金の積立による支出136,248千円があった他、定期預金の預入による支出60,031千円による影響です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、151,446千円(前期比188,540千円減)の減少となりました。これは主として、社債の償還による支出が100,000千円あったほか、配当金の支払額が50,160千円あったことによる影響です。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが営むシステムエンジニアリングサービス事業は、提供するサービスの関係上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当社グループが営むシステムエンジニアリングサービス事業は、提供するサービスの関係上、受注実績の記載になじまないため、記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称金額(千円)前期比(%)
システムエンジニアリングサービス事業4,577,752103.2
合計4,577,752103.2

(注)1.当社グループはシステムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。
2.最近2連結会計年度及び第36期第3四半期連結累計期間の主な相手先別の売上高及び当該売上高の総売上高に対する割合は、次のとおりであります。
相手先第34期連結会計年度
(自 2018年6月1日
至 2019年5月31日)
第35期連結会計年度
(自 2019年6月1日
至 2020年5月31日)
第36期第3四半期連結累計期間
(自 2020年6月1日
至 2021年2月28日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ1,006,03422.71,067,05223.3843,13024.2
デュアルカナム株式会社953,61321.5934,95920.4489,75414.0
株式会社野村総合研究所676,66815.3733,10216.0576,11216.5

3.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。また、この連結財務諸表の作成に当たりましては、会計方針の選択及び適用、損益又は資産の報告金額等に与える見積りを必要としております。これらの見積り及び判断につきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下の事項が重要であると認識しております。
なお、COVID-19の影響については、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
(工事進行基準)
当社は、新規受注案件のうち、進捗部分について成果の確実性が認められる案件については工事進行基準(進捗率の見積りは原価比例法)を適用しております。適用に当たっては、受注総額、総製造原価及び当連結会計年度末における進捗率を合理的に見積る必要がありますが、予想しえない工数の大幅な増加等により当該見積りが変更された場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態に関する認識及び分析・検討内容
「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績に関する認識及び分析・検討内容
第35期連結会計年度(自 2019年6月1日 至 2020年5月31日)
当連結会計年度の経営成績の前連結会計年度との比較分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しておりますが、その主な要因は次のとおりです。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は4,577,752千円(前期比3.2%増)となりました。主な増加要因は、既存顧客ビジネスの維持・拡大、特に新規案件獲得のための新しいビジネス開発によるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度の売上原価は3,604,286千円(前期比3.2%減)となりました。主な内訳は外注加工費となりますが、前連結会計年度において突発的に工数が発生した案件が存在していたため、売上原価全体としては前期比減となっております。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は536,281千円(前期比6.1%減)となりました。主な要因は、従業員増加に伴う給料及び手当等の人件費や教育研修費、及び、上場準備に伴う支払報酬が増加した一方で、COVID-19による福利厚生費、旅費交通費、及び募集費の減少、また、前連結会計年度では計上していた貸倒引当金繰入額51,719千円が、当連結会計年度では計上されていないことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業利益は、437,184千円(前期比212.3%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は50,065千円(前期比64.4%減)となりました。主な内訳は、保険積立金の解約に伴う受取保険金によるものであります。
当連結会計年度の営業外費用は1,039千円(前期比78.8%減)となりました。主な内訳はリース資産の返済に伴う支払利息になります。前連結会計年度の主な内訳は社員の退職に伴う和解金となります。
この結果、当連結会計年度の経常利益は、486,211千円(前期比76.2%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
前連結会計年度の特別利益は、固定資産売却益が2,763千円発生しておりましたが、当連結会計年度では計上はありません。
当連結会計年度の特別損失は5,177千円(前期比92.6%減)となりました。主な内訳は、保有しているゴルフ会員権の評価損になります。前連結会計年度の主な内訳は保有していた投資有価証券の評価損によるものであります。
また、法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)を155,728千円計上した結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は325,306千円(前期比127.6%増)となりました。
第36期第3四半期連結累計期間(自 2020年6月1日 至 2021年2月28日)
(売上高)
当第3四半期連結累計期間の売上高は3,490,070千円となりました。COVID-19による大きな影響もなく堅調に推移しております。
(売上原価)
当第3四半期連結累計期間の売上原価は2,649,097千円となりました。これは主に外注加工費によるものであります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は474,316千円となりました。主な内訳は、給料及び手当等の人件費、支払報酬及び募集費によるものであります。
この結果、当第3四半期連結累計期間の営業利益は、366,656千円となりました。
(経常利益)
当第3四半期連結累計期間の営業外収益は25,012千円となりました。主な内訳は、受取配当金及び受取保険金によるものであります。
当第3四半期連結累計期間の営業外費用は349千円となりました。主な内訳は、保険解約損によるものであります。
この結果、当第3四半期連結累計期間の経常利益は391,319千円となりました。
(親会社株主に帰属する四半期純利益)
当第3四半期連結累計期間の親会社株主に帰属する四半期純利益は263,314千円となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
a キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b 財務政策
当社は、事業活動に必要な流動性を安定的に確保するため、手許流動性3~6か月を目安に保有しておくこととしております。
当社は事業の特性上、巨額な投資は必要としないため、間接金融ではなく直接金融を原則として安定的な経営を行っていく方針です。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定しておりませんが、売上高成長率及び営業利益率を重要な経営指標としております。