有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/10/06 15:00
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134項目
(1) 経営成績の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.経営成績
第82期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
当事業年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い発令された緊急事態宣言の解除により経済活動が徐々に再開され、また、当感染症拡大以前にみられた企業収益や雇用・所得環境の改善も戻りつつあり、緩やかな回復基調で推移しました。しかし、当感染症拡大第2波の発生、首都圏を中心とした新規感染者の高止まり傾向及び国内各地での再拡大の懸念など、先行きは不透明な状況が続いております。
当社の顧客である集団給食施設を含む外食産業におきましては、時短営業、外出の自粛、国内外の旅行客の減少、テレワークやリモート授業などの影響で給食施設の稼働率が低下し、修理や保守点検及び食器などの備品類の需要が減少しました。また、大都市圏の学校関係においては給食施設の入替を行う夏季休暇が大幅に短縮され、厨房機器の入替延期や縮小する施設もありました。
このような環境の中、当期の業績概要は以下のようになりました。
(単位:千円)
前事業年度
2019年9月期
当事業年度
2020年9月期
増減
機器設備売上13,526,07713,572,36946,292
修理備品売上2,637,9922,329,926△ 308,066
売上高合計16,164,06915,902,295△ 261,774
売上総利益4,375,0364,320,478△ 54,558
売上総利益率27.1%27.2%0.1%
販売管理費4,002,6063,856,372△ 146,234
営業利益372,429464,10691,667
営業利益率2.3%2.9%0.6%

機器の入替の可能性のある顧客に対する、最適な厨房製品・厨房システム及びサービス等の提案営業活動をより一層強化し、短期間の夏季休暇中に迅速に機器の入替が完了できるよう購買及び生産を前倒するなど事業活動を推進して参りました。その結果、当期中に予定されていました大型案件の工期の延期、また、例年7月8月に集中し納品施工される機器入替案件の延期または縮小などが発生するなど営業活動に新型コロナウイルス感染症の影響はあったものの、厨房機器の売上高は前事業年度より46,292千円増の13,572,36千円を計上することができました。顧客の厨房設備の稼働率の低下により、機器の修理及び食器などの売上高は前事業年度より308,066千円減少し2,329,926千円となりました。なお、本稿では、当事業年度の顧客市場の動向及び当社の事業活動の状況を経営成績と関連付けで分析するにあたり、損益計算書における製品売上高と商品売上高に含まれる機器設備関連の売上を機器設備売上高とし、損益計算書における製品売上高と商品売上高に含まれる修理・保守及び食器などの備品売上を修理備品売上高と標記しております。
これらの結果、当事業年度の売上高は15,902,295千円(前期比1.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、新型コロナウイルス感染症拡大によって営業活動に一定の制限を受けたことに伴い出張費で20,166千円、給料及び手当で52,785千円、売上高の減少に伴い運賃及び荷造費で50,900千円等の減少により、3,856,372千円(前期比3.7%減)となりました。
営業外損益は、営業外収益では前期において解約返戻金2,835千円が発生したことや当期中に賃貸期間の満了に伴い受取家賃が1,200千円減少したことにより34,841千円(前期比13.6%減)となりました。営業外費用では、前期において発生した為替差損及び和解金が当期において発生しなかったこと等により7,306千円(前期比41.4%減)となりました。
利益については、一括案件※の減少に伴って大型の自社製品の販売が伸び悩んだことや販売費及び一般管理費の減少等により、売上総利益は4,320,478千円(前期比1.2%減)、営業利益は464,106千円(前期比24.6%増)、経常利益は491,640千円(前期比22.8%増)、税引前当期純利益は486,510千円(前期比27.7%増)、当期純利益332,089千円(前期比24.3%増)となりました。
なお、当社は業務用厨房機器製造、仕入、販売及び保守修理事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
※一括案件:以下のいずれかに該当する案件 ・新築、改築工事等一式工事に伴う機器の購入 ・新築、改築工事等一式工事に伴う什器類(食器等)の購入 ・リニューアル物件で全面改修の機器更新
第83期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
当第3四半期累計期間における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大により2021年4月に大都市圏を中心として緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され、経済活動や個人消費活動が再び制限されることとなりました。ワクチン接種の進展により経済活動や個人消費活動のゆるやかな回復が想定されるものの、ワクチン接種の進展には一定の期間を要することや、変異ウイルスが国内でも確認されるなど、一進一退の状況が続き、本格的な景況感の持ち直しには相応の時間を要するものと考えられます。
一方、世界経済は、新型コロナウイルス感染症の再拡大により春先に経済活動が停滞したものの、欧米の先進諸国においてワクチン接種の進展による経済活動の正常化に向けた取り組みが開始されるなど、景況感の回復の兆しがみられる状況にあります。しかしながら、この取り組みは感染再拡大のリスクを伴ったものであることや米中の対立構造の激化など、不安材料はいまだ解消されておらず、国内経済同様、経済活動の正常化には相応の時間を要するものと考えられます。
このような環境の中、当社におきましては、顧客市場の拡大及び業績の向上に向け、多様化するお客様ニーズに対応した新型製品の拡販や、24時間対応受付サービス等の提案営業活動が可能な体制を強化し、業績向上に努めてまいりました。その結果、新型コロナウイルスの影響による機器入替案件延期分の売上が増えたこともあり、期初予算及び過去3ヵ年比で順調な売上を達成するとともに、利益面におきましても前年同期間と比して改善がみられる結果となりました。しかしながら、今後も新型コロナウイルス感染症の拡大により営業活動に影響を及ぼす恐れがあり、予断を許さない状況が続くことが想定されます。
以上の結果、当第3四半期累計期間の売上高は、9,754,342千円となりました。利益面につきましては、営業損失は259,581千円、経常損失は241,754千円、四半期純損失は178,425千円となりました。なお、当社の売上高は、通常の営業形態として、第1、第3四半期会計期間に比べて第2、第4四半期会計期間に多くなるといった季節的変動があります。
また、当社の事業セグメントは業務用厨房機器の製造・販売及び保守修理のみの単一のセグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
b.財政状態
第82期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
財政状態は、総資産で前事業年度末に比べ118,092千円減少の12,339,216千円となりましたが、主要な変動要因は以下の通りです。
売掛金が4,460,996千円と前事業年度より453,976千円減少しておりますのは、当事業年度第4四半期の売上高が前事業年度の第4四半期売上高より396,220千円減少したことによります。買掛金が1,374,095千円と前事業年度より393,725千円減少している要因も、第4四半期の売上高の減少に起因しております。棚卸資産が1,643,822千円と前事業年度より232,235千円増加しておりますのは、翌年度第1四半期に納品するための販売用在庫の確保によるものです。2021年9月期の第1四半期売上高は2,279,905千円となり、2020年9月期の第1四半期売上高より699,219千円増加しております。
資産の部のその他の変動としましては、流動資産で現金及び預金の増加等により31,448千円増加したものの、固定資産が建物の減少等により149,540千円減少となった結果、前事業年度末に比べ総資産は118,092千円減少しました。
負債の部のその他の変動としましては,流動負債で買掛金の減少等により275,894千円減少、また固定負債で長期借入金の減少等により65,987千円の減少となった結果、前事業年度末の負債合計に比べ341,881千円減少の6,825,846千円となりました。
純資産の部は、当期純利益の計上等に伴い利益剰余金が増加したこと等により前事業年度末に比べ223,789千円増加の5,513,369千円となりました。
第83期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
当第3四半期会計期間末の資産合計は、前事業年度末に比べ944,115千円減少し、11,395,100千円となりました。これは主に、現金及び預金が1,265,495千円、商品及び製品が915,321千円増加したものの、受取手形及び売掛金が3,384,828千円減少したことなどによるものであります。
負債合計は、前事業年度末に比べ649,925千円減少し、6,175,921千円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が455,574千円、賞与引当金が200,948千円減少したことなどによるものであります。
純資産合計は、前事業年度末に比べ294,190千円減少し、5,219,179千円となりました。これは主に、四半期純損失として178,425千円を計上したことなどによるものです。
② キャッシュ・フローの状況
第82期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
当事業年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べ486,046千円(23.5%)増加し、2,557,297千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、678,676千円の収入(前事業年度は443,524千円の収入)となりました。主な資金増加要因は、税引前当期純利益486,510千円、減価償却費125,006千円及び売上債権の減少額602,409千円であります。売上債権につきましては、当事業年度第3四半期までの売上累計の年間売上に占める割合が56.8%と前事業年度の55.1%よりも上昇したことにより、当事業年度末までに現金回収した売上債権が増加しております。資金の主な減少要因は、棚卸資産の増加額232,235千円、仕入債務の減少額407,234千円および法人税等の支払額78,760千円等であります。棚卸資産につきましては、翌事業年度の第1四半期に納品する製商品在庫を積み増したことにより支出が増加し、仕入債務に関しましては、当事業年度第3四半期までの仕入累計の年間仕入に占める割合が、売上と同様に前事業年度の比率よりも上昇したことにより、当事業年度末までに現金支払した仕入債務が増加しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、厨房機器製造設備の導入23,450千円等の支出が発生いたしましたが、有形固定資産の売却による収入39,564千円、長期貸付金の回収12,566千円等により、前年同期に比べ38,787千円(前年同期は△32,374千円)増加し、6,412千円の収入となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済額84,000千円、配当金の支払額107,092千円等の支出の結果、前年同期に比べ21,395千円(前年同期は△219,516千円)減少し、198,120千円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売実績
生産実績は次のとおりであります。
生産高(千円)前年同期比(%)
2,717,346101.5

(注) 1.金額は、製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
商品仕入実績は次のとおりであります。
商品仕入高(千円)前年同期比(%)
8,346,05796.9

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
受注実績は次のとおりであります。
受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
15,859,24994.41,827,735104.7

(注) 1.金額は販売金額で表示しております。
2.上記の金額には消費税等は含まれておりません。
販売実績は次のとおりであります。
販売高(千円)前年同期比(%)
15,902,29598.4

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.総販売実績の10%以上の主要顧客はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には、決算日における資産・負債の決算数値及び偶発債務、収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」および「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりでありますが、財務諸表に重要な影響を与える可能性のある見積を含む会計方針は以下の通りであります。
a.たな卸資産の評価基準及び評価方法
当社は、製品・仕掛品・原材料及び商品並びに貯蔵品に係わる貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切り下げの方法により算定しております。期末日以降における顧客の需要及び市況により収益性が見積以上に悪化した場合、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
b.貸倒引当金
当社は、債権の貸倒損失に備えるため一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。経済環境や取引先の経営環境の急激な悪化などに起因し、貸倒実績率を超える債権の貸倒れや回収遅延が生じた場合、評価損の追加計上が必要となる可能性があります。
c.退職給付費用及び債務
当社は、退職給付費用及び債務の計上において、将来の金利の動向・退職率・割引率等の一定の前提に基づいて計算しております。将来の不確実な経済条件の変動等により前提条件の見直しが必要となった場合、退職給付に係わる費用及び債務の追加計上が必要となる可能性があります。
d.繰延税金資産
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の回収可能性の判断に重要な影響を与える可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等について
第82期事業年度(自 2019年10月1日 至 2020年9月30日)
当事業年度の売上高は、前期比1.6%減の15,902,295千円、営業利益は同24.6%増の464,106千円、経常利益は同22.8%増の491,640千円、当期純利益は同24.3%増の332,089千円となりました。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績」に記載のとおりです。
第83期第3四半期累計期間(自 2020年10月1日 至 2021年6月30日)
当第3四半期累計期間の売上高は、前年同期比7.9%増の9,754,342千円、利益面につきましては、営業損失は259,581千円(前年同期は327,384千円の損失)、経常損失は241,754千円(前年同期は303,295千円の損失)、四半期純損失は178,425千円(前年同期は223,866千円の損失)となりました。詳細につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.経営成績」に記載のとおりです。
b.当社の資本の財源及び資金の流動性について
当社は、中長期的に持続的な成長を図るため、生産能力の増強や労働生産性の向上、販売・物流体制の整備、研究開発体制への投資を計画しております。事業を成長・拡大させるための資金需要があるほか、必要に応じてM&A等を行う可能性もあります。当該資金は、営業活動で生み出される内部資金で賄うこととしておりますが、資金需要の大きさや時期、金融マーケットの状況によっては、自己資金以外の資金調達の方法を検討する場合もあります。
外部からの調達に関しましては、大型の設備投資資金は国内金融機関からの長期借入金を中心とした調達を行い、運転資金や小規模な設備資金は短期借入金で調達しております。迅速かつ効率的に調達を行うために、取引銀行と貸出コミットメント契約、当座貸越契約など総額68億円の借入枠を確保しており、資金の流動性は確保しております。また、M&Aや工場建物など大型の超長期資金需要に対しては、資本コスト、金利動向などを考慮し、新株発行や社債発行などの直接金融を検討する予定であります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について
「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社では、人にやさしい、環境にやさしい新製品の開発ならびに付加価値を強化することにより、自社製品力およびブランド力を強化する経営戦略を推進しております。この達成状況を判断するための指標として、売上高、製品売上高、売上総利益、営業利益を重視しております。
当事業年度を含む過去3期の各指標の実績推移は以下の通りです。当事業年度におきましては、新型コロナウイルス感染症拡大による大型案件の工期の延期などの影響で売上高が減少し、計画していた自社製品の販売も計画未達となり、指標は悪化いたしました。しかしながら、お客様ニーズに対応した新製品等の提案営業活動の結果、売上全体の減少幅より自社製品の減少幅を対前期比で抑えることができ、売上総利益の減少幅も抑えられ、販売費及び一般管理費の抑制と相まって営業利益を増益にすることができました。
単位:千円
指標2018年9月期2019年9月期2020年9月期
売上高16,605,34116,164,06915,902,295
製品売上高4,373,7244,097,7744,089,690
売上総利益4,478,0484,375,0364,320,478
営業利益453,037372,429464,106