有価証券届出書(新規公開時)

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2021/09/30 15:00
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128項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に対する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスクについて
① セキュリティ関連市場及び個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場について
当社グループはAkerun事業の単一セグメントであり、対象市場としてセキュリティ関連市場及び個人認証・アクセス管理型セキュリティソリューション市場を想定しております。デジタルトランスフォーメーションの拡大に伴い、クラウドサービスを通じた様々な場所やシーンへのアクセス管理や、多様な状況下におけるセキュリティの強化の更なる需要拡大により、同市場が今後も成長することを前提に、引き続き同市場を基盤とした事業を展開する計画であります。
しかしながら、今後の経済情勢や景気動向の変化等により、同市場が成長しない場合や、顧客企業のセキュリティへの投資が抑制され、新規・追加受注が想定通り進まない場合又は解約率が想定を上回る場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合他社の動向について
当社グループがサービス提供を行う市場は、競合他社が存在しており、今後の市場規模拡大に伴い新規参入が予測されます。
当社グループは、製品機能や提供サービスの拡充や品質の向上、高度なセキュリティと利便性の追求等により、競争力の維持に努めておりますが、競合企業や新規参入企業との競争激化により、当社グループが想定している事業展開が図れない場合等には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 技術革新について
当社グループの提供するサービスは、技術革新のスピードが早く、社会環境の変化に伴い顧客ニーズも早期に変化するなど、当社グループの優位性を維持するためには、技術革新をリード又は即座に対応する必要があります。当社グループでは、優秀なエンジニアその他人材の採用・育成による技術やノウハウの蓄積、最新の技術動向や環境変化に関する情報収集等に注力し、技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。
しかしながら、何らかの要因により当社グループが技術革新への対応が遅れた場合や、対応できない技術革新が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 新型コロナウイルス感染症について
当社グループの提供するサービスは、新型コロナウイルス感染症に対する企業の働き方の変化によって、在宅勤務やテレワークの導入拡大による遠隔地からの入退室管理需要の増加、コワーキングスペースやシェアオフィスの増加、鍵の受け渡しが困難になったことによるクラウド型の入退室管理システムの後付け需要増加など、当社グループの事業にとって望ましい環境の変化もみられております。
しかしながら、国内及び海外主要各国において新型コロナウイルス感染症の感染拡大が終息に向かわず、今後数年間にわたり拡大が続いた場合は、深刻な経済的影響が生じ、当社グループの提供するサービスへの需要の減少や関連する活動への支障などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に関するリスクについて
① 先行投資に伴う財務影響について
当社グループの提供するサービスは、サブスクリプションモデルのHESaaSであり、先行的な広告宣伝費投資による知名度向上や営業体制強化による潜在顧客獲得を図っております。また、Akerun事業においては、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上が最重要であり、先行的にエンジニア等の人件費や研究開発費を投下しております。このため、当社グループは創業当初より継続して赤字を計上しており、第6期事業年度(自 2019年1月1日 至 2019年12月31日)及び第7期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)において、営業キャッシュ・フローがマイナスとなっております。
当社グループは、費用対効果を見ながら、今後も先行的な投資を継続する方針であり、一定期間において赤字を計上することを想定しております。事業環境の急激な変化等により、これらの先行投資が当社グループの想定する成果に繋がらなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 継続的な受注獲得について
当社グループの事業が成長していくためには、継続的な受注獲得及び顧客による継続的なサービスの利用が重要であると考えております。これらを促進するために、製品機能や提供サービスの拡充及び品質の向上に加えて、潜在顧客及び受注獲得のための最適なマーケティング活動及び販売戦略の立案・遂行に注力しております。
しかしながら、需要に応じたサービスを提供できない場合や広告宣伝費投資による効果が十分に得られない場合、実行した販売戦略が十分な効果を伴わない場合には、新規受注獲得や顧客によるサービス利用が減少する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ システムトラブルについて
当社グループが顧客に提供しているアプリケーションは、クラウドという特性上、インターネットを経由して行われております。当社グループは、システムトラブルによるリスクを最小限に抑えるべく、クラウドプラットフォームとして信頼されているAmazon Web Services社が提供するクラウドプラットフォーム上にアプリケーションを構築しております。また、重要度の高いサーバー冗長化やデータベースの定期的なバックアップ等を行うことにより、システムの可用性の向上や復旧時間の短縮のための対策を講じております。
しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、外部からの不正アクセス等により、大規模なシステムトラブルが発生した場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、顧客からの信用失墜などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、クラウドサービスやお客様のネットワークに障害が発生した場合も、エッジ端末でICカード認証する方法を提供しているため、ローカル環境で認証・履歴記録することが可能なシステムとなっております。また、導入サポートとして、トラブルに備えた物理鍵での運用の案内やトラブル発生時に緊急解錠するためのキースイッチオプションの提供等を行っております。
④ 製造委託先への依存について
当社グループは、製造工場を持たず、すべての製品の製造を外部に委託しております。製造委託先に対しては、密なコミュニケーションの実施により、関係強化や過度な負担の軽減に努めるとともに、リスクヘッジのために代替先の選定にも努めております。
しかしながら、製造委託先との関係悪化による取引停止や、被災、事故又は廃業等による生産体制の崩壊などが生じ、代替先の確保が困難な状況となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 原材料等の調達について
当社グループは、基盤部品等の選定にあたって、可能な限り広く流通し取扱代理店の多いものを採用しております。また、複数の代理店から購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めております。
しかしながら、一部の特殊な基盤部品等については調達リードタイムが長く、流通が限定されるものを採用する場合があり、サプライヤーの被災、事故及び廃業等による原材料の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には、生産計画通りの製造が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 特定事業への依存について
当社グループは、単一セグメントであるAkerun事業のサブスクリプション収益が当社収益の約90%を占めております。
当社グループでは、顧客ニーズに合ったサービスを提供するための継続的な改良に加え、業績の拡大及び安定化を図るための新規事業の開発に取り組んでおりますが、市場の変化や顧客ニーズの変化等により当社グループのサービスが競争力を失った場合や、競合他社による魅力的なサービスの出現等により顧客が減少した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 製品の欠陥等について
当社グループは、製品の品質や安全に関する法令及び規則の遵守に努めるとともに、社内の品質保証担当による十分な検証や、外部の品質保証機関による客観的な検証を行っております。
しかしながら、万が一大規模な製品の欠陥等が発生した場合、アフターサービス費用又はリコール費用が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)組織体制に関するリスクについて
① 優秀な人材の確保について
当社グループは、既存事業の急速かつ継続的な成長及び規模拡大や、想定される新規事業への展開に伴い、当社グループの理念に共感する優秀な人材の確保及び育成が不可欠であると認識しております。
しかしながら、人材採用及び育成が計画通りに実現できなかった場合や優秀な人材の流出が進んだ場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 内部管理体制の構築について
当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠であると認識しております。そのため、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、また法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しております。
しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である河瀬航大は、当社の創業者であり、創業以来当社グループの経営方針や事業戦略の立案及び遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、特定の人物に依存しない体制を構築すべく、権限委譲や組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏が当社グループの経営執行を継続することが困難になった場合には、現状では当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事業に関する法的規制に関するリスクについて
① 個人情報の保護について
当社グループは、「Akerun入退室管理システム」の利用による各種ログや入退室記録、顧客へのサービス提供のため取得する役職者の情報など個人情報を保有しております。個人情報の取扱いについては、外部漏洩や不正利用等の防止のため、「情報セキュリティ基本方針」を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理するとともに、「個人情報保護管理規程」を策定し、その遵守を徹底しております。また、当社は情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格「JIS Q 27001:2014(ISO/IEC 27001:2013)」の認証を取得しており、個人情報の保護に積極的に取り組んでいます。
しかしながら、悪意あるハッキングやコンピューターウィルス等により、万が一当社グループが保有する個人情報が外部に漏洩した場合又は不正使用された場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、顧客からの信用失墜などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループは、運営する事業に関する技術・商標等の知的財産権の保護を図っております。また、当社グループの提供するサービスが第三者の知的財産権を侵害しないよう留意しており、必要に応じて顧問弁護士や弁理士等の専門家への事前調査依頼による十分な検証を行っております。
しかしながら、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があります。また、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社に対する訴訟等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループの提供するサービスでは、「個人情報保護法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」等の法規制の対象となっております。当社グループは、これらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育や体制の構築などを行っていく予定であります。
しかしながら、今後新たな法令の制定や、既存法令の強化等が行われ、当社グループが運営する事業が規制の対象になるなど制約を受ける場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 訴訟等について
当社グループにおいて、現在、事業に重大な影響を及ぼす訴訟等は存在しません。
しかしながら、関連法規や各種契約などに違反し、第三者に損害が発生した場合には訴訟を提起される可能性があります。このような場合には、訴訟の内容及び結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスクについて
① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は1,609,600株であり、発行済株式総数14,535,400株の11.1%に相当しております。
② ベンチャーキャピタルの株式保有割合について
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は14,535,400株であり、このうち6,769,400株(発行済株式の46.6%)についてはベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合が保有しております。
一般的に、ベンチャーキャピタルが未上場会社の株式を取得する場合、上場後には保有する株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、当社におきましても、上場後にベンチャーキャピタルにより株式が売却される可能性があります。そのような場合には、短期的に需要が悪化し当社の株価が低下する可能性があります。
③ 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置づけておりますが、創業して間もないころから、持続的成長と事業拡大に向けた積極的な投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考え、創業以来配当は実施しておりません。
今後の配当方針については、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して利益還元策を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
④ 繰越欠損金について
当社は、事業拡大のための積極的な人材投資、広告宣伝等を行ってきたことから、第7期事業年度末(2020年12月31日)において税務上の繰越欠損金が存在しております。今後、利益計上が継続した場合には、繰越欠損金が解消されることにより、法人税、住民税及び事業税の金額が増加することとなり、当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
⑤ 固定資産の減損について
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、減損の要否を検討しております。将来の事業計画や市場環境の変化により、減損の兆候が認められ、減損損失を計上する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループは、第7期事業年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)において、賃貸用資産等の固定資産に係る減損損失を計上しました。そのため、当該減損損失を計上した固定資産に係る減価償却費は、翌事業年度以降においては計上されませんが、翌事業年度以降において取得等により計上する固定資産については減価償却費が計上されます。